天然ガスを巡るEUとロシアの攻防

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ロシアの天然ガスの価格を巡るウクライナとロシアの交渉が決裂し、ロシアはウクライナ向けの天然ガス供給を停止した。

ロシアの欧州向け天然ガスは現在、ベラルーシ経由、ウクライナ経由、バルト海経由(Nord Stream) があるが、ロシアはウクライナを迂回するSouth Streamの建設を急いでいる。
2009年初めにウクライナ向け供給を停止した際に、ウクライナが
欧州向けのガスを抜き取ったため、欧州向けの供給も停止する事態になったことがある。

South Streamはロシアと中央アジアの天然ガスを欧州に送るもので、黒海の湖底を通って対岸のブルガリアに渡り、その後、2手に分かれる。
北西ルートはブルガリア、セルビア、ハンガリーを通ってスロベニア、オーストリーに通じる。
南西ルートはギリシャからイタリアに通じる。

当初、GazpromとENIとの均等出資で計画されたが、2011年にBASF子会社のWintershallとフランスのElectricite de France SAが15%ずつ参加し、ENIの比率は20%となった。

ロシアのGazpromとパートナーは2012年12月7日、南ロシアの黒海東岸の Anapa市でSouth Stream pipeline の着工式を行った。

2012/12/13 ロシア、サウスストリームパイプライン計画着工

ロシアとブルガリア、セルビア、ハンガリー、ギリシャ、スロベニア、クロアチア、オーストリアの各国との建設契約が締結されている。

これに対し、EUは2013年12月4日、各国が締結した建設契約はEUの法に違反しており、ゼロから再交渉する必要があるとした。

ウクライナは2013年に欧州連合との政治・貿易協定の仮調印を済ませたが、ロシア寄りの姿勢を見せるヤヌコビッチ前大統領が2013年11月、EUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換した。

EUがこの時になって急に問題提起をした背景にはこれがあった。

South Stream pipeline 建設契約が反しているとされるEUの規則は、2007年9月に採択された第三次電力・ガス自由化パッケージである。

これはエネルギーに関する消費者の選択、フェアな価格、クリーンエネルギー、供給の保証を目的とするもの。
再生可能エネルギーに投資するなどの小企業でもエネルギー市場に参入できるようにするもので、具体的には、エネルギーの生産と輸送ネットワークの所有を分離する。これにより電線やパイプラインの所有者が、利用を拒否したり、高い価格を要求したりして参入を妨害するのを防ぐことを狙うものである。

South Stream pipelineについては、天然ガスの生産者であるGazpromがパイプラインを所有することになるため、これに違反するという主張である。
Gazpromの天然ガスだけを送るパイプラインは認められないとした。

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ロシアのPutin大統領は6月24日、オーストリアを公式訪問し、Fischer大統領と会談した。
同日、ロシア国営ガス大手Gazpromとオーストリアのエネルギー会社OMVは、ロシア産天然ガスをオーストリアに運ぶ South Stream Pipelineの新たな建設契約に署名した。

総延長2446km のうち今回、オーストリア国内分の約50kmのパイプラインを約2億ユーロで建設する。
320億m3の天然ガスを同国に送る。

South Streamについては、EUの欧州委員会が「計画凍結」を求めているが、Putin大統領は同日の記者会見で「契約は何ら不自然ではない」と正当性を強調。「米国が欧州に自分たちのガスを売りたいのだ」と批判した。

Fischer大統領も「契約は有益なものだ」と説明した。

OMVは6月17日にEUに対し、South Streamプロジェクトの実現加速化を求めた。
「EUはSouoth Streamに関する交渉を遅らせるのではなく、逆に加速させるべきだ」と主張した。

ロシアのラブロフ外相は6月17日、セルビアのイビツァ・ダチッチ外相との会談後、セルビア政府がサウスストリームの建設工事を継続する意思を確認したことを明らかにした。

ラブロフ外相は7月7日には、ブルガリアの首都ソフィアでビゲニン外相と会談し、South Streamについて意見を交わした。

ブルガリアは先月、EUから法律違反のおそれがあるとの指摘を受けてパイプラインの工事を停止しているが、会談で両国は建設の必要性を確認した。
会談のあと、ビゲニン外相は「South Streamはブルガリアの国益にかない、建設を支持する」と話した。


オーストリアや東欧各国はロシアの天然ガスへの依存が大きく、ウクライナ経由のパイプラインに不安を持つため、South Streamへの期待が大きい。

 これら各国は2009年にウクライナ経由の輸入がカットされ、被害を受けた経験を持つ。

 

 



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