ロシアのアジア向けガスパイプライン着工

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東シベリアの天然ガスを極東経由で中国に供給するパイプライン"Sila Sibiri"(Power of Siberiaの起工式が9月1日、サハ共和国の首都ヤクーツク近郊で行われた。

式典にはプーチン大統領と中国の張高麗副首相が出席した。プーチン氏は式典で「世界最大の建設プロジェクトはハイレベルな中露関係のおかげで可能になった」と 述べた。

ウクライナ危機で欧州がエネルギー資源のロシア依存脱却を進める中、ロシアとしてガス輸出先の「東方シフト」を推進する姿勢を鮮明にした。

Power of Siberia はサハ共和国のChayanda油ガス田(図の③)、 イルクーツク州のKovyktaガス田(図の②)で産出するガスを極東に運ぶもので、総延長は3968kmに及ぶ。総工費は7700億ルーブル(約2兆1400億円)。

Gazpromによると、ヤクーツクから国境のBlagoveshshensk までの区間を2018年末までに完成させ、2019年から中国へ毎年380億m3の天然ガスを供給する。
パイプラインは
フル稼働すれば、年間の輸送量は600億m3にも上る。

将来はハバロフスクまで延伸し、サハリン産ガスを極東に運ぶ既存パイプラインと接続、ウラジオストクで液化し、LNGとしてアジア太平洋諸国に輸出する。

付記

9月27日の日本経済新聞によると、Gazprom副社長が、東シベリアのChayandaKovyktaの両ガス田開発する天然ガスの輸出先を中国に限定すると述べた。

生産するガスは中国向けを除けば、パイプライン沿いの国内地域のガス化に利用すると言明、パイプラインもガス田から中ロ国境のブラゴベシェンスクまで建設する。対日輸出拠点となる極東ウラジオストクまでの連結は「現在、必要性をみていない」との見方を示した。

ウラジオストクで2019年稼働を目標にLNG基地の建設計画を進めるが、供給するガスは「サハリン沖にある資源だけで十分だ」とした。

なお、原油については東シベリア・太平洋原油パイプラインVSTO)とSkovorodino~大慶パイプラインにより、中国との間で既に繋がっている。

ロシア産ガスの対中輸出は価格交渉が長年難航していたが、 本年5月21日、Gazpromによる中国石油天然ガス集団(CNPC)への天然ガス供給で合意し、契約に調印した。中国訪問中のプーチン・ロシア大統領と中国の習近平国家主席がこれに立ち会った。

契約によると、ロシア側は2018年から30年間にわたり毎年380億m3の天然ガスを供給する。総契約額は4,000億ドルを上回ったとみられる。

2013年のロシアからの欧州向け天然ガス輸出は約1,600億m3、中国の天然ガスの総輸入量は510億m3。

価格は「商業機密」として明らかにしていないが、数量 380億m3x 30年で4000億ドルとすると、価格は1000m3当たり350ドル程度となる。
西欧諸国への供給価格は長期契約の下で350ー380ドルとなっており、Gazpromは350ドル以下での供給には反対したとされる。

Gazpromが天然ガス開発、ガス処理、ロシア内のパイプライン建設を担当、CNPCが中国内のパイプライン建設を担当する。
プーチン大統領は、ロシアが天然ガス探査と中国に続くパイプラインの建設に550億ドルを投資すると表明した。
また、中国がロシア側のインフラ開発などを支援するために約200億ドルを支払う。

プーチン大統領は、「ロシアと中国は西ルートでもガスを供給することを協議する」と述べ、西シベリアからモンゴルの西側を通り中国につなげる2本目(Altai Pipeline) も敷設することを明らかにしている。

2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印

 

 

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