Dow Chemical の節税策、控訴審でも敗訴

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ルイジアナ州Baton Rougeの連邦裁判所は2013年2月25日、Dow Chemicalが約10億ドルの節税を行った2つのタックスシェルター行為を否認したうえ、20%の罰金を科した。

Chemtech I は1990年代にGoldman SachsとKing & Spalding法律事務所が考案したもので、SLIPS(Special Limited Investment Partnerships)と呼ばれる。
多国籍企業が海外の銀行とパートナーシップをつくり、所得控除を作り出すもの。

Dowは、1993年から1997年の間に、自社の特許をスイスの欧州本部がつくったパートナーシップに移し、それを使うために特許料を支払い、費用に落とした。

ChemtechはKing & Spalding法律事務所が考案したもの。

Dowは、1998年から2003年の間に、既に償却済みの一つの化学工場をパートナーシップに移し、それをリースして使用料を費用に落とした。

いずれの場合も、パートナーシップの収益はタックスヘイブンでの所得となり、Dowには課税されないこととなっていた。

Dowは控訴した。問題の金額は1993~2003年の期間に既に仮払しているため、影響は小さいとしている。

2013/3/4  Dow Chemicalの節税策に違法の判決 

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第五巡回区控訴裁は9月10日、Dowが偽のパートナーシップを利用して約10億ドルの脱税をしたとの地裁の判決を支持した。

税務当局(IRS)は、特許や工場は書類の上だけで移転しただけであるとしてDowの損金算入を否認したが、一審では、パートナーシップに2億ドル出資した外国の銀行(複数)は投資に対して 7%のリターンを保証されており、実質的には出資でなく貸付であると主張、地裁はこれを支持した。

控訴裁は、これらの事実からは、Dowがパートナーシップで外国の銀行と損益を分かち合う意図を持ってはいなかったとする地裁の判断には誤りはなく、偽のパートナーシップ(sham-partnership holding)であると認定した。

更に控訴裁は、「不適切な価格設定」と「不当価格設定」の罪が適用されるかどうかを決めるよう、地裁に差し戻した。

税法(6662条(e)) の「不適切な価格設定」(Substantial Valuation Misstatements)では20%の過少申告加算税が課される。
税法(6662条(h)) の「不当価格設定」(Gross Valuation Misstatements)では40%の過少申告加算税が課される。

司法省は「不当価格設定」を適用し、40%の罰金を課すべきだと主張したが、地裁判決は「過失」と「不適切な価格設定」を適用し、20%の罰金を課していた。

2013年12月にWoods事件(U.S. v. Woods, 134 S.Ct. 557 (2013) )で最高裁の判決があった。

Gary Woods と雇用者のBilly Joe McCombs はoffsetting-option のタックスシェルターを利用して多額の書類上の損失を出し、課税所得を減少させたとして訴えられた。

この事件の控訴審で、控訴裁は「不適切な価格設定」を適用した。

これに対し、最高裁は2013年12月、控訴裁の判断を却下し、「不当価格設定」を適用した 。

今回、控訴裁は、 地裁判決後に出されたWoods事件での最高裁の判断に基づけば、Dowにもっと厳しい罰則を与えることになるのかどうかを決めるよう、地裁に差し戻した。

控訴裁自体は どうすべきかについては意見を述べないとしている。


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