Janet Yellen 米連邦準備理事会議長、米国の不平等の深刻化を懸念

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米連邦準備理事会のJanet Yellen 議長は10月17日、ボストン連邦準備銀行が開催したカンファレンスで講演し、「所得や富の不平等は100年ぶりに最高レベルに近づいている」とし、「米国で不平等が深刻化していることは、大変懸念すべきことだ」と 述べた。

スピーチ:Perspectives on Inequality and Opportunity from the Survey of Consumer Finances


講演の内容は以下の通り。


米国における不平等の拡大が心配である。

過去数十年間の格差拡大を要約すれば、富裕層の所得や富が著しく増大する一方、大半の所得層では生活水準が低迷している状態と言える。

こうした傾向が、わが国の歴史に根ざした価値観、中でも米国民が伝統的に重きを置いてきた機会の平等に照らしてどうなのかと問うことが適切だ。


 

機会そのものが資産の多少の影響を受けるため、所得の不平等は機会の不平等を生み、それがまた所得の不平等を生むこととなる。

Council of Economic Advisers の議長のAlan Kruegerが2012年に提案した"Great Gatsby Curve"に見られるように、米国では1985年から2010年に不平等が拡大するとともに、親の所得がより影響を与えるようになった。

スコット・フィッツジェラルドの小説 『グレート・ギャツビー』からとった。)

Great Gatsby Curveは所得の不平等と世代間の所得の弾力性を示す。

下図で横軸はGini係数で、右へいくほど不平等が大きい。
縦軸は父親の収入が1%上昇するとその子供の予想される収入にどの程度影響するかを示す指標で、上にいくほど親の所得が子供の将来の所得に大きく影響する。
即ち、この数値が高いほど格差が次世代にわたり、固定化しており、社会的流動性が低くなっていることを示す。

米国では1985年から2010年に、右へ、上へ、移動している。

Bloomberg


このような状況で、機会の平等をどうしたら推進していけるのだろうか。

本日の目的は、問題の回答を示すことではなく、今後の議論のための基礎事実を述べることである。
今後議論を進め、解決策を出して欲しい。


Federal ReserveのSurvey of Consumer Finances によると、
米国では上位5%の所得が全体の37%を占める。(1989年の31%から増加)
これに対し、下位の50%、中間の45%のシェアは減少している。

平均所得を見ても、上位5%のみが大きく増加している。

所得ではなく、財産でみると、もっと明らかである。

上位5%の財産は1989年の54%から63%に増え、下位50%は3%から1%に減少、中間の45%も43%から36%に減少している。

上位5%の平均財産は1989年の360万ドルから2013年には680万ドルにほぼ倍増しているが、下位50%の財産は1989年の半分の11千ドルに過ぎず、その1/4は財産ゼロかマイナス(住宅ローンなど)である。 (住宅バブルで増加しつつあったが、バブル崩壊で急減した。)

機会の平等に影響する要素が4つある。

1)子供の発育期に使う金

下位層には社会的セーフティネットが重要だが、予算カットの影響を受ける。
初等教育は米国では市町村ごとのセールスタックスによるため、富裕地区と貧民地区では大きな差が出る。
優秀な教員も富裕地区に行きたがる。

2)高等教育の費用

大学の授業料の高騰で奨学資金ローン残は2004年の2600億ドルから本年は1兆1000億ドルにまで増大。
支払い負担により若い人が高等教育を受ける機会がどんどん減っている。

参考 http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2012/2012aut07web.pdf

3)ファミリービジネス

新しく事業を始めるのは難しくなりつつある。
下位50%層のうち、たった3%だけが事業を行っている。

4)財産相続

上位5%層の財産相続額は平均110万ドル、次の45%の層は183千ドル、残り50%の層の平均は68千ドル。


これらの問題について検討して欲しい。

 

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参考    2013/10/23 米国の政治・経済の問題点 

 


 

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