三菱ケミカル、炭素繊維事業を統合、強化

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三菱樹脂と三菱レイヨンは1月7日、炭素繊維・複合材料事業の強化を目的とし、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業と三菱レイヨンのPAN 系炭素繊維事業を統合すると発表した。

PAN 系炭素繊維事業を行う三菱レイヨンが、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業を会社分割の方法で継承し、2015年4月1日付で統合新組織を発足させる。

三菱ケミカルグループはPAN 系炭素繊維と石炭ピッチ系炭素繊維の両方の技術を持つ世界で唯一の炭素繊維メーカー。

両社は2012年9月に炭素繊維コンポジットプロジェクトを発足させ、共同マーケティングや技術交流などを通じてグループシナジーを追求してきたが、今後、ピッチ系炭素繊維事業に由来する知見をPAN 系炭素繊維の領域に応用し、戦略重点分野である自動車、圧力容器、風力発電翼など産業用途における顧客へのソリューション提案力を強化する。

また、すでにグローバルに展開中のPAN 系炭素繊維・複合材料事業の製造・販売・開発に係る事業インフラを活用し、ピッチ系炭素繊維事業の価値を最大化していく。

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三菱レイヨンのPAN 系炭素繊維事業


炭素繊維トウ

炭素繊維を数千~数万の単位で束ねたもの。クロスに織ったり、一方向に揃えて樹脂を含浸させたり、さまざまな使い方をする。

中間材料(クロス、プリプレグ)

炭素繊維を織ったクロス、炭素繊維を一方向に引き揃えて樹脂を含浸させたUDプリプレグなど、様々な形態の材料を提供している。
釣竿、ラケットなどスポーツ・レジャー用品から、各種工業機器、X線関連の医療機器、土木建築、航空宇宙分野まで、幅広い用途に使用される。

成型加工品

印刷機用ロールなどの一般産業用品、航空機部品製造用ツール材、自動車部品等、成形加工品の製造も行っている。


 
炭素繊維の製造能力は下記の通り。
(トン)

   

能力

   
三菱レイヨン 豊橋 5,400    
大竹 2,700 2011/6稼動  
小計 8,100    
Mitsubishi Rayon Carbon Fiber and Composites Sacramento, CA 2,000 2016年増強
増強後 4,000
1991年 Courtauldsから買収
Grafil, Inc.
に改称
2013年 三レ100%のNewport Adhesives and Compositesと統合し、改称
SGLに生産委託 スコットランド 750    
三菱レイヨン合計 10,850 米増強後 12,850  
SGL Automotive Carbon Fibers 3,000 2015年増強後 9,000 BMWが49%、SGL Technologiesが51%出資


SGL Automotive Carbon Fibersにプレカーサーを供給するMRC-SGL Precursor は、三菱レイヨンが66.66%、SGLが33.34%出資。

2014/5/14     BMW、米で炭素繊維の生産能力を3倍に


三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業

三菱樹脂はピッチ系のなかでも、コールタールを液晶化(メソフェーズ化)し、紡糸・不融化後、高温焼成して製造する、光学的に異方性を示すメソフェーズピッチ系と呼ばれる炭素繊維「ダイアリード®」を製造しており、現在、世界約7割のシェアを誇って いる。(坂出で製造、能力は1,000トン/年)

軽量・高剛性・高熱伝導・ゼロ熱膨張(熱変形がほとんどない)などの特性を活かし、人工衛星、ブレーキ材、工業用ロール、ロボットハンド、大型アンテナ、鉄橋の補強プレートなどさまざまな分野で活躍してい る。

ダイアリード®は、三菱化学の永年にわたる石炭化学の成果。

2000年4月1日に、三菱化学の機能資材カンパニー所管事業の内、アルミ・樹脂複合板、石炭ピッチ系炭素繊維、耐震補強炭素繊維シート、アルミナ繊維、透湿性フィルム、耐熱ラップフィルム事業を三菱化学産資に移管し、同社に統合 した。

三菱ケミカルホールディングスは三菱樹脂をTOBを行って100%取得し、2008年4月1日付けで三菱化学ポリエステルフィルム、三菱化学産資、三菱化学MKV及び三菱化学の機能材料分野の事業も含めて、 三菱樹脂に再編・統合した。

 

三菱グループは2012年9月、炭素繊維コンポジットプロジェクトを発足した。
グループの有する材料・成形加工技術を融合するとともに、これまで築いてきたマーケットチャネルを活かし、用途展開を積極的に進めてきた。

PAN系とピッチ系の特性を生かしたゴルシャフトも発売した。
手元部のフープ層には、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維「ダイアリード®」を用いてつぶれ変形を防ぎ、切り返しのパワーを損なうことなくダウンスイングに移行することができる。
シャフト先端部には三菱レイヨンが開発した速硬化/高靭性プリプレグシート「タフキュア」を採用、当たり負けしない振りぬき感と、心地よいインパクトフィーリングを実現した。

Aldila, Inc.TK Industries㈱チャレンヂを経営統合し、炭素繊維と、それを基材とした中間材から加工品に至るまでの一貫したプロダクトチェーンをさらに強化し、将来の成長分野である自動車、圧力容器、風力発電など、大型産業用途における事業拡大に向け、競争優位なバリューチェーンを構築することとした。

・Aldila, Inc. (米):2012/12 買収、プリプレグ、炭素繊維製ゴルフシャフト、アーチェリー製品の製造販売
・TK Industries GmbH(独):2012/10 買収炭素繊維製多軸ファブリック開発製造
・㈱チャレンジ(
狭山市):2012/11 買収、炭素繊維強化樹脂(CFRP)部品の製造販売


今回
、これを更に進め、統合することとした。
 

 



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