EU、韓国に対する違法漁業国予備指定を解除

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EUの漁業・海事総局は4月21日、韓国に対する「違法、無報告、無規制(IUU)漁業国」の予備指定を解除すると発表した。


EUは2013年11月、韓国の遠洋漁船が西アフリカ海域で違法操業を繰り返したことから、韓国政府には違法操業を罰する体系が整っていないとして、韓国をIUU漁業国に予備指定した。

EUは2008年9月に違法漁業(IUUIllegal, Unreported and Unregulated漁業)を防止、抑止及び廃絶するための「IUU漁業規則」を採択し、2010年1月1日からIUU Regulation を全面的に施行した。

IUU漁業規則は商業漁業に従事する全ての漁船を対象とし、EUへ輸出する全ての水産製品(養殖魚、淡水魚等を除く)について、正当に漁獲されたものであることを漁船の旗国が証明する漁獲証明書の添付が義務付けられ、IUU規則に違反する水産物がEU域内に入域することを防止、抑止及び廃絶することを目的にしている。

2013年11月にEU の海事・漁業担当委員はIUUに違反する国との取引を禁止する計画を発表した。

構造的問題を解決して違法な漁業問題に取り組むとの熱意を示せなかったとして、ギニア、カンボジア、ベリーゼの3国を非協力国に指定した。
これらの3国の漁船が獲った全ての漁業製品をEUが輸入することを禁止し、更にEUの漁船がこれらの国の水域で漁業を行うことを禁止した。


更に、韓国、キュラソー、ガーナの3国に対し、違法な漁業を禁止する国際的な義務を果たしていないとして、イエローカードを渡し、改善の努力がなければ同様のレッドカードが与えられると警告した。

2014年6月にはフィリッピンにもイエローカードを渡した。

EUは2014年6月末にも違法操業国家に指定するかどうかを決定するとしていたが、違法操業を防止する監視システムなどが確実に稼動し、国際規範に見合う操業体制を構築するためにさらに時間が必要だと判断し、最終決定を延期していた。

EUは4月21日の発表で、韓国とフィリッピンについて、法体制を改善し、IUUを防ぐ体制が出来たとみなし、IUUの予備指定を解除した。

一方、タイについては、監視、管理、規制システムに欠陥があるとし、イエローカードを渡した。近いうちに改善の努力がなければレッドカードが与えられる。

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NGOによる調査で、西アフリカ、特にSierra Leone沖で韓国船による違法漁業が行われていたことが分かっている。

韓国最大の水産企業・東遠產業が所有するマグロ・カツオ類のまき網漁船F/V Premier が、2011 年末から2012 年中頃にかけてリベリア共和国の海域において、管轄当局に正当な許可申請を行わないまま、IUU(違法・無報告・無規制)漁業を行っていたことが明らかになった。

IUU漁業国に正式に指定されると、国のイメージに傷がつくだけでなく、韓国で生産、加工した水産物のEUへの輸出が全面禁止されるほか、韓国漁船のEU内への入港もできなくなる。韓国海洋水産部は、IUU漁業国に指定された場合に発生する経済的損失を年間約1億ドルと推計していた。

韓国政府は予備指定国解除に向けて遠洋産業発展法を2度にわたり改正したほか、全ての遠洋漁船に衛星通信漁船管理システム(VMS)を設置し、リアルタイムで監視するなどの取り組みを実施した。

         付記

EUは仮指定に際し、韓国の遠洋漁船の管理システムを問題視した。

韓国政府は2014年4月、衛星を利用した位置追跡技術を持つKTサットにシステム開発を依頼した。 「最短でも開発に半年かかるところだったが、開発担当者10人余りが40日余り徹夜態勢で作業した結果、なんとか納期に間に合った」。

KTサットの衛星位置追跡システムは、釜山市の操業監視センターが全世界で操業する韓国の遠洋漁船約340隻の位置、進行方向、速度などをリアルタイムで把握できるように設計された。遠洋漁船に搭載されたアンテナを通じ、位置データが常時無線通信で衛星に自動的に伝送される仕組み。システムは遠洋漁船とインターネットで24時間結ばれていることになる。

改正遠洋漁業法(Distant Water Fisheries Development  Act)は2015年7月7日施行となるが、全ての違法漁船に対し、違法な魚の没収、漁業権の制限、違法漁業への対応、監視強化、違法行為への厳罰など、厳しい管理を行う。

例えば、重大な違法行為は刑事犯罪とみなし、5年以内の禁固刑か少なくとも5億ウオン(464千ドル)の罰金が課せられる。

改正法では韓国政府は違法漁業が行われている西アフリカで操業する韓国の船団のかなりの部分を買い上げ、スクラップする。

韓国海水部は、インド洋マグロの保存のための国際機構「インド洋まぐろ類委員会(IOTC)」で韓国が保存管理措置関連規定を96%遵守し、加盟国35カ国中1位を記録したと明らかにした。


今回、これらの対策が評価された。

EUはこれより前の2014年10月に Fiji、Panama、Togo、Vanuatu にグリーンカードを渡している。

なお、イエローカードをもらい、EUと交渉しているのは下記各国。
 2013/11  Ghana、Curaçao
 2014/6       Papua New Guinea
    2014/12     Solomon Islands、Tuvalu、Saint Kitts and Nevis、Saint Vincent and the Grenadines 
 2015/4       Thailand

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米国も2013年1月に、韓国漁船が南極水域で実施した違法操業に対する韓国政府の制裁の水準を問題視して「IUU漁業国」に予備指定した。

IUU漁業国に最終指定されれば毎年2億ドル相当の韓国水産物の米国向け輸出が禁止されるほか、韓国漁船の米港湾の利用も禁じられる。

このため、韓国は指定解除に向け、関連法の改正のほか、漁船位置追跡システム(VMS)設置、操業監視センターの運営などを進め、米国と交渉を続けてきた。

この結果、韓国海洋水産部は2015年2月、米海洋大気庁が韓国の違法漁業根絶に向けた改善措置を認め、韓国に対する「IUU漁業国」の予備指定を解除したと発表した。

 

 

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