米レアアース最大手 Molycorp、社債利払い見送り

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レアアースの米最大手 Molycorp は5月1日、3250万ドルに上る社債の利払いを見送ると発表した。
最大供給国である中国の輸出規制の緩和によるレアアースの市況悪化のあおりを受け、資金繰りに窮した。


同社の債務残高は昨年末時点で約1,771百万ドルで、今回、半年に1度実行してきた利払いを見送ることを決定した。

「債務不履行」と認定されるまでは約30日の猶予があり、同社はその間に金融機関などの債権者と債務削減の協議を進め資金繰りにめどをつけるという。
何らかの対応ができなければ、連邦破産法の適用申請などにつながる可能性がある。 

Molycorp はカリフォルニア州Mountain Pass鉱山でレアアースの採掘・生産を行っている。

Mountain Pass鉱山は1949年に発見され、Molybdenum Corporation of Americaが1952年に小規模の生産を開始した。
1962年にカラーTVに使うユウロピウムの需要拡大に対応し、生産を拡大した。
1965年から1995年まで、大規模生産を続け、世界のレアアースの需要の大部分を賄った。

1977年にUnocal が同社を買収、2005年にChevron子会社となった。

1998年に排水問題で分離工程を停止、2002年に環境規制と中国品の低価格攻勢により採鉱を停止した。


2000年代に入ると、中国政府が輸出や生産を制限し、中国の支配力が際立つようになった。
その後、価格が高騰すると、米国やカナダ、オーストラリアを中心に閉鎖した鉱山の再開や新規の開発が過熱した。

2008年にこの鉱山の再開のためMolycorp Minerals LLCが設立され、Chevronから鉱山を買収した。2011年から生産を再開した。

2010/10/5 レアアース、米・豪・カザフなど生産拡大

Molycorpは同鉱山の拡張・近代化計画(Project Phoenix)をたてた。

2012年末の第一期完成時にはMountain Pass設備は世界初の統合レアアースサプライチェーンとなる。
新精製設備で年20,000トンのレアアース酸化物を生産、これに加え、レアアースメタルやサマリウム・コバルト合金ネオジム・鉄・ホウ素(NdFeB) 合金と永久磁石などを供給、'Mine-to-Magnets' 計画を達成するというもの。

Molycorp, Inc. は2012年3月、カナダのレアアース加工大手のNeo Material Technologies Inc.を買収すると発表した。買収金額は13億カナダドル。

Neo Material はレアアース鉱石を高純度に加工する技術を持つ。
買収によりMolycorpは世界最高のレアアース資源と世界最高のレアアース加工技術を統合、川上から川下までを垂直統合したレアアース会社となる。

2012/3/13 米資源会社のMolycorp、カナダのレアアース加工大手を買収


2014年にWTOが中国のレアアース輸出規制を規定違反と認定し、中国は2015年からレアアース輸出枠を撤廃、本年4月には輸出関税を撤廃した。

2014/3/29 WTOパネル、中国のレアアース輸出規制をWTO規定違反と認定
2015/1/7   中国、レアアース輸出枠を撤廃
2015/4/24 中国、レアアース等の輸出関税を撤廃

これを受け、ネオジムやジスプロシウムの5月下旬の価格は4月比で20~30%下がり、2010年以前の水準に戻った。
ネオジムは1キロ66ドル前後、ジスプロシウムは同350ドル前後で、いずれも5年ぶりの安値となっている。



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