ギリシャ支援合意できず

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EUのユーロ圏財務相会合は6月18日、財政危機のギリシャに対し金融支援をするかどうかを協議したが、支援の条件となる改革案で合意できなかった。

EUのトゥスク首脳会議常任議長(大統領)は、6月22日のユーロ圏首脳会議を緊急招集、「ギリシャ情勢を高度な政治的レベルで協議する」とし、首脳間で打開を図る。

EUは2月にギリシャに対する金融支援プログラムの期限を6月末まで延長したが、経済の構造改革を進めなければ支援を実行しない、との条件をつけ 、72億ユーロの融資を凍結していた。
この日の会合でも改革案で合意できず、6月末までに実行するのは難しくなった。

財政危機に直面するギリシャは、6月5日のIMFへの債務返済を月末に先送りした。6月中に期限を迎える4回分の返済計15.5億ユーロは、6月30日にまとめて支払う。

6/5 3.0

億ユーロ

6/12 3.4  
6/16  5.7  
6/19  3.4  
15.5  

更に7月13日にはIMFへの4億5千万ユーロ、7月20日と8月20日にはECBへの各 35億ユーロの返済を控えている。

2015/6/8   ギリシャ、IMFへの6月分債務返済の一本化、月末先送りを要請  


ギリシャ側はEUなどの支援がないと返済できないとしており、IMFのラガルド専務理事は会見で「6月30日に返済がないと、7月1日にはギリシャはデフォルト状態になる」と警告した。「猶予期間や延期はない」としている。

ギリシャの中央銀行は6月17日、「合意に至らなければ、痛みを伴う道のりが始まり、まずデフォルト、最終的にユーロ圏離脱やEU離脱につながる」と警告した。

デフォルトに備えた動きも出始めており、ギリシャの銀行では預金の流出が続き、預金引き出し額の制限など資本規制が敷かれる可能性も指摘される。
英政府はATMなどが停止して旅行者がギリシャに取り残された場合などの対応策を準備し、ドイツ政府も緊急策を協議しているという。

欧州中央銀行(ECB)がデフォルト後もギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を承認し続けるのかという問題もある。

欧州中央銀行(ECB)は2月4日、ギリシャ救済に伴う公約を順守する同国政府の姿勢に懸念が生じたことを理由に挙げ、ギリシャ国債に対する適格担保ルールの適用除外を停止することを決めたと発表した。

担保として差し入れているギリシャ国債は、2月11日をもって適格担保要件を失った。

ギリシャの銀行は今後は金利がそれほど有利でないギリシャ中央銀行のELAでの資金供給に頼るしかなくなる。

ECBはギリシャ中央銀行に対し、最大595億ユーロの緊急資金を国内銀行に供与することを認めたが、ECBにはこれを許可しない権限があり、2週間ごとに手続きを見直すこととなっている。

現在の枠は841.5億ユーロになっているが、ギリシャがデフォルトになればELAを凍結、もしくは枠を縮小する可能性がある。
ギリシャの銀行や企業の破綻につながる。

付記 ECBは6月19日、当面の資金繰りを支えるため、緊急支援枠を17.5億ユーロ拡大し、859億ユーロとすることを決めた。ギリシャ中央銀行は35億ユーロの増額を求めたが、ECBは当面の資金繰りには、その半分でも十分だと判断した。

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交渉の主な対立点は下記の通り。

)年金制度改革

ギリシャの年金は政府が不足額を補填する状態が慢性化しており、EUなどは財政赤字を膨らませる主因とみて、GDPの1%(約18億ユーロ)の支給減額を要求しているが、ギリシャが応じたのは約7千万ユーロの節約にとどまる。

軍や警察では、いまだに50歳代での年金の満額受給を許しているとされる。

他方、ギリシャでは過去5年で大幅な年金減額を実施 し、平均受給額は4割近く減少したとされており、さらなる年金減額は政権の公約違反となる。

ギリシャの財務相は、年金はすでに削減しているとしたうえで、「低所得の年金生活者に大きな不満を生み出す」と述べた。

2)付加価値税

現在は一般税率23%、軽減税率 13%,  6.5% だが、EUはこれを、原則23%とし、食品・医薬品・ホテル代のみ11%とすることを求めている。
簡素な税制に改めれば、毎年GDPの1%の増収が見込めるとしている。

中でも焦点となっているのが電気代の税率で、EUなどは現在は13%の税率を23%に上げるよう提案しているが、ギリシャは低所得者の生活を直撃することから電気代の税率据え置きを強く主張し ている。

なお、ギリシャ危機前の税率は19%、軽減税率 9%,  4.5%であった。

3)軍事費

EU側は年金削減の代替案として、軍事費の削減も提案しているが、ギリシャ側は連立政権維持への配慮から慎重にならざるを得ない。



ギリシャの銀行はこのところ大規模な預金流出に直面している。6月15日~17日にギリシャの銀行から約20億ユーロが流出した。4月末の預金総額は1336億ユーロのため、3日間で約1.5%が流出した。ギリシャ中央銀行によると、2014年10月から2015年4月までの間に約300億ユーロが流出した。

ECBの専務理事は、ギリシャの銀行の営業は6月19日については可能だが、6月22日に関しては分からないとしている。

 

日本経済新聞によると、ギリシャ中央銀行は定額積み立てのように少しずつ金を買い進めており、ギリシャの外貨準備に占める金の割合は65.7%にのぼる。60%を超えるのは世界でも米国やドイツなど9カ国のみで、日本は2.3%にとどまる。

ユーロの下落が鮮明になり始めた20115月から買い始めており、「ユーロを離脱して通貨ドラクマの復帰を念頭に金を保有して一定の信用力を担保しようとしている」という臆測は根強い。

 

 

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