伊藤忠、米シェール事業から撤退

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伊藤忠商事は多額の減損損失を計上した米シェールオイル・ガス事業からの撤退を決めた。

北米での天然ガス価格の今後の回復見通しなどを総合的に判断し、25%出資する合弁会社Samson Resourcesの保有株式を1ドルで売却した。
Samson Resourcesは6月19日に米証券取引委員会に提出した資料で、伊藤忠保有のサムソン株すべてを1ドルで買い戻したと報告した。

既に損失を計上(後記)しているため売却に伴う損益への影響はなく、逆に、税効果の影響で2016年3月期の連結純利益を約330億円押し上げる要因になるという。

伊藤忠では「北米ガス価格の回復見込み、サムソン社の経営環境や今後の開発再開見通し等を総合的に勘案した結果、撤退を決定した」としており、今後のシェールガス・オイル事業への投資については「油ガス価格低下リスクや開発リスクなどの精査を尽くし、厳選して対応していく方針」という。

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伊藤忠は2011年11月24日、Kohlberg Kravis Roberts(KKR)などとともに、私企業としては米国最大の石油開発・生産会社の一つであるSamson Investment Co.を72億ドル(負債込み?)で買収すると発表した。
KKRが60%、伊藤忠が25%、NGP Energy Capital ManagementCrestview Partnersが残り15%を出資する。
伊藤忠はSamsonの25%株式を10.4億米ドルで買収するとしている。

買収完了後はSamson Resourcesに改称する。

Samsonは1971年設立で、米国で1万以上の油田の権益を所有し、そのうち、4000以上を運営している。

近年は非在来型資源権益を競争力のある価格で取得し、石油と天然ガスのバランスのとれた資産を保有しており、今後はこれらの開発を促進して2021年には日産16億立方フィート(天然ガス換算)への生産拡大を計画している。

主なものは以下のガスシェールと油田。

シェール:Bakken、Powder River(ワイオミング州北東、モンタナ州南東)、Green River、
      Cana Woodford、Haynesville/Bossier
油田:Granite Wash(北テキサス)、Cotton Valley(東テキサス)

伊藤忠は長期保有を目的とした戦略的投資としており、同時に Samsonが生産する天然ガスの出資比率に応じた引き取り権(LNG換算年間100万トン:ピーク時)を確保し、米国に持つガストレード会社の販売拡大に加え、米国シェールガスの国際競争力に注目し、将来のアジア向けLNG輸出ビジネスも視野に入れた取り組みを行うとしている。

伊藤忠は、持分権益数量を現在の3万4千バレル/日から2015年迄に7万バレル/日以上に積上げる計画で、今回の買収を通じてこの目標達成を図る。

同時に、非在来型資源開発事業への参画を強化し、オペレーター機能も備えた本案件を北米における天然ガス事業の中核と位置付け、天然ガス・LNGトレード機能の拡充を目指す。

2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samsonを72億ドルで買収へ 

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伊藤忠はSamsonのシェール事業で2013年3月期に300億円弱の減損損失を計上、2014年3月期にも290億円を計上した。
Samsonでは開発資金の効果的使用のため、安定生産が見込まれる既開発地域に集中、選択と集中の観点から未開発地域の再評価を行っている。

更に、2015年3月期に本件で約380億円の損失を計上した。累計では1000億円に達する。
この結果、Samsonに対する持分法投資の残存簿価は約40億円となった。

今回、持株を1ドルで売却し、撤退する。

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これとは別に伊藤忠は2010年10月15日、米国のエネルギー・電力・建設関連複合企業 MDU Resources Group Inc.の子会社で石油天然ガス開発会社のFidelity Exploration & Production Company との間で、米国ワイオミング州Niobraraエリア約88,000エーカーの石油ガス鉱区権益の25%を取得し、シェールオイル開発事業に参画する契約を締結したと発表した。

2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

これについては、その後発表がないが、報道では、前期までに売却済みとされる。

今回のSamson株の売却で伊藤忠は米国シェール事業から完全撤退することになる。

MDU Resources Group 自身も2014年11月にFidelity Exploration & Productionを売却すると発表した。魅力的な投資対象ではあるが、開発に必要な資金が大きすぎるとしている。

この時は売却が成功しなかったが、本年6月7日には再度売りに出した。

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住友商事もタイトオイル(シェールオイル)で2015年3月期に1992億円の損失を計上した。

住友商事は2012年8月、米国の独立系石油ガス開発会社であるDevon Energyがテキサス州Permian Basinで進めているタイトオイル開発プロジェクトに参画する契約を締結した。 

北部地域(約172千エーカー)については、投下資金を回収するほどの生産量が見込めないと判断、Devonと共同で売却する。
売却先、売却額等 詳細は未定だが、資産価値を見直し、固定資産評価損 約1700億円を計上する。

南部地域(約47千エーカー)は現時点では保有継続の予定だが、約300億円の評価損を計上した。


2014/10/1  住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上 




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