米下院、TPA法案を可決するが、関連法案否決で成立せず

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環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に関連し、米下院本会議は6月12日、オバマ米大統領に通商一括交渉権(TPA)を付与する関連法案を二つに分けて議決を行った。

①TPA法案:大統領に通商一括交渉権(TPA)を付与
②TAA法案(Trade Adjustment Assistance Bill ):
自由貿易拡大による失業者対策

米議会上院は5月22日夜の本会議で、①と②を含む大統領貿易促進権限(TPA)法案を賛成多数で可決している。

2015/5/25   米上院、貿易権限法案を可決 

米・政府は、TPAとTAAの抱き合わせでTPP妥結に向けて動いていた。

先ず、②のTAA法案が採決されたが、直前に共和党のリーダーのNancy Pelosiがスピーチを行い、「TAA(への反対)でTPAをスローダウンさせるなら、TAAに反対票を投じる」と述べた。

この結果もあり、法案は否決された。(下院定員 435、欠員 1)

TAA  法案

  共和党 民主党 合計
賛成 86 40 126
反対 158 144 302
棄権 2 4 6
合計 246 188 434

①と②の両方の法案が同時に可決されることが必要十分条件であるため、これで法案は事実上否決されたが、引き続き①のTPA法案の採決が行われた。

TPA 法案

  共和党 民主党 合計
賛成 191 28 219
反対 54 157 211
棄権 1 3 4
合計 246 188 434

賛成した民主党議員たちは、ネット上で強烈に批判されているという。

 

野党・共和党のベイナー下院議長は、TAA法案について再採決を求める動議を出した。議会関係者によると、週明けにも再び採決される可能性がある。 

 

付記

米下院の野党・共和党指導部は6月15日、TAA法案について、6月16日の再採決を先送りし、最長で7月末まで審議できるようにする方針を決めた。
「TPA阻止」の姿勢を取る民主党を短期間で説得するのは困難と判断、16日の再採決を見送ることを決めた。


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TPAへの反対は主に、ミシガン、オハイオ、ペンシルバニア、イリノイ等の生産州選出の民主党下院議員で、NAFTAがアメリカの雇用を相当喪失させたことから、自由貿易協定には反対している。また、為替操作条項等を入れることを求めている。

一般的に自由貿易に賛成する共和党内では、TEA Partyなどが ISD条項(Investor State Dispute Settlement:多国間における企業と政府との賠償を求める紛争の方法を定めた条項)が国家主権を損ねているとして反対している。

TPP交渉に参加している各国と米国との2014年の輸出入合計金額は下記の通りで、既にNAFTAを結んでいるカナダ、メキシコを除くと、日本がダントツである。


 

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