出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意

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出光興産は7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% を取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。
独禁法等の手続きを経て、2016年上期の取得を目指す。

Shellも 同日、1690億円で売却すると発表した。シェル英国法人のAnglo-Saxon Petroleum が持つ1.80%は保有するとしている。

Shell は、売却はDownstream を集約するという戦略によるものとしている。
Shellブランドは引き続き昭和シェルに使用を認める。

出光と昭和シェルはこの株式譲渡を前提に経営統合に向けた協議を進めてきたが、これを加速する。

Shellは昭和シェルに持株売却の意向を伝えるとともに、2014年春に極秘裏に金融機関を通じて出光に昭和シェル株式売却を打診した。
両社は統合の協議を進めたが、2014年12月にこれが明らかになり、
昭和シェルの特約店などからは「業界2位の出光による吸収合併だ。不利益を受けるのではないか」など懸念の声が広がった。 このため、協議は中断した。

2014/12/22 出光興産、昭和シェル買収へ 

本年6月に東燃ゼネラル石油が昭和シェルとの統合に名乗りをあげた。

しびれを切らしたShellは出光に売却することを決めた。

これを受け、昭和シェルも出光との統合を決めた。

昭和シェルの大株主と持株比率は下記の通り。

 The Shell Petroleum Company Limited 33.24%

 今回買収

 The Anglo-Saxon Petroleum (Shell 英国法人) 1.80%

 当面保有継続

 Aramco Overseas Company B.V. 14.96%

 

SaudiAramco はShellから、2004年に10%分m2005年に更に5%分を取得した。

昭和シェルとAramcoの関係を深めて昭和シェルの原油調達能力を高め、競争力を抜本的に強化するのが狙い。
Shell Aramco米国とサウジで共同事業を展開するなど、グローバルな戦略的提携を実施している。

Aramcoは出光と昭和シェルの経営統合を支持している。株保有は継続し、原油供給を続ける。


両社の製油所の概要は下記の通り。

トッパー処理能力(千bbl/d)

 

トッパー処理能力

 当初 高度化法 現状
  昭和四日市石油 四日市 205 255 255
西部石油 山口 120 120 120
東亜石油 京浜

70

70 70
昭和シェル 扇町 120 0
昭和シェル合計 515 445 445
出光興産 北海道 140 160 160
千葉 220 220 200
愛知 160 175 175
徳山 120 0
出光興産 合計 640 555 535

 
昭和四日市石油はコスモ石油の精製能力減に伴い、コスモに石油製品・半製品を供給する。

2015/5/21  コスモ石油、千葉と四日市で精製能力半減 

経産省は残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の2016年度までの改善を求めている。

2014/3/31時点の装備率 改善率
   55%以上    9%以上
   45%以上55%未満    11%以上
   45%未満    13%以上
 
各社の2014/3/31の装備率
JX日鉱日石エネルギー 46.2% 鹿島石油、大阪国際石油精製を含む。
出光興産 51.5%  
コスモ石油 43.4%  
昭和シェル石油 59.4% 東亜石油、昭和四日市石油、西部石油を含む。
東燃ゼネラル石油 35.9% 極東石油を含む。
富士石油 48.3%  
太陽石油 24.6%  


2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制

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出光社長は、「石油の安定供給という社会的使命を全うするには昭和シェル石油がベストパートナー。経営統合で日本のみならず世界の石油業界をリードしていける競争力をもつ総合エネルギー企業を目指す」と語った。

記者会見での両社長の発言は下記の通り。

統合メリット   両社ともすでに製油所を再編するなどしてエネルギー供給構造高度化法への対応にメドをつけており、製油所の統廃合は不要。
物流など供給コストを削減できる。

(両社が保有する製油所は地域的にも重なっておらず、最大のコスト削減の製油所の統廃合は見込めない)  

     
経営統合の形   特約店や社員が活躍できる対等な形での経営統合をめざす
統合までの過程で一時的に(昭和シェルが)関係会社になることはあっても、親子関係になることは全く考えていない
     
ブランド   当面は維持することを基本的な考えとしたい
     
海外事業   昭和シェル単独で海外に出て行くという目標が昔から頭にあった。
海外展開に向けて出光興産と新しい枠組みをつくっていきたい


出光社長は、「供給過剰、過当競争が業界の課題だ。経営統合の後は大手4社体制になるが、これが最終形とは考えづらく、さらなる再編もありうるだろう」と述べた。


なお、これまでの石油業界の変遷は下記の通り。


コスモ石油と東燃ゼネラルは2014年12月19日、下記内容の基本契約書を締結した。

 ・2015年1月に両社で共同事業会社「京葉精製共同事業合同会社」を設立する。
 ・両製油所を結ぶパイプライン敷設を正式合意。
 ・パイプライン完成に先行して両製油所の生産計画を一体的・総合的に立案し、生産効率の向上を目指す。
   また、常圧蒸留装置を含めた設備の最適化についても併せて検討する。
 ・パイプライン完成後、共同事業会社へ精製設備を一元化し、パイプラインを活用することで、年間100億円程度の収益改善を見込む。

2013/10/4 コスモ石油と極東石油工業、千葉製油所の共同事業検討


各社の概況:

  売上高 国内ガソリン
販売シェア
JX 10.9兆円 33.3%
出光 4.6兆円 15.5%
昭和シェル 3.0兆円 16.3%
(出光・昭和シェル) 7.6兆円 31.8%
東燃ゼネラル 3.5兆円 19.8%
コスモ石油 3.0兆円 10.8%

 

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