ロッテ、次男中心の体制に

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ロッテホールディングスは8月17日午前、帝国ホテルで臨時株主総会を開き、創業者の次男の重光昭夫副会長を中心とした体制で経営を続けると確認し 、およそ15分で終了した。

これにより、事実上、韓国と日本ロッテの「ワントップ体制」が固まった。


これまでの経緯  2015/8/1   ロッテの内紛

総会には、経営陣の1人として次男の昭夫副会長が、また、株主として長男の宏之氏が出席した。創業者の武雄名誉会長は欠席した。

会社が提案した議題は次の2つで、いずれも承認された。

 1)コーポレートガバナンスに関する方針の確認

重光昭夫副会長を中心とする現在の経営陣が、安定的な経営体制を確立してコーポレートガバナンス・企業統治を向上させるとともに、透明性の高い経営を徹底することを希望する。

 2)社外取締役の選任

元参議院議員で、帝京大学の教授を務める弁護士の佐々木知子氏を創業以来、初めてとなる社外取締役として選任する。

役員や社員持ち株会が昭夫副会長を支持したとみられる。

創業者一族が対立している問題で、 盧柄容・ロッテ物産社長ら韓国ロッテグループ系列37社の社長は8月4日、ソウルで会議を行った後、「ロッテを率いるリーダーとして、長年にわたり経営能力の検証を受け、成果を出してきた辛東彬会長(昭夫氏)が適任だ」とする声明を発表した。
 「ロッテグループは特定の個人や家族の専有物ではなく、顧客、株主、協力会社、18万人に上る社員と共に歩む企業だ」とも強調した。
 
 ロッテHDの佃孝之社長も同日、東京で韓国メディアとの懇談会を開き、昭夫氏支持を明確にした。

重光宏之氏は以前、ロッテHDの株主総会で取締役の入れ替えを提案するとしていたが、1)の結果を受けてか、提案しなかった模様。

宏之氏は2件の議案に賛成しなかったとし、「父の委任状を持って株主総会に出席し、父も2つの議案に賛成しなかった」と述べた。
「私は株主の権利を持っている。今後経営陣の交代に向け株主総会の招集を求めることも考えていきたい」としている。

昭夫氏は総会の後、「佐々木氏の就任を機に開かれた経営をよりいっそう加速する」とのコメントを出した。

昭夫氏は8月11日の韓国での記者会見で、支配構造改善タスクフォースと企業文化改善委員会の発足を約束した。
タスクフォースは循環出資の解消、持ち株会社体制への転換とそれに伴う実務作業を担う。委員会はこれまで問題視されてきた「軍隊式組織文化」を変えることも重視する。

付記 ロッテの「韓国企業化」を図るため、ホテルロッテの上場を準備している。


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今回の騒動で、韓国ロッテの持ち株会社に当たるホテルロッテの株は日本側がほとんどを握っていることが初めて明らかになり、韓国内で大騒動となっている。

韓国紙は、「韓国で稼いだカネを日本に持っていく」 などと報じている。

長男の宏之氏が記者会見を日本語でおこなったことも問題視された。

ホテルロッテの株は、日本のロッテHDが19.07%、総括会長が代表である日本の複数の「L投資会社」が72.65%、光潤社が5.45%保有するとされる。 

昭夫副会長は11日の記者会見で、「日本のロッテHDの株式は光潤社、社員持ち株会、役員が3分の1ずつ保有している」と説明した。

諸情報から、ロッテの株主と出資比率は下記の通りとみられる。

総括会長が代表を務める資産管理会社「光潤社」が27.65%
社員持ち株会が32%超
残りを武雄名誉会長、長男宏之氏、次男の昭夫副会長(いずれも数%ずつ?、昭夫副会長は1.4%)や長女・辛英子氏、親族、役員など。

「光潤社」の株は総括会長が3%、兄弟が 29%ずつ保有するとされるが、今回の事態を受け、自社株 12%を昭夫氏が譲り受けることにしたとの報道もある。

「L投資会社」については下記の点を明らかにした。

韓国のロッテホテルは1972年から完成まで10億ドルという多額の資金が投資された。
日本のロッテ系列企業多数が共同で出資し、8株主になっている。

2000年代に入り、出資元の企業が事業部門と投資部門を分割した結果、L投資会社が設立された。
12社あるL投資会社はホテルロッテの株式72.65%を保有している。

聯合ニュースによると、7月31日付で昭夫氏が L投資会社12社すべての代表取締役として登記されたことが分かったという。


韓国の現行法によると、ロッテのように相互出資が制限されている企業集団は非上場会社であっても筆頭株主の株式保有状況や役員の構成などを公示することになっているが、外国企業にはこの義務が適用されない。

しかし、韓国公取委は8月に入り、韓国ロッテグループの支配構造の頂点にあるロッテHDと光潤社が日本企業で、筆頭株主や株主構成などが公表されていないため混乱が深まっているとして、韓国ロッテを所有している日本のロッテHDと光潤社 、L投資会社の筆頭株主や出資構造などを把握する方針を固めた。
「方法を模索している」としている。

外国企業が韓国の相互出資制限企業集団(資産規模2兆ウォン:約2124億円以上)を保有している場合、その企業の所有構造を把握できるようにしたい考え。


韓国の崔ギョン煥経済副首相兼企画財政部長官は8月6日、必要に応じて同グループの不透明な支配構造や資金の流れを厳しく調査する方針を示した。

「資産規模で韓国第5位のグループであるロッテが、常識的に理解できない経営権争いを繰り広げていることに、非常に失望している」と述べた。ロッテは争いをやめて不透明な支配構造の改善に努めるべきだとし、「そうしなければ市場が相応の対応を取るだろう」と強調した。

 



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