大同特殊鋼に廃棄物処理法違反容疑で強制捜査

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群馬県は、大同特殊鋼などを廃棄物処理法違反容疑で9月7日に刑事告発、群馬県警は9月11日、同社の名古屋、東京両本社など関係先を家宅捜索した。

大同特殊鋼の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていたが、この有害な廃棄物を「建設資材」として販売した件。

刑事告発と家宅捜査は同社の他に、廃棄物処理の許可なしでこれを処理した大同エコメット(大同の子会社)と佐藤建設工業にも行われた。

スラグは県内で国などが発注した工事225箇所で使われ、93箇所で環境基準を超えるフッ素などが検出された。

交通量が多い国道バイパスなどで使われており、交通への影響で撤去をどうするかが決まっていない。
また、渋川市では49箇所で76万トンが使われており、全部を撤去すると228億円もかかるとされる。

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群馬県は2014年1月、渋川工場から出た「鉄鋼スラグ」を業者に販売する際、運搬費などの名目で販売価格を上回る代金を支払っていたことが廃棄物処理法違反に当たるとみて、渋川工場を立ち入り検査した。

この時点では、同社は、「スラグは商品価値が低く、運搬費などをこちらで負担しないと売れない」とし、「産業廃棄物ではなく、リサイクル商品に当たり法律には違反しない」と主張した。

2012年6月以前、子会社を通じて渋川市内の砕石業者にスラグを1トン100円で販売するとしながら、実際には1トン250円以上を支払う契約も同時に結んでいた。(引き取り手に支払う代金が、本来の金額を上回る取引のことを「逆有償取引」という)

鉄鋼スラグは、鉄鋼を製造する過程で出る副産物で、フッ素や六価クロムなどの有害物質が含まれている。

主に路盤材やセメント材などに再利用されるが、渋川市によると、同社のスラグを再利用した11カ所の施工現場で、環境基準を超えるフッ素などを検出した。

これに対し大同は、「工事した当時は基準内だったはずだ」とした。


大同特殊鋼は特殊鋼専業メーカーで、スラグは以下の工程でできる。

     鐵鋼スラグ協会

その後、関係官庁が調査したところ、下記の結果が出た。

調査対象 フッ素溶出量 フッ素含有量 六価クロム溶出量 六価クロム含有量

基準 0.8mg/l

基準 4,000mg/kg

基準 0.05mg/l

基準 250mg/kg

超過
件数
最大値 超過
件数
最大値 超過
件数
最大値 超過
件数
最大値
渋川市 スラグ 32/38 13 mg/l 35/38 24,000mg/kg 3/38 0.23mg/l - -
土壌 28/38 8.7mg/l 2/38 4,600mg/kg 4/38 0.13mg/l - --
水資源
機構
スラグ 8/8 2.5mg/l 8/8 19,000mg/kg 3/8 0.085mg/l -
土壌 0/6 - - - - - - -
国交省 スラグ 1/6 4.4mg/l - - - - - -
土壌 1/1 2.0mg/l - - - - - -


2014年8月には、国が群馬県長野原町で建設を進める八ッ場ダムで、水没予定地からの立ち退きを求められた住民の移転代替地の整備に、有害物質を含む建設資材が使われていることが分かった。

大同と「逆有償取引」をしていた建設会社が八ッ場ダム関連工事十数件に参加し、大同から引き取ったスラグを天然砕石に混ぜて使っていたという。

調査対象 フッ素溶出量 フッ素含有量
基準値 0.8mg/l 4,000mg/kg
場所1 4.3mg/l 19,000mg/kg
場所2 13 mg/l 20,000mg/kg
場所3 19 mg/l 21,000mg/kg

群馬県は今回、大同はスラグには環境基準を超える有害物質「フッ素」が含まれていると知りながら出荷しており、こうした取引は建設資材を装った廃棄物処理に当たるとして、廃棄物処理に必要な許可を受けていない大同と建設会社に廃棄物処理法違反の疑いがあるとして刑事告発した。

群馬県の環境森林部長は「スラグの使用箇所の解明を進め、環境への影響も監視していく」と話した。

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これに似たケースとしては石原産業のフェロシルト不法投棄事件がある。

同社は酸化チタンを製造しているが、輸入した砂鉄状の鉱物を粉砕して、硫酸法と塩素法でチタンを抽出している。

同社は1969年に、硫酸抽出法で抽出した後の廃硫酸を長年にわたって中和処理せずに伊勢湾に捨てたとして、四日市海上保安部から摘発され、垂れ流した廃硫酸が約1億トンに上がることが認定されて、1980年に津地裁で有罪判決を受けている。

その後は廃硫酸と汚泥は炭酸カルシウムや消石灰で中和し、脱水して、産廃処分場に廃棄していた。
2003年の廃棄量は250~380千トンと膨大な量で、処分費用は1トン9,400円との推定がある。

同社では国際競争力強化策の一環として、1997年に、廃棄物の減量化と酸化チタンの製造コストの低減をはかるため、製造工程から副生する使用済み硫酸を再生利用して副生品を生産・販売する研究開発に着手した。

2001年から土壌埋戻材を「フェロシルト」と命名して販売を開始し、2003年には三重県リサイクル製品利用推進条例に基づく「リサイクル製品」に認定された。

2005年4月までの間に約77万トンのフェロシルトを生産、そのうち約72万トンが販売され、委託業者を通じて東海3県や京都府加茂町など35カ所に埋設された。業者がケナフを植えるための肥料と偽って埋め捨てたケースもある。

2004年11月、大雨によってフェロシルトが流出し、川の水を赤く染めるという事件が発生した。
サンプル検査の過程でフェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。

土壌埋戻材として販売しながら、実際には購入業者には「改質加工費」などの名目で販売価格の約20倍の金額が払われていた。

その後について:

2006/11/13 石原産業フェロシルト不法投棄事件

2012/7/4  フェロシルト不法投棄事件で石原産業元役員らに賠償命令

2014/5/23  石原産業のフェロシルト不法投棄事件の株主訴訟が和解



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