アステラス製薬、米国のバイオテクノロジー企業 Ocata Therapeuticsを買収

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アステラス製薬は11月10日、細胞医療アプローチによる眼科領域での新たなステップとして、米国のバイオテクノロジー企業 Ocata Therapeutics, Inc. を買収する契約を締結したと発表した。

Ocata の発行済みの全ての普通株式を1株当り8.50 米ドルの現金を対価として取得する。
これは、11 月6 日終値に対して79%のプレミアムを加えた価格となり、総額は約379 百万米ドルとなる。

Ocata 社は、眼科領域における細胞医療の研究開発に重点的に取組むバイオテクノロジー企業で、多能性幹細胞から分化細胞を取得する基盤技術と、細胞医療の臨床開発に強みを有している。

最も開発が進んでいるのは、萎縮型加齢黄斑変性及びStargardt 病を対象とした網膜色素上皮(RPE: retinal pigment epithelium)細胞プログラムで、現在、臨床試験段階にある。

網膜色素上皮(RPE: retinal pigment epithelium)細胞は正常な視覚機能及び網膜細胞の生存に重要な役割を持つ。

加齢黄斑変性は網膜にある黄斑の機能が、加齢等の原因により障害される病気で、高齢者の失明原因の一つ。
滲出型と萎縮型があるが、萎縮型は、細胞が加齢で変性し、老廃物が溜まって栄養不足になり、網膜色素上皮が萎縮する。
(加齢黄斑変性は米国で失明原因の第1位で、未だ治療薬が存在しない。)

Stargardt 病は、眼底黄斑部の網膜色素上皮、または網膜深層にポフスチンと言われる黄白色不規則な斑点が蓄積され、黄斑が変性され、萎縮性病変となる。(家族性疾患で若年期から発症する。希少疾患であり、有病率は数万人に1人程度とみられる。)

Ocata 社の手法は、ヒト胚性幹細胞(hES細胞)株から分化誘導したRPE細胞を網膜下に注入移植する治療法で、分裂増殖が停止し最終分化した細胞を用いる。

その他にも、眼科疾患を中心に複数の細胞医療プログラムが研究・前臨床段階にある。

アステラス製薬では、細胞医療のアプローチで先端創薬を実現することにより、アンメットニーズの高い眼科疾患治療に貢献できると考えており、本買収の戦略的意義を以下の通りとしている。

 ・ 眼科領域におけるプレゼンスの確立
 ・ 細胞医療における Ocata 社の世界トップクラスのケイパビリティの獲得により、細胞医療におけるリーディングポジションの確立

 詳細は同社の「Ocata社買収について」参照

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アステラス製薬は2015年5月に「経営計画 2015-2017」を発表した。

そのなかで、重点研究疾患領域として、①アンメットニーズの変化、②最新の研究開発の実行可能性を踏まえ、下記を選定したとしている。

 既存疾患領域:泌尿器、がん、腎疾患、免疫科学、神経科学
 新疾患領域: 筋疾患、眼科

眼科領域のOcata 社を買収する一方、同社は11月11日、皮膚科領域に重点を置くデンマークのLEO Pharmaにグローバル皮膚科事業を譲渡する契約を締結した。

アステラス製薬は本事業譲渡により、競争優位の源泉となる機能へ再投資することで新薬創出力の更なる強化を図る。

譲渡の対象はアトピー性皮膚炎治療剤プロトピック®(日本は除く) と、主にEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域で販売されているにきび・皮膚感染症を対象としたローカル製品から構成されるグローバル皮膚科製品群に関する資産及び関連権利義務で、譲渡対価は 6億7,500万ユーロとなっている。

日本でのプロトピック®については、2010年12月にマルホ株式会社に日本におけるプロモーション活動を委託し、日本における販売権を2014年4月1日から移管している。

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