Pfizerとアイルランドに拠点を置く同業のAllerganの両取締役会は11月23日、満場一致で両社の合併を承認した。

株式交換方式で合併する。
Allergan株主は1株当たり統合会社の11.3株を、Pfizer株主は1株当たり統合会社の1株を受け取る。
実質的に、Pfizerによる1600億ドルでのAllergan 買収となる。

形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業は Allergan plc に統合され、アイルランド法での企業となるが、社名を"Pfizer plc" に改称し、New York Stock Exchangeに上場する。
実務上の本拠はNew Yorkに置く。

Allergan plc は10月29日、Pfizerから事業統合の提案を受け、友好的に予備的交渉を行っているという報道を認めている。

2015/11/12 Pfizer、Allergan と統合交渉 

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Allerganについては上記を参照。

Pfizerはこれまで、M&Aで成長を続けてきた。

2000年2月にWarner Lambert を買収した。

Pfizer と Warner-Lambert は1996年から高脂血症治療薬 Lipitor 開発の partnership を組み、Pfizer は販売権を有していたが、1999年11月にWarner Lambert はAmerican Home Products との友好的対等合併を発表した。
その数時間後、Pfizeは
Lipitor の販売権を失うことを恐れ、Warner Lambertの敵対的買収を発表した。

2007/10/11 高杉良 「挑戦 巨大外資」

Pfizer はWarner-Lambert を吸収後、2003年4月にはPharmacia を吸収合併し、世界の医薬メーカーのトップとなった。

有力な新薬を会社ごと買収して収益を上げる手法は Pfizer Model と呼ばれる。

Pfizer は2009年1月、Pfizerが以前にWarner-Lambert との統合を阻止したWyeth (旧称 American Home Products) を680億ドルで買収すると発表した。

2009/1/27 Pfizer、Wyeth を買収

Pfizer は2015年2月、同業の米 Hospira, Inc.を170億ドルで買収する契約を締結したと発表した。

2015/2/11 Pfizer、米製薬会社 Hospira, Inc. を買収


合併後の企業はPfizerの肺炎球菌ワクチンPrevnar (Wyethが開発) 、Allerganのしわ取り注射剤 Botox といったベストセラー製品を擁し、アルツハイマー病、がん、眼病からリウマチ性関節炎まで幅広い病気に対応する薬品やワクチンを提供する、業界最大の研究開発費を誇る巨大製薬会社となる。

Pfizerの売上高は、リピトールの特許切れなどで減少、2014年にはNovartisにトップを奪われたが、Allerganの買収により、再びトップを取り返す。

2014年の世界の処方薬売上高(億ドル、EvaluatePharma 調べ

Pfizer + Allergan 556
1 Novartis 461
2 Pfizer 445
3 Roche 401
4 Merck & Co 366
5 Sanofi 382
6 J & J 307
7 GSK 303
8 Astrazeneca 257
9 Gilead Science 245
10 AbbVie 199
11 Amgen 193
12 Teva Pharma 175
13 Eli Lilly 163
14 Bayer 163
15 Novo Nordisk 158
16 Boehringer-Ingelheim 134
17 武田薬品工業 130
18 BMS 120
19 Allergan(旧 Actavis) 111

以上 合計 

4,713
その他各社合計 2,717
総計 7,430

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この買収は過去最大の"inversion"(納税拠点の低税率国への移転)」となる。

米国は連邦法人税率が35%だが、アイルランドは12.5%と低く、形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業 を Allergan plc に統合し、アイルランド法での企業となることで、年間で約20億ドルの節税効果があると言われている。

世界一位のNovartis が本社を置くスイスのバーゼルは法人税率が20%強である。

Pfizerは2014年1月にAstraZenecaに買収提案を行った。

Pfizerの経営幹部は、この買収目的の一つを「効果的な租税負担を構築する」こととした。買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するというもの

しかし、AstraZenecaはこの提案を拒否、2014年5月にPfizerは買収断念を発表した。

2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案

租税回避を巡っては、各国が対応策を検討しており、今後はメリットがなくなる可能性がある。

欧州委員会は10月21日、Starbucksがオランダ政府から、Fiat Finance and Tradeがルクセンブルグ政府から、それぞれEUでは違法となる優遇税制を受けていたと判断し、更に、アイルランドによる米 Apple、ルクセンブルクによる米 Amazonへの税優遇などでも正式調査を進めている。

G20は10月8日、ペルーの首都リマで財務相・中央銀行総裁会議を開き、タックスヘイブン(租税回避地)などを使った多国籍企業の税逃れを防ぐ新たなルールを採択した。

2015/10/27 欧州委員会、StarbucksとFiatの税優遇を違法と認定、追加徴税を指示

米財務省は11月19日、米国企業が節税を目的に納税地を国外に移転しにくくするための新たな規則を発表した。

この規則には米国企業が外国事業部門を新たな外国親会社に移転するのを制限する項目があり、2014年9月22日以降にインバージョンを完了させた全企業の将来の取引に適用される。このため、既にインバージョンを終えた後発薬医薬品メーカーのMylanにとって問題となる可能性がある。

2014/7/21  MylanがAbbottのジェネリック事業の一部を買収、本社移転も目的の一つ

既存の米国の税法では、企業は外国企業と合併しない限り米国の税制度を免れないが、新規則はこの部分をさらにてこ入れする。
現行の法律では、合併後の会社に対する米国企業の株主の保有率が80%未満であれば、インバージョンが認められている。

しかし、アイルランド企業のAllergan がPfizerを買収する形をとる今回のインバージョンは、今回の規制の対象外となる可能性が強い。

大統領候補のクリントン前国務長官は、「米国の納税者が貧乏くじを引く(holding the bag)」としてPfizerを強く批判した。

「大統領になれば、米国での成長、イノベーション、雇用に報いる税制改正を行う。米国の税基盤を破壊するInversion の厳重な取り締まりを遅らすわけにはいかない」と述べた。