中国の三一重工、米国での風力発電買収阻止事件で米政府と和解、実質勝利

| コメント(0)

中国の重機械メーカーの三一重工の子会社Ralls Corp.は2012年3月に、オレゴン州の4つの風力発電企業を買収したのに対し、オバマ大統領が2012年9月に、「国の安全保障に関わる」として、風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、売却も認めず、所有権を放棄することを求め、三一重工が理不尽だとして訴えていた事件で、11月4日、三一重工と米国政府の間で全面和解に至った。

三一重工側が訴訟を撤回し、米国政府も大統領令の強制執行を撤回する。

Ralls Corp.は風力発電企業4社を第三者に売却できる。
外国投資委員会(CFIUS)はRallsが買収した他の風力発電事業が国の安全保障上で問題がないことを認め、将来の更なる投資を歓迎する。

実質的には三一重工の勝利である。

経緯は下記の通り。

三一重工の子会社Ralls Corp.は2012年3月に、オレゴン州の4つの風力発電企業(合計発電能力40百万ワット)を買収した。
買収目的は、三一重工の子会社の 三一電機が製造する風力発電タービンで風力発電を行うこととされる。

買収直後に、米海軍が、風力発電の場所が軍用機の訓練の邪魔になるとの懸念を表し、設備を除去するよう求めた。

外国投資委員会(CFIUS)は安全保障を理由にRallの4つの風力発電の建設と操業を止めるよう命じ、すぐに設備を除去することを求めた。

これに対し、Rall側は土地と設備を売りたいと申し出たが、CFTUSは許可なしに売却することを禁じ、その土地での三一重工の製品の使用を禁止した。

オバマ大統領は2012年9月、「国の安全保障に関わる」として、風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、取得した所有権を放棄することを求めた。

これまで中国企業の買収阻止を命じたのは、1990年2 月にGeorge Bush大統領が行ったもので、China National Aero-Technology Import and Export Corp(中国宇宙航空技術輸出入公司)による航空機部品メーカーのMAMCO Manufacturing, Inc.の買収のみ。

2012/10/4  オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止 

三一重工は10月18日、これを不服として、オバマ大統領と米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)を米コロンビア地区連邦地裁に提訴した。

「一枚の禁止令により、2000万ドル以上の直接的な損失が生じ(間接的な損失を含まず)、企業の対外的なイメージも損なわれる。提訴はやむなきことだった。誰も裁判を望んでおらず、当社は潔白を証明するため仕方なく訴訟措置を講じた」

「米国は何の説明もなく、中国の風力発電プロジェクトを無理やり中止させた。中国製の設備の使用を禁じた上、当社が米国人の経営する米国企業に譲渡するのを禁じ、補償すら行わなかった」

2013年10月の一審では三一重工は敗訴したが、2014年7月15日、コロンビア特区連邦上訴合議法廷で、三人の判事が満場一致で、大統領令は多額の資産価値を奪うもので、明確な憲法違反であるとした

その後、話し合いを続け、和解に到った。

コメントする

月別 アーカイブ