ギリシャ、最大のピレウス港を中国に売却

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財政再建策の一環として国有資産の売却を進めるギリシャは4月8日、アテネ近郊にある同国最大のピレウス(Piraeus) 港 の売買契約を中国海運大手の中国遠洋運輸集団(
China COSCO Holding)との間で締結した。

国有財産の売却を担当するHellenic Republic Asset Development Fund の会長とCOSCOのCFOがギリシャ首相とCOSCO会長の見守るなか、調印した。

本年1月に、ピレウス港を管理する会社の67%を368.5百万ユーロで買収するとのCOSCOのオファーをギリシャ政府が受け入れたもの。

ピレウス港の入札にはCOSCOのみが応じた。

応札するとみられていたデンマーク海運コングロマリットのA.P.Moller - Maersk見送った。
同社はギリシャ北部に位置するテッサロニキ港への投資を希望しているとされる。

COSCOは先ず、ピレウス港を管理する会社の株式の51%を280.5百万ユーロで取得し、港湾の整備・開発事業への350百万ユーロの投資に着手、5年後に残りの16%を88百万ユーロで取得し、合計で67%の株主となる。

「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)を進める中国は、ギリシャを「欧州の入り口」として重視しており、ピレウス港を世界規模の海運の要衝にしたい考え。
将来的には軍事的拠点としての活用も視野に開発を進める可能性もあるとみられる。

中国の李克強首相は2015年6月、EU首脳との会談後の記者会見で、「中国はこれまでも、ギリシャが危機を抜け出すための要求に応えてきた。問題解決に建設的な役割を果たしたい」と述べ ている。

今回の調印後、李首相はギリシャ首相を中国に招待した。6月に訪中する予定。

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ギリシャの財政改革案に国営事業の民営化が多数含まれるが、そのなかにはピレウス港とテッサロニキ港がある。

ピレウス港については、当初よりCOSCOが有力候補であった。

ギリシャ政府は2008年にCOSCO との間で、ピレウス港の2号・3号コンテナ埠頭の35年間リース契約を締結し、2010年にCOSCOは正式運営を始めた。
COSCOは2015年に入り、3号埠頭の拡張工事に着手している。

年間の貨物取扱量は、当初の 68万5000 TEU (20フィートコンテナ換算) から2014年には298万7000 TEUに拡大している。3号コンテナ埠頭拡張工事が完工すれば、年間の取扱能力は、現在の370万TEUからさらに620万TEUまで膨らむ。

中国製の製品などをピレウス港に運び、そこから鉄道で中欧や東欧各国に輸送する方針で、2012年11月には、COSCOとHewlett-Packard とギリシャ国営鉄道会社Torainose が製品輸送契約を締結した。

アジア諸国の工場で生産されたHewlett-Packard の製品をピレウス港で陸揚げし、新設の17kmの貨物線で貨物ターミナル駅まで運び、そこからマケドニア、セルビア、ハンガリー、オーストリア、チェコなど東欧や中欧の各地に輸送する。

2015年2月には中国の軍艦が寄港している。

2015/7/15 ギリシャへの中国、ロシアの接近

当初は2015年初めの入札を予定したが、就任したチプラス首相が選挙の公約通り、両港など国有資産売却を見送った。

その後の曲折の結果、ユーロ圏首脳会議は2015年7月13日にギリシャへの金融支援を行うことで大筋合意したが、対応策のなかには、「民営化や資産移管による独立基金で500億ユーロを設定する」が含まれている

2015/7/14 ユーロ圏首脳会議、ギリシャ金融支援で合意 

これを受け、ギリシャ政府は2015年8月、14の地方空港の運営権をドイツの空港運営会社Fraport AGに約1,230百万ユーロで売却することを決めた。

毎年空港の賃貸料として23百万ユーロが支払われる。更に、運営利益の25%が今後40年間ギリシャの民間航空局に支払われる。
Fraportは今後4年間に空港の改善として330百万ユーロの投資を約束しており、最終的に14億ユーロの投資を見込んでいる。

ピレウス港についても入札を実施したもの。

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