JSR・宇部興産・三菱レイヨンのABS事業統合基本合意

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宇部興産、 JSR、三菱レイヨンの3社は5月9日、3社のABS事業の統合で基本合意に達したと発表した。

現在、JSRは完全子会社のテクノポリマーで、宇部興産と三菱レイヨンは折半出資のUMG ABSで事業を行っている。

今後もさらに厳しさを増す国内外のABS樹脂事業を取り巻く環境下で、オペレーションの最適化、製造効率とコスト競争力の確保を目的として、2016年10月31日を目処に契約を締結、2017年10月1日に両社を合併することを目指す。 詳細は今後詰める。

合併で能力は366千トンとなり、第2位の日本A&Lの100千トンを大きく上回る。
しかし、世界最大手の台湾の奇美実業の生産能力は年185万トン、2位の韓国LG化学も年156万トンで、大きく引き離されている。

新会社は国内に3カ所ある工場の生産体制を見直し、コスト減を進めるとともに、高機能品の生産に特化するなどして、海外の巨大メーカーとの差異化を図る。

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テクノポリマー

1996年7月にJSRと三菱化学のABS事業を統合(JSR 60%、三菱 40%) してテクノポリマーがスタートした。
当時、JSRは日本のABSのトップメーカーであり、三菱化学も2番手グループで、統合したテクノポリマーは奇美実業、Bayer、GE(Borg Warnerを買収)に次ぐ世界4位であった。

奇美実業は当時、台湾で100万トンのABS樹脂を生産していたが、三菱化学は奇美に10%の資本参加をし、奇美製品の日本での販売(2万トン程度)を扱っていた。
このため、公取委がこの合併を問題視したため、三菱から、奇美との提携の解消を含めて措置をとるとの返事があり、公取委はこの措置を前提に承認した。

2002年10月、特殊ABS樹脂の業容拡大を目指すテクノポリマーと、コア事業への集中による事業基盤の再構築を進めたい鐘淵化学の意向が一致し、鐘淵化学から超耐熱・耐熱ABS樹脂の営業権を譲り受けた。鐘淵化学は高砂のプラントを他製品に転用した。

なお、2002年の新聞報道では、東レもテクノポリマーへの事業統合参加を検討しているとされたが、実現しなかった。

その後、三菱化学は戦略事業分野への集中的な投資を加速するとともに、事業の集中と選択を推進、2009年3月にテクノポリマーから離脱し、プラントを停止した。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

UMG ABS

1963年に宇部興産 51%、Borg Warner Chemical 49% 出資で宇部サイコンが設立された。
1988年9月にGE PlasticsがBorg Warnerの化学部門を買収し、GE Japanが株主となった。

2002年4月、宇部サイコンと三菱レイヨンがABS事業を統合し、UMG ABS としてスタートした。
この時点では、
宇部興産 42.7%、三菱レイヨン 42.7%、GE 14.6% の出資比率であったが、その後、GEが離脱し、宇部と三菱レイヨンの 50/50JVとなった。

宇部サイコンは宇部に年産110千トン、三菱レイヨンは大竹に同66千トンのABS樹脂設備をもち、合計176千トンと、テクノポリマーに次いで第2位メーカーとなった。

2015年3月期の売上高は下記の通り。
 テクノポリマー  42,662 百万円
 UMG ABS    42,349 百万円


ABS業界の推移は下記の通り。(能力は推定)

2006/10/9 日本のABS業界の変遷


旭化成は水島地区のエチレンセンター集約時の
国内石油化学事業の基盤強化の一環でABSプラントを停止した。

2014/2/27  旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意


日本のABSの需要は下記の通り。輸出は、海外進出の日本企業への供給が多い。

  2000年 2015年 増減
国内 410 230 -180
輸出 184 128 -56

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