EU、Dow とDuPont の合併で調査開始

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EUの欧州委員会は8月11日、Dow Chemical とDuPont の合併計画をめぐり、農薬 (Crop protection) や種子、特定の石油化学製品などの分野で市場の寡占を招く可能性があるとして、合併の是非を見極める 精密調査(in-depth probe)に着手したと発表した 。


両社は2015年12月に対等合併で合意し、2016年7月20日の両社の株主総会でそれぞれ承認を得た。

2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表

通常は、欧州委員会は通知を受けて25就業日に承認を与えるか、または精密調査を始めるかを通知する。

両社は本年6月22日に欧州委に合併計画を提出した。問題点を指摘されたため、7月20日に欧州委の予備的な懸念を解決するため対応策を示したが、同委は深刻な懸念の払拭には不十分だ とみなした。

調査期間は90日で、12月20日までとなっている。

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両社はグローバルに活動しているため、欧州委は他の競争当局、特に米国司法省とブラジルとカナダの競争当局と密接に協力する。

「農家の生活は種子や農薬を安い価格で入手できるかどうかにかかっている。この合併の結果、価格が上がったり、革新的製品が出なくなることがないよう、確認したい」としている。

除草剤や殺虫剤のリーダーで、革新的な製品を市場に出してきた2社が結びつき、世界最大の農薬・種子メーカーが生まれること、特定の石油化学製品の大メーカーが生まれること、既にグローバルに集約されつつある業界で今回の統合が行われることに注目している。

欧州委は以下の点を懸念している。

農薬

両社はともに、多くの作物用の除草剤と殺虫剤に強い製品群を持つ。両社統合により、これら市場での競争が減り、その結果、価格、品質、製品の選択可能性、イノベーションに悪影響が出るのを懸念する。

両社の殺線虫剤や殺菌剤についてもチェックしたい。

合併により、農薬全体でイノベーションが低下するのではないか懸念する。十分なR&Dの能力を持つグローバル企業が少ない業界であり、合併で新しい原体を開発し、上市できる数少ない企業の1社がなくなることになる。

種子

両社はともに新しい種子の品種改良を加速できる「遺伝子編集」技術を開発している。合併後に、競合者にこれら技術をライセンスするインセンティヴが減ったり、競合技術の開発が難しくなるのではと懸念する。

統合会社は幅広い農薬製品を持ち、かつ種子でグローバル市場でのリーダーの一つになり、業界で最大の統合企業となる。両社の農薬と種子の販売が統合された場合、競合企業による農薬と種子のディストリビューターへのアクセスが難しくなるのではないかと懸念する。

石油化学製品(ポリオレフィンとモノマー)

両社はスペシャルティポリオレフィンの強力なサプライヤーであり、この市場で1社がなくなる影響を調査する。

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両社の農薬・種子部門の状況

Dowは農薬が中心で、一方 DuPont は種子が中心となっている。

Dow は幅広い作物を対象にしている。

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