欧州銀行監督機構の欧州の銀行の健全性審査とMonte dei Paschi 銀行の再建策

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7月11日のブログで、BrexitでEUが揺れるなか、経済不振に悩む南欧の各国に対する EU当局の対応が新たな混乱の火種となり、ギリシャ危機のような事態を招く可能性や、各国でEU離脱派が勢力を強める可能性があると述べた。

一つはイタリアの銀行の不良債権問題で、もう一つはスペインとポルトガルのEU財政規律違反問題である。

2016/7/11 EUに新たな混乱の火種

後者のEU財政規律違反問題については、下記の通りとなった。

EUの財務相理事会は7月12日、制裁を科す方針で合意した。最大でGDPの0.2%に当たる額の罰金が科される可能性がある。

しかし、欧州委員会は7月27日、スペインとポルトガルに対する罰金を科さず、規律達成期限を延長することを提案した。
「スペインとポルトガルがこれまでに実施した取り組みや現在の厳しい環境などを踏まえ、欧州委はこの日の会合で罰金の取り消しを提案することで合意した。」

欧州では経済成長が足踏み状態にあるなかで反EU感情が高まっており、制裁措置の発動に消極的になっていると見られる。

欧州委はスペインとポルトガルに財政ルールを達成するよう求める期限も延長。スペインは現行の2016年から2018年まで2年間、ポルトガルは現行の2015年から2016年まで1年間延ばすよう提案した。

財政ルール違反に対する制裁のもうひとつの手段であるEUから両国への補助金の支給停止については、欧州議会との合意が必要になるとの理由から、判断を秋以降に先送りした。

これに対し、EU加盟国は異論を示さない意向とされる。

フランスについては、財政赤字の対GDP比率を3%以内とする期限は2013年であったが、2度延長し、2017年までとしている。

フランスが目標達成できない場合、欧州委員会はフランスから罰金を取るだろうか?

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イタリアの銀行の不良債権問題 は下記の通り。

イタリア大手銀行のBanca Monte dei Paschi di Siena(Monte Paschi)は7月4日、欧州中央銀行(ECB)から不良債権比率を下げるように求める書簡を受け取ったと発表した。不良債権の総額を昨年の469億ユーロから2018年までに約30%削減するように求められた。

イタリア政府は公的資金注入による救済の検討を始めたが、EUが定めた銀行再建ルールが障碍となった。

金融危機を受け、EUでユーロを使う国々は各国でばらばらだった金融行政を一元化する「銀行同盟」を進めた。
銀行の破綻処理のルールも1月から施行し、まず銀行の債券などを持つ投資家に一定の割合の損失を負わせることにし、公的資金の利用を制限する仕組みにした。

 * Bail-in 制度:まず銀行の株主や債券保有者が銀行負債の8%相当の損失を負担する。
---- 従来の Bail-out(外部からの「保釈金」で危機を逃れる)に対し、銀行のStake holders が先ず資金を捻出する。

しかし、イタリアでは銀行の債権者に個人投資家も多いため(個人が銀行債を預金に近い感覚で購入している)、このルールを適用すれば反発を招くおそれがある。 

イタリア政府は欧州委員会に特例を求めているが、欧州委やドイツは、導入したばかりのルールを破ることに難色を示した。

イタリアの銀行の不良債権問題で新しい展開があった。

欧州銀行監督機構(EBA)は7月29日、大手51銀行(EU:50、ノルウェー:1)を対象に実施したストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。

http://storage.eba.europa.eu/documents/10180/1532819/2016-EU-wide-stress-test-Results.pdf

審査は2015年末の資産状況を基に2018年末までの3年間で、大幅な景気悪化などが収益や資本に与える影響を評価した。
51行全体では2,690億ユーロの中核的自己資本が損なわれ、中核的自己資本比率は13.2%から9.4%に低下するとした。

今回の審査では合否判定を行わず、その基準も示されていない。

多額の不良債権が問題となっているイタリアのMonte dei Paschi di Siena(Monte Paschi)は、景気が大幅に悪化した場合、中核的自己資本比率 (Tier 1)が唯一マイナス(-2.44%) で最悪となり、同行の経営基盤の脆弱さが突出した。

他に、Allied Irish が2014年の前回査定で「合格ライン」とされた基準(5.5%)を下回り、7%を維持できない銀行が他に3行ある。

また基準が高い有力銀行で基準ギリギリの銀行も多い。Barclaysは基準(7.5%)を下回る。

銀行名 Threshold
(基準)
2015年 2018年
悪化ケース
基準比
(% point)
Monte dei Paschi Italy 5.5% 12.07% -2.44% -7.94
Allied Irish Ireland 5.5% 13.11% 4.31% -1.19
Raiffeisen Austria 5.5% 10.20% 6.12% +0.62
Bank of Ireland Ireland 5.5% 11.28% 6.15% +0.65
Banco Popular Spain 5.5% 10.20% 6.62% +1.12
以下はグローバルに重要なため、基準が高い銀行で、基準ギリギリの銀行
Unicredit Italy 6.5% 10.38% 7.10% +0.60
Societe Generale France 6.5% 10.91% 7.50% +1.00
Barclays UK 7.5% 11.35% 7.30% -0.20
Dutsche Bank Germany 7.5% 11.11% 7.80% +0.30
BNP Paribas France 7.5% 10.87% 8.51% +1.01
HSBC UK 8.0% 11.87% 8.76% +0.76
  

ストレステストは一定規模以上の銀行に限った。他にポルトガルやギリシャに問題を抱える銀行が多い。

欧州銀行監督機構の幹部は、欧州の銀行システムが抱える不良債権を一掃することに専念する必要があると語った。


Monte dei Paschi は7月29日、この発表の少し前に、資本増強や不良債権売却を柱とする再建計画を発表した。

JPMorgan とイタリアのMediobanca が主導でまとめた案で、まず92億ユーロの不良債権を証券化する。政府の呼びかけで同国の銀行や保険会社が参加した民間投資ファンドが一部を引き受け、残りは既存株主などに売る。

民間投資ファンド Atlante(銀行や保険会社が参画)が16億ユーロ
既存株主が16億ユーロ
その他の投資家が60億ユーロ

付記 Monte dei Paschi は不良債権を簿価の33%で売却することを決めた。

その後、再建策のとりまとめを手掛けたJPMorgan、Mediobanca などの銀行団を引受先に最大50億ユーロの増資を実施する。

引き受け銀行団には上記2行のほか、Goldman Sachs、Credit Suisse、Deutsche Bank、Bank of America Merrill Lynch、Santander、Citigroup の6行が参加を表明している。

増資および不良債権売却計画は年内に完了する見通し。

この再建策とは別に、スイスの金融大手UBS とイタリアの銀行大手Intesa Sanpaolo の元CEOのCorrado Passera 氏が支援の提案を行った。
支援内容は明らかにされていないが、
Monte dei Paschi はこれを拒否した。

欧州中央銀行(ECB)はMonte dei Paschi の再建策を承認したとされるが、実現を懸念する見方もある。



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