インドネシアのMedco Energi 、インドネシアの資源会社を買収:資源ナショナリズムの動き

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インドネシアの石油・ガス開発生産会社のPT Medco Energi Internasional Tbkは9月19日、ConocoPhillipsからインドネシア法人のConocoPhillips Indonesiaを買収する契約を締結した。

ConocoPhillips Indonesiaは南シナ海の石油・ガス田の南ナトゥナ海B鉱区(South Natuna Sea Block B PSC) のオペレータで、権益の40%を保有しており、また石油・ガス田とシンガポールをつなぐパイプライン West Natuna Transpotation System を運営している。


South Natuna Sea Block Bの概要は下記の通り。

権益
ConocoPhillips Indonesia 40%  Operator
国際石油開発帝石(INPEX) 35.0%  1977年に17.5%、1994年に追加取得
Chevron 25.0%
生産量 原油:日量22千bbl
天然ガス:日量253百万cf (販売量) 
LPG:日量9千bbl
油田・ガス田 ベラナック油ガス田では、世界有数規模のFPSOにより2004年12月から原油・コンデンセート、2007年4月からLPGを生産
2006年以降ヒウガス田、クリシ油ガス田、ノースブルットガス田、バワルガス田から生産を開始
2014年4月に同鉱区のサウスブルットガス田で生産を開始
出荷 2001年からシンガポール向けに供給 (West Natuna Transpotation System)
2002年には新たにマレーシア向けのガス販売を開始

West Natuna Transportation SystemSouth Natuna Seaのガス田とシンガポールを結ぶ640kmの海底パイプラインで、年間34億m3 を輸送する。

ConocoPhillips Indonesia がオペレータで、他の権益所有者は Premier Oil とGulf Indonesia Resourcesである。

South Natuna Sea Block B がシンガポールに天然ガスを販売する長期契約を結んでいる。

Medco Energi は今回のConocoPhillips Indonesiaの買収により、South Natuna Sea Block B とWest Natuna Transportation Systemの権益を取得し、それぞれのオペレータとなる。

今回の買収は、インドネシアでの資源ナショナリズムの高まりと、南シナ海の領海の防衛を強化しようとする政府の動きのなかで行われた。
問題の
South Natuna Sea Block B の周辺は石油・ガス資源が豊富で、中国による進出の脅威に晒されている。


なお隣接の South Natuna Sea Block A ( Block Bの北側で、3地区に分かれる)はインドネシアのPremier Oil が中心に開発している。
Premier Oil は1996年にChevronからBlock A PSCの66.7%権益を取得した。

Block A PSC Premier Oil(Operator) 66.7%
Kuwait Foreign Petroleum Exploration 33.3%
Kakap PSC Premier Oil 18.75%
Gulf Indonesia Resources (Operator) 31.25%
Novus 25.00%
Pertamina 10.00%
Singapore Petroleum 15.00%
Tuna Block Premier Oil (Operator) 65%
三井石油開発(MOECO) 20%
GS Energy 15%

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Medco Energi は1980 年に設立され、1994 年には、石油・ガスの探鉱・開発事業を展開するインドネシア企業として初めて、ジャカルタ証券取引所に上場した。

アジアの民間エネルギー会社としては最大手で、インドネシア国内外に様々な石油・ガスの探鉱・開発権益を保有し、年間約2000 万バレルの石油と590億立方フィートのガスを生産 する。

インドネシアでの事業展開は西端のアチェ州から東端のパプア州に及び、国外では現在、米国、北アフリカ、中東、東南アジアで事業を展開し、さらに拡大を続けている。

2007年8月に三菱商事が3億5200万米ドルを投じて、Medco Energi の50.7% を持つ Encore Energy(シンガポール法人)の39.4%の株式を取得し 、間接的に Medco Energi に19.97%の出資をしている。
Medco Energi への資本参加及び戦略的提携関係の構築を通じて、探鉱・開発事業のポートフォリオ拡大を図るとした。

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資源ナショナリズムの一環として、Medco Energi は2016年6月に、インドネシア・スンバワ島にバツ・ヒジャウ銅金鉱山を含む鉱区を保有するPT Newmont Nusa Tenggaraを買収した。

同社の発表文のタイトルは、Medco Energi Leads "Indonesia, Inc." to Bring Back Indonesia's Strategic Assets from Newmont (インドネシアの戦略資産を取り戻すべく、㈱インドネシアを主導)としている。

Batu Hijau鉱山は南部の小スンダ列島(Nusa Tenggara)のスンバワ島(Sumbawa)南西部にある銅・金鉱山で、1990年に鉱床が発見され、2000年に生産が開始されている。

PT Newmont Nusa Tenggaraには米国の産金大手Newmont Mining と、日本企業連合 Nusa Tenggara Mining Corporation of Japan などが出資していた。

Newmont Miningと日本連合は2016年6月30日にNewmont Nusa Tenggaraの権益を、インドネシアの銀行家が三大銀行から融資を受けて設立した投資会社 PT Amman Mineral Internasional に売却した。他の2株主も売却した。
Medco Energi は同日、Amman Mineral のcontrolling stake(支配権)を取得したと発表した。

従来の株主 現在の株主
Nusa Tenggara Partnership B.V 56.0% Amman Mineral
(Medco 主導)
82.2%
    Newmont Mining (31.5%)
Nusa Tenggara Mining
住友商事 18.20%
住友金属鉱山 3.50%
三菱マテリアル 1.75%
古河機械金属 1.05%
(24.5%)
PT Multi Daerah Bersaing 24.0%
PT Indonesia Masbaga Investama 2.2%
PT Pukuafu Indah 17.8% Pukuafu Indah 17.8%


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2016年6月には、BHP Billiton がKalimantanで石炭を採掘する IndoMet Coal の持分75%をパートナーで残り25%を出資するPT Alam Tri Abadi に売却している。


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