METI、「未来志向型の取引慣行」を提案

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世耕経産大臣は9月15日、経団連と自動車工業会との懇談会で、「未来志向型の取引慣行に向けて」を発表した。

経団連に対して、「日本経済を持続的な成長軌道に乗せるには中小企業の取引条件改善が必要だ」と協力を要請、自動車工業会に対しては、自動車産業の適正取引の推進のための自主行動計画の策定と付加価値向上のための先進的な取り組みの推進を要請した。

日本商工会議所との会談では、「公正取引委員会とも連携し、下請け取引の適正化に徹底的に取り組む」と述べた。

「未来志向型の取引慣行に向けて」の概要は下記の通りで、自動車業界などを念頭に、下請けに対して「一律 5%の値下げ」等を要請する商慣習を改めるよう求めるもの。

具体的には、「下請法」の運用基準を改正し、下請けに一律の割合で値下げ要求したり、金型の保管費用を押しつけたりするケースを違反事例として公正取引委員会に提案する。

来年の春闘をにらみ、中小企業が賃上げしやすい環境を整える狙いとみられる。

大企業のうち2015年に賃上げした割合は89%にのぼる一方、中小企業は63%に過ぎない。個人消費の底上げには中小企業の賃上げが効果的である。
特に、自動車産業の場合、部品の一律値下げ要請(強制)が賃上げを阻害している。

現在でも、取引主体(売り手と買い手)の自主的な判断で取引が行われていない場合は、「不公正な取引方法」で独禁法違反である。政府が賃上げを要請している現在において、最低の賃上げも出来ない下請けに値下げを要求するのは、本来、独禁法違反である。

本ブログでは以前に、 下記のように、自動車メーカーによる部品価格値下げ要求を公取委が問題視しないことを批判した。

本来、公取委が経産省の反対を押し切ってでも摘発すべきことを、経産省の側から公取委に提案するのは面白い。

公取委は売り手側のカルテルは徹底的に取り締まるが、買い手側の値上げ阻止、値下げ要求の行動はカルテルでない限り、問題としない。

自動車メーカーによる部品価格の値下げ要求が一つの例である。

公取委の「不公正な取引方法」の1つに下記を挙げている。カルテルでなくても、違反である。

自由な競争の基盤を侵害するおそれがあるような行為で、大企業がその優越した地位を利用して、取引の相手方に無理な要求を押し付ける行為 。

この行為の形態から直ちに違法となるのではなく、それが不当な場合(公正な競争を阻害するおそれがあるとき)に違法とな る。

「公正な競争を阻害するおそれ」の例に、
取引主体の自主的な判断で取引が行われていないこと(自由競争基盤の侵害)により、競争秩序に悪影響を及ぼす行為 。

自動車メーカーの定期的な値下げ要求に対し、低賃金の弱小部品メーカーが自主的判断で常時値下げに応じていたとは考えられない。

「法的解釈」からは明らかに違反と思われるが、どうして放置しているのだろうか。

公取委も、まさか、「申告がないから自主的判断で値下げに応じていると思っていた」とは言わないだろう。
そんな申告をしたら、切られるのは明らかで、出来る筈がない。

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