出光販売店の具申書

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出光興産によるShellからの昭和シェル株式の購入とその後の出光・昭和シェルの統合は難航している。

出光は2016年9月7日に、公取委審査の遅れから、昭和シェル株式の譲り受けは2016年10月~11月とすること、経営統合のスケデュールは、2017年4月1日のままであることを発表した。

しかし公取委のOKが出ても、出光創業家の反対で計画通りの昭和シェル株式の購入は難しい状況である。

出光経営陣は市場外で Shell 所有の昭和シェル株 35%のうち 33.3%を1株あたり 1,350円で買い取る計画であった。

しかし、創業家が市場で昭和シェル株を40万株(発行済み株式の0.1%)を購入したため、これを合わせると出光側の保有割合が3分の1を超えることになり、TOBの義務が生じ、Shell のみから市場外で株を購入することが出来なくなる。
TOBの場合、多数株主が応じるとみられ、買収金額は膨れ上がる。

報道では、会社側はShellからの購入株数を減らす交渉をしているとされるが、創業家側は更なる買い増しも示唆しており、見通しがつかない状況にある。
創業家側は話し合いさえ拒否していると報道されている。

2016/8/5 出光創業家、合併阻止へ強攻策

Shellから昭和シェル株を買ったとしても、臨時株主総会で合併に必要な株主の「3分の2以上」の賛成を得るのも難しい。

昭和シェルは、合併が実現せず、昭和シェルが出光の関連会社にとどまることを恐れ、出光に対し、2017年4月の合併を確約するよう求めていると報道されている。


この状況を受け、9月14日に出光の一部地域の販売店が創業家と出光興産経営陣へ再度話し合いを進めるよう促す具申書を送付した。

業界再編については「かねてより渇望するところ」とし、今回の合併案を「出光精神溢れる壮挙」としている。
創業家と経営陣の「欧米流の主張合戦」を憂慮し、「出光精神のもと大同団結してこの難局を打開されんことを衷心より願う」としている。

この動きが他の出光販売店へ広がっていると報道されている。

創業家側がどう対応するか、注目される。

要旨は次のとおり。

今般の創業家と出光興産経営陣との経営を巡る一連の報道を心より憂慮している。

私どもが誇りとし、守ってきた「出光」の名が巷間にて醜聞として流れ、今まさに地に堕ちようとしている。慙愧に耐えない。

佐三店主が大切にしていた和の精神・互譲互助の精神、そして世のためにことをなすという志は今もなお出光大家族全員の基本的な精神であると信じている。

欧米流の主張合戦には違和感を覚えざるを得ない。双方、「日本人にかえれ」という佐三店主の言葉を胸深く刻み込み、出光精神のもと大同団結してこの難局を打開されんことを衷心より願う。


石油業界の構造的な過当競争体質と需要の縮小傾向が続く中、廃業や撤退を余儀なくされ、会員数も徐々に減少しつつある。

そのような中、今回の業界再編による市場の正常化は、かねてより渇望するところであった。

時の流れが不可逆である以上、創業の精神を守ることは大切だが創業時に戻ることは許されない。精神を守りつつ、時代に即した変化を成し遂げる勇気が不可欠だ。

今回の業界再編の主体的な取り組みは近年まれにみる痛快事であり、出光精神溢れる壮挙として評価すべきと考えている。

今回の再編により、出光ブランドが毀損することは望むところではない。その点については会員の総意として要望した。

出光大家族の一員であるという誇りを以て、そして出光を心より愛する日本人の一人としてこの意見を具申する。


なお、9月22日付けの日経によると、出光の販売店が加盟する「全国出光会」が9月26日の理事会で出光と昭和シェルの合併に賛成の立場を確認し、創業者側に伝えるという。

付記 販売店の動きを察知した創業家は9月23日付で合併反対の意思を示す書簡を全国の販売店各社に送付し、かたくなな姿勢を崩していない。

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