武田薬品、がん治療薬開発で英 Crescendo と提携

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武田薬品は10月11日、がん領域における強力で非常に特徴的な抗体薬物複合体のHumabody® 製剤での創出・開発を行うバイオ医薬品会社の英国のCrescendo Biologics Limited との間で、この技術を使ったがん治療薬の創製、開発および販売に関して、グローバルでの戦略的提携およびライセンス契約を締結した。

Crescendoは今後、独自の遺伝子改変プラットフォームと工学的専門性を活かし、武田薬品が選定した複数の標的に対するHumabody抗体薬物複合体およびがん免疫調節薬を創製するとともに、その設計最適化を行う。


武田薬品は契約一時金、出資金、研究費、前臨床開発費として、最大で合計36百万ドルを支払い、本提携に伴うHumabody製剤の開発権と販売権を取得する。
Crescendoは今後、臨床開発、承認申請、販売の各段階において、最大で合計754百万ドルを受け取る権利とともに、武田薬品から売上に応じたロイヤリティを受け取る権利を有する。

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抗体医薬品はがん細胞の抗原にだけ結合し、がん細胞を死滅させる。(正常な細胞にはほとんど影響を与えない。)

一般的な抗体は、2本の軽鎖と2本の重鎖により構成され、軽鎖はVL、CL の2つ、重鎖はVH、CH1、CH2、CH3 の4つのドメインからできている。(下の左図)(上のマンガでもそうなっている)

重鎖はもう一つの重鎖と一緒になってY字型をした抗体の基幹部分を形成する。これに2つの小さな軽鎖が結合し、各腕の先に抗原結合部位を形成する。
なお、ラクダの抗体の中には、完全に軽鎖を伴わずに抗原結合部位を形成している重鎖抗体がある。(右図の本体)

これに対し、Humabody®(右図の右上)は、分子サイズが極めて小さく活性の高い新規タンパク製剤で、完全ヒト型のVH ドメインをベースにしている。



Humabody®は特許取得済の独自の遺伝子改変マウス(TKOマウス)の生体内でヒト型VHドメインをもつ重鎖抗体をつくり、それから作成する。

Humabodyは、モノクローナル抗体と異なり、費用対効果の高い小分子製剤であることのほか、新規の二重/多重特異性製剤を迅速に作製できる利点がある。
他の薬剤や
放射性同位元素との組み合わせもできる。

Humabody抗体薬物複合体は、均一で部位特異的なリンカーと毒性ペイロードを用いて作製されているため、特異性が高く、標準的な抗体薬物複合体と比べて毒性プロファイルが優れている。

分子サイズが非常に小さく、二重/多重特異性を持たせることや半減期を調節することが可能であることから、高用量で短期集中的に治療する"high dose, hit hard and leave"手法により、標準的な抗体薬物複合体よりも優れた治療指数をもたらす。



Crescendoは、独自開発あるいは戦略的パートナーシップにより、Humabody抗体薬物複合体および多重特異性がん免疫調節薬などの新規性の高い特徴的な新薬のパイプラインを構築している。

設計をカスタマイズすることにより、チェックポイント阻害などの複数の機序を標的にし、免疫賦活化経路を活性化するとともに、抗原提示を促進し、免疫抑制的な腫瘍微小環境を解除するような新たな多重特異性がん免疫調節薬の研究開発も行っている。


Crescendoは英国ケンブリッジを拠点とし、Sofinnova Partners、Imperial Innovations、Astellas Venture Management、EMBL Ventures社などの優良投資家からの出資を受けている。

Astellas Venture Managementはアステラス製薬が2006年に、創薬技術、製品種子、技術種子を保有するバイオベンチャーへの投資活動を一元管理する会社として、米国に設立した。

2014年12月にCrescendoに出資した。


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