OPEC、減産で合意

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OPECは9月28日、アルジェリアの首都アルジェで臨時総会を開き、加盟14カ国の原油生産量を日量3250万~3300万バレルに制限することで合意した。
(当初は非公式会合であったが、加盟国が協調に前向きに傾いたとみて会合を臨時総会に格上げした。)

8月時点の産油量は3,324万バレルであり、減産となる。イランのザンギャネ石油相は、「日量70万バレル程度の減産」が決定されたとしている。

会合前にはイランとサウジの隔たりが大きく、合意は難しいと見られていた。

しかし、会合に参加を予定していた非加盟国のロシアがOPEC内部の足並みの乱れを理由に出席を見送ったことも、加盟国間の結束を後押しした。

OPECは今後、ロシアなど非加盟国と協議し、原油市場の需給の安定に向け協力を求める。

この後、加盟国ごとの生産量の上限を調整し、ことし11月に開く総会で正式に決定する方針だが、各国が実際に折り合えるかどうかが焦点となる。

加盟国の中では、イランが2016年1月の米欧の経済制裁の解除(2015年7月に合意)以降、制裁前の水準に回復するまで増産を続ける方針である。

2015/7/25 イラン、制裁解除で原油の輸出、生産を拡大へ

政情不安によって生産量が一時的に落ち込んだリビアやナイジェリアも生産量の回復を目指している。

今回の合意を巡り、サウジはイランに対し譲歩したとされる。リビアとナイジェリアについても「柔軟に対応する」としており、例外措置を認める模様で、減産のかなりの部分をサウジが担う必要が出てくる。


付記

プーチン大統領は10月10日、イスタンブールでの「世界エネルギー会議」で講演し、「OPECの減産に加わる用意がある」と表明し、ロシアが増産の凍結または減産する可能性があることを示唆した。OPECが11月30日に開く総会で減産について正式に合意することを「期待している」と述べ、「OPECの決定を支援する」と説明した。

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OPECが減産で合意するのは、2008年12月以来、およそ7年9か月ぶりである。

OPECは2008年12月17日、 「11カ国の9月の生産量 2,904.5万バレルから420万バレル をカットする」と発表した。生産目標は2,484.5万バレルとなる。
(国別の生産枠は明らかでない)

2008/12/18 OPEC 大幅減産決定

その後は、2009年3月15日に、追加減産を見送り、「世界景気低迷に配慮し、生産枠順守を優先」とした。

2011年12月の総会で、2012年1月以降の生産枠を、イラクを含む加盟12カ国の生産枠を日量30,000千バレルとすることで合意した。
ほぼ現状の生産量に即した水準で、サウジアラビアの意向に沿った形となった。

2012/7/2 OPEC、生産枠据え置き

OPEC生産枠の推移は下記の通り。(千バレル/日)

2007/2 2007/11 2008/1 2008/9 2008/11 2009/1 2012/1
Algeria 794 1,357 1,357 1,357    1,286






Iraq
 含まず

Iraq含む
Iran 3,788 3,817 3,817 3,817    3,618
Kuwait 2,065 2,531 2,531 2,531    2,399
Libya 1,371 1,712 1,712 1,712    1,623
Nigeria 2,123 2,163 2,163 2,163    2,050
Qatar 663 828 828 828     785
Saudi 8,399 8,943 8,943 8,943    8,477
UAE 2,257 2,567 2,567 2,567    2,433
Venezuela 2,970 2,470 2,470 2,470    2,341
Angola     ー     ー 1,900 1,900    1,801
Equador     ー     ー 520 520     493
Iraq (ー) (ー) (ー) (ー) (ー) (ー)
Indonesia 1,370 865 865

離  脱

Total 25,800 27,253 29,673 28,808   27,300 24,845 30,000
(増減) (-500) (1,450) 2,420 〔-865〕   (-1,500)

OPECは2014年11月の総会で、北米のシェールオイルに対抗するため、シェア確保を優先する戦略に転換した。

サウジの石油鉱物資源相前回のOPEC総会で、「生産制限はOPECの利益にならない。価格が20ドルになろうが、40ドルで、50ドル、60ドルでも、無関係だ」と述べ、生産量維持を他のメンバーに納得させたという。

インタビューでは、「低コストのメーカーが減産し、高コストのメーカーが増産するというのはリーズナブルでなく、間違った考えだ。サウジが減産すれば、サウジのシェアはどうなる? ロシアやブラジルや米国のシェールオイルがシェアを奪うこととなる」と述べ、OPECのシェアを奪う非OPECの高コスト石油に長期的ダメージを与えるとの考えを示した。

2014/12/27  サウジ Ali al-Naimi 石油鉱物資源相の発言

原油安が響き、サウジの2016年予算では、財政赤字が3262億リアル(日本円で10兆4000億円)を上回った。

しかし、サウジアラビアなどペルシャ湾岸国は、全加盟国に加えOPEC非加盟の産油国の一部も協調しない限り減産を拒む姿勢を示した。

赤字の補填について、サウジアラビア政府は、2016年の歳出の削減と一部国有組織の段階的民営化のほか、下記の諸案を検討している。

1) 国債の発行や対外資産の取り崩し
2) 付加価値税の導入
3) タバコやソフトドリンクへの増税
4) 今後5年間で光熱費や水道料金などに投入されている巨額な補助金の見直し

5) 石油化学原料も12月29日から大幅に値上げされた。

2016/1/4  サウジアラビア 10兆円超の赤字予算、石化原料も値上げ

今回の発表を受け、原油価格は上がったが、OPECのシェアが今や下がっていること、米国でシェールが直ちに増産に入ることなどから、大幅な値上げにはならないと見られている。

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なお、2016年7月1日付けで、OPECを離脱していたガボンが再加盟し、OPECメンバーは14カ国となっている。

  加   盟

離脱 再加盟
'60 '61 '62 '67 '69 '71 '73 '75 '07
イラク
イラン
クウェート
サウジアラビア
ベネズエラ
カタール
インドネシア '09 '15
リビア
アラブ首長国連邦
アルジェリア
ナイジェリア
エクアドル '93 '07
ガボン '94 '16
アンゴラ
加盟国 14 -3 +3

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