米財務省、外国為替報告書で前回4月に続き日本を「監視対象」に指定

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米財務省は10月14日、主要貿易相手国の通貨政策を分析した外国為替報告書を発表した。

発表文

報告書 Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States

日本のほか中国、韓国、台湾、ドイツが前回に続き2回連続で為替操作「監視リスト」に指定され、今回は新たにスイスも加わった。
(3つの基準のうち、2つ以上で超えた国が指定される。中国は、今回は1つしか基準を超えていないが、
1度指定されれば、次回の報告書でも自動的に指定される。

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オバマ大統領は2月24日、2015年貿易円滑化・貿易履行強制法案に署名し、法を成立させた。

これはアンチダンピング法、相殺関税法および貿易救済法などを強化したものだが、上院の審議で為替操作国に対する措置が盛り込まれた。

第701条「米国の主要貿易相手国との為替レートおよび経済政策の取り極めの促進」に次の規定がある。

重大な対米貿易黒字実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った米国の主要貿易相手国については、マクロ経済および為替政策に関する高度な分析を行い、財務長官はこの法律制定から90日以内に、この分析で使用した諸要因を公表する。

大統領は財務長官を通して、(3つの条件を満たす)対象国と高度な二国間取り極めを開始する。

「高度な二国間取り極め」は、
 (i)当該国通貨の過小評価、大幅な対米貿易および実質的な経常黒字の要因に対処するための政策の実行を当該国に促し、
 (ii)通貨の過小評価と大幅黒字に対する米国の懸念を表明し、
 (iii)当該国が適切な政策を採用しなかった場合は、大統領が取り得る行動を当該国に忠告し、
 (iv)通貨の過小評価と大幅黒字に対処する具体的な行動を伴う計画を作成する、ために行われる。

 (iii)の「大統領が取り得る行動」は次のひとつ以上の行動と規定されている。

(i)海外民間投資公社(OPIC)による当該国に対する新規融資等の禁止、
(ii)連邦政府による当該国からの財・サービスの調達・契約締結の禁止、
(iii)IMF米国代表理事による当該国のマクロ経済および為替政策の厳格な監視および公式協議の要求、
(iv)当該国との二国間または地域間貿易協定の締結または交渉参加の是非の検討。

米財務省は上記②の重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った貿易相手国の分析に関し、次の基準で選ぶこととした。

重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上
実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上
外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入

米財務省は4月29日、主な貿易相手国・地域の為替政策に関する半年に一度の報告書を発表した。3つの条件を満たす国はなかった。

そのなかで、通貨を意図的に安く誘導する為替操作への監視を強化するため、2つの条件を満たす日本、中国、韓国、台湾、ドイツの5つの国・地域を新たに設ける「監視リスト」の対象にし、動向を詳しく分析し監視していくとした。

2016/5/2 米、日本や中国などを為替操作「監視リスト」に


今回はこれに続くもので、今回も3つの条件をみたす国はなかった。

前回と今回の各国のまとめは下記の通り。(今回」は2016年上期又は過去1年、「前回」は前回報告分)

は基準超過、
は基準内で、問題なし
対米貿易黒字 経常黒字
GDP比
net 外貨購入 GDP比
億ドル
中国 今回 200億ドル超 3,560  3%未満 2.0% ー (netで外貨売却)
前回 200億ドル超 3,657  3%超 3.1% ー (netで外貨売却)
日本 今回 200億ドル超 676

 3%超

3.8%
前回 200億ドル超 686

 3%超

3.3%
韓国 今回 200億ドル超 210  3%超 8.3% ー (netで外貨売却)
前回 200億ドル超 283  3%超 7.7% 0.2% (非継続)
台湾 今回 200億ドル未満 136  3%超 14.6% 購入継続
前回 200億ドル未満 149  3%超 14.6% 2.4% (継続)
ドイツ 今回 200億ドル超  3%超 9.4% ユーロのため無関係
前回 200億ドル超 742  3%超 8.5%
スイス 今回 200億ドル未満  3%超 11.4% 1年で600億ドル購入
前回

調査対象外


中国は今回は1つしか基準を超えていないため、本来は問題なしだが、前回
指定されたため、自動的に指定された。
スイスは前回は検討対象に入っていなかったが、米国との取引が増えたため、検討対象となった。

各国のポイントは次のとおり。

中国

対米黒字が大きい。
経常黒字は、サービスでの大幅赤字と、商品での黒字の減で、GDP比3%未満となった。

外為市場介入は、中国及び世界経済に悪影響を与える人民元の急速な値下がりを防止するためのもの。
交換比率の管理と目標の透明性と、切り下げをしないというG20のコミットを守ることが、中国の外為体制の信頼性を高める。

日本

対米黒字は大きく、経常黒字GDP比も2011年来の最高レベル。
昨年円高になったが、4年間介入をしていない。

韓国

対米黒字は大きく、経常黒字GDP比も高い。
従来とは異なり、この1年でウォン安に対抗するため外為市場に介入した。

介入を異常な取引状態の場合のみに限定すること、外為操作の透明性を高めることと、国内消費を支える手段をとることを求める。

台湾

経常黒字GDP比は高く、継続して外貨購入を行っている。

ドイツ

対米黒字は大きく、経常黒字GDP比も高い。経常黒字の額は世界最大。
需要と投資を増やす財政政策をとるべきだ。

スイス

対米貿易黒字が増えたため、報告に加えた。

経常黒字は大きく、この1年、多額の外貨購入を行った。対米黒字は大きくない。

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