出光興産、シェルから昭和シェル株式取得

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出光興産は12月19日、公取委の承認を受け、シェルから昭和シェル株式 31.3% を158,978百万円(1株当たり1,350円)で取得した。

当初、33.3%を169,103百万円(1株当たり1,350円)で取得すると発表していたが、出光興産と昭和シェル石油の合併に反対している出光創業家が昭和シェル株式を0.1%強を取得したと表明しており、出光興産の昭和シェル株式購入はこれを合わせると 1/3 を超えることとなり、TOBが必要となる。

2016/8/5 出光創業家、合併阻止へ強攻策 

今回、これを避けるため、購入株数を減らした。

これで出光興産は昭和シェルの親会社となったが、当初の目的の合併は、親会社の反対で見通しがつかないままである。(出光興産と昭和シェルは10月13日、2017年4月1日に予定した統合を延期することを決めた。)

創業家側は出光興産の議決権の33.92%を握っており、総会決議で拒否権を持つ。

日章興産 * 16.95%
出光文化福祉財団 7.75%
出光美術館 5.00%
(小計) (29.70%)
名誉会長 * 1.21%
長男 * 1.51%
次男 * 1.51%
合計 33.92%

創業家側は8月8日、上記*の共同保有の届出を行った。21.18%となる。


出光興産の創業家の反対を受け、出光興産と昭和シェル石油の合併の件は頓挫しているが、両社は先行して資本・業務提携する調整に入ったと報じられた。

互いに2割前後の株式を持ち合い、製油所や石油製品の物流などの一体運営を始めるというものである。

しかし、合併に反対する出光創業家を刺激する恐れがあるうえ、出光が自ら出資比率を下げることに対し、「自社の利益を損ない、役員の責任が法的に問われる」と社内から問題視する指摘が出たため、断念した。

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相互出資案は12月7日付けの日本経済新聞が伝えた。

両社は合併に向け、公正取引委員会による審査を受けているが、公取委からの承認を得た後、下記により、資本業務提携を行う。

出光はRoyal Dutch Shell から33.24%の昭和シェル株を取得する。

しかし、このうち8%超の株式を信託銀行に預けることで、議決権ベースの出資比率を25%未満に抑える。

一方、昭シェルは2割程度の出光株を取得する。
取得方法など詳細は今後検討する。(市場での取得、出光による第三者割当増資の引き受けなど)

具体例は下記の通り。


合併は株主総会の決議案件で、33.92%の出光株を持つ創業家が反対すれば合併はできない。
しかし、今回のような資本業務提携なら、総会案件ではないため、両社が合意すれば実現する。

会社法では25%以上の株式を保有された会社は、相手先の企業の株式を取得しても議決権が無効になる規定がある。
25%未満にとどめることで、互いに議決権を持ち、両社の資本提携となる。

株式の持ち合いと並行し、国内に7カ所ある製油所の一体運営や、約7000カ所の給油所への製品供給などで提携する。
合併では年500億円の統合効果を予想するが、事業提携で年300億円程度の収益改善を見込む。

両社の幹部は「合併を目指す方針に変わりはない。まず業務提携で効果を先行して出していきたい」としていた。

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これに対し、創業家側は早速反論した。

1) 信託銀行への委託

議決権行使について信託銀行に委託する形式により金融商品取引法の公開買付義務を回避しようという意図のようです。

しかし、これは金融商品取引法の公開買付義務を形式的に潜り抜けるための、いわゆる脱法行為の実現を目的とした信託であり、正当な信託目的が認められません。
信託期間についても創業家と合意できるまで、という通常の信託契約では考えられない定めになると推測され、このような信託は、全うな信託銀行であれば、受託しないと考えられます。

また出光興産の経営判断の観点からも、議決権を行使しない昭和シェル石油株式8%を数百億円も拠出して取得する合理性は認められません。

2) 昭和シェル向けの増資の場合(市場で20%の取得は難しい)

合併という会社の根幹にかかわる事項に関し、見解が異なる状況下での増資は、株主の反対により株主総会で決議できない合併議案を、取締役らが合併に賛同する者に対し議決権を付与して合併議案を通そうというものであって、到底承服できません。
そのような増資をする場合は、発行差止のための法的措置を講じます。


出光興産は、昭和シェル石油との合併を目的に、同株式を取得したが、後日、合併に必要な株主総会の決議が可決できないことを認めざるを得なくなった経緯です。しかし、同株式の取得契約を解除すると多額の損害賠償が生じ責任を問われかねないために、これを履行するための方便として、今になって事業提携を持ち出さざるをえなくなったと考えられます。
以上のとおりですので、出光興産は、本日の報道の内容を、今後実行されることはないと考えております。

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