Dow、Bayer との種子特許の裁判で敗訴

| コメント(0)

連邦控訴裁判所は3月1日、Dow AgrosciencesがBayer CropScience に455百万ドルの賠償金を支払うよう命じた国際仲裁裁判所の裁定を支持した。

国際仲裁裁判所は2015年10月、Dow AgrosciencesがBayer CropScience との、除草剤glufosinateに耐性のある種子の遺伝子パテントのライセンス契約に違反しているとみなし、455.5百万ドルの支払いを命じた。
合わせて、30日以内に支払わない場合、年利8%の金利の支払いを命じた。
特許が無効であるとするDowの主張も却下した。

Dowはこれを受け、Eastern District of Virginiaの地裁に訴えたが、地裁は2016年1月、国際仲裁裁判所の裁定を支持した。
Bayer特許を無効とするDowの訴えは却下した。
但し、年利8% の利率は違法であるとし、米法
28 U.S.C. § 1961(a)に基づき、1年満期の国債の週平均利率を採用するとした。

Dowは控訴したが、今回の判決となった。
控訴裁は、このような案件で仲裁裁定所の裁定を覆すには、特別の理由が必要で、 "very limited" であると述べた。

Dowは最高裁への上訴も考えるとしているが、逆転は非常に難しいとみられている。

ーーー

本件の経緯は次の通り。

除草剤glufosinateに耐性のある種子の遺伝子パテントは Plant Genetic Systems NVが取得した。(U.S. Patent Numbers 5,561,236; 5,646,024; 5,648,477; and RE 44,962)

Plant Genetic Systems NVはこの特許の独占使用権をHoechstに与えた。

1992年6月に、Hoechst はLubrizol Genetics との間でこの特許を含む特定技術のクロスライセンス契約(1992年契約)を締結した。

ーーー

Plant Genetic Systemsは1996年にHoechst Schering AgrEvoに買収され、Hoechst Schering AgrEvoは2000年にRohne Poulentのアグロ部門と合併してAventisとなった。
(Rohne Poulentの他の部門はRhodiaとなった)
2002年にAventisのCropScience部門がBayerに買収され、Bayer CropScienceとなった。

その間に、DowはLubrizol Genetics を買収した。

これにより、1992年契約の当事者は、特許所有者がPlant Genetic System→(Hoechst) → Bayer CropScience、ライセンシーがLubrizol Genetics →Dow となった。

Bayer はLibertyLink ブランドで菜種、とうもろこし、棉、大豆など各製品を販売しており、Dow はEnlist ブランドで棉と大豆の種子を販売している。

ーーー

2007年~2008年にDowはMS Technology との間で遺伝子に関するいくつかの契約を締結した。

2012年11月にBayer CropScienceは、Dowが1992年契約に違反してMS Technology との間で契約を結んだとして、1992年契約を終了させるとともに、特許違反を理由にDowを訴えた。

最終的に、1992年契約の規定に従って国際仲裁裁判所に持ち込まれた。

2015年10月の裁定は次の通り。

DowのMS Tech へのライセンスは1992年契約に違反。

DowはEnlistブランドの棉、大豆の種子販売などで特許を侵害

Dowは損害賠償総額455,459千ドルを支払う。(フランス法での契約違反の機会損失賠償として374,731千ドル、米法での特許侵害賠償として67,837千ドル、残り弁護士費用など)
支払遅延について8%の金利を支払う。

コメントする

月別 アーカイブ