EU のローマ宣言

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英国を除く EUは3月25日、EUの礎となったローマ条約調印から60周年を記念し、ローマで首脳会議を開いた。 英国が3月29日にEU離脱を正式通告するのを控え、EUの結束を演じる狙いがある。

首脳会議はEU 統合深化の多様性を容認するローマ宣言(The Rome Declaration)を採択した。

  http://europa.eu/rapid/press-release_STATEMENT-17-767_en.htm

宣言では、前書きの後に、宣言の目玉である、意欲のある一部の国だけが先行して統合を深める「マルチスピード構想」をさりげなく記載した。

欧州統合は数カ国の夢としてスタートしたが、多数国の希望となり、欧州は再び一つとなった。今日では欧州は統合され、より強くなった。 

現在、EUはグローバルにも域内でも前例のないチャレンジを受けている。地域紛争、テロ、移民、保護主義、社会的経済的不平等、等々。共にこれらに対応する。

我々は、さらに統合を深め、団結し、共通ルールを尊重することを通じ、EUをより強く、より回復力の早いものとする。

我々は同じ方向に進みつつ、必要であれば異なるペースと度合いで(at different paces and intensity where necessary)、共に行動する。
後に参加することを望む国にドアを開けておく。EUは分裂しておらず、また分割できないものである。

議長を務めたイタリアのジェンティローニ首相は会議後の記者会見で、先行統合の分野について「防衛や雇用政策などが対象になる」と語った。

「マルチスピード」論は意欲のある一部の国だけが先行して統合を深めるというもの。全加盟国が一体となって深化を進める従来の原則を見直し、独仏など中核国と、東欧などそれ以外の国との統合深化のスピードが異なることを容認するもので、統合に消極的な国は置いてきぼりにすることを意味するため、東欧は猛反発し、ポーランドのシドゥウォ首相は会議直前の23日に「宣言には署名できない」と言い張った。

EUはこの宣言に基づいて、EUの将来像の具体策を検討する。


EUの現状は下記の通り。

メンバー国
非メンバー国
EU参加
 28か国
ユーロ導入
19か国

EFTA

EEA シェンゲン
協定国境検査なし)
参加 離脱
フランス 1952 1999 非EU国が参加→   
EU参加で離脱
1994 1985
ドイツ
オランダ
ベルギー
ルクセンブルグ
イタリア 1990
英国 1973 適用除外 1960 1973 適用除外 「国境管理は国家主権の中核」
アイルランド 1999 適用除外
デンマーク 適用除外 1960 1973 1996
ギリシャ 1981 2001 1992
スペイン 1986 1999 1992
ポルトガル 1960 1986
オーストリア 1995 1960 1995 1995
フィンランド 1986 1995 1996
スウェーデン 国民投票 1960 1995 1996
スロベニア 2004 2007 2004
マルタ 2008
キプロス 2008 留保 北キプロスとの国境問題
スロバキア 2009 2004
エストニア 2011
ラトビア 2014
リトアニア 2015
ポーランド 収斂基準     未達
チェコ
ハンガリー
ブルガリア 2007 ドイツ反対 「国境検問を廃止できる状況にはない」
ルーマニア
クロアチア 2013 審査中
アイスランド 1970 1994 1996
リヒテンシュタイン 1991 2008
ノルウェー 国民投票 1960 1996
スイス 国民投票 1960 2004
モナコ (フランス)
サンマリノ (イタリア)
バチカン


EUの収斂基準

  • 単年度の財政赤字額の比率がGDPの 3% を上回ってはならない。
  • 国債残高が GDP の60%を下回っている。

欧州自由貿易連合(European Free Trade Association:EFTA)は、1960年にイギリスが中心となって設立された自由貿易連合であり、欧州経済共同体(EEC)に対抗するため、その枠外にあった欧州諸国が加盟してきた。

欧州経済領域(European Economic Area:EEA)は、EFTA 加盟国が 欧州連合(EU)に加盟することなく、EUの単一市場に参加することができるように、1994年1月1日にEFTAとEUとの間で発効した協定に基づいて設置された枠組み。

EEAではEUの4つの自由の原則(EUにおける商品、人、サービス、資本の移動の自由)を共有している。

参加国はEU加盟国と自由な交易を行うことができるが、EU法の適用を受けなければならない。
EEAはブリュッセルでの政策決定に関与することはほとんどできない。
EEA参加国はEUに関する一切の財政負担を免除されているが、域内市場に関しては支出を義務づけられている。

英国は、人の移動の自由を認める考えはなく、EU離脱後にこれに加わることはない。

サンマリノとバチカンはイタリアと、モナコはフランスとそれぞれ通貨協定を締結した上でユーロを使用している。各協定は欧州委員会の承認を受けている。



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