エネルギー供給構造高度化法に基づく石油精製業の原油等の有効利用の取組み

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経済産業省は4月6日、エネルギー供給構造高度化法の「判断基準」に基づく、石油精製業者による原油等の有効利用の取組(残油処理能力の向上) の結果を発表した。

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経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定め、引き上げを義務化した。処理期限は2014年3月末である。

2014/3/14 エネルギー供給構造高度化法 処理期限

この処理期限の2か月後の2014年6月に、経産省は、産業競争力強化法第50条に基づき、石油精製業に関する市場構造調査を実施し、
石油精製業は、①需要に見合った生産体制にする「設備最適化」や②総合エネルギー企業化も視野に入れた資本や地理の壁を越えた「事業再編」の早急な実施が必要であると結論付けた。

この結果を踏まえ、7月末にエネルギー供給構造高度化法の新たな判断基準を告示し、
対象となる石油会社に対して、「設備最適化の措置」と「事業再編の方針」を含む目標達成計画の提出を求め るとともに、
残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の2016年度までの改善を求めた。

2014年3月31日時点の平均45%程度の残油処理装置の装備率を 50%程度まで向上させることとし、各企業の目標改善率を下記の通りとした。

5%未満の場合         13%以上改善
45~55%の場合 11%以上改善
55%以上の場合 9% 以上改善
平均 45%程度 50%程度まで向上

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制 

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2017年3月31日時点の各社の残油処理装置装備率は次の通り で、全社平均の残油処理装置の装備率は50.5%となり、「判断基準」で定める目標(50%程度)を達成した。

2014/3/31
の装備率

目標改善率

2017/3/31
の装備率

改善
JXエネルギー 46.20% 11%以上 51.20% 達成
東燃ゼネラル石油 35.90% 13%以上 40.60%
出光興産 51.50% 11%以上 57.20%
昭和シェル石油 59.40% 9%以上 64.80%
コスモ石油 43.40% 13%以上 49.00%
富士石油 48.30% 11%以上 52.40% 未達
特例適用
太陽石油 24.60% 13%以上 23.20%


特例 単一製油所で、対応により安定供給に支障が出る場合、残油処理装置の装備率の向上に準ずる措置による取組を認める。


事業再編については、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油が2017年4月1日に合併し、JXTGグループとなった。

2016/9/2  JXホールディングスと東燃ゼネラル石油、経営統合の最終合意

2016/12/20 公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得と JXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の株式取得を承認 

経済産業省は3月24日、産業競争力強化法第24条第1項の規定に基づく「事業再編計画」を認定した。

出光興産は2015年7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% を取得する株式譲渡契約を締結 、両社は2015年11月13日、経営統合に関する基本合意書を締結した。公取委の承認も受けたが、出光興産の創業家は合併に反対を続けており、見通しがつかないままである。

2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意 

2016/12/20 出光興産、シェルから昭和シェル株式取得

2016/12/20 公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得と JXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の株式取得を承認 

統合に取り残されたコスモは2017年2月21日、販売会社のキグナス石油と資本・業務提携契約を締結、単独での生き残りを図る。

キグナス石油とコスモ、資本業務提携契約締結

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残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の改善には、残油処理装置の処理能力の増加 and/or 常圧蒸留装置能力の減少が必要である。
後者については前回は廃棄が条件であったが、その直後のことでもあり、公称能力の削減(減産)も認めた。

実際に全社が公称能力の削減(減産)である。下記(単位:千バレル/日)は各社の発表又はホームページ記載の能力である。

1) JX    
  
コンデンセートスプリッター含む能力(下記の*)が公称能力
   
大阪国際石油精製 はPetroChinaとのJVで、輸出型製油所 (装備率計算にはこれも含める)

社名 製油所

第一次

今回

処理前 処理 2014/3 処理前 処理 処理後
一般 *
鹿島石油 鹿島 210 -21 189 252.5 274 -76 197
日本海石油 富山 60 -60 0
ジャパンエナジー 水島 205.2 205.2 240.2 380 -60 320
新日本石油精製 水島 250 -110 140 140
室蘭 180 -180 0
仙台 145 145 145 145 145
根岸 340 -70 270 270 270 270
大阪 115 -115 0
麻里布 127 127 127 127 -7 120
大分 160 -24 136 136 136 136
合計 1,792.2 -580 1,212.2 1,310.7 1,332 -143 1,188
大阪国際石油精製 大阪 115 115 115 115 115

                                  

2) 東燃ゼネラル 

社名 製油所

第一次

今回

処理前 処理 2014/3 処理前 処理 処理後
東燃ゼネラル石油 川崎 335 -67 268 258 -23 235
156 156 156 -21 135
和歌山 170 -38 132 132 -4.5 127.5
極東石油 千葉 175 -23 152 152 -23 129
合計 836 -128 708 698 -71.5 626.5

   *  極東石油 は2015年東燃ゼネラル石油に吸収合併                   
      川崎は2015/3に -10

3)昭和シェル石油 

社名 製油所 第一次 今回
処理前 処理 2014/3 処理前 処理 処理後
昭和四日市石油 四日市 205 +50 255 255 255
西部石油 山口 120 120 120 120
東亜石油 京浜 70 70 70

-5

65
昭和シェル 扇町 120 -120 0 0
合計 515 -70 445 445

-5

440

4) 出光興産

社名 製油所

第一次

今回

処理前 処理 2014/3 処理前 処理 処理後
出光興産 北海道 160 160 160 -10 150
千葉 220 220 220 -30 190
愛知 175 175 175 -15 160
徳山 85 -85 0
合計 640 -85 555 555 -55 500

5) コスモ石油

社名 製油所

第一次

今回

処理前 処理 2014/3 処理前 処理 処理後
コスモ石油 千葉 240 240 220 +20 240
四日市 155 -43 112 132 -47 85
100 100 100 100
坂出 140 -140 0
合計 635 -183 452 452 -27 425

6) 富士石油

社名 製油所

第一次

今回

処理前 処理 2014/3 処理前 処理 処理後
富士石油 袖ヶ浦 195 -52 143

143

143

7)太陽石油:

太陽石油の残油流動接触分解設備 (日量 25千バレル)は2010年の告示発表時点では既に建設中で、装備率20.8%は改善後の各社よりも高い。

社名 製油所

第一次

今回

処理前 処理 2014/3 処理前 処理 処理後
太陽石油 四国 118 118 118 118



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