東芝、米原発の保証債務 6561億円で確定 

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米連邦破産法11条の適用を申請中の Westinghouse が手がける原発建設をめぐり、親会社の東芝が発注元の米電力会社に支払う債務保証額が 計6561億円に確定した。
保証額は東芝が見積もっていた範囲内に収まり、東芝は原発工事に関して追加の損失を避けられる見込みになった。

東芝は7月27日、サウスカロライナ州で建設中のV.C. Summer 原発2号機、3号機に関する親会社保証について、South Carolina Electric & Gas 及びSantee Cooper との間で合意書を締結した。

東芝は両社に対し、2,168百万ドル(2,432億円)を2017年10月から2022年9月までの間に分割で支払う。

この支払は、2基の原発の建設、1基だけの建設、建設断念のいずれのケースでも行われる。

この額は、当初電力側が想定していた17億ドルを上回る。

東芝は6月10日に、ジョージア州で建設中のVogtle 3、4号機建設計画に関する親会社保証について、Southern電力に対し、3,680百万米ドル(4129億円)を2017年10月から2021年1月までの間に分割して支払うことで合意書を締結している。

2017/6/12 東芝、米国原発建設プロジェクトの親会社保証問題で前進 

これにより、保証債務損失は以下の通りで、引当金の範囲内のため、2016年度業績見通しに変更はない。

確定額 Vogtle 3、4号機 3,680百万ドル 4,129億円
V.C. Summer 2、3号機 2,168百万ドル 2,432億円
合計 5,848百万ドル 6,561億円
引当額 (2017/5/15 業績見通し)
 親会社保証引当金および貸倒引当金 約9800億円のうち
6,700億円
引当額 (2017/6/23 業績見通し)
 Vogtle 3、4号機の確定額折り込み
7,162億円

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Vogtle 3、4号機については、WestinghouseのChapter 11 申請後も建設を続行していたが、完成を目指すか、断念するかは未定であった。

Southern電力はこのたび、建設続行を決め、傘下のGeorgia Power がWestinghouseとの間で新しいサービス契約を締結した。

今後の建設管理をSouthern電力が行うもので、Westinghouseは、設計、購買、ライセンス支援サービスを行い、建設に必要な知的財産の使用を認める。

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V.C. Summerについては、電力側は原発の建設を続行するかどうかを決めていない。

電力側は、2基の完成には、今回の妥結額を超える費用がかかるとみている。
また、現在のWestinghouseとの建設契約は8月10日に切れるため、結論が急がれる。

米国では、新しい原発建設には税額控除が認められているが、この制度が2020年末に切れる。(2021年1月1日以前に稼働していることが条件)

米下院は6月に期限の延長を認めたが、上院はまだ承認していない。

延長のない場合、現状では2基をこれまでに完成させることは無理と見られており、1基にするか、2基にするかが重要となる。

付記

South Carolina Electric & Gasは7月31日、建設を断念すると発表した。完成を目指せば追加コストが膨らみすぎること、税額控除制度の延長が不明なこと等を勘案して決定した。

South Carolina Electric & Gas(55%出資)は事業継続も考えたが、共同事業者のSantee Cooper (45%出資)が撤退を決めたため、断念した。

既に90億ドルを投じているが、工事は40%以下しか進んでいない。2号機は2019年8月から2022年12月に、3号機は2020年8月から2024年3月にと3年以上遅れる見通しとなり、建設費も250億ドル以上と、当初の115億ドルの予想から2倍以上となる。

South Carolina Electric & Gasは、解体などにかかる費用約49億ドル (同社持ち分)を考慮しても現時点で建設中止したほうが、株主や顧客などにとってダメージは少ないと判断したという。

V.C. Summer 原発の建設断念に伴い作業員など約5000人の雇用が失われる見通しで、トランプ政権が日本政府などに何らかの注文をつけてくる可能性もある。

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今回の決定で東芝の負担が確定した訳ではない。

それぞれの電力会社は総括原価方式により追加コストを電気料金に転嫁しており、消費者が東芝を訴える恐れもある。

Southern電力は米政府の債務保証で銀行から融資を受けており、これが影響する恐れもある。 

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