米国、韓国とのFTAの再交渉を要求

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トランプ米大統領は 6月30日の米韓首脳会談で米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉に言及したが、米通商代表部(USTR)は7月12日、FTAの改定交渉を韓国政府に正式に要求した。


Robert Lighthizer 通商代表は韓国の産業通商資源部長官に宛てて、下記の内容の書簡を送り、「米韓FTAの改定、修正を話し合う特別共同委員会の会合を30日以内にワシントンで開きたい」と要求した。協定では、米韓のいずれかが特別共同委員会は招集を要求した場合、相手国は原則的に30日以内に応じなければならないこととなっている。

韓国は重要な同盟であり、主要貿易相手国として両国関係を強化するためには自由でかつ公正で、バランスの取れた貿易が必要だ。

両国間の経済関係は強固でかつ躍動的だけでなく、公正でなければならない。米韓FTAで韓国が恩恵を受けているように、米国経済も恩恵を受けるように両国が協力するのが緊要だ.

ほとんど20年にわたり、韓国とのモノの貿易赤字が続いている。

米韓FTAの交渉時には、両国の経済がともに大きな利益を得ることが期待された。しかし締結後、米国の対韓国の貿易赤字は増加し、モノの貿易赤字は2倍になった。

バランスのとれた貿易関係が必要だ。


USTRは同時に記者発表を行った。

USTRは大統領の指示により、米国の貿易の障害を取り除き、協定の修正を検討するため、特別共同委員会の開催を要求した。

大統領は、貿易赤字を減らし、米国民のためのより良い貿易関係を交渉するという約束を守り続ける。

FTAの発効以降、韓国に対する米国のモノの貿易赤字は132億ドルから276億ドルに倍増し、米国のモノの輸出は実際に減少した。これは前政権がFTAの承認を求めた際に述べたことと全く異なる。

2010年12月4日、Obama大統領は、「関税引き下げだけで、モノの輸出を最大110億ドル増やすことが期待できる」と述べた。

2012年3月のFTA発効前の2011年通年で韓国向けのモノの輸出は435億ドルであったが、2016年のモノの輸出は423億ドルで、2.7%の下落である。

2011年から2016年で、韓国とのモノの貿易赤字は132億ドルから276億ドルに倍増した。

我々はこの状況を改善する必要があり、することが出来る。


韓国政府は書簡を受け取ったことを明らかにし、以下のとおり述べた。

先月のトップ会談で提案したように、先ず、両国の実務家レベルで、韓米FTAの効果を研究し、分析し、評価を行い、両国の貿易のアンバランスの理由を調べることが必要だ。

USTRと詳細スケジュールと議論項目を協議するため、高官を派遣する。

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米韓FTAの経緯は下記の通り。

韓米FTA交渉は2007年4月2日に妥結した。最後まで争点となった牛肉を含む農業と自動車分野でも合意した。
なお、コメについては対象外となっている。

2007/4/4 米韓FTA妥結 

しかし、自動車関連などで米国内の反対が強く、批准されないままとなっていた。

2010年7月の韓国・EUのFTA妥結を受け、争点を話し合うための通産相会議が11月に行われたが、自動車と牛肉問題で合意に達せず、決裂した。

2010/11/12 米韓FTA協議、決裂 

最終的に、米国は牛肉問題はFTAと別の問題とする韓国の主張を受け入れ、その代わり、韓国は自動車で大きな妥協を行い、2010年12月3日に交渉が妥結した。

2010/12/4 韓米自由貿易協定(FTA)追加交渉が妥結

米上下両院は2011年10月12日、韓国とのFTAの実施法案を賛成多数で可決した。

2011/10/14 米議会、韓米自由貿易協定を可決

韓国与党ハンナラ党は11月22日、国会で韓米FTA批准案を強行可決した。本会議場では、これを阻止しようとする野党の議員が催涙弾を投げるなど一時大混乱に陥った。

2011/11/25 韓国、韓米FTA批准案を強行可決 

韓国国会は2011年12月30日、米国とFTAの再交渉をするよう政府に求める決議を賛成多数で可決した。
決議は特に「ISD条項」(
投資家対国家紛争仲裁制度)について「主権を脅かしかねない」と指摘、破棄も含めて米国と再交渉するよう求めている。

2012/1/7 韓国国会、「米とのFTA再交渉」決議 

韓国外交通商部は本年2月21日、韓米FTAが3月15日午前0時に発効すると発表した。

最大の争点のISD条項に関しては、「削除は検討していない」と述べ、「FTA発効後90日以内にサービス投資委員会を開き、ISDをめぐる問題を論議するための特別班を構成する予定」とした。

2012/3/15 韓米FTA発効

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Ronald Trump は2016年10月下旬に、大統領に選ばれた場合の公約 「アメリカを再び偉大にする」ための100日間のアクションプランを発表した。

そのなかで、大統領就任の1日目に、米国の労働者保護のため、7つのアクションを行うとした。

このうち、「TPPからの撤退を宣言」については、米通商代表部(USTR)は1月30日、TPPからの離脱を参加各国に書簡で正式に伝達した。

「米・加・メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA) の再交渉又は撤退の意思を発表」については、大統領は1月22日、メキシコ、カナダとそれぞれ開く首脳会談で北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を始めると表明した。

8月半ばにNAFTA再交渉を設定している。

2017/7/19 米通商代表部、NAFTA再交渉の協議目標を公表

なお、このなかの「財務長官に命じ、中国を為替操作国に指定」については、トランプ大統領は4月12日のWall Street Journalとの会見で、「考えを変えた。中国は現在は為替操作をしていない」と述べた。

トランプ米大統領は4月8日、中国の習近平国家主席と会談し、北朝鮮の核開発問題と米中間の貿易不均衡という2つの差し迫った課題を巡り、協力を続けることで合意した。

貿易不均衡の是正に向け、米国のMnuchin 財務長官、Ross 商務長官と中国の汪洋 副総理の3人が共同委員長となり、「100日計画」を協議することとした。

2017/5/15 米中「100日計画」第一弾発表 

7月16日、策定の期限を迎えた。両国は19日には包括経済対話を初めて開き、100日計画の合意内容を公表する。

トランプ大統領は7月12日、 「私は中国の助けがほしかったので、これまでは中国に少し甘かった」と明言、北朝鮮の核・ミサイル開発の問題で協力を取りつけるため、貿易面で配慮をしていたことを認めた。


今後は、対日本を含め、貿易面での攻勢を強めるとみられる。


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