三菱重工業、フランスの アレバ原子炉事業に出資 

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フランス電力(Électricité de France:EDF)は7月10日、同国の原子炉製造会社 Areva NPの買収に三菱重工業と地元のエンジニア大手ASSYSTEM が参加すると発表した。

三菱重工業は15%出資するが、出資比率は最大 19.5%になる可能性があるとしている。
ASSYSTEMは5%を出資する。

EDFは2016年11月15日に新しいAreva NP の51%~75%を取得する旨の契約を締結、他の投資家との間で交渉を続けた。

今回の発表によると、新しいAreva NP の買収価額は、25億ユーロと確認された。業績連動型のEarn Out 条項あり。借入金は引き継がない。

三菱重工業の出資額は3.75億ユーロ(最大で4.875億ユーロ)となる。下記の通り、Newcoにも5%(2.5億ユーロ)を出資するため、アレバに最大で1000億円弱の投資となる。

EDFは他の参加者も歓迎するとしている。今後、中国が参加する可能性がある。

核燃料再処理のNewCoへの出資については、中国の原発大手の中国核工業集団(CNNC)も交渉をしていたが破談になった。日本側より多い出資や取締役派遣を求め、フランス側が断ったとされる。安全保障の観点から米国や日本政府が強い懸念を伝えたともいわれる。

しかし、ArevaやEDFには中国の参加を求める声が強い。
今後の原発新設の大部分は中国であり、受注のために関係を良くしたい。またEDFの英国計画は中国との共同事業である。

英国のHinkley Point 原発計画には、中国広核集団(CGN) が33.5%を出資、残りをEDFが出資する。

EDFが英国のSizewell とBradwellで予定する新規原発建設計画にも中国が参画、後者については欧米で初めて中国製の原子炉を採用する。

 2015/10/28 中国、英国の原発に出資、中国製原発も導入  

手続きは年内に終える予定。 

2001年に発足したArevaはウランの採掘から原子炉の製造、核燃料の再処理まで、原発に関わる一連の分野を手掛ける総合原子力メーカーで、フランス政府が過半を出資する。

フランスの原子力政策はフランス原子力庁 (CEA) が主導し、民間企業のFramatomeが原子炉プラントの製造を、CEA子会社のCogemaが核燃料製造を担当する分業体制であった。
2001年にFramatome はプラント需要低迷に危機を迎えていたドイツ Siemensの原子力部門を買収し、 更にCogema と統合し、Areva となった。

Framatomeと Siemensは1989年から欧州加圧水型原子炉(EPR)の開発で協力していた。

福島第一原発の事故で、欧州の一部の国が脱原発を決めたほか、日本の原発の再稼働が遅れてビジネス機会が減少、更にフィンランドの新型原発の建設で費用が膨らみ、2015年12月期まで5期連続の最終赤字を計上した。2014年には48億ユーロの赤字、2015年には20億ユーロの赤字となった。

フィンランドのオルキルオト原発3号機 はArevaが建設する160万kwの欧州加圧水型原子炉(EPR)で、2005年8月に建設が始まった。当初は2009年に開業予定であったが、 まだ完成していない。
EPRの特徴である二重封じ込め構造の構築にも時間を要しているとされる。

コストは41億ドルの予想が72億ドルに上昇、契約価格は固定されているので、費用の増加分は同社の利益を圧迫する。

Arevaの救済のため、フランス政府は抜本的な同社の構造改革を決めた。2017年に実行される。

仏電力公社(EDF)が原子炉製造を担う子会社 Areva NPの過半数(51%~75%) を握る大株主になる。三菱重工業が出資を検討するとしていた。

フィンランドのオルキルオト原発3号機については、Areva SA に残し、政府が責任をもって完成させる。

燃料再処理部門を分社する(仮称 Newco)。

三菱重工業業は2017年2月3日、Newcoに5%(250百万ユーロ)を出資することで大筋合意したと発表した。
日本原燃も5%出資する。

2017/2/6 三菱重工業、仏原子力大手Arevaの新会社に出資 


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三菱重工業とArebaは、1991年に燃料サイクル分野において合弁会社を設立、2006年には原子力事業でのより広範な協調で合意した。

2007年にArevaとの折半出資による合弁会社ATMEA社を設立、両社技術を融合した電気出力110万kW級の最新鋭の加圧水型軽水炉(PWR)ATMEA 1 を開発した。

ATMEA 1 はトルコのSinop原発で110万kW 4基の採用が決まった。ロシアのRosatomが受注したAkkuyu 原発に続くもの。

2013年5月に日本・トルコ両政府は原子力協定と原子力発電所建設の細目を規定した政府間協定に調印したのに続いて2013年10月に商業契約を締結した。

事業主体の国際コンソーシアムには、三菱重工業 15%、伊藤忠商事 15%、GDF Suez(現 Engie)21%、トルコ国営電力会社(EUAS)49%が出資する。

2008年4月11日、両社は新規原子力発電プラントの開発にとどまらず、新たに原子燃料ビジネスにまで協力関係を広げていくことで合意した。

2009年4月1日、三菱重工業と三菱マテリアルの原子燃料事業を移管し、三菱原子燃料㈱が設立されたが、これにArevaが出資した。

設立時の出資比率は、三菱重工業 35%、三菱マテリアル 30%、Areva 30%、三菱商事 5%であった。

2016年3月、三菱重工業が三菱マテリアルと三菱商事の保有する全株式と、Arevaの保有する株式30%のうち25%を取得し、三菱重工業 95%、Areva 5%となった。

Newcoへの出資の際、三菱重工業は次のように述べている。

Arevaグループと原子力発電事業において長年の協力関係を有しており、1991年に燃料サイクル分野における合弁会社を設立して各種再処理関連機器を製造・販売しているほか、2007年にはArevaと当社の最新技術を融合した加圧水型(PWR)原子力発電プラントの開発に着手、電気出力110万キロワットの最新鋭PWRプラント「ATMEA 1」を開発、トルコを始め世界各地での販売活動を展開しています。

当社はNewCoの事業拡大を通じたArevaグループの今後の成長戦略の実現を支援するとともに、従来以上の事業面・技術面での協力関係構築により、2015年10月に日仏両政府間において確認された両国政府および原子力産業界の連携強化にも重要な役割を果たし、原子力事業の世界的なバリューチェーンの強化を目指します。


各国で脱原発の動きが相次ぎ、フランス本国でも原発が一部停止される。東芝は原発建設からは撤退する。

このなかで三菱重工業はフランス政府の救済を受けるAreva に多額の出資を行う。

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