東芝メモリの株式譲渡契約締結

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東芝は9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結 したと発表した。

売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する㈱ Pangeaで、譲渡価額は2兆円。

但し、譲渡金額は下記の調整を行う。

譲渡契約に定める算定方式による想定の純負債額、運転資本額、累積設備投資額を前提にした金額で、実績との差額は調整する。

現時点では、Western Digital との3つのJV(Flash Partners、Flash Alliance及びFlash Forward)の権益は東芝メモリに移していない。株式譲渡時に移管が済んでいない場合は、その価値を控除する。

東芝は東芝メモリの設立時に3つのJVの権益を東芝メモリに移したが、Western Digital はその差し止めを求める申し立てを国際仲裁裁判所に行った。
これを受け、
東芝は5月31日付で、WD側に「合弁会社の権益」を東芝メモリから東芝本体に移すことを書簡で通知した。

2017/5/15 東芝の半導体事業売却、Western Digital が差し止め申し立て 


譲受会社の㈱Pangeaは、株式譲渡の実行までに、 下記の通り、総額1兆4,000
億円からなる 直接または間接の資金調達を実施する。 加えて、㈱Pangeaは、株式譲渡の実行までに、金融機関から6,000億円の借入を実行する 。

付記

東芝は10月24日、臨時株主総会を開催し、半導体メモリー事業の売却、綱川智社長ら取締役10人の選任、2017年3月期決算を承認した。

出資・融資内訳(億円)

出資・融資 出資 融資
議決権 転換社債 議決権なし
東芝 3,505 40.2% 1,096 2,409 議決権の一部は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権
HOYA 270 9.9% 270 0
(日本側計) (3,775) (50.1%) 今後も過半を維持
Bain 2,120 49.9% 1,361 759
SK Hynix 3,950 15% 1,290 2,660 10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限)
10年間は15%超の議決権は与えられない。転換には各国競争当局の承認要
(Bain/SK) (6,070)
Apple 4,155 4,155
Seagate
Kingston Technology
Dell Technologies Capital
合計 14,000 2,727 1,290 9,983
金融機関借入 6,000

6,000

再計 20,000

14,000

6,000

株式譲渡後はBain Capitalと東芝メモリ経営陣を中心に事業運営を行う。

東芝とHOYAの日系企業による出資比率は過半を超えるが、今後も過半を維持する予定。

NAND型フラッシュメモリーで競合するSK Hynixの参加については、下記の条件を付けた。

SK Hynixは、1290億円は今後議決権がある株式に転換できる転換社債形式で、残りはBain Capitalが組成する会社に融資する形とする。

融資の一部(1290億円)については、株式(15%分)に転換する権利が付与されているが、今後10年間は 15%超の議決権を保有することはできず、当該転換権の行使には各国競争法当局の承認が必要となる。

東芝メモリとの間には、少なくとも10年間、ファイヤーウォールが設置され、SK Hynixによる東芝メモリの機密情報へのアクセスは制限される。

Western Digital との紛争の解決後は産業革新機構及び日本政策投資銀行が出資するが、それまでの間、参加の前提が崩れるような経営判断を防ぐ目的で、東芝メモリの普通株式の一部に係る議決権行使について、東芝は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権(議決権行使に関する具体的な方法を第三者が当該保有者に対して指図する権限)を与える。

なお、Western Digitalが国際仲裁裁判所に3つのJVの株式等の売却差し止めを求めて仲裁の申し立てを行っている。仮にこれが認められたとしても、本株式譲渡が差し止められない限り、株式譲渡は履行される。

Western Digitalが売却差し止めを求めているのは、3つのJVについてであり、上記の通り、現在は東芝が権益を保持したままである。
このため、JVの権益を有していない東芝メモリの株式譲渡は仲裁の対象外である。

この場合は、NAND型フラッシュメモリの事業は譲渡対象外となり、その価値が控除され、東芝メモリの価値は著しく下がることとなる。
SK Hynixにとっては参加の意味はなくなる。

Western Digital は9月26日、東芝が東芝メモリを「日米韓連合」に売却することに対し、国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所に暫定差し止めを求めると発表した。
これが認められた場合は、株式譲渡は履行できない。

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今後の問題は次の通り。

・国際仲裁裁判所の審理  売却完了後に敗訴となれば、莫大な賠償を求められる。

・独占禁止法の審査  2018年3月末までに審査が完了するかどうか。特に中国が問題。

・東証による特設注意市場銘柄の指定の解除

・事業パートナーであるWestern Digital との今後の関係

Western Digital は9月初めの新提案で、四日市工場における協業体制で Western Digital 側の関与を強めることを求めた。

現在は四日市工場の能力の6割弱を東芝、4割弱をWestern Digitalが保有している 。
また第6製造棟は当面東芝が単独で行うとしている。
9月6日に東芝は新規拠点を岩手県北上市の北上工業団地エリアに決めた。

Western Digital は、四日市工場が唯一の生産拠点であり、これの増設から締め出されると競争力を失うこととなり、SunDisc を買収した意味を失う。

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