TPP 11 と RCEP

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米国を除く環太平洋パートナーシップ協定(TPP)署名11カ国は11月11日、新協定(CPTPP 旧称 TPP 11)について大筋合意の詳細な内容を発表した。

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉参加16カ国(ASEAN 10+日・中・韓・印・豪・NZ)は11月14日、フィリピンで首脳会合を開き年内合意の先送りを決めた。

TPP

米国を除く環太平洋パートナーシップ協定(TPP)署名11カ国は11月11日、新協定(TPP 11)について大筋合意の詳細な内容を発表した。

大筋合意は英文では「agreed on the core elements」である。

2015年10月のTPP閣僚声明も、政府説明は「大筋合意」であるが、この時の英文は「come to an agreement 」である。

今回は継続協議分がある。

11月9日の閣僚会議では大筋合意されたが、10日に予定されていた首脳会合での合意は、カナダが難色を示し、先送りされた。
米国と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を進めるカナダやメキシコは TPP 11に慎重で、最終合意を不安視する声がある。


一連の交渉では「凍結項目」の取り扱いが最大の焦点となった。

各国が米国に配慮し譲歩を余儀なくされた計60項目超を米国が復帰するまで「凍結」するよう要求したが、調整の結果、最終的に20項目の凍結が決まった。
このうち11項目は医薬品の開発データの保護期間など知的財産分野だった。

しかし、4項目については、凍結対象とするかどうか決めきれず、交渉を継続する。

新協定の名称は「包括的および先進的なTPP」(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership :CPTPP)に改める。

大筋合意の内容は下記の通り。

・著作権の保護期間など知的財産や投資の規定を中心に20項目の効力を凍結する。

植物由来の発明への特許
特許を与える当局の不当な遅延についての特許期間調整
生物製剤医薬品のデータ保護期間を実質8年に統一
著作権の保護期間(日本は現在50年)を米国並みの「作者の死後70年」に統一
急送貨物のうち、少額貨物の関税免除
投資家と国との紛争解決手続き(ISDS)のうち、「投資合意」と「投資許可」
その他

 農産物などの輸入関税の撤廃・削減などは変更せず。
 また、繊維で関税撤廃・削減の対象を厳しく制限する原産地規則に関する項目も含まれなかった。

・4項目は継続協議

マレーシア:国有企業の優遇策の制限
ブルネイ:石炭産業のサービス投資ルール
カナダ:文化保護のための国内企業優遇
ベトナム:労働の紛争処理

・ 農産物の緊急輸入制限(セーフガード)の発動基準などは発効後に見直し可能

・ 新協定は11カ国が署名後、6カ国の国内承認手続き完了してから60日後に発効
  (元の協定にあった「参加国のGDP総額の85%以上」という条件は削除した。)

・ 新協定の正式名称は「包括的および先進的なTPP」


ロス米商務長官は11月14日、ワシントンでの講演で、「TPP11」に関して 、「米国という巨大市場の存在が多くの国にとってTPPに加わる動機だった」と指摘し、「最終合意は難しいだろう」との見通しを示した。

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RCEP

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉参加16カ国は11月14日、フィリピンで首脳会合を開き「年末までに重要な成果を達成すべく最大限努力する」との声明を採択した。
年内合意の先送りを確定させ、新たな合意時期は明示しなかった。経済発展の度合いごとに「特別かつ異なる待遇」を設けることや、各国の政策に配慮することも明記した。


共同声明は「現代的・包括的で、質が高く互恵的な協定を達成する」という目標を掲げた。一方で交渉は「引き続き複雑で困難な作業」であるとの認識を示し、妥結を急ぐ考えを暗に否定した。

RCEPの概要を示す付属文書も公表された。一般的な自由貿易協定(FTA)に盛り込まれる章のほかには、インドが重要視する域内の自由な人の移動を保障する「人の移動章」や、日本が重視するデータの自由な流通を促す「電子商取引章」が盛り込まれている。

ASEANの一部の国は中国と歩調を合わせ、議論を関税引き下げに絞って年内妥結に導こうとしていたとされる。
これに対し、日本はオーストラリアなどは、貿易・投資ルールを含め質の高い協定を目指した。

閣僚会合の席上、世耕弘成経済産業相が「関税に比べ、ルール部分の内容が乏しい。バランスが取れていない」と述べた。その後の討議でASEANの閣僚の1人が知的財産権の保護や貿易手続きの円滑化などルールを議論する時間が足りなかったと認め、年内妥結の機運は後退した。

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