2017年12月アーカイブ

米財務省は12月11日、上院財政委員会の税制改革案が実現した場合、向こう10年間で1兆8000億ドルの増収となり、減税による税収減を賄えるとの試算を発表した。

1 ページだけの簡単な発表。Treasury Releases Analysis of Revenue Estimates Associated with Administration Economic Policies

11月26日に議会予算局が税制改革案の影響についての報告を出し、これが共和党内部でも税制改革案に対する反対を産んだ。

議会予算局の分析では、税制改革案により、経済成長を考えない場合で、2018~2027年累計で赤字が1兆4142億ドル増えるという。1.9%の経済成長を考慮しても、赤字は1兆ドル増える。

2017/12/4 米上院、税制改革法案を可決   

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財務省の Office of Tax Policy (OTP) はこれを基に分析している。

議会予算局は、このままでは10年間で約1.5兆ドルの赤字となるとする。但し、成長により4080億ドルの税収増が生まれ、赤字は1兆ドルに減る。

この議会予算局の試算はGDPの伸びを2.2%にしている。(一般には「1.9%の経済成長を考慮して」となっている)

これに対し、OTPは2.9%と見る。より詳細には、2018年は2.5%、2019年は2.8%、それ以降は3.0%とする。

元の2.2%から0.7%ポイントだけ増えることとなるが、このうち半分は法人税率の引き下げによるもの、残り半分はPass-through企業(株主が課税されるもの)税制や個人所得税の改正、規制改革、インフラ開発、福祉の改定など政府が予算で提案する計画による。

GDPを見直すと、税収は10年間で議会予算局の計算の4080億ドルではなく、約1.8兆ドル増加する。(増益分は後半の5年に生まれる)

成長なしでは10年間で約1.5兆ドルの赤字となるとするが、成長を考えると、10年間で3000億ドルの黒字となる。

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専門家や民主党が財務省の分析を批判している。

想定成長率は大半のエコノミスト予測を大幅に上回っているほか、まだ実現できていない修正事項も前提としている。

参考 過去のGDP

保守派の非営利組織「責任ある連邦予算委員会」は「(税制変更が経済に及ぼす影響を分析する)ダイナミック・スコアリングを馬鹿にしている」と批判している。

民主党のシューマー上院院内総務も「1ページのでたらめな計算にすぎない」とした上で「ホワイトハウスと共和党が藁をもつかむ思いで、確証のないことを証明し、法案への支持を取り付けようとしていることは明らかだ。この法案では、赤字が膨張し、赤字を相殺する追加の経済活動もほとんど全く生じないことは、ほぼすべての独立した分析で結論づけられている」と述べた。

愛媛県の伊方原発3号機について、広島高等裁判所は12月13日、運転の停止を命じる仮処分の決定をした。
運転停止の期間については、広島地方裁判所で並行して進められている裁判で異なる結論が出る可能性があるとして、2018年9月30日までとした。

「熊本県の阿蘇山で、巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性が小さいとは言えず、新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は、不合理だ」と指摘した。

伊方原発3号機は、2016年8月に再稼働を行ったが、本年10月3日から定期検査のため運転を停止中。

今回の決定は直ちに効力が生じる。処分の効力は、決定が覆されない限り続くため、定期検査が終了する2018年2月以降も運転できない状態が続く可能性が高くなった。

四国電力は、異議を申し立ててさらに争うことができ、仮処分の効力を一時的に止める「執行停止の申し立て」を行うこともできる。

四国電力は、「速やかに異議申し立ての手続きを行います」とコメントしている。

なお、野々上裁判長は12月末で定年退官のため、今後は別の裁判官が扱うこととなる。


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広島、愛媛両県の住民4人が、「重大事故の危険がある」として、四国電力伊方原発 3号機の運転差し止め の仮処分の申し立てを行った。


広島の住民がなぜ愛媛の伊方原発の運転停止を求めるのか。

伊方原発広島裁判応援団は次のように述べている。
  http://saiban.hiroshima-net.org/why_do_we.html

伊方原発は、広島市からちょうど100kmの佐田岬半島に、瀬戸内海に面して立地しています。

伊方原発で福島第一原発事故並みの苛酷事故が起こった場合、広島市はひどい放射線被曝を強いられることが、原子力規制委員会の行ったシミュレーションで示されています。

伊方原発は、発生が予想されている南海トラフ巨大地震の震源域ぎりぎりに位置しています。また「中央構造線」という世界有数の大断層帯のほぼ真上にあります。伊方原発が巨大地震に見舞われ、それが引き金となって苛酷事故が発生する蓋然性はかなり高いはずです。またそれが、福島第一原発事故並みで収まるという保証はどこにもありません。

原発苛酷事故で放出される大量の放射性物質によって汚染された土地には、誰も住みたくありません。ふるさと広島を、放射能汚染で失うことはできません。現在の政治状況はやみくもに原発再稼働にのめっています。私たちは、司法に訴えることにしました。

2017年3月30日、広島地裁は住民側の訴えを退けた。

仮処分は他に、松山地裁、広島地裁、大分地裁、山口地裁岩国支部でも争われている。

愛媛県の住民による仮処分申請で、松山地裁は2017年7月21日、住民側の申し立てを却下する決定をした。

松山地裁の審尋で住民側は「伊方原発は南海トラフ地震の震源域にあり、中央構造線断層帯も近い。四国電の地震や津波の想定は不十分だ」と主張。「重大事故が発生した場合、住民も甚大な健康被害を受ける」と訴えた。

これに対し、四国電側は原子力規制委が策定した新規制基準に沿って安全対策を取り、審査に合格したと主張。「最新の科学的知見を踏まえた対策を講じており、安全は確保されている」と反論していた。

広島地裁が訴えを退けたのに対し、住民側は決定を不服として抗告した。

広島高等裁判所では、四国電力が想定する地震の最大の揺れや周辺の火山の噴火の危険性をどのように評価するかなどが争われた。

12月13日の決定で広島高裁の裁判長は、熊本県にある阿蘇山が噴火しても火砕流が原発に到達しないと主張する四国電力の根拠となった噴火のシミュレーションについて、「過去に阿蘇山で実際に起きた火砕流とは異なる前提で行われており、原発に火砕流が到達していないと判断することはできないため、原発の立地は不適切だ」などと指摘した。

そのうえで、「阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、原発の運用期間中に、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない。巨大噴火が起きた場合、四国電力が想定した火山灰などの量は少なすぎる」と述べた。

そして、「火山の危険性について、伊方原発が新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理で、住民の生命、身体に対する具体的な危険が存在する」として、運転の停止を命じた。

これに対し四国電力は、「3号機の基準地震動の合理性や火山事象に対する安全性の確保などについて裁判所に丁寧に主張や立証を行い、抗告を退けるよう求めてきた。当社の主張が認められなかったことは極めて残念であり、到底承服できない。内容を確認のうえ、速やかに異議申し立ての手続きを行います」とコメントしてい る。

原子力規制委員会の更田豊志委員長は、「規制委員会は、当事者ではなく、個別の民事訴訟についてコメントはできない」としたうえで、「私たちは、福島の原発事故と国内外の知見や経験を踏まえて基準やガイドなどを策定し、許認可を行っている。その基準も常に改善している」と述べ、審査は最新の知見に基づいて行われていると説明した。

今後の審査で火山の想定に与える影響については、「私たちは状況にかかわらず、科学的、技術的な知見、理解を基に判断していくだけで、審査への影響はない」と述べた。

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現在稼働中、および審査に合格した原発は下記のとおり。

運転開始 万KW
稼働 九州電力 川内① 1984.7 89.0 2015/9/10 営業運転
九州電力 川内② 1985.11 89.0 2015/11/17 営業運転
四国電力 伊方③ 1994.12 89.0 2016/9/7 営業運転
関西電力 高浜④ 1985.6 87.0 2017/5/17 再稼働 6/16 営業運転
関西電力 高浜③ 1985.1 87.0 2017/6/6 再稼働
審査
合格
関西電力 高浜① 1974.11 82.6 40年超 2016/6/20 運転延長認可
再稼働は、必要な工事が終わる2019年10月以降。
関西電力 高浜② 1975.11 82.6
関西電力 美浜③ 1976.3 82.6 2016/11/16 運転延長認可
2020年1月の工事完了を目指す。
九州電力 玄海③ 1994.3 118.0 2017/1/18 「審査書」を正式決定 再稼働延期
九州電力 玄海④ 1997.7 118.0
関西電力 大飯③ 1991.12 118.0 2017/5/24 審査書を正式決定 再稼働延期
関西電力 大飯④ 1993.2 118.0


関西電力と九州電力は11月30日、 神戸製鋼所のデータ改ざん問題の影響で、部品の安全確認に時間がかかっているため、大飯原発3、4号機と玄海原発3、4号機の再稼働時期をそれぞれ2カ月遅らせると発表した。

2017/12/5 神戸製鋼データ改ざん問題で玄海・大飯原発の再稼働を延期   

大飯原発3、4号機については、福井県の住民らが関電を相手取り、運転差し止めを求めた訴訟で、1審の福井地裁は2014年5月、原発から250キロ圏内の住民は「運転により人格権が侵害される危険がある」とし、定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

これについて関電側が控訴し、名古屋高裁金沢支部で係争中で、11月20日に結審した。判決内容によっては再稼働後に運転停止に追い込まれるリスクもある。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 


東芝と Western Digital は12月13日、 係属中の仲裁および訴訟を解決し、フラッシュメモリ事業に関する協業を一層強化していくことに合意したと発表した。

本合意の一環として、東芝、東芝メモリおよびWestern Digital は全ての係属中の仲裁および訴訟の取り下げに合意した。

Western Digital は5月に国際仲裁裁判所に東芝メモリの第三者への売却差し止めを求める仲裁を申し立てた。
東芝は6月に東京地裁に
Western Digital への損害賠償請求を起こしている。

この合意により、2018年から量産する予定の次世代 3次元フラッシュメモリBiCS FlashTM生産のための製造棟である建設中の四日市工場第6製造棟への今後の設備投資について、共同で実施する。

東芝は8月3日、四日市工場にて建設中の第6製造棟に関し、第1期分として予定している次世代の96層積層プロセスを用いた3次元フラッシュメモリ用クリーンルームへの生産設備導入を東芝メモリ単独で実施すると発表した。

2017/8/8 東芝、東芝メモリの増設を単独実施

また、岩手で建設が計画されている新製造棟へのWestern Digitalの参画に関する最終契約について、協議していく予定 。

東芝は9月6日、東芝メモリの新規拠点を岩手県北上市の北上工業団地エリアに決定し、用地拡張に関する調査や自治体との調整などの準備作業を開始すると発表した。
東芝グループのジャパンセミコンダクター(旧岩手東芝エレクトロニクス)隣接地に建設する。

2017/9/7 東芝メモリの売却、9月13日に決定 

フラッシュメモリ事業に関する合弁会社の契約期間を延長し、協業を強化する。

  JV 今回合意 引取比率
第3製造棟 Flash Partners(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%)

(既に延長済み→ 2029/12/31) 当初は均等引取、
2008/10 改組:30%分は東芝が単独運営、70%分は従来通り JVで均等引取

第4製造棟 Flash Alliance(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%) 延長 → 2029/12/31
第5製造棟 Flash Forward(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%) 延長 → 2027/12/31 均等引取
新第2製造棟
第6製造棟 (東芝単独) 共同で実施する予定  

また、現在係属中の訴訟等を解決することへの合意により、東芝メモリをBain Capital Private Equity, LP を軸とする企業コンソーシアムにより組成される買収目的会社である㈱ Pangeaへ譲渡することに関して全当事者が協調することに合意した。

また、両者は東芝メモリの譲渡に関連し、相互に資産や機密情報を保護すること、および将来の株式上場後、公開会社としての東芝メモリの発展を確実にするために協力することに合意した。

東芝メモリの売却に当たり、Western Degital にとっては、メモリ事業での競争相手である韓国のSK Hynix やSamsung が経営に参加したり、技術情報にアクセスするのは全く認められない。

逆にBain Capital にとっては、今回の買収に参加し、企業価値を上げたうえで、高値で転売するのが目的であり、将来の売却先を制限されるのは好ましくない。

SK Hynix にとっては事業参加が目的であり、単なる出資では意味がない。

とりあえず、Western Degital への配慮で、SK Hynixに関しては、10年間の機密情報へのアクセス制限と10年間は15%超の議決権は与えられないとの条件を付けている。

今回の合意に当たり、東芝やBain が SKによる東芝メモリへの関与制限や、SK に対する機密情報の遮断を確約 したとされる。
また、Samsung電子などの他の競合に対する東芝メモリ株の今後の譲渡を制限することで合意した模様。

買収目的会社である株式会社Pangeaへの出資・融資内訳(億円)は次の通り。

  出資・融資 出資 融資  
議決権 転換社債 議決権なし
東芝 3,505 40.2% 1,096   2,409   議決権の一部は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権
HOYA 270 9.9% 270   0    
(日本側計) (3,775) (50.1%)         今後も過半を維持
Bain 2,120 49.9% 1,361   759    
SK Hynix 3,950   15% 1,290 2,660   10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限)
10年間は15%超の議決権は与えられない。転換には各国競争当局の承認要
(Bain/SK) (6,070)            
Apple 4,155     4,155    
Seagate
Kingston Technology
Dell Technologies Capital
合計 14,000 2,727 1,290 9,983    
金融機関借入 6,000  

6,000

 
再計 20,000

14,000

6,000  

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

今回の和解で、国際仲裁裁判所による東芝メモリの第三者への売却差し止めの懸念は無くなった。

東芝は12月に6千億円の増資を完了し、とりあえず 2期連続の債務超過を避けられるが、金融機関の支援を得ながら資本の厚みを増すために、引き続き2018年3月末までの売却完了を目指し、各国の独占禁止法の承認を得られるよう注力する。


米南部アラバマ州の連邦上院補選で12月12日、民主党候補のDoug Jones 元連邦検事が、圧勝を予想されていた共和党候補のRoy Moore元州最高裁長官を破り、当選を確実とした。

Roy Moore候補の約40年前の少女へのわいせつ疑惑が報じられ、共和党内からも批判が相次いだことが響いた。

アラバマ州選出の上院議員(2名)はこの20年間共和党が独占し続け、全米屈指の「保守州」として知られる。保守地盤での敗北は、トランプ政権にとって大きな打撃となる。

上院の議席は与党共和党が51、野党が49となり、共和党は1名が造反すると過半数も取れないというギリギリの状態に追い込まれた。

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トランプ大統領は共和党のJeff Sessions上院議員を合衆国司法長官に指名し、2017年2月8日、米上院は司法長官就任を賛成多数で承認した。

辞任や死亡により上院議員の欠員が発生した際には、選出州において補欠選挙を行い、欠けた議員の残りの任期を務める議員を選出する。
但し、補欠選挙の開催時期は州に任せられており、州議会は補欠選挙までの期間に置かれる臨時の議員を指名する権限を州政府に与えることができる。

Jeff Sessions上院議員の辞任に際し、州知事(共和党員)は共和党員のLuther Strange 州司法長官を上院議員に指名、この結果、上院の議席数は共和党 52、民主党 46、無所属 2 のままとなった。

現状でも、3議員が反対に回れば過半数を割る状況である。

米上院は12月2日早朝、難航の末、税制改革法案を可決した。

共和党議員が1名反対に回ったため、51対49の僅差であった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 51 0 0 51
反対 1 46 2 49
棄権 0 0 0 0
合計 52 46 2 100

今回の補選の結果、共和党は51 となった。

共和党は今後、党内強硬派や民主党への妥協を迫られることとなる。

但し、Doug Jones新議員の就任には、投票の確認が必要で、おそらく年内は無理とされる。その間は現在のLuther Strange 臨時議員が引き続き議員をつとめることとなる。

なお、元コメディアンで、一連のセクハラ疑惑が浮上していたミネソタ州選出の民主党の"Al" Franken上院議員が12月7日、辞任を発表した。
後任には当面、ミネソタ州の民主党知事が指名する民主党議員が就任する見通しで、当面は上院の勢力図に影響はない。

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米連邦予算の期限切れを12月8日の前日の12月7日、上院と下院は12月22日までのつなぎ予算を賛成多数で可決した。

上院
共和党 民主党 無所属 合計
賛成 42 38 1 81
反対 6 7 1 14
棄権 4 1 5
合計 52 46 2 100
下院
  共和党 民主党 合計
賛成 221 14 235
反対 18 175 193
棄権 1 4 5
合計 240 193 433

年内に税制改革の両院の統一案の議決、本予算案、予算の上限額引き上げ案の審議などが目白押しである。

海外での価格カルテルに対して日本の公正取引委員会が課徴金納付を命じられるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は12月12日、公取委の主張を全面的に認めた。欧州当局などは国際カルテルの摘発を強めているが、最高裁もこうした流れに沿った判断を示した。

日本のブラウン管テレビ製造販売業者の現地製造子会社等が海外で購入するテレビ用ブラウン管についてのカルテルで、サムスンSDI子会社が 「日本国内の市場には何の影響もなく、日本の独禁法は適用できない」と主張し、課徴金納付命令を不服として提訴していたもの。

最高裁は、「カルテルによって競争が侵害される市場に日本が含まれる場合、日本の経済秩序を侵害すると言える」と判断。今回のケースでは、日本企業の子会社が国内本社の指示を受けて対象製品を購入したことなどを理由に、「日本市場の競争が損なわれた」と認めた。

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公取委は2009年10月7日、外国事業者を含むテレビ用ブラウン管の製造販売業者らに排除措置命令及び課徴金納付命令を出したと発表した。

公取委が国際カルテルで海外企業に課徴金納付を命じたのは初めて。

各社は、日本のブラウン管テレビ製造販売業者(オリオン電機、三洋電機、シャープ、日本ビクター、船井電機)の現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管について、最低目標価格等を設定する旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していた。

外国法人間の取引では日本の独禁法は適用できないが、公取委は今回、日本の電機大手の親会社がブラウン管の購入価格などを交渉していたため、日本の親会社と現地製造子会社は一体だとして、日本の市場にも悪影響を及ぼしたと認定、同法が適用できると判断した。

    価格
決定
出荷   排除措置
命令
課徴金納付
命令
 当時
MT映像ディスプレイ     大阪府   ○*1   -  
 

 

 
MT Picture Display (Malaysia) Sdn. Bhd. 子会社   Malaysia   -   650,830千円 清算手続き中
PT. MT Picture Display Indonesia 子会社   Indonesia   -   580,270 清算手続き中
MT Picture Display (Thailand) 子会社   Thailand   -   566,140 清算手続き中
Samsung SDI     Korea   ○*1   -  
  Samsung SDI (Malaysia) BERHAD 子会社   Malaysia   -  1,373,620  
LG Philips Displays Korea   Korea   -   151,380 事業譲渡
  P.T. LP Displays Indonesia     Indonesia   -   932,680  
Chunghwa Picture Tubes     Taiwan   ー   - 自主申告
  Chunghwa Picture Tubes (Malaysia) Sdn Bhd. 子会社   Malaysia   ー   -  
Thai CRT   Thailand   -   - 解散消滅
合計            4,254,920  

2009/10/9 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令

*1 2015年5月22日の審決で、MT映像ディスプレイ及びSamsung SDI について、排除措置命令を取り消した。
   排除措置命令時において既に独禁法違反の行為がなくなっていると認められた。

MT映像ディスプレイは旧松下東芝映像ディスプレイ(松下/東芝JV)で、同社と海外子会社3社は、以下の理由で審決の取り消しを求めた。

ブラウン管を使用したのは日本のメーカーの海外子会社であり、日本のブラウン管テレビ製造販売業者ではない。
ブラウン管の需要者は我が国には所在せず、「一定の取引分野」における競争を実質的に制限するものとは認められない。

  日本(親会社)

海外

出荷 購入
ブラウン管供給 MT映像ディスプレイ 
   
MT Malaysia
MT Indonesia
MT Thai 
 
ブラウン管購入 オリオン電機
三洋電機
シャープ
日本ビクター
船井電機
  各社の
海外子会社

これに対し、東京高裁は2016年4月13日、原告の請求を棄却した。

海外の取引であり、日本の独禁法の対象外であるとする訴えに対し、取引自体は需要家の海外の子会社が行ったとしても、日本の親会社と海外子会社が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、日本の親会社を需要家と認め、日本の独禁法上の「不当な取引制限」に当たるとした。

(1) 独占禁止法3条後段(不当な取引制限)

独占禁止法が、我が国における自由競争経済秩序の維持をその直接の目的としていることに照らせば、
日本国外において、他の事業者と共同して「不当な取引制限」に及んだ場合であっても、
一定の取引分野における我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであるときには、適用される。

(2) 独占禁止法2条4項1号にいう「需要者」について

需要者が供給を受けるに当たり、
意思決定者と、供給を受けこれを使用収益する者とが異なる場合であっても、
両者が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、意思決定者についても需要者として認めることができる。

2016/4/23  日本企業の海外子会社による他の日本企業の海外子会社向けの価格カルテルで有罪 

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は12月11日、理事会が2億5千万ドルの中国でのプロジェクトを承認したことを明らかにした。

北京市燃気集団 (Beijing Gas Group Company) が約510の近隣の村の 216,750 世帯に天然ガスを届けるパイプライン網の建設を進める もの。工事は2021年までに完了する見込み。

パイプラインが稼働すれば、北京市の石炭使用量が標準石炭換算値で年間65万トン減少し、二酸化炭素(CO2)の排出量を595,700トン、粒子状物質の排出量を3,700トン、二酸化硫黄(SO2)の排出量を1,488トン、窒素酸化物(NOx)の排出量を4,442トン、それぞれ削減できる見込み。

AIIBにとっては運営開始からの約2年間で初めての対中プロジェクトであり、また初の企業に対する融資プロジェクト。

AIIBの金立群総裁は、「中国が石炭への依存度を引き下げ使用量を削減するという約束をしたことで国民の暮らしは変わり、環境の質は高まることになる。これはAIIBが対中プロジェクトへの融資を決定した理由でもある」と 述べた。

韓国化学大手の暁星(Hyosung Corp.)はベトナムにPP工場を建設する。


12億ドルを投じてBa Ria-Vung Tau 州Tan Thanh地区のCai Mep Industrial Zoneに天然ガスを原料とする年産60万トンのPP工場を建設するもので、12月に着工し、2019年末の稼働を目指す。

同社は2017年2月に、12億ドルを投じてCai Mep Industrial Zoneに天然ガスを原料とするPP工場を建設することでベトナム政府との間で覚書を締結した。

それによると、

第一期では、133百万ドルを投じてLPGタンク、336百万ドルを投じてPPプラントを建設する。
第二期では、496百万ドルを投じてプロパン脱水素設備を、226百万ドルを投じてPPの増設を行う。

同社では新工場の60万トンのうち、10万トン程度を日本に輸出することを考えていると報じられている。

韓国の工場から日本に輸出すると関税が最大で6.5%かかるが、ベトナムの場合はEPAで関税がゼロになることが狙い。

ーーー

暁星は韓国蔚山に当初30万トンのPPプラントを持っていたが、2015年にプロパン脱水素設備が完成した。PPの需要も伸びていることから、20万トンのPPプラントの新設を決めた。
間もなく合計能力は50万トンとなる。

今回のベトナムでの新設に合わせ、同社は蔚山に新しく20万トンプラントを建設することを計画している。

全てが完成すると、同社のPP能力は韓国が70万トン、ベトナムが60万トンで、合計130万トンとなる。

ーーー

ベトナムでは2014年にPP計画が明らかになった。

INEOS は2014年1月20日、ベトナムのPhu Yen省のHoa Tam Industrial Zoneで製油所建設を計画しているVung Ro Petroleum が年産90万トンのポリプロ計画でInnovene PP プロセスを選択したと発表した。

Vung Ro Petroleum は2013年11月にLummus Technologyとの間で、エチレン回収とOCT(エチレンとブチレンからプロピレンを製造)に関するライセンス・エンジニアリング・技術サービス契約を締結している。

Vung Ro Petroleum は英国の投資会社Technostar Management とロシアのTelloil GroupとのJVで、Hoa Tam Industrial Zoneに40億ドルを投じて、製油所(LPG, Gasoline, Jet Fuel, Diesel, Fuel Oil) と石化プラント(BTXと年産90万トンのPP)の建設を計画している。

2014/1/24 ベトナムの新しいポリプロ計画 

同社は2014年に地鎮祭を行ったが、それ以来、まったく進展がない。

地方政府は認可の取り消しも考えるとしている。


トヨタ自動車は 11月30日、米カリフォルニア州でバイオマスから得た水素を使う世界最大規模の燃料電池発電所を建設すると発表した。

燃料電池発電事業を手がけるFuelCell Energyと組み、カリフォルニア州ロングビーチ港に、燃料となる水素を生み出し、2.35メガワットの発電が可能な燃料電池発電所および水素ステーションを併設する「Tri-Gen(水・電気・水素の3種類を生み出す=Tri-Generation)」を建設する 。

畜産場の家畜排せつ物や汚泥等の廃棄物系バイオマスから水素を取り出す。
水素を使い、高温型の溶融炭酸塩型燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell)を用いて発電を行う 。
発電で排出されるを活用

Tri-Genで1日に発電する約2.35メガワットアワーの電力量は、米国の一般家庭約2,350世帯分の日当たりエネルギー消費量に相当する。電力の一部と水は、北米でトヨタの物流事業を担うToyota Logistics Serviceのロングビーチ拠点に供給される。

製造する水素約1.2トンは燃料電池自動車およそ1,500台の日当たり平均走行距離に必要な充填量に相当する。併設する水素ステーションなどを通じて、日本からロングビーチ港に輸送される新車配送前の燃料電池自動車「MIRAI」や本年10月より同港湾エリアで実証実験中のFC大型商用トラックなどの燃料充填に使用する。

建設は2018年より開始し、2020年頃の稼働開始を予定している。

Tri-Genは、これまでFuelCell Energyが、米国エネルギー省、カリフォルニア州大気資源局(CARB)、同州の南部沿岸大気品質管理区(AQMD)などの公的機関や、核となる燃料電池関連技術の研究を行うカリフォルニア大学アーバイン校とともに、取り組みを進めてきた。

今回、トヨタとFuelCell Energyが協力し、Tri-Genの商用化に向けて、水素・電気・水を効率的に利用する仕組みの確立を目指す。

トヨタは、本取り組みを通じて、水素社会実現に向けたFC技術の応用拡大や水素インフラ拡充を推進するとともに、港湾エリアの大気改善に取り組むカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)やCARB、AQMDなどの環境改善目標達成にも貢献していく。

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FuelCell Energyは1969年にEnergy Research Corporation (ERC) として設立され、1992年に株式公開し、FuelCell Energy, Inc.と改称した。

その後、2007年に韓国のPOSCO Energy と提携し、東南アジア特に韓国に大々的に展開している。

同社は2014年2月に、韓国の華城市の世界最大の燃料電池パーク Gyeonggi Green Energy fuel cell parkの完成を発表した。

それぞれ 2.8 megawatt の FuelCell Energy DFC3000® 設備 21基で合計59 megawatts を発電する。

POSCO Energy は2012年11月に建設を開始し、13カ月で完成させた。

ネブラスカ州は11月20日、カナダから米メキシコ湾沿岸に原油を送るパイプライン「Keystone XL」の建設計画を承認した。

TransCanadaが建設計画中のKeystone XL Pipelineは、カナダのOil sandを採掘・処理した合成原油の輸入拡大を目指す取組みで、既に操業中のKeystone パイプライン(Phase 1-2)が、カナダ産合成原油を米国中西部製油所に輸送するのに対し、Keystone XL パイプライン(Phase 3-4)はメキシコ湾岸製油所まで輸送する。



問題になっているのは、Phase 4 で、ネブラスカ州の1/4を占めるSand Hills 地域は湿原地帯で、Ogallala Aquifer (帯水層)の上にある。
ネブラスカ州の責任者や住民は、
湿原地帯で、北から南への多くの種類の渡り鳥のCentral Flywayで、世界でも最大規模の鶴の飛来地であるSand Hills 地域への懸念に加え、Great Plains 諸州の飲用水のソースであるOgallala 帯水層を横切ることに懸念を表している。

今回の承認の直前の11月16日、サウスダコタ州マーシャル郡でKeystone パイプライン(Phase 1 )から21万ガロンの原油の流出事故が発生した。同パイプラインでは過去最大規模の流出である。

流出によって水路や水系、野生生物などに影響が出たという報告は入っていないという。

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オバマ前大統領は2015年11月6日、Keystone XLの建設計画について、環境に悪影響を与える懸念から却下したと発表した。

米国務省が入念な調査の結果、パイプラインは「米国の国家的利益に沿わない」との結論に達したのを受けたもので、大統領は「この決定に同意する」と述べた。

2015/11/11 オバマ米大統領、Keystone XL パイプライン建設計画を却下

しかし、Trump大統領は就任直後の2017年1月24日、これまで米政府が承認していなかったカナダからの原油パイプライン Keystone XL Pipeline と Dakota Access Pipeline の建設を推進する大統領令に署名した。

建設によって「2万8千人の雇用を生む」としたほか、地方の税収が向上することでインフラ投資の財源となると指摘、エネルギー安全保障の強化にもつながるとしている。

更に、「パイプラインは米国が造る。鉄鋼業の労働者が仕事に戻れる」と述べ、今後、米国でのパイプラインの建設や補修には米国製品を可能な限り使うよう求める大統領令にも署名し、商務長官に具体策の検討を指示した。

ホワイトハウスは大統領が就任演説で宣言した "BUY AMERICAN & HIRE AMERICAN!"の一環と説明している。

2017/1/26 Trump大統領、原油パイプライン建設へ大統領令


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今回、ネブラスカ州のPublic Service Commission は3対2で承認した。共和党の委員一人が、土地所有者への影響と、雇用が増える保証がないとして反対した。

当初計画ではSand Hills 地域を直接横切っていたが、今回はこれを避けるルートについて審議した。

委員会はTransCanadaが望んでいるPrefered Route(下右図の緑の線)ではなく、更に東側のAlternative Route (黄色の線)を承認した。パイプラインのPhase 1に沿ったものになる。
承認に当たり、上記のサウスダコタ州での直前の流出事故については考慮しなかった。

しかし、この案であっても、水源に悪影響を与えることや、気候変動への影響を理由に、現地の原住民や環境グループが反対するのは明らかである。

TransCanadaも委員会に対し、Prefered Routeに対し約8km遠くなり、コストアップになるとして、ルートの再検討を求めた。

実際にいつ着工できるのか、不明である。

関西電力と九州電力は11月30日、大飯原発3、4号機と玄海原発3、4号機の再稼働時期をそれぞれ2カ月遅らせると発表した。

神戸製鋼所のデータ改ざん問題の影響で、部品の安全確認に時間がかかっているため。2社は同日、原子力規制委員会に再稼働前の検査の変更手続きを届け出た。

当初予定 見直し
関西電力 大飯3号 2018年1月中旬 2018年3月中旬
大飯4号 2018年3月中旬 2018年5月中旬
九州電力 玄海3号 2018年1月 2018年3月
玄海4号 2018年3月 2018年5月

関電は、重要設備に神戸製鋼の製品が使われていないか調査したが、不正製品は見つからず、不正のあった工場から製品が納入された事実もなかった
しかし、原発の新規制基準に従って新たに設置した送水車のホースや消火設備の一部に神戸製鋼と子会社で製造したアルミ板や銅管を使用しており、安全面の検査に時間がかかっているという。

九電は神鋼のデータ改ざん問題が発覚した今年10月、稼働中の川内原発1、2号機を含め、不正な製品が使われていないかを調査した。
玄海原発では原子炉格納容器の鉄筋などに使用していることが分かったが、調査の結果、「不正が行われた製品ではなく、安全上の問題はない」と規制委に報告した。
しかし、規制委側から指摘を受けた場合に備え、主要設備だけでなく設備全般での使用状況を把握する必要があると判断し、配管や弁などの細部にわたって製造業者の確認作業を続けている。

玄海3、4号機の現場作業員は使用前検査と神鋼問題の確認作業の両方に対応する必要があり、工程を見直すことにした。


神戸製鋼所は10月8日、過去1年間に生産したアルミニウム・銅製品の検査データを改ざんしていたと記者会見で公表した。

同社は11月10日、社内調査の報告書を公表した

データ改ざんや捏造について、①収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土 ②バランスを欠いた工場運営 ③不適切行為を招く不十分な品質管理手続き ④契約に定められた仕様の順守に対する意識の低下 ⑤不十分な組織体制――の5項目が原因と結論づけた。

関電は「現時点では何も決まっていない」としつつも、「損害賠償を請求するかどうかについて、弁護士など専門家と慎重に検討している」としている。関電が賠償請求に踏み切った場合、九電も追随する可能性は高い。電気代値下げ延期で市民団体からも訴えられる可能性もある。

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現在稼働中、および審査に合格した原発は下記のとおり。

運転開始 万KW
稼働 九州電力 川内① 1984.7 89.0 2015/9/10 営業運転
九州電力 川内② 1985.11 89.0 2015/11/17 営業運転
四国電力 伊方③ 1994.12 89.0 2016/9/7 営業運転
関西電力 高浜④ 1985.6 87.0 2017/5/17 再稼働 6/16 営業運転
関西電力 高浜③ 1985.1 87.0 2017/6/6 再稼働
審査
合格
関西電力 高浜① 1974.11 82.6 40年超 2016/6/20 運転延長認可
再稼働は、必要な工事が終わる2019年10月以降。
関西電力 高浜② 1975.11 82.6
関西電力 美浜③ 1976.3 82.6 2016/11/16 運転延長認可
2020年1月の工事完了を目指す。
九州電力 玄海③ 1994.3 118.0 2017/1/18 「審査書」を正式決定
九州電力 玄海④ 1997.7 118.0
関西電力 大飯③ 1991.12 118.0 2017/5/24 審査書を正式決定
関西電力 大飯④ 1993.2 118.0

九州電力玄海原発については、佐賀県の山口祥義知事が2017年14月に再稼働に同意したことで地元同意手続きは完了している。


関西電力大飯原発については、地元のおおい町と福井県議会が既に再稼働に同意しているが、残る福井県の西川知事も11月27日の会見で再稼働に同意することを表明した。
これをうけて関西電力は、2018年1月中旬と3月中旬に再稼働させることを決めていた。

同社はまた、2基が再稼働すれば、1か月であわせて約90億円の収支改善効果が見込まれるということから、「新電力に変わったお客様にもう一度関西電力に戻ってきていただく」ため、稼働後すみやかに電気料金を下げる方針を示していた。
 

なお、大飯原発3、4号機については、福井県の住民らが関電を相手取り、運転差し止めを求めた訴訟で、1審の福井地裁は2014年5月、原発から250キロ圏内の住民は「運転により人格権が侵害される危険がある」とし、定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

これについて関電側が控訴し、名古屋高裁金沢支部で係争中で、11月20日に結審した。判決内容によっては再稼働後に運転停止に追い込まれるリスクもある。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

米上院は12月2日早朝、難航の末、税制改革法案を可決した。

議会予算局の分析で、税制改革案により、経済成長を考えない場合で、2018~2027年累計で赤字が1兆4142億ドル増えるということが判明し、共和党のなかでも反対派が続出し、当初予定された11月30日の議決は出来なかった。

反対派をなだめるため、多数の修正案を折り込んだ。法案の調整では法人税率を22%とする案も浮上したが、共和党の議会指導部は個人所得税の控除見直しなどで財源を捻出し、当初通り20%とした。

1日の深夜を過ぎてから、ほぼ500ページの、多数の修正を折り込んだ予算案が配られ、野党からは短時間で投票するのは不可能で、無責任だとの批判が飛んだ。

結果は次の通り。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 51 0 0 51
反対 1 46 2 49
棄権 0 0 0 0
合計 52 46 2 100

野党は全員が反対した。共和党では、これまで反対してきた議員は修正を受けて賛成に回ったが、財政赤字反対タカ派(deficit hawk)と呼ばれるテネシー州のCorker議員がただ一人反対を続けた。

次の上院選挙に出ないことを決めているCocker 議員は、「今後の世代への債務の重荷を増やす議案に賛成できない」と述べた。

民主党のminority leaderのChuck Schumer院内総務は議決後、共和党のやり方を「誰も誇りに思わず、全員が恥ずべきものだ」とし、「闇に紛れて、金持ちと大企業のポケットに金を押し込み、数百万の中間クラスの税金を上げるものだ」と批判した。

現在 35%の連邦法人税率は、上院案では2019年から、下院案では2018年から、20%に引き下げられる。
個人税制を巡っても違いが残る。上院案は個人減税を2025年までの時限措置にとどめ、医療保険制度改革法(オバマケア)の一部廃止も盛り込むなど複雑で、調整過程で下院側が紛糾するリスクもある。

主な違い:

下院 上院
Obamacare 個人加入義務 維持 廃止 
2027年までに13百万人が非加入に 
非加入率 11%→16%
個人所得税率引き下げ 期限なし 2025年末まで
個人所得税率 4 区分 最高は現状通り39.6% 7 区分のまま 最高 38.5%に引き下げ
遺産税(estate tax) 2024年廃止 
それまでに控除が2倍に
(550万ドルまで無税が11百万ドルまで無税)
廃止せず、縮小
550万ドルまで無税が11百万ドルまで無税
child tax credit (1人当たり) 1000$→1600$
1000$→2000$
住宅ローン金利の控除限度 ローン100万ドル→50万ドル 不変(100万ドル)
法人税率引き下げ 20%へ 2018年以降 2019年以降


いずれにせよ、連邦法人税率は20%に引き下げられ 、実効税率は日本やフランス、ドイツを下回ることとなる。

米国はカリフォルニア州のケース


なお、現在の予算は暫定予算で、12月8日までである。それまでに本予算が決まらないと政府機関の閉鎖も起こりうるが、時間切れの可能性が強い。

2017/9/9 米国、12月中旬までの債務上限棚上げと暫定予算法案成立、デフォルト回避

このため、米下院の共和党指導部は12月22日までのつなぎ予算案を提案する見通し。

また、債務上限についても9月に棚上げを決め、政府は12月8日まで新たな借り入れができるようになったが、その後は、上限を上げない限り、借り入れができない。

米議会予算局は11月30日、連邦債務上限が引き上げられなければ、財務省の資金は来年3月末もしくは4月初旬までに底を尽くとの試算を示した。

付記

米連邦予算の期限切れを12月8日の前日の12月7日、上院と下院は12月22日までのつなぎ予算を賛成多数で可決した。
上院
共和党 民主党 無所属 合計
賛成 42 38 1 81
反対 6 7 1 14
棄権 4 1 5
合計 52 46 2 100
下院
  共和党 民主党 合計
賛成 221 14 235
反対 18 175 193
棄権 1 4 5
合計 240 193 433

大統領と与野党の議会指導部は7日、ホワイトハウスで会談し、予算の上限額に関する交渉に入ることで合意した。

民主党の上下院トップは会談後の声明で、幼少期に親と一緒に米国へ不法入国した若者の在留を認める制度の存続を要求すると強調した。
大統領と共和党指導部は会談で、予算と移民政策を切り離して議論するよ
う求めた。

ーーー

これまでの経緯は下記の通り。

2018会計年度(2017年10月~2018年9月)予算の大枠となる 「予算決議」が10月に成立し、上院では過半数の51票の賛成で税制改革法案が可決できるようになった。

2017/10/24 米上院、下院に続き新年度の予算決議を可決 

米与党・共和党の議会指導部は11月2日、30年ぶりの税制改革に向けた詳細な法案を公表した。 

2017/11/6 米共和党の税制改革案

米下院歳入委員会は11月9日、共和党がまとめた税制改革法案について、予算決議で定められた1.5兆ドル以内に抑える内容の修正案 (Tax Cuts and Jobs Act) を可決した。

米下院は11月16日、連邦法人税率を2018年に35%から20%に引き下げる税制改革法案を賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 227 0 227
反対 13 192 205
棄権   2 2
合計 240 194 434

米上院共和党は11月9日、法人税の税率を現行の最高35%から20%に引き下げ、2019年に実施することを盛り込んだ減税計画を公表した。上院財政委員会が11月13日の週に同案の審議を始める。

下院が先に発表した税制改革法案では、法人税減税の実施時期は2018年となっていたが、実施を1年遅らせる。

これが上院で通っても、下院と内容が異なるため、双方の最終案を両院で調整し、調整後の法案を再度議決する必要がある。

2017/11/13 米国の税制改革法案の審議 

米上院の予算委員会は11月28日、共和党の税制改革法案を12対11で承認した。

委員会で全く議論することなく、採決にかけたもので、共和党議員12名全体が賛成、民主党議員11名全体が反対した。民主党は議論なしの採決に怒りをあらわにしている。

共和党は予算委員会の承認を受け、11月30日に本会議で可決しようとした。

しかし、11月26日に議会予算局の出した報告が、これに待ったをかけた。

議会予算局の分析では、税制改革案により、経済成長を考えない場合で、2018~2027年累計で赤字が1兆4142億ドル増えるという。1.9%の経済成長を考慮しても、赤字は1兆ドル増える。

Wall Street Journal は、「成長率1.9%が低すぎる。現在は年率3%であり、これが続けば問題はない」としている。

これにより、共和党上院議員のなかで財政赤字を懸念する議員が騒ぎ出し、大問題となった。特に財政赤字タカ派(deficit hawk)と呼ばれるテネシー州のCorker議員が強硬である。

財政赤字懸念派 を法案に賛成させるため、共和党主流は fiscal trigger (赤字が一定額になれば対応策を起動)を検討したが、この法案では無理だということが判明した。

このため、法人税率を一旦は20%に下げるが、数年後に再度上げる案などが議論された。

この結果、11月30日の採決は諦め、徹夜で作業して、12月1日に採決することとした。

蚊で蚊を駆除

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米環境保護局(EPA)は11月3日、MosquitoMate 社が開発した新しい蚊の駆除用のバイオ殺虫剤 ZAP Males® を承認した。

ヒトスジシマカ(Asian tiger mosquito:学名 Aedes albopictus)のオスに、昆虫に感染する細菌「Wolbachia」に特殊処理した ZAP strainを感染させ、自然界に放す。
蚊は、メスがヒトを刺すが、オスは刺さないため、ヒトへの害はない。

このオスの蚊(ZAP Males)は自然界のメスと交尾して卵を産んでも、オス側からの染色体がうまく生成されず、孵化しない。

この繰り返しで蚊の群れを減らすことができる。

他の昆虫や、他の種類の蚊には影響を与えないという。

今回の承認は5年間の期限付きで、ワシントンDCと、California、Connecticut、Delaware、Illinois、Indiana、Kentucky、Massachusetts、Maine、Maryland、Missouri、New Hampshire、New Jersey、Nevada、New York、Ohio、Pennsylvania、Rhode Island、Tennessee、Vermont、West Virginiaの20州での使用を認めた。

これ等の州は、フィールドテストが行われたKentucky、New York、California州と気温や降水量が似ているためで、異なる気候の、蚊の多い南部諸州では承認されていない。

5年後には新たな申請が必要となる。

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Wolbachia を利用した蚊の駆除は他でもテストが行われている。

南米ではジカ熱、デング熱などの対策として熱帯シマカの駆除テストが小規模に行われていたが、2016年に Bill and Melinda Gates Foundationと英国のWellcome Trust、米国政府、英国政府の基金とブラジル政府の追加支出により、ブラジルの Rio de Janeiro とコロンビアのMedellínで大規模テストが行われた。

豪州やインドネシア、ベトナムでのテストでも好成績を上げている。

https://www.nature.com/news/rio-fights-zika-with-biggest-release-yet-of-bacteria-infected-mosquitoes-1.20878

OPECとロシアなどOPEC非加盟の主な産油国は11月30日、ウィーンで会合を開き、2018年3月までとしている現行の減産期限を9カ月延ばすことを決めた。2018年末までの生産量抑制で足並みをそろえる。

OPECは総会で、在庫圧縮に向けた減産の効果を確認、延長を全会一致で決め、続く非加盟国との全体会合で2018年末までの協調減産継続に合意した。OPEC加盟国が日量約120万バレル、非加盟国が日量約60万バレルとする減産規模は据え置く。

1年前の減産開始以来、世界の原油在庫は減少を続け、原油相場は上昇した。しかし、この日のOPEC総会で各国代表はまだ目標の成果は得られていないとの見解で一致した。

減産合意の適用除外となっていたナイジェリアとリビアについて、両国の合計の産油量上限を2017年の水準、日量280万バレルを下回る水準とすることも決めた。

OPEC加盟国と非加盟の主要産油国は7月24日、減産合意の適用を免除されているナイジェリアの産油量に上限を設けることで合意すると共に、一部の産油国に対し減産合意の一段と厳格な順守を求めた。

ナイジェリアが産油量を現在の日量約180万バレルから増加させないこと、さらに将来的に減産を行うことで合意したことを明らかにした。ただ期限は設けず、ナイジェリアの産油状況を向こう数週間見守るとした。

リビアについては、産油量が当面は日量100万バレルを超えず、2011年の内戦勃発前の生産能力である日量140万─160万バレルを回復する公算は小さいため、産油量の制限は見送った。

サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は記者団に、低需要の冬季に差し掛かる中、減産終了について語るのは少なくとも当面、時期尚早との認識を示した。

減産継続は、原油相場の下支えが期待される半面、協調減産に加わっていない米シェールオイルの増産を招き、供給を巡る消耗戦は長期化するとみられている。

ーーー

OPECとロシアなどの非加盟の主要産油国は2016年12月10日、ウィーンのOPEC本部で閣僚会合を開き、協調減産で合意した。2017年1月から実施する。

参加国と減産量は下記の通り。(千バレル)

ロシア 300
メキシコ 100
オマーン 40
アゼルバイジャン 35
カザフスタン 20
バーレーン 小計  
63
ブルネイ
赤道ギニア
マレーシア
スーダン
南スーダン
非加盟国 11カ国 計 558
OPEC 1,164
合計 1,722


2016/12/12 OPEC と非加盟国、原油の協調減産で合意

OPECは2017年5月25日の総会で、減産を7月1日から2018年3月末まで 9カ月延長することと、赤道ギニア(Equatorial Guinea)のOPEC即時加盟を承認した。

2017/7/15 OPECの6月生産量 増加 

今回の再延長で2018年12月末までとなり、減産開始から2年間と異例の長さになる。

住友化学は11月22日、殺虫成分ピレトリンの大手サプライヤー Botanical Resources Australia とその関係会社の株式 82.9%をオーナー等から取得し、住友化学子会社MGKの持ち株と合わせ、100%子会社化したと発表した。

住友化学が86.5%出資する米国の家庭用殺虫剤Distributor の McLaughlin Gormley King Company(MGK) が既に17.1%出資している。

MGKは1970年代から住友化学のピレスロイドを扱っているが、1987年に住友化学が14%出資した。
その後、1999年に出資比率を32.88%に増やしたが、2012年に76.36%とし、現在86.5%となっている。

2013年8月に住友化学のValent U.S.Aの100%子会社であるValent BioSciences Corporation の生活環境事業を MGK に統合した。

ピレトリンは、除虫菊の花から抽出される殺虫成分で、家庭用、防疫用から農業用まで幅広く使用されている。住友化学は同じ基本化学構造を有する合成ピレスロイド系殺虫成分のメーカー。

Botanical Resourcesグループはオーストラリアのタスマニア州でピレトリンを生産しており、 除虫菊の種子改良や、ピレトリンの製造に関するノウハウの蓄積を通じて、製品(Pyrethrins 20%Pyrethrins 50%など)を安定的に供給できる信頼性の高いサプライヤーとしての地位を確立している。

同社は1996年に創業し、MGKや他のDistributorと戦略的長期供給契約を締結した。
住友化学の合成ピレスロイド供給先である米国の S.C. Johnsonにも供給している。

北米と欧州が主な製品輸出先となっている。

住友化学では、米国子会社MGKが天然ピレトリンを扱うほか、日本の子会社の住化エンバイロメンタルサイエンスがシロアリ対策の土壌処理剤や予防駆除剤に天然ピレトリン剤を扱っている。今回取得するBotanical Resourcesグループのノウハウをグループに展開するとともに、気候条件の異なる除虫菊の生産拠点を得ることで、より 安定した ピレトリンの供給体制を構築する。

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除虫菊は中央アジアからペルシャ地方の山野に自生していた野菊で、赤花種と白花種の2種類がある。
白花種に除虫の効力があることを知り、これを最初に栽培したのはユ-ゴ-スラビアのダルマシア地方である。

これが後に北米に移植されて、カリフォルニアを中心としてかなり広い範囲でもっぱら防虫用を目的として栽培された。

金鳥ブランドの大日本除虫菊の創始者、紀州有田郡の上山英一郎は1886年に米国植物会社から除虫菊を含む各種の種子を受け取った。

当初は除虫菊の乾花を粉にして炭火の上でくすべていたが、上山英一郎はこれを仏壇線香の中に練り込むことを考案し、1890年に世界初の棒状蚊取り線香を発明、1902年には渦巻き型を発売した。

上山英一郎は地元有田郡ばかりでなく、瀬戸内の島々から中国九州に、さらに北海道の荒地にも除虫菊の栽培を説いてまわった。

その結果、最盛期の1935年の日本の収穫量は乾花換算で12,750トンにも達し、その75%は米国に輸出されるまでになった。

しかし、戦中、戦後の食糧増産で日本の除虫菊生産は激減した。
他方、ケニア、タンザニアでは1928年に試作を行い、順次増産し、1933年からは輸出を始めた。1974/75年シーズンには収穫量は 15,300トンと最盛期の日本の収穫量を超えた。

その後、旱魃のためケニア、タンザニアの除虫菊生産は激減したが、 ケニアの生産は復活、現在、世界一となっている。
現在、中国の雲南省でも大量に栽培されている。

ケニア農務省によると、2004年の生産量はケニアが世界の70%で、その他はルワンダ、タンザニア、タスマニアとしている。中国は計算に入っていない模様。
 http://epzakenya.com/UserFiles/files/KenyaPyrethrum.pdf

日本では現在、尾道市因島の重井町馬神、フラワーセンター南側、白滝フラワーライン展望台の3箇所で、種子の保存と観光用として栽培されている。


1910年に
スイスのチューリッヒ工科大学のH.Staudinger博士が除虫菊の有効成分を発見し、その化学構造式を発表した。教授はこれをピレトリンと命名し、それの虫の体内での作用や、温血動物には無害であることなどを発表している。その後、StaudingerやL.Ruzicka、アメリカのF.B. La Forge らによって、ピレトリンⅠ&Ⅱ、シネリンⅠ&Ⅱが存在することを発見している。これ以降開発された類縁化合物はピレトリン類という意味でピレスロイドと呼ばれる。

住友化学は1953年大阪の酉島工場に月産100kg の設備を設け、厚生省の製造承認を得て、ピナミンと名付けて、蚊取線香および殺虫剤メーカーに試験的に販売した。
その後、農業用を含め、多種類のピレスロイドを製造販売している。

2006/8/21 夏休み特集 蚊取り線香物語 ピレスロイドの歴史

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Botanical Resourcesは豪州のタスマニア州で除虫菊を栽培している。


除虫菊は1940年代に豪州に持ち込まれた。

1983年にBritish Oxygen Companyの子会社Commonwealth Industrial Gases により、タスマニア島で試験的に栽培され、1986年に正式に栽培を開始した。1989年に米国向け輸出を開始した。
1995年には世界第二の生産国となったとしている。

1996年にCommonwealth Industrial Gaseのピレトリン関連資産をMBOする形でBotanical Resources Australia が設立され、米国のMGK その他と戦略的長期供給契約を締結した。

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