広島高裁、伊方原発3号機の運転停止の仮処分

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愛媛県の伊方原発3号機について、広島高等裁判所は12月13日、運転の停止を命じる仮処分の決定をした。
運転停止の期間については、広島地方裁判所で並行して進められている裁判で異なる結論が出る可能性があるとして、2018年9月30日までとした。

「熊本県の阿蘇山で、巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性が小さいとは言えず、新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は、不合理だ」と指摘した。

伊方原発3号機は、2016年8月に再稼働を行ったが、本年10月3日から定期検査のため運転を停止中。

今回の決定は直ちに効力が生じる。処分の効力は、決定が覆されない限り続くため、定期検査が終了する2018年2月以降も運転できない状態が続く可能性が高くなった。

四国電力は、異議を申し立ててさらに争うことができ、仮処分の効力を一時的に止める「執行停止の申し立て」を行うこともできる。

四国電力は、「速やかに異議申し立ての手続きを行います」とコメントしている。

なお、野々上裁判長は12月末で定年退官のため、今後は別の裁判官が扱うこととなる。


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広島、愛媛両県の住民4人が、「重大事故の危険がある」として、四国電力伊方原発 3号機の運転差し止め の仮処分の申し立てを行った。


広島の住民がなぜ愛媛の伊方原発の運転停止を求めるのか。

伊方原発広島裁判応援団は次のように述べている。
  http://saiban.hiroshima-net.org/why_do_we.html

伊方原発は、広島市からちょうど100kmの佐田岬半島に、瀬戸内海に面して立地しています。

伊方原発で福島第一原発事故並みの苛酷事故が起こった場合、広島市はひどい放射線被曝を強いられることが、原子力規制委員会の行ったシミュレーションで示されています。

伊方原発は、発生が予想されている南海トラフ巨大地震の震源域ぎりぎりに位置しています。また「中央構造線」という世界有数の大断層帯のほぼ真上にあります。伊方原発が巨大地震に見舞われ、それが引き金となって苛酷事故が発生する蓋然性はかなり高いはずです。またそれが、福島第一原発事故並みで収まるという保証はどこにもありません。

原発苛酷事故で放出される大量の放射性物質によって汚染された土地には、誰も住みたくありません。ふるさと広島を、放射能汚染で失うことはできません。現在の政治状況はやみくもに原発再稼働にのめっています。私たちは、司法に訴えることにしました。

2017年3月30日、広島地裁は住民側の訴えを退けた。

仮処分は他に、松山地裁、広島地裁、大分地裁、山口地裁岩国支部でも争われている。

愛媛県の住民による仮処分申請で、松山地裁は2017年7月21日、住民側の申し立てを却下する決定をした。

松山地裁の審尋で住民側は「伊方原発は南海トラフ地震の震源域にあり、中央構造線断層帯も近い。四国電の地震や津波の想定は不十分だ」と主張。「重大事故が発生した場合、住民も甚大な健康被害を受ける」と訴えた。

これに対し、四国電側は原子力規制委が策定した新規制基準に沿って安全対策を取り、審査に合格したと主張。「最新の科学的知見を踏まえた対策を講じており、安全は確保されている」と反論していた。

広島地裁が訴えを退けたのに対し、住民側は決定を不服として抗告した。

広島高等裁判所では、四国電力が想定する地震の最大の揺れや周辺の火山の噴火の危険性をどのように評価するかなどが争われた。

12月13日の決定で広島高裁の裁判長は、熊本県にある阿蘇山が噴火しても火砕流が原発に到達しないと主張する四国電力の根拠となった噴火のシミュレーションについて、「過去に阿蘇山で実際に起きた火砕流とは異なる前提で行われており、原発に火砕流が到達していないと判断することはできないため、原発の立地は不適切だ」などと指摘した。

そのうえで、「阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、原発の運用期間中に、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない。巨大噴火が起きた場合、四国電力が想定した火山灰などの量は少なすぎる」と述べた。

そして、「火山の危険性について、伊方原発が新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理で、住民の生命、身体に対する具体的な危険が存在する」として、運転の停止を命じた。

これに対し四国電力は、「3号機の基準地震動の合理性や火山事象に対する安全性の確保などについて裁判所に丁寧に主張や立証を行い、抗告を退けるよう求めてきた。当社の主張が認められなかったことは極めて残念であり、到底承服できない。内容を確認のうえ、速やかに異議申し立ての手続きを行います」とコメントしてい る。

原子力規制委員会の更田豊志委員長は、「規制委員会は、当事者ではなく、個別の民事訴訟についてコメントはできない」としたうえで、「私たちは、福島の原発事故と国内外の知見や経験を踏まえて基準やガイドなどを策定し、許認可を行っている。その基準も常に改善している」と述べ、審査は最新の知見に基づいて行われていると説明した。

今後の審査で火山の想定に与える影響については、「私たちは状況にかかわらず、科学的、技術的な知見、理解を基に判断していくだけで、審査への影響はない」と述べた。

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現在稼働中、および審査に合格した原発は下記のとおり。

運転開始 万KW
稼働 九州電力 川内① 1984.7 89.0 2015/9/10 営業運転
九州電力 川内② 1985.11 89.0 2015/11/17 営業運転
四国電力 伊方③ 1994.12 89.0 2016/9/7 営業運転
関西電力 高浜④ 1985.6 87.0 2017/5/17 再稼働 6/16 営業運転
関西電力 高浜③ 1985.1 87.0 2017/6/6 再稼働
審査
合格
関西電力 高浜① 1974.11 82.6 40年超 2016/6/20 運転延長認可
再稼働は、必要な工事が終わる2019年10月以降。
関西電力 高浜② 1975.11 82.6
関西電力 美浜③ 1976.3 82.6 2016/11/16 運転延長認可
2020年1月の工事完了を目指す。
九州電力 玄海③ 1994.3 118.0 2017/1/18 「審査書」を正式決定 再稼働延期
九州電力 玄海④ 1997.7 118.0
関西電力 大飯③ 1991.12 118.0 2017/5/24 審査書を正式決定 再稼働延期
関西電力 大飯④ 1993.2 118.0


関西電力と九州電力は11月30日、 神戸製鋼所のデータ改ざん問題の影響で、部品の安全確認に時間がかかっているため、大飯原発3、4号機と玄海原発3、4号機の再稼働時期をそれぞれ2カ月遅らせると発表した。

2017/12/5 神戸製鋼データ改ざん問題で玄海・大飯原発の再稼働を延期   

大飯原発3、4号機については、福井県の住民らが関電を相手取り、運転差し止めを求めた訴訟で、1審の福井地裁は2014年5月、原発から250キロ圏内の住民は「運転により人格権が侵害される危険がある」とし、定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

これについて関電側が控訴し、名古屋高裁金沢支部で係争中で、11月20日に結審した。判決内容によっては再稼働後に運転停止に追い込まれるリスクもある。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

付記

関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止め訴訟の控訴審で、住民側は12月18日、名古屋高裁金沢支部に対し「関西電力の火山灰濃度の想定は過少」などとして、慎重な審理を求め弁論再開の申し立てを行った。

四国電力伊方原発3号機に対する広島高裁の運転差し止め決定を新たな証拠として提出。「大飯原発では、大山が噴火した場合、関電の想定より多くの火山灰が降る可能性が高い。十分な審理が必要だ」と指摘した。

また、同原発ではデータ改ざんが明らかとなった神戸製鋼所製の部品が使用されており、「部品の強度不足は安全性に直結する重大な問題」と主張 、さらに、関電側の地盤調査が不十分であるとする新たな意見書も提出した。

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