米減税法案 成立

| コメント(0)

トランプ大統領は12月22日、大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)に署名し、法案が成立した。

また、議会は来年1月19日までのつなぎ予算を可決し、当面、安心して年を越せることとなった。

多額の財政赤字を産む大幅な減税案が通るとは思えなかった。与党共和党は52議席しかなく(しかも補選の結果、来年初めには51議席に減る)、財政赤字に反対する議員も多いため、数人が反対すればつぶれる。オバマケア廃止も数人の反対でつぶれた。

つなぎ予算が12月22日に切れ、政府機関閉鎖の可能性もあるなかで、共和党の上下院首脳が多くの修正を折り込み、反対議員を説得して、ようやく可決した。

トランプ大統領にとっては、最大の目玉が達成できたことになる。

ーーー

米共和党指導部は12月15日、35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げる大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を最終決定した。

2017/12/18 米共和党、税制改革で統一案、減税規模10年で1.5兆ドル 法人税21%で決着

米下院は12月19日、共和党指導部がまとめた大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)を採決し、可決した。

引き続き、上院で採決し、可決した。

しかし、上院審議の過程で同法案にルール上の問題があることが判明したため、上院で法案を微修正した。

このため、下院での修正法案の再採決が必要となり、下院は12月20日午後、再可決した。

2017/12/20  米減税法案、成立へ

レーガン政権だった1986年以来、約30年ぶりとなる税制の抜本改革が実現する。

大統領は議会のメンバーと法律の通過を祝い、「米国史上、最大の減税だ。記録破りなことをなし遂げた」と誇り、法人税率の大幅引き下げで「企業と雇用の流出に歯止めをかける」とも主張した。
スピーチの最後に、
"We are making America great again !" と述べた。

大統領は、直ちに法案に署名して成立させるものと見られていたが、ホワイトハウスは、署名が12月21日以降にずれ込むと指摘した。

問題は、この税制改正により、年1500億ドル規模で財政赤字が増えることである。

米国には1990年に導入されたPAYGO(Pay-as-you-go)原則がある。

財政悪化を抑えるため、新法や法改正で新たに財政赤字が発生する場合、同額をほかの歳出予算から強制削減する仕組みである。

前年の1月から12月の1年間に成立した全法案が対象となる。

このままでは、2018年から減税による財政赤字増加分を人件費や社会保障などを削減する必要がある。

これを避けるためには、2001年のBush減税の時と同様に、PAYGO原則を適用除外とする法律が必要である。

今回、税制改正法案の審議がずれ込み、PAYGO原則を適用除外とする法律が間に合わなかった。

さらに、現在の米連邦予算は暫定予算で、12月22日までのつなぎ予算である。それまでに本予算を通すか、更なるつなぎ予算を議決しないと政府機関の閉鎖となる。
このため、議会は予算問題を優先した。

PAYGO原則を適用除外とする法律が間に合わない場合に備え、署名を1月3日まで延ばす案が有力となった。
この場合、強制削減の実施は2019年からとなるため、それまでに
PAYGO原則を適用除外とする法律を可決させればよいこととなる。
その場合も、新税制は2018年1月1日に遡り適用できる。

しかし、これは杞憂に終わった。

下院は12月21日、2019年1月19日までのつなぎ予算を可決したが、この法案にPAYGO原則を適用除外とする項目が挿入された

共和党 民主党 合計
賛成 217 14 231
反対 16 172 188
棄権 6 7 13
合計 239 193 432

上院も同日可決した。PAYGO原則を適用除外とする項目を外すことを求める 声が出たが、91対8の投票で含めることとなった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 48 17 1 66
反対 2 29 1 32
棄権 2 2
合計 52 46 2 100

この結果、とりあえず2018年1月19日までは政府機関の閉鎖の心配はなくなった。

同時にPAYGO原則が適用除外となり、大統領が減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)に署名し、法律としても、財政赤字増加分相当の予算減を求められることもなくなった。

ーーー

今後は、つなぎ予算以降の本予算の決定と、債務上限の引き上げが問題となる。

債務上限についても、政府は12月8日まで新たな借り入れができるようになったが、その後は、上限を上げない限り、借り入れができない。

米議会予算局は11月30日、連邦債務上限が引き上げられなければ、財務省の資金は来年3月末もしくは4月初旬までに底を尽くとの試算を示し ている。

コメントする

月別 アーカイブ