2018年2月アーカイブ

国際石油開発帝石(INPEX)は2月26日、UAEのアブダビの沖合の下部ザクム油田について、本年3月9日から2058年3月8日までの40年間の利権を取得する契約を締結したと発表した。

また、2017年1月15日に25年間の権益延長の基本合意をしているサター油田及びウムアダルク油田(合計生産量:日量約3.5万バレル) について権益期限の延長の契約を締結した。
ウムアダルク油田については権益比率の12%から40%への増についても契約した。

下部ザクム油田については、従来の12%から10%に減る。また、残る3油田については、従来12%の権益を持っていたが、ゼロになった。
これら4油田については、中国やインドなどが参入を狙うなど激しい国際競争のなか、下部ザクム油田を最優先に交渉した。政府要人が繰り返し訪問した。

ウムアダルク油田の権益比率の増や、増産を合わせ、INPEXの持分は日量約25万バレルから2020年代半ばに約28万バレルに拡大する。

2014年に15年延長した上部ザクム油田は、日量約70万バレルから最終100万バレルに増強する。

2015年に権益取得した陸上ADCO鉱区(下記)は日量約160万バレルから2018年末に180万バレルに増強する。

下部ザクム油田は日量約45万バレル、ウムアダルク油田は約2万バレル、サター油田は2.5万バレル。


アブダビ沖合のADMA鉱区では、石油公団(当時)が保有するジャパン石油開発(JODCO)が下記の7つの鉱区で権益を持っていたが、INPEXは2004年5月に、ジャパン石油開発の全株式を株式交換により取得し、同社を完全子会社化した。

契約地域(鉱区)

当初権益比率

JODCO ADNOC その他
ウムシャイフ油田 12% 60% BP   14.67%
TOTAL 13.33%
ナスル油田
ウムルル油田
下部ザクム油田
上部ザクム油田 12% 60% ExxonMobil 28%
ウムアダルク油田  12% 88%

サター油田(SARB) 40% 60%

これらの油田は 相次いで期限が来るため、延長交渉を行ってきた。

上部ザクム油田(2026年3月9日期限)

INPEXは2014年1月、これを2041年12月31日まで15年余 延長することを決定した。

ウムアダルク油田とサター油田(2018年3月8日期限)

世耕経済産業相は2017年1月15日、訪問先のUAEでアブダビ国営石油会社(ADNOC)のCEOと会談し、INPEXが保有するアブダビ海上のサター油田及びウムアダルク油田(合計生産量:日量約3.5万バレル)の権益期限の延長(25年間)とウムアダルク油田の権益比率増に基本合意した。

今回、これに基づき契約を締結した。ウムアダルク油田 の権益は40%となった。INPEXは契約に当たり、250百万ドルを支払う。

なお、アブダビ国営石油会社は2018年2月18日、スペインのCepsaとの間で、サター油田とウムルル油田の20%の権益を与える契約を締結している。
Cepsaは15億ドルを支払う。

問題は残る4つの油田で、ジャパン石油開発はそれぞれ12%の権益を持つ。
2018年3月に期限がくるが、生産コストが安く探鉱リスクもないことから、BPやTOTALが比率拡大を狙うほか、中国も新規参入を目指しており、今後、激しい国際競争が予想された。ADNOCは2017年8月7日、他数(more than a dozen )の相手と交渉中であると発表した。

下部ザクム油田

今回、ジャパン石油開発は10%の権益を取得した。2058年3月8日までの40年間の権益で、契約に際し、6億ドルを支払う。

ADNOCは2月10日、10%の権益をONGC Videshなどインド企業3社のコンソーシアムに与えた。

ADNOCは現在の持分60%のうち20%を今後譲渡することを明らかにしており、合計40%が外部企業に渡されることとなる。

ウムルル油田

上記の通り、スペインのCepsaに20%が与えられた。

ウムルルを含め、3つの油田の権益についてはADNOCが最終の詰めを行っている。

鉱区

今回改正(青字は変更点)

新期限
JODCO ADNOC その他
ウムシャイフ油田

12%→0%

60% 未定 40%
ナスル油田 60% 未定 40%
ウムルル油田

60%

Cepsa 20%
未定 20%
2058/3/8
下部ザクム油田 12%→10% 40% ONGC Videsh 10%
未定 40%
2058/3/8
上部ザクム油田 12% 60% ExxonMobil 28% 2041/12/31
ウムアダルク油田 12%→40% 60% 2043/3/8
サター油田(SARB) 40% 40%

Cepsa 20%

2043/3/8

ーーー

なお、国際石油開発帝石(INPEXは2015年4月27日、ジャパン石油開発(JODCO)がアブダビ首長国の陸上のADCO鉱区の5%の参加権益を取得し2015年1月1日からの40年間を契約期間とする利権契約を同国政府及びアブダビ国営石油会社(ADNOC)と締結したと発表した。

2015/4/29 国際石油開発帝石、アブダビ首長国の陸上ADCO鉱区の権益取得

ADCO鉱区は4つの地域に分かれている。

1)SE Hub (South East Asset)

Asab 油田 
Sahil 油田 
   
Shah 油田    
Qusahwira 油田
Mender 油田  

2)Bab Asset

3)Bu Hasa/Huwaila/BQ Assets

Bu Hasa 油田  
Huwaila 油田   
Bida Al-Qemzan (BQ) 油田 

4) North East Bab (NEB)

Dabbiya 油田
Rumaitha 油田
Shanayel 油田


ADCO鉱区は
ADNOCが60%、BP、Shell、Exxon Mobil、Total が各9.5%で計38%、ポルトガルのPatex Oil and Gasが2%であったが、これら各社の権益は2014年1月10日に期限切れで失効した。

新しく2054年12月31日までの40年間の権益が与えられることとなり、各社が応札した。

最終の 権益は下記の通り。

ADNOC 60%
Total、BP 各10%、CNPC 8%、
ジャパン石油開発 5%、中國華信能源(CEFC China Energy) 4%、GS Energy 3%


韓国の産業通商資源部の金鉉宗通商交渉本部長は2月21日、 コスタリカ・エルサルバドル・ホンジュラス・ニカラグア・パナマの中米5カ国の通商長官と会い、韓-中米FTA協定文に正式署名した。

2015年6月にグアテマラを含む中米6カ国との交渉 を開始、2016年11月16日に実質的に妥結したと報じられた。
その後、各国で手続きを進めていた。

グアテマラについては、ソフトドリンク、セメント、プラスチック、紙と段ボール、履物、金属など15関税品目について韓国側の要求がペンディングとなっている。
両国は引き続き交渉を行い、まとまれば韓-中米FTAに加盟する。

今回のFTAは商品やサービス、投資、知識財産権などを含む高い水準の包括的協定で、韓国と中米5カ国は全体品目の95%以上について即時あるいは段階的に関税を撤廃していく。
自動車や鉄鋼、合成樹脂など主力輸出品目だけでなく、化粧品・医薬品・繊維などの輸出も増加する見通し。

米や唐辛子、ニンニクなど農産物は譲歩対象から除外した。牛肉は2019年、豚肉は10~16年の期間を置いて関税をなくしていく。

サービス市場は世界貿易機関(WTO)より開放水準が高い。体系的なISDS(投資家対国家の紛争解決)を導入し、投資企業の自由な送金を保障するなど投資家保護を強化した。

WTO政府調達協定に加入していない中米国の政府調達市場に進出する道も開かれた。エネルギー・インフラ・建設分野が恩恵を受けるものとみられる。特に、コスタリカとパナマは大規模な民間資本事業に韓国建設会社が参加することも許容する。

通関・認証・知識財産権などの分野では、国家間の非関税障壁を解消するなどビジネス環境を改善することで合意した。

協定は早ければ上半期中に発効するものとみられる。

金本部長は「今回のFTAは韓国と中米がより包括的で戦略的なパートナーシップを形成する契機になる」と述べた。

韓国のこれら5カ国との貿易状況は下記の通り。

アジアで中米5カ国とFTAを締結したのは韓国が初めて。
中国はコスタリカとFTAを結んでいるが、残りの国家とはまだ。

日本はこれらのどの国ともFTAは結んでいない。

韓国 日本


チリ(TPP 参加) 2004/4/1 発効 2007/9 発効
ペルー(TPP 参加) 2011/8/1 発効 2012/3 発効
コロンビア 2016/7/15 発効 交渉中



6


ニカラグア
エルサルバドル
ホンジュラス
コスタリカ
パナマ
2018/2/21調印
グアテマラ 2016/11/16実質的妥結
なお交渉中


日本と韓国のFTAの全体の状況は下記を参照。
  http://www.knak.jp/blog/FTA.htm


EUの欧州委員会は2月21日、3つのカルテルで制裁金を課したと発表した。うち2件は日本企業を含む。

1)自動車輸送

欧州委員会は、日本郵船(NYK)、川崎汽船("K" LINE)、商船三井(MOL)の日本企業3社と、ノルウェー/スウェーデンのWWL-EUKOR、チリのCSAVの海運5社が自動車の輸送でカルテル行為をしていたと認定し、調査に協力したとして制裁金を免除された商船三井を除く4社に、合計で約3億9500万ユーロ(約520億円)の制裁金を科した。

2006年から2012年にかけての6年間、乗用車やトラックなどを運ぶ大型貨物船の欧州と北米、アジアなどを結ぶ航路で輸送費を操作していた。

制裁金は次の通り。

  Leniencyによる減額 同意決定手続きによる減額 制裁金 
  千ユーロ
商船三井 100% 10% 0
日本郵船 20% 10% 141,820
川崎汽船 50% 10% 39,100
WWL-EUKOR 20% 10% 207,335
CSAV 25% 10% 7,033
合計 395,288

商船三井はカルテルの存在を通知し、約
203 百万ユーロの制裁金全額を免除された。

日本郵船は欧州委による制裁金の支払い命令を見越し、約196億円の引当金を計上済み。


自動車輸送船の価格カルテルを巡っては、2012年に発覚した。

既に日本の公正取引委員会や米司法当局も制裁金を課している。

公取委は2014年3月18日、自動車運送業務を行う船舶運航事業者に対し、独禁法違反行為を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
商船三井は違反を事前に自主申告したため、課徴金減免制度の適用を受けた。《 》は減免率

北米航路 欧州航路 中近東 大洋州 課徴金
(千円)
日本郵船  4,022,420 《30%》 3,876,500《30%》 3,549,190
《30%》
1,652,960
《30%》
13,101,070
川崎汽船 1,918,910
《30%》
1,561,430
《30%》
1,155,090
《30%》
1,062,960
《30%》
5,698,390
Wallenius Wilhelmsen Logistics
(
ノルウェー)
54,350 3,441,360     3,495,710
日産専用船   423,310
《30%》
    423,310
商船三井 《100%》 《100%》 《100%》 《100%》 0
合計 5,995,680 9,302,600 4,704,280 2,715,920 22,718,480


2014/3/22  公取委、自動車運送の船舶運航事業者に課徴金納付命令 

米国も米国発、米国着の乗用車・トラックなどの roll-on, roll-off cargo の輸送のカルテルの調査を行った。
日本の2社を含む3社が罰金支払いに同意した。

Compañía Sud Americana
de Vapores S.A. チリ
2014年2月 8.9百万ドル
川崎汽船 2014年9月26日 67.7百万ドル
日本郵船 2014年12月29日 59.4百万ドル

このうち、川崎汽船と日本郵船については役員等も摘発され、3人が禁固刑と罰金刑を受け、他の2人が起訴されている。

川崎汽船 H T 2015/1/30 18 months 2万ドル
T Y 2015/2/6 14 months 2万ドル
Y A 起訴  2015/10/6
日本郵船 S T 2015/3/10 15 months 2万ドル
M K 起訴  2015/10/6


2015/3/12 米、海上貨物輸送カルテルで3人目の日本人に禁固刑

2) 点火プラグ

欧州委員会は、日本のデンソーと日本特殊陶業(NGK)、ドイツのBoschの3社が自動車の点火プラグに関し、2000年から2011年の間にカルテル行為をしていたと認定し、合計で約7600万ユーロの制裁金を科した。

制裁金は次の通り。

  Leniencyによる減額 同意決定手続きによる減額 制裁金 
  千ユーロ
デンソー 100% 10% 0
Bosch 28% 10% 45,834
日本特殊陶業 42% 10% 30,265
合計 76,099

Denso はカルテルの存在を通知し、約1百万ユーロの制裁金全額を免除された。

3) ブレーキシステム

欧州委員会は2つのカルテルを摘発した。

一つはDaimlerとBMW向けの油圧ブレーキで、もう一つはVW向けの電気ブレーキのカルテル。

Leniencyによる減額 同意決定手続きによる減額 制裁金 
 千ユーロ
Daimler BMW
油圧ブレーキ TRW
(現在は ZF TRW)
100% 100% 10% 0
Bosch 35% 35% 10% 12,072
Continental 20% 100% 10% 44,006
電気ブレーキ Continental 100% 10% 0
Bosch 30% 10% 19,348

丸紅は2月7日、インドネシアの最高裁で敗訴となった2つの訴訟のうち、2つ目についても最高裁に対して司法審査(再審理)を申し立てたと発表した。

本件は同一事案に関して、最高裁が全く逆の判断をしたものである。

訴訟の相手はSugar Groupで、丸紅によると、丸紅等がSugar Group子会社に対して債権を保有し、支払いの催促を行ったところ、債務の履行を免れることを狙い、交渉材料として荒唐無稽な主張に基づき、債権・担保の無効確認と損害賠償を請求してきていたもの。

訴えられたのは次の各社:
丸紅、丸紅ヨーロッパ、三井住友銀行、住友信託銀行、PT Mekar Perkasa(Salimグループで、Sugar Group の旧オーナー)とその役員、および公証人

インドネシア最高裁は2011年3月、旧グヌンスギ訴訟で丸紅等に対し逆転勝訴の判決を下した。

しかし被告側は同一内容の訴訟を改めて2つの裁判所に対して行い(南ジャカルタ訴訟とグヌンスギ訴訟)、両訴訟について最高裁が丸紅側の敗訴の判決を行った。

これはSugar Groupの主張を全面的に棄却した旧訴訟での最高裁自身の判決と明らかに矛盾するもので、丸紅は判決の不当性を明らかにするため、インドネシア最高裁判所法に基づき、司法審査(再審理)を申し立てたもの。

事態の経緯は以下の通り。

旧グヌンスギ訴訟

進行中

南ジャカルタ訴訟 グヌンスギ訴訟
訴訟内容 損害賠償等 損害賠償等 損害賠償等
訴訟額 1110百万米ドル 450百万米ドル 650百万米ドル
2007/11 一審 敗訴
2008/10 二審 敗訴 53名中23名
 賠償額 約10百万ドル
2011/3 最高裁 勝訴
 原告主張を棄却
2013/5 二審敗訴 7名中5名
 賠償額 250百万ドル
2014/6 二審敗訴 6名中4名
  賠償額 250百万ドル
2017/5 最高裁 敗訴
 上告棄却
2017/9 最高裁 敗訴
 上告棄却

この裁判では、丸紅の説明も完全ではなく、よく分からない。

現地の報道では、丸紅がアレンジした貸付は1993年で、Salimグループの PT Mekar Perkasa 時代の砂糖工場の建設費である。

インドネシア財閥の林紹良が率いるSalimグループは1997年の通貨危機で破綻、資産管理会社 Holdiko に移管され、順次売却された。

Sugar グループも2001年11月にPT Garuda Panca Arta がオークションでIndonesian Bank Restructuring Agency (IBRA)から買収した
その際に、
PT Mekar Perkasaと丸紅が、負債を新 Sugar Groupに移管したとされる。PT Mekar Perkasaは保証人となった。

しかし、現在のSugar グループはこれを認めておらず、PT Mekar Perkasaとその役員も訴訟相手としている。インドネシアの法律では、債権の譲渡は債務者の了承が必要となっているとされる。

現地報道では、Salimグループの各社がIndonesian Bank Restructuring Agency (IBRA)に引き渡された時点
Master Settlement Acquisition Agreementで、IBRAは全ての債務・保証から免除されることになっているという。これが事実なら、新Salimは以前の負債を引き継がないこととなるが、負債は存在するとする意見もある。

丸紅も、Sugarグループの主張を荒唐無稽な主張とするだけで、その内容が不明で、一審、二審の判決理由も明らかでない。


なお、現地報道では、Mekar Perkasaは長年の裁判で疲れ、2016年9月にSugar グループにインドネシア法に基づく債務支払猶予(PKPU) の申請を行った。
しかし、裁判所はSugar グループに債務がないことを示すことを求めた。

Mekar Perkasaがこれに従ったかどうか不明だが、Mekar Perkasaが裁判から離脱した可能性もある。
南ジャカルタ訴訟とグヌンスギ訴訟の二審では、被告のうち2名を除く全員に連帯した賠償を命じている。 Mekar Perkasaとその役員が除かれた可能性もある。

これまでの3つの裁判での3審(一審、二審、最高裁)の計9審で、丸紅側の勝訴は最初の裁判の最高裁だけであり、単純なものでは無さそうだ。

Garuda Panca Arta がオークションで IBRAからSugar グループを買収した際に、この債務が含まれていたがどうかがキイではないだろうか。

塩野義製薬は2月23日、抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ錠 10mg・20mg」(一般名:バロキサビル マルボキシル、開発コード S-033188)について同日付で「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」の適応で製造販売承認を取得したと発表した。 薬価基準収載後、速やかに発売する予定。

塩野義製薬は2017年10月に日本国内における製造販売承認申請を行った 。

2017/10/28 塩野義製薬、新規インフルエンザ治療薬の国内製造販売承認申請

厚労省の薬食審医薬品第二部会は本年2月2日、承認することを了承している。 同省担当官は新規作用のインフルエンザ治療薬であることから審査を早めたとしている。

今回の承認取得で、先駆け指定品目では初めての承認医薬品となる。

付記

新薬「ゾフルーザ」が3月14日から保険適用されることになった。中央社会保険医療協議会が3月7日に了承した。塩野義製薬は「速やかに発売する」としている。

価格は10ミリグラム錠約1500円、20ミリグラム錠約2400円。体重60キロの成人は20ミリグラム錠を2つ(4800円)のむ。12歳未満の子どもで体重15キロなら、10ミリグラム錠を1つ(1500円)。患者側は1~3割を負担する。

付記

塩野義製薬は6月26日、同社が開発したインフルエンザ感染症治療薬バロキサビル マルボキシルについて、新薬承認申請が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査の対象品目に指定されたと発表した。FDAの審査終了目標日は2018年12月24日。

ーーー

塩野義製薬創製の新規キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬S-033188(ゾフルーザ錠)は既存の薬剤とは異なる作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制する新規化合物であ り、2015年10月に厚生労働省より、一定要件を満たす革新的新薬として先駆け審査指定制度(後記)の対象品目に指定されている。

タミフルが5日間の服用が必要なのに対し、成人、小児を問わず経口による1回のみの服用で治療が完結するのが特徴。

塩野義では、経口の単回投与であることから、利便性が高く、治験では投与翌日には50%以上の患者(小児を含む)でウイルス力価の陰性化が認められとし、そのため「家庭内や学校、職場等でのウイルス伝播、飛沫感染拡大に対しても一定の抑制効果を示すことが期待される」としている。

非臨床試験において、鳥インフルエンザウイルス(H5N1やH7N9) や、 既存のインフルエンザ治療薬に耐性を有するウイルス株を含む、様々な亜型のA型インフルエンザウイルスに対してもウイルス増殖抑制効果が確認されている。

新規作用機序のため、耐性ウイルスが出現しても効果を発揮することも期待される。

これは、ウイルスが細胞に進入後、最初の反応となるmRNA合成の開始を特異的に阻害するCapエンドヌクレアーゼ阻害剤である。
ウイルスの増殖に必要なタンパク質が合成できなくなり、ウイルス粒子が形成されなくなる。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐもの。

オセルタミビル(oseltamivir)  Roche 商品名 タミフル
ラニナミビル(Laninamivir) 第一三共 商品名 イナビル
ペラミビル (Peramivir)     米国 BioCryst Pharmaceuticals

発症後48時間以内に服用しなければ効果が得られず、タミフルの場合は5日間程度服用を続ける必要がある。

エボラ出血熱の治療に使われた富士フィルムのファビピラビル(favipiravir)(商品名アビガン)は元々インフルエンザ用治験薬で、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

2015/11/6 塩野義製薬、インフルエンザ新薬を開発、1回投与で治療

塩野義はスイス製薬大手、ロシュと開発面で提携し、日本と台湾を除く国・地域で治験などで協力を得ている。

ロシュはタミフルの製造販売で実績があり、世界販売での連携も視野に入れる。

米国では2018年中にも米食品医薬品局(FDA)に承認申請を行う。 米国においては、塩野義は本薬を上市後にRocheと共同プロモーションする権利を留保している。

2016/3/2 塩野義製薬、新規インフルエンザ治療薬の開発でRocheと提携 

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先駆け審査指定制度は、2014年6月に厚労省が取りまとめた「先駆けパッケージ戦略」の重点施策や、「日本再興戦略」改訂2014を踏まえて導入したもの。

患者に世界で最先端の治療薬を最も早く提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な新薬等について、開発の比較的早期の段階から対象品目に指定し、薬事承認に係る相談・審査における優先的な取扱いの対象とするとともに、承認審査のスケジュールに沿って申請者における製造体制の整備や承認後円滑に医療現場に提供するための対応が十分になされることで、更なる迅速な実用化を図る。

原則として既承認薬と異なる作用機序により、生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して、極めて高い有効性が期待される医薬品を指定する。

審査期間をこれまでの半分の6ヶ月まで短縮することを目指す。

医薬品 先駆け審査指定制度  対象品目

指定日 医薬品名称 申請者 対象
2015/10/27 シロリムス ノーベルファーマ 結節性硬化症に伴う線繊維腫
NS-065/NCNP-01 日本新薬 シュシェンヌ筋ジストロフィー(GMD)
S-033188 塩野義製薬 A型 or B型インフルエンザウイルス感染症
BCX7353 Integrated Development
Associates
遺伝性血管浮腫(HAE)の患者を対象とした血管性浮腫の発作の管理
ASP2215 アステラス製薬 初回再発or治療抵抗性のFLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病
ペムブロリズマブ
キイトルーダ
MSD 治癒切除不能な進行・再発の胃癌
2017/4/21 オリプダーゼアルファ
(遺伝子組換え)
サノフィ 酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症
aducanumab バイオジェン・ジャパン アルツハイマー病の進行抑制
DS-5141b 第一三共 デュシェンヌ型筋ジストロフィー
SPM-011 ステラファーマ 再発悪性神経膠腫、切除不能な局所再発頭頸部がん並びに局所進行頭頸部がん(非扁平上皮がん)
ニボルマブ
オプジーボ
小野薬品 胆道がん


他に、医療機器、体外診断用医薬品、再生医療等製品の先駆け審査指定制度がある。


富士フイルムグループのジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)は2月20日、関西医科大学より、先天性巨大色素性母斑を対象とした新たな臨床研究に用いる母斑組織の高圧処理を受託すると発表した。患者の表皮の自家培養も行う。

「先天性巨大色素性母斑」は、生まれつき、顔や手のひらなどに生じる大きなホクロで、一般的に大人になった段階で直径20cm以上になる。色素性母斑は悪性黒色腫 や有棘細胞癌などの悪性腫瘍ができやすくなる。巨大色素性母斑の悪性黒色腫の発生頻度については4.5%から10%とされる。

巨大母斑の治療は、2、3回に分けて切除する分割切除術や組織拡張器(シリコンでできたバック)を皮下に埋入し、数ヶ月かけて皮膚を拡張させた皮膚を用いて再建を行う方法、患者の皮膚を採取し移植する植皮手術、レーザー治療などが行われる。しかし、大きな手術侵襲(身体的負担)があり、母斑切除部の長い傷跡、皮膚採取部位の傷跡ができる、などの問題がある。

関西医科大学形成外科学講座の森本尚樹講師(現在 准教授)らの研究グループは2015年12月7日、これまで治療が困難だった先天性巨大色素性母斑に対する皮膚再生治療を開始すると発表した。
再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく第2種分野の臨床研究で、開催医科大学倫理委員会の承認と京都大学特定再生医療等委員会の審査が終了したことから、臨床研究を開始するもの。

この研究のポイントは次の通り。

  • 腫瘍細胞を含む母斑皮膚を高圧処理(2000気圧、10分間)で死滅処理した後に再移植し、培養細胞と組み合わせて皮膚を再生する。
  • 残留毒性が懸念される薬品を用いない物理的な処理方法であり、高い安全性が確保できる。
  • 腫瘍組織を死滅処理し、破棄することなく皮膚再生に再利用する世界初の治療法。
  • 母斑が大きくて手術をしていない患者、何度も手術したが母斑が残存している患者でも比較的小さな侵襲で実施できる。

真皮の中に母斑細胞といわれる細胞が存在し、色素性母斑は母斑細胞がメラニン色素を産生するために生じる。先天性巨大色素母斑は産まれた時から存在する大きな色素性母斑で ある。


表皮は表面の薄い膜、真皮は強度を保つ結合組織で、表皮は真皮のないところには形成されない。
表皮は自家培養で再生できるが、真皮は再生方法が確立されていない。


母斑組織を比較的低い2,000気圧で10分間処理する。これにより、皮膚の主要成分であるコラーゲンなどを損傷することなく自然のまま残し、母斑細胞などの細胞を完全に死滅させることに成功した。
過去の実験で、高圧処理した母班からは母斑が再発しないこと、高圧処理済みの母斑を患者に移植するとうまく適合し、培養表皮を組み合わせることで患者自身の皮膚を再生できることを確認している。

1回目の手術で、母斑を切除し、高圧処理し、処理した母斑を患者に再移植する。

別途、患者の正常皮膚を採取し、J-TEC培養してシート状自家培養表皮(製品名:ジェイス)にする。

ジェイスは、日本初の細胞使用製品として2007年10月に国から承認を受け、重篤な広範囲熱傷のみに使用可能(保険適用)となっている。体表全体を覆うくらいの大きさの培養表皮が作成できるが、真皮がない部分には生着しない。

2回目の手術では、1回目の手術から4週間後(2~6週間後)に、生着した母斑(真皮に相当)の上に自家培養表皮を移植する。

下部の皮下組織から繊維芽組織や血管が侵入する。メラニン色素を生成していた母斑細胞は消えている。


臨床研究開始時点では、高圧処理は大学で行い、自家培養表皮の作成をJ-TECに委託するとしていた。

今回のJ-TEC発表では、高圧処理についてもJ-TECで行う。

関西医科大学で採取された患者の組織(母斑皮膚および切手大の正常皮膚)は、J-TECへ輸送され、母斑皮膚を高圧処理(2000気圧、10分間)で不活化し、また、約3~4週間かけて自家培養表皮「ジェイス」を製造し、関西医科大学へ届ける。

J-TECでは、本臨床研究に用いる高圧処理した母斑組織のみならず、「ジェイス」 や自家培養軟骨「ジャック」のさらなる普及を図るとともに、細胞培養をはじめとする受託を通じて臨床研究や臨床試験、再生医療等製品の製造をサポートし、患者の生活の質(QOL)の向上に寄与することを目指すとしている。

 


Xeroxの大株主で「物言う株主」として知られる著名投資家 Carl Icahn と同じく大株主のDarwin Deason は富士フィルムによる買収に反対し、株主に訴え続けている。

Darwin Deason は差し止めを求める訴えをニューヨーク州の裁判所に起こした。

2018/2/15   富士フイルムによる買収、ゼロックス大株主が差し止め提訴  


Carl Icahn とDeasonは2月20日、
Xeroxの株主に対し「競合他社との合併や身売り」や「買収ファンドへの身売り」を提案する書簡を公開した。

http://carlicahn.com/joint-statement-with-darwin-deason-regarding-xerox-3/

ゼロックスが敵対的買収で株式の30%を売却する場合、アジア太平洋の360億ドルの市場でのゼロックスの知的財産権と製造権を富士フィルムに渡すという企業買収防衛策としての重要資産の売却条項("crown jewel" lock-up right)があり、このため、他社への身売りは出来ないとされているが、これに対しては手があるとする。

一つは、富士ゼロックスの経理スキャンダルを理由に契約違反としてJV契約を打ち切ることで、それが出来ない場合でも、これまで明らかにされていないが、2020年には契約上、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つとしている。Xeroxは富士ゼロックスから製品の供給を受けているが、それまでに供給ソースを探すべきだとしている。

概要は次の通り。

今回の富士フィルムによるXeroxの50.1%買収の案に対し、最善の代替案は競争相手との統合又は売却か、ファンドへの売却だ。
富士ゼロックスJVの契約の縛りを避け、最終的に、Xeroxの商標、特許を使ってアジア市場で事業が出来るということを理解すれば、大きなプレミアムを払うだろう。

直ぐに行動する必要がある。さもないと、49.9%となる我々株主の投票権は無くなってしまう。

富士フィルムが50.1%を取得するのは、合併のシナジー効果を信じているからではなく、我々株主がXeroxに影響を持ち続けた場合の大被害を防ぐためだ。彼らは17億ドル (2020年までに12億ドル)のシナジー効果など信じていない。もし信じているなら、何故、現在のオファーよりも高いプレミアムを払って全体を買わないのか。

会社側の主張は嘘だらけだとし、7点を列挙している。その一部。

Xeroxが富士を必要とするのではなく、富士がXeroxを必要としている。

富士ゼロックスJVは富士フィルムの売上高の50%近く、損益の約40%を占める。またXeroxは富士ゼロックスの最大の需要家だ。

Xeroxが(技術契約が切れるまでの)次の3年間でサプライチェーンを広げ、富士ゼロックスから距離を置けば、Xeroxのアジアでの販売を妨げている技術契約を更新しないこともできる。富士はこれを恐れる。

CEOは恐らく、サプライチェーン拡大は競争相手から安く買うのは無理なため馬鹿げているというだろう。しかし、Hewlett-Packardは印刷ではCanonの競争相手だが、レーザー関連ではCanonから購入している。業界はそういったものだ。

富士ゼロックスのJV契約はひどいものだが、Xeroxにとって打つ手は多くある。

取締役会はJV契約は法的書類であり、打ち切ったり修正したりできないとしているが、事実でない。

昨年の富士ゼロックスの経理スキャンダルはJV契約の重大違反であり、契約を終息できる。

それが出来ない場合でも、契約上、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つ。その場合、Xeroxは世界で唯一の成長市場であるアジア太平洋市場でXerox商標で事業ができる。

既存株主は強力なマイナリティ株主保護を受けるとするが、富士フィルムが少数株主を圧迫するのを避ける手はない。

例えば、富士の子会社にFUJIFILM Specialty Ink Systems という会社があり、Xeroxの高性能インクジェット製品と直接競合する。この分野でXeroxが犠牲になる可能性もある。

ーーー

これに対し、Xeroxも反論の声明を出した。

2人の公開状は「富士フイルムによる買収計画を邪魔する活動の一環だ」と指摘し、「取締役会と経営陣が幅広く選択肢を精査した結果、富士フイルムと一緒になることが最善策と判断した」と説明した。

2人の指摘するポイントについては、なんら触れていない。

Icahn等は富士フィルムによる買収発表前に、CEOと取締役会の問題を指摘し、退任を要求した。

富士フィルムによる買収については、「富士フィルムが一銭も使わずに ゼロックスの支配権を得る」こと、「我々自身の資産を処分して行われる」一時的な特別配当を不満とした。 シナジー効果については、合併しなくても可能と主張した。

更に、富士ゼロックスJVの契約に、実質的にXeroxの外部への売却を禁じる"crown jewel" lock-up right項目があることを、17年間隠していたことを批判。

今回は、この項目があっても、Xeroxがアジア市場を取り戻し、外部に高く売却できると主張した。

これらについては全く触れず、二人が退任を要求している取締役会と経営陣が最善と判断したというだけでは、説得力はない。

米ゼネラル・モーターズは2月13日、経営難にあえぐ韓国GMの群山工場 での生産を2018年5月末までに終了し、工場を閉鎖すると発表した。
12日午前に韓国政府が「自力更生案を持ってくるように」と求めると、同日夕に工場閉鎖決定を通知した。

GMは「この3年間の群山工場の稼働率は20%に満たず、工場閉鎖は避けられない」と説明した。従業員は全員が希望退職の対象に分類された。

群山工場は2002年にGMが大宇から買収したもので、2本の生産ラインで準中型車の Cruze SUVのOrlandoを生産しているが、年間26万台の能力に対し、過去3年間は工場の稼働率が20%に落ち、かつて4000人以上だった職員の数は2044人(直営1849人、社内協力会社195人)に減っていた。

GM本社は、群山工場閉鎖にとどまらず他の工場の閉鎖にも触れ、資金支援や税の減免などを要求 して韓国政府を強く圧迫している。
GMのダン・アンマン総括社長は「韓国政府、労組との話し合いを経て、残りの事業の将来についても数週間中に結論を出す」と述べた。

2月末までに韓国政府が支援を決定しなければ、GMが韓国市場から全面撤収することもあり得るという 。韓国事業の長期的な維持は、韓国政府が資金や優遇措置などの提供に応じるか否かと、労組が労働コスト削減に同意するか否かに懸かっているとしている。

韓国GMは群山のほか、仁川市富平と全羅北道群山、慶尚南道昌原で完成車工場を稼働させている。雇用人員の総数は、直接雇用がおよそ1万4200人、協力企業の労働者を含めると30万人にもなる。

韓国GMの昨年の販売量は524,547台で、2016年より12.2%減少した。最近4年間の累積営業損失はおよそ3兆ウォン(約3000億円)。

GMでは今回の群山工場の閉鎖に関する費用として、最大で8億5000万ドルの減損処理が必要と試算している。

付記

韓国GMの本社借入金のうち、今年満期が到来する規模は少なくとも15億ドルに上る。このうち、2月末は580百万ドル、4月は925百万ドルの満期がそれぞれ到来する。
これは2016年までの借入金のみを集計したものである。昨年1年前後の満期で借りた資金がさらにあるので、今年の返済額規模ははるかに大きいと推定される。

GM本社が、満期がきた貸付金について延長を認めず、返済を求めるかどうかが注目された。

GM本社は2月23日、2月末が期限のものについて3月末までの延長を認めた。

韓国政府とGM本社の攻防が続く。


雇用を最優先の課題として掲げてきた文在寅政権が、韓国GMの群山工場閉鎖という巨大な悪材料に直面している。

与野党は今回の問題で互いに責任を押し付けている。

ーーー

韓国の東亜日報は、韓国政府が本年1月に米国GMに対し、韓国GM支援を決定するうえで必要な最低限の前提条件を提示していたことが分かったと報じた。

GMの海外事業部門社長が訪韓し、金融支援、有償増資、財政支援の可能性を打診した。
これに対し韓国政府は、①中長期経営改善計画、②韓国への設備投資計画、③高金利融資などを通じ韓国GMから資金を抜いた疑惑の解消の3つを要求した。

GMが韓国で工場を維持し、雇用を創出するという真剣さを自ら立証してこそ支援できるとの立場を示した。



トランプ大統領が2017年9月24日に出した イスラム圏6カ国を含む8カ国からの米入国禁止令について、Richmondの第4巡回控訴裁判所は2月15日、9対4の評決で、Marylnd地裁の判断を支持、憲法のEstablishment Clause国教条項)に違反すると判断した。

合衆国憲法修正第一条(1791年成立) 政教分離原則,信教・表現の自由

合衆国議会は、国教を制定する法律もしくは自由な宗教活動を禁止する法律、または言論・出版の自由もしくは人民が平穏に集会して不満の解消を求めて政府に請願する権利を奪う法律を制定してはならない。

Prohibits Congress from making any law respecting an establishment of religion, impeding the free exercise of religion, abridging the freedom of speech, infringing on the freedom of the press, interfering with the right to peaceably assemble or prohibiting the petitioning for a governmental redress of grievances.

判決の多数意見で、大統領の声明は宗教的でないことを示しておらず、客観的に見た場合、声明は宗教的な、反イスラムの目的を示しているとした。

政権側は、この禁止令は北朝鮮とベネズエラを含んでおり、最初の2つの禁止令とは全く異なると主張したが、判決では、北朝鮮とベネズエラを加えたことが禁止令の目的を変えたという主張を呑むことは出来ないとした。大統領がイスラム信仰者の米国入国禁止という彼の希望をおおっぴらに、しばしば述べているという疑いの余地のない証拠を指摘した。

証拠は山ほどある。昨年末に大統領はイスラム系移民の恐怖を植え付ける3本の反イスラムビデオを投稿している。
担当官庁がビザ手続きを検討している最中に、何があっても最も厳しい禁止を実行すると述べている。

最高裁は憲法と移民法に照らし合わせ入国禁止令が合法かどうかを4月にヒアリングを開始し、6月末までに判断を下す見込みで、控訴裁は最終決定を最高裁の判断待ちとした。

司法省の報道官は今回の判決について「現状を変更するものではない」と指摘し「最高裁により問題が最終的に解決することを期待している」と述べた。

大統領は3度にわたり、輸入禁止令を出している。

Trump大統領は2017年1月27日、移民の入国を一時禁止する大統領令を出した。

2017/2/5 米連邦地裁、移民の入国一時禁止の大統領令の即時差し止め仮処分

大統領は2017年3月6日、中東・アフリカ7カ国の国民を一時入国禁止にした米大統領令の一部を修正した新たな大統領令に署名した。

2017/3/14 Trump大統領の新たな入国禁止命令 

トランプ大統領が出したイスラム圏諸国からの入国禁止令については、これを問題とする裁判所の判決が続出しており、休会明けの10月10日に最高裁が口頭弁論をする予定であった。

しかし、大統領は9月24日に新しい大統領令を出した。最高裁が審議を取り止めた。

これまでは、イスラム教徒の多い国々を対象にした入国制限が信教の自由などを保障した米憲法に違反しているとの主張が反対理由であったが、テロリストの入国を防ぐための「国家安全保障上の措置」とし、非イスラム国の北朝鮮とベネズエラを加えることで、この批判を避けたともみられる。

2017/9/27 米国の入国禁止措置、複雑な情勢に

入国制限の対象国は次の通り。

2017/1/27 2017/3/6 2017/9/24 理由
イスラム イラン
シリア
リビア
イエメン
ソマリア
チャド
スーダン X

公共の安全と情報交換での米国政府との協力関係

イラク X

対IS共闘、ビザ申請者の情報提供など

北朝鮮

渡航者に関し一切の情報提供がない

ベネズエラ

政府がその国民が危険人物かどうかを通知するのに非協力

合計 7か国 6か国 8か国

第9巡回控訴裁判所は2017年12月22日、大統領のイスラム6カ国をターゲットとした移民禁止令は連邦法違反であり、ホワイトハウスの憲法上の権限を超えるものであると認定した。

禁止は米国と強い結びつきのある人々に適用すべきでない。これらの国からの入国禁止はビザ発行における国による差別である。大統領には入国制限の権限はあるが、無制限ではないとした。

結論として、大統領の声明は権限を越えているとした。

但し、3人の判事は、この決定は最高裁の決定があるまではペンディングにするとした。

米最高裁は2018年1月19日、2017年9月24日に発表された新しい入国禁止令の合憲性を審理するとの決定を出した。

大統領令が違法である可能性が高いとする下級審の判断に対し、政権が上訴していることを受け、口頭弁論を開くこととした。6月末までに判断を下す見込み。

 

米商務省は2月16日、鉄鋼製品とアルミニウム (鍛造品及び未加品)の輸入増が安全保障上の脅威になっているとして、トランプ大統領に輸入制限の実施を提言したと発表した。
中国や韓国など幅広い国に関税引き上げや輸入量割当をかけるが、日本も対象に含む可能性がある。

判断期限は鉄鋼が4月11日、アルミが4月19日で、トランプ大統領が最終判断する。

1962年通商拡大法232条(Section 232 of Trade Expansion Act of 1962)
に基づく調査で、国家安全保障を脅かす輸入を阻止する権限を大統領に与えたもの。

トランプ大統領は2017年4月20日、大量の鉄鋼輸入が米国の安全保障を脅かしている懸念があるとして、米通商拡大法に基づいた鉄鋼輸入の実態調査を米商務省に指示した。

 政府のPolicy:

鉄鋼、アルミ、自動車、飛行機、造船、半導体などのコア産業は米国の製造・防衛産業にとり重大な要素であり、不公平な貿易慣行その他から防衛する必要がある.
鉄鋼の場合、米国およびグローバル市場が過剰能力で歪められている。その多くは外国政府の補助金やアンフェアな慣行によるものである。

米国は150件以上の反ダンピング、反補助金の命令を出したが、悪影響を緩和するに至っていない。米国が、他国に過剰能力を減らすよう繰り返し行った努力は効果が出ていない。

過剰能力とアンフェアな輸入により起こった人為的低価格は米国の鉄鋼産業の利益を圧迫し、業界の長期の投資をやめさせ、研究開発の努力を妨げている。これが続くと米国の鉄鋼産業が駄目になる。

 指示

商務長官は、Trade Expansion Act of 1962 (section 232(b))に基づき、鉄鋼輸入の安全保障に対する影響を調査すること。

商務長官は大統領に報告を行うこと。

もし、鉄鋼の輸入が国の安全保障を害する恐れがあると分かった場合は、それを防ぐための行動、手続きを提言すること。

大統領は4月27日、アルミニウムについての調査を指示する大統領令を出した。

大統領は7月21日、防衛産業の強化へ向け、国内製造業の防衛関連製品や部品の供給能力などについての実態調査を指示する大統領令に署名した。

2017/4/22 Trump大統領、鉄鋼輸入規制に向け、実態調査を指示 


今回の調査結果と勧告内容は次の通り。

鉄鋼についての調査結果:

米国は世界最大の鉄鋼輸入国で、輸入は輸出の約4倍。
2000年以降、6つの酸素炉と4つの電気炉が閉じられ、1998年以降、雇用は35%減った。
世界の能力は24億トンで、2000年から127%増加した。一方、需要はもっと緩やかな伸びである。
世界の過剰能力は7億トンで、米国の年間消費量の7倍に達する。中国が最大の生産国、最大の輸出国で、最大の過剰能力を持つ。
中国の過剰能力だけで米国の全能力を超える。
中国は毎月、米国の生産の1年間分を生産する。変圧器用のような特殊タイプについては米国ではメーカー1社が残っているだけ。
2018年2月15日現在、鉄鋼に関して169件の反ダンピング、反補助金命令があり、そのうち29件が中国相手である。更に25件が調査中である。

鉄鋼については3つの選択肢を勧告した。

1 すべての国からの輸入に最低24%の追加関税をかける。
2 下記 12カ国に最低53%の関税をかける。
  中国、ブラジル、コスタリカ、エジプト、インド、マレーシア、韓国、ロシア、南ア、タイ、トルコ、ベトナム
その他の国全てには2017年実績と同じ輸入量割当を設ける。
3 すべての国に2017年実績の63%に相当する輸入割当を設ける。

 

アルミについての調査結果:

一次アルミの輸入は需要の90%になった。2012年は66%であった。
2013年から2016年でアルミ産業の雇用は58%減少した。需要は増えているのに、6社が閉鎖となり、残る5社のうち2社だけがフル稼働となっている。
軍事予算が減っているため、軍用のアルミ消費はメーカーを存続させるには不十分。戦闘機用の高品質アルミメーカーは1社しか残っていない。インフラが主な用途である。
2018年2月15日現在、アルミについて2件の反ダンピング、反補助金命令(いずれも中国)を出しており、ちゅうごくについて4件が調査中。

アルミについても3つの選択肢を勧告した。

1 すべての国からの輸入に7.7%関税
2 中国、香港、ロシア、ベネズエラ、ベトナムの5カ国・地域に23.6%の関税をかけ、他の全ての国には2017年実績と同じ輸入量割当を設ける。
3 すべての国に2017年実績の86.7%に相当する輸入割当を設ける。

 

ロス商務長官は2月16日の電話会見で今回提言した輸入制限について「世界貿易機関(WTO)でも認められた措置だ」と強調した。
WTO協定では、加盟国が安保を理由に輸入制限を取ることを例外として認めている。

第21条 安全保障のための例外
この協定のいかなる規定も、次のいずれかのことを定めるものと解してはならない。
(b) 締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める次のいずれかの措置を執ることを妨げること。
(i) 核分裂性物質又はその生産原料である物質に関する措置
(ii) ・・・軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び原料の取引に関する措置

ただし定義が曖昧で、拡大解釈して乱用される恐れがあり、WTOを形骸化させかねず、現在の自由貿易体制を揺るがす懸念がある。

中国商務省の貿易救済調査局長は「米国の調査結果に根拠はなく、事実と完全に矛盾している」と反論。「各国が米国にならえば、国際貿易秩序に深刻な影響を及ぼしかねない」と強い憂慮を示した。
また、「米国の最終決定が中国の利益に影響を与える場合、我々は正当な権利を守るため必要な措置を確実に講じる」として、対抗措置を取ることを示唆した。

これまで米国が実施した232条調査は26件ある。主にイランなど敵対国からの石油輸入を対象としてきた。

そのうち、米国の安全保障への脅威と認定された案件は8件だが、その全てが石油関連である。トランプ大統領が輸入制限に踏み切れば、1982年3月にリビア産の原油輸入を禁じて以来の極めて異例の措置となる。

WTO発足(1995年)後に行われた調査は2件ある。

実施 対象 結果
1999 原油 安全保障に対する脅威を認定
ただし、他の施策による対応の方が適切と判断し、大統領に対しては輸入に係る是正措置は行わないよう提言
大統領も同条に基づいた対応はせず。
2001 鉄鉱石、鉄の半製品 安全保障に対する脅威なし


過去の例は下記の末尾に列挙されている。

https://www.bis.doc.gov/index.php/forms-documents/section-232-investigations/86-section-232-booklet/file

飲酒と癌発症リスク

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2月7日付日経夕刊のコラムに東大医学部付属病院の中川恵一氏が「赤ら顔で深酒、リスク高める 」とのタイトルで次のように書いている。

お酒は百薬の長といわれますが、飲酒はせいぜい1合までです。食道がん、咽頭がん、肝臓がん、乳がん、大腸がんなど、多くのがんの発症リスクを高めます。

たとえば日本人男性の場合、日本酒を毎日4合飲むと大腸がんになるリスクは3倍になり、同3合でもがん全体の罹患リスクは喫煙と同じ1.6倍になります。飲酒しながら喫煙するのは最悪の自殺行為で、食道がんのリスクは30倍にも上ります。

とくに、飲むと顔が赤くなる人が深酒をすると、食道がんや咽頭がんになる危険が非常に高まることを知る必要があります。

この中でも触れられているが、ケンブリッジ大学のKetan J. Patel 教授とその研究チームは、1月3日付で 科学雑誌「Nature」にアルコール摂取と癌のリスクの関連性についての新たな研究結果を発表した。

https://www.nature.com/articles/nature25154

研究チームは、アルコールが遺伝子に不可逆の影響を与えると想定し、マウスに薄めたエタノールを与え、染色体分析とDNAシークエンシングを行った。

その結果、アセトアルデヒドが造血幹細胞のDNA二重鎖を切断し染色体異常を引き起こし、造血管細胞に不可逆の影響を与える可能性があることが判明した。 チームは生きている臓器の反応を確認した。

研究の結果、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、乳癌、肝臓癌、大腸癌 (結腸と直腸)の7つの癌の原因となる。

そのリスクは、ワインやビール、蒸留酒などアルコールの種類とは無関係で、飲む量についても「がんに関しては安全な飲酒量などない」。ただし、英国には政府が定めた飲酒のガイドラインがあり、ここで規定している量以下であればリスクは低くなる 。

英国政府のガイドラインが推奨する飲酒量は、1週間で14ユニット以内(純アルコールで112グラム)。これは、4%程度のビールなら7パイント(約3.3リットル)、12%程度のワインなら通常のワイングラス(125ml)で9杯と1/3杯に相当する。

これはアルコール分解能力の高い遺伝子の西欧人の場合であり、下記の通り、分解能力が低い多くの日本人には当て嵌まらない。

また、チームは人体がアルコールの害から守る方法について調べた。

一つはアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH) である。

アルコールは体内にはいるとアセトアルデヒドになるが、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)がこれを分解して酢酸とし、その後、炭酸ガスと水に変える。

研究の結果、ALDHが欠けるマウスにアルコールを与えると、ALDHが機能するマウスに比べ、ダメージは4倍であった。

東南アジアの人にはアルコール分解能力が低下した人が多い。(下記)

もう一つは、DNAの修復機能である。通常、DNAの異常は自動的に修復される。

しかし、特に東南アジアの人の場合、修復機能が働かず、効果的に修復できない。


なお、Patel 教授は、「アルコール処理やDNA修復のシステムは完璧ではなく、こうした自己防衛機能がきちんと作用している人であっても、アルコールが原因でがんができる可能性はあることを忘れてはならない」と注意を促している。


米臨床腫瘍学会(ASCO)のがん予防委員会も2017年11月に、「飲酒はがんの危険性を高める可能性がある」として、アルコールを飲み過ぎないよう注意を呼び掛ける声明を発表している。

https://www.asco.org/about-asco/press-center/news-releases/statement-alcohol-linked-to-cancer-november-2017

ーーー

ALDHの一種であるALDH2をつくる遺伝子には、元々の人類が持つ分解能力が高いとされるN型(ALDH2*1)と、中国南部で突然変異で分解能力が低下したD型(ALDH2*2 )がある。

両親からいずれか一つずつを受け継ぐので、人間にはNN型、ND型、DD型の3パターンある。
NN型は酒豪タイプ、ND型はそこそこ飲めるタイプ、DD型は下戸タイプ。

  日本人 白人
NN型 50%強 99%以上
ND型 40%弱 1%未満
DD型 5%前後
白人は悪酔いしない代わりに、飲み過ぎてアル中になる可能性がある。

NN型(酒豪タイプ)はアセトアルデヒドが蓄積しにくいことで、DD型(下戸タイプ)は飲めないため、いずれもがんの危険は少ない
「部分欠損型」のND型の場合、アセトアルデヒドを分解する力が十分ではないので、大量に飲むとアセトアルデヒドが体内にたまり、がんのリスクを高める。

北海道、東北、九州、沖縄地方に酒豪遺伝子であるN型遺伝子の割合が多い。

日本民族が、列島先住民の縄文人(N型)と、中国南部で突然変異で発生したD型を持つ弥生時代以降に大陸からきた渡来人の「二重構造」を持つことを示すものとされる。

都道府県別に見たN型遺伝子(ALDH2*1)の頻度
https://www.athome-academy.jp/archive/biology/0000000176_all.html


中川恵一 氏のコラムは次の文章で終わっている。

ALDH2の欠損型はアジア人の一部にしかみられません。 ケンブリッジ大学の)この論文は赤い顔で深酒を続ける日本人への警鐘だと思いました。ご用心を。

 


小泉元首相が原発反対運動を続けている。

「女性自身」(web 2018/2/5) の「小泉純一郎元首相が激白 原発推進派のウソと福島への思い 」で、以下の通り述べている。

「私も首相のときは、原発を推進していた。だけど、それが間違いだったとわかったから、考えを改めた。過ちだとわかって改めないことこそ、本当の過ちなんだよ」

(原発反対の講演について)
「北海道から九州まで、平均月に2~3回だったのが、昨年の10月は10回、11月は8回。さすがにちょっとやりすぎたかな(笑)。でも依頼が引きも切らないんだよ」

「原発推進派は、日本の原発は安全だと言い続けていたけど、原発に"絶対安全"なんかないことは、福島の事故でよくわかった。とくに日本は、地震や津波、火山の噴火が何年かごとに必ずやってくる。地質学的にも危険な地域だ」

「再び事故が起これば、住む場所を失う人がまた大量に出る。だいたい福島に関しても、政府は『収束した』と発表しているけど、していない。汚染水、あれはどうするの。除染で出た大量の汚染物質、焼却しなきゃいかんと言ったって、焼却をすれば、放射能が出る。壊れた原子炉から中の燃料棒を取り出すと言っているが、人間がそこに立てば1分ほどで死ぬくらい危険だ」

本ブログでも、以前から同氏の発言を取り上げてきた。

2013/11/1 小泉元首相の「脱原発」論

2013/11/13 小泉元首相の講演 

2016/9/12 小泉元首相の外国特派員協会での記者会見
  テーマは、①「トモダチ作戦被害者支援基金」と、②原発反対の考え方について。


2017年4月14日には細川元首相とともに
「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連) を発足させた。

会長  吉原 毅(城南信用金庫相談役)
顧問  小泉 純一郎(元内閣総理大臣)
    細川 護煕 (元内閣総理大臣)
副会長 中川 秀直 (元自由民主党幹事長、元科学技術庁長官、原子力委員会委員長)
    島田 晴雄 (前千葉商科大学学長、慶應義塾大学名誉教授)
    佐藤 彌右衛門(全国ご当地エネルギー協会会長、会津電力株式会社代表取締役)

主旨:

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を通じて、私たち国民は、原発が人類にとって非常に危険であることを学び、事故から6年以上が経過した今もなお、全国各地で脱原発や自然エネルギー推進に向けた活動が熱心に行われておりますが、こうした活動の多くは、孤立・独立しており、相互の連携が図れていないのが現状です。

こうした中で、今後、より一層、脱原発や自然エネルギーの推進に向けた国民運動を展開していく上では、全国各地で取組んでいる活動が一致団結し、お互いに連携協力していくことが重要であると考え、今回、思想や信条を問わず、原発ゼロと自然エネルギー推進を志すすべての個人や団体が集結した「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が創設されることとなりました。

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟は本年1月10日、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の発表記者会見を開いた。記者会見後、小泉元総理を含む原自連のメンバーが国会を回り、この通常国会に「原発ゼロ」法案の提出を目指している立憲民主党をはじめ、与野党に賛同を呼びかけた。

上記の「女性自身」の記事でも、「全国どこに行っても、原発を止めなきゃいかんという声は根強いよ。この法案を国会に提出して、与野党で議論を深めていきたい」と述べている。

「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の内容は次の通り。

全ての原子力発電の廃止及び自然エネルギーへの全面転換 の促進に関する基本法案(骨子案)
〈略称〉原発ゼロ・自然エネルギー基本法案

第一 目的

この法律は、全ての原子力発電の廃止及び自然エネルギーへの全面転換の促進に関する基本的な理念及び方針を明らかにし、国等の責務及び推進体制等を定め、もって、我が国エネルギー構造の転換を実現することを目的とする。

第二 基本理念

東京電力福島第一原子力発電所事故によって、原子力発電は、極めて危険かつ高コストで、国民に過大な負担を負わせることが明らかとなり、使用済み核燃料の最終処分も全く見通しが立たない。また、原子力発電による発電量は全体のわずか1%(2015年段階)にすぎず、重要性を失っている。したがって全ての原子力発電は即時廃止する。

世界各国において自然エネルギーへの流れが急速に拡がり太陽光発電と風力発電ですでに原子力発電の設備容量の二倍を超えている。我が国のエネルギー政策においても、新たな産業と雇用を創出する成長戦略の柱として、安定的な電源となる自然エネルギーへ全面的に転換する。
このようなエネルギー構造の転換は、温室効果ガスの削減による地球環境の保全と経済構造の変革を伴う新たな産業革命を実現し、国土とエネルギーの安全保障、国民生活と食糧・農業の安全保障をもたらし、将来世代にわたる国民の生命と健康が守られ、平和のうちに安心して暮らせる自然エネルギー社会の形成に資するものである。

第三 基本方針

運転されている原子力発電所は直ちに停止する。
運転を停止している原子力発電所は、今後一切稼働させない。
運転を停止した原子力発電所の具体的な廃炉計画を策定する。
原子力発電所の新増設は認めない。
使用済み核燃料の中間貯蔵及び最終処分に関し、確実かつ安全な抜本的計画を国の責任において策定し、官民あげて実施する。
核燃料サイクル事業から撤退し、再処理工場等の施設は廃止する。
我が国は、原子力発電事業の輸出を中止し、人類の平和と安全のため、かつての戦争被爆及び原子力発電所重大事故の当事国として、地球上の原子力発電全廃の必要性を世界に向けて発信する。
急速に進んでいる省エネルギーをさらに徹底させる。
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の自然エネルギーを最大限かつ可及的速やかに導入する。自然エネルギーの電力比率目標は、平成42年(2030年)までに50%以上、平成62年(2050年)までに100%とする。
地域経済の再生のため、各地域におけるエネルギーの地産地消による分散型エネルギー社会の形成を推進する。


第四 国等の責務 

第五 推進体制  

第六 年次報告

第七 附則

   


富士フィルムHDは1月31日、米国Xerox Corporationとの間で以下の点で合意したと発表した。

 ①富士フィルムHDがXerox Corporatの50.1%を取得、Xeroxは社名をFuji Xeroxに変更、NYSEの上場を維持
 ②富士フィルムHDの子会社の富士ゼロックスとXerox Corporationの経営統合

2018/2/1 富士フィルム、米国Xerox Corporationを買収

これに対し、後記の通り、ゼロックスの筆頭株主で「物言う株主」として知られる著名投資家のCarl Icahnは2月12日、同じく大株主のDarwin Deasonと共同で、富士フイルムによる買収に反対する声明を公表した。2人はゼロックスの株を合わせて15.2%保有する。


このDarwin Deasonが2月13日、富士フィルムによるゼロックス買収は不正だとして、差し止めを求める訴えをニューヨーク州の裁判所に起こした。

問題視しているのはゼロックスと富士フィルムが、株主にとって重要な契約の存在を17年間隠していた点である。

ゼロックスが敵対的買収で株式の30%を売却する場合、アジア太平洋の360億ドルの市場でのゼロックスの知的財産権と製造権を富士フィルムに渡すという企業買収防衛策としての重要資産の売却条項("crown jewel" lock-up right)である。

これはゼロックスの戦略の柔軟性を制限するもので、実質的に今回の富士フィルムへの売却は17年前に株主に知らされずに決められていたことになり、不正行為であり、取締役は受託者としての義務に違反しているとする。

このため、裁判所に対し、この取引を中止し、既存のJV契約を終了することを求めた。

訴状 https://ja.scribd.com/document/371438778/Deason-Lawsuit-Xerox

これに対し、ゼロックスは2月13日、「Deason 氏の主張はメリットがない。富士ゼロックスとの統合は複数ある選択肢の中から戦略的な検討を経て選んだもので、会社と株主にとって最善の道」と反論した。


付記

Carl IcahnとDarwin Deasonはゼロックスの株を合わせて15.2%保有するとしていた。
しかし、日経によると、2月13日時点で、Icahnの持ち株は9.7%から9.2%に低下、Deasonも(5.5%から)3.3%になっていることが分かった。両者合計で12.5%となる。

1月31日の富士フィルムによる買収発表を受け、株価が一時急騰したが、この時点で売りに出したとみられる。

他の株主(2017年末時点)は、Vanguard Group が9.7%、Blackrock fund adovisorsが4.3%、State Street Global Advisorが3.5%、Alliance Bernsteinが3.0%。

ーーー

2015年11月に物言う株主として知られるCarl Icahnによるゼロックス株の7%取得が明らかになった。翌月、8.13%に高めた。それ以来、Icahnは会社側に業績改善と取締役派遣を要求してきた。

ゼロックスは2016年1月29日、分社化を正式に発表した。ビジネス・プロセス・アウトソーシング事業を行う Conduent Incorporated をスピンオフ(分離・独立)するもので、分社化はCarl Icahnからのプレッシャーを受けた結果である。

IcahnはConduentの取締役会で3議席を獲得する。また、この新会社のCEOを選出するための委員会に「出席し、助言を与える」人物を選ぶ権利を得た 。

Carl Icahnは2017年12月12日、ゼロックス株主への公開状を発表した。

前日にゼロックスは株主に対し、将来がバラ色との報告を送ったが、実際は恐ろしい状態である。株価は1年で30%上がったが、これは私が主張したConduentのスピンオフの結果である。

明らかにゼロックスは新しいリーダーが必要だ。我々の努力にかかわらず保守派の取締役はぼんくらCEOを守っている。

ゼロックスに新しい価値を生み出す新しいリーダーが必要だ。

http://carlicahn.com/open-letter-to-xerox-shareholders/

Carl Icahnは2018年1月18日付で株主への新しい公開状を発表した。
前の週にWall Street Journal がゼロックスと富士フィルムが交渉している旨を伝え、またゼロックスの株主第3位の Darwin Deasonが富士フィルムに関して戦略的な代替案を検討するため、富士ゼロックスのJV契約を明らかにするようゼロックスに求めていた。

Deason氏は富士ゼロックスJVを改定又は終了すべきだと述べているが、富士ゼロックスの経理スキャンダルをみて、株主は誰もこれに反対しないだろう。
契約改定に賛成する。ずっと前にすべきものであった。

CEOを交代させなければ、我々の投資全部が無くなってしまう。

http://carlicahn.com/open-letter-to-shareholders-of-xerox/

1月22日、Carl IcahnとDarwin Deasonはゼロックスに関する共同声明を発表した。

我々はゼロックスの株を合わせて15%以上保有する。下記の点で意見が完全に一致したため、2018年の株主総会で4人の取締役を出すよう、委任状を集める。

  • 今回の富士ゼロックスの経理スキャンダルに鑑み、JVを解消するか、ゼロックスに有利なように改定すべきである。
  • ゼロックスは直ちに、戦略的代替案を探るべく、独立アドバイザーを選ぶプロセスを始めるべきである。
  • ゼロックスは直ちに、富士ゼロックスJVの契約を開示すべきである。
  • CEOのJeff Jacobson は守旧派で株主にとっての長期的価値を生み出すことができないため、直ちに辞めさせるべきである。
  • もし守旧派の取締役が、ゼロックスが沈没するのを避けるためのタフな決定をできないなら、彼らも辞めるべきである。

Too late になる前に行動すべきだ。


富士フィルムHDは1月31日、米国Xerox Corporationとの間で以下の点で合意したと発表した。

米ゼロックスの筆頭株主で「物言う株主」として知られる著名投資家のCarl Icahnは2月12日、同じく大株主のDarwin Deasonと共同で、富士フイルムによる買収に反対する株主への公開状を公表した。
2人はゼロックスの株を合わせて15.2%保有する。

先週、ゼロックスと富士フィルムが発表した計画は、古森会長が自慢するように、「富士フィルムが一銭も使わずにゼロックスの支配権を得るもの」だ。

富士フィルムは金を使わずに米国の象徴の支配権、所有権の過半数を取得し、既存のゼロックス株主は、隠蔽の文化と管理不十分により 360百万ドルの経理スキャンダルを明らかにした富士ゼロックスの25%を間接所有するのと、我々自身の資産を処分して行われる一時的な特別配当を受けるだけだ。

これが実行されると、ゼロックス株主はそうではなくなる。富士フィルムの子会社の少数株主に過ぎなくなり、我々の投資の将来の方向に関して無力となる。通常の企業価値に加えて考慮される経営支配権に対する上乗せ価値(control premium)を受ける機会が無くなる。

昨年の経理スキャンダルは、我々の資本を富士フィルムに任せるのに極端にナーバスにする。

会社側の唱えるシナジー効果で確実なのはコスト削減であるが、これは統合しなくても実現できる。百歩譲って、この計画で初めて達成できるシナジーがあるとしても、プレミアム無しで支配権をわたすことは正当化できない。

ゼロックスが今回初めて明らかにしたが、富士ゼロックスJVの契約で17年間隠していた事項がある。ゼロックス側が、買う側、売る側のいずれでも、戦略的な資本構造を変える取引をする能力が制限されている。(前記の訴訟内容を参照)

富士ゼロックスの経理スキャンダルに至った富士フィルムの失敗は、JV契約の重要な違反であり、ゼロックスは直ちに解約すべきである。そうすればアジア太平洋の市場を取り戻せる。

今の取締役会はゼロックスのシステマティックな破壊を見過ごしている。何もしなければ、この計画はゼロックスの最終的な弔鐘となる。
株主たちよ、富士フィルムに我々からこの会社を奪わすな。

まともなリーダーを連れてくれば、価値を高める大きなチャンスがある。

http://carlicahn.com/joint-statement-with-darwin-deason-regarding-xerox-2/


5月頃のゼロックスの株主総会に向けて、つばぜり合いが激しくなりそうだ。
裁判の行方も気になる。


Cheniere Energy, Inc.は2月9日、中国のCNPCとの間で2つのLNG販売契約を締結したと発表した。

両社は2017年11月9日に、トランプ大統領の中国訪問に合わせ、MOUを締結していた。


Cheniere Energy子会社の
Corpus Christi Liquefaction, LLC と Cheniere Marketing International LLP との契約に基づき、CNPC子会社のPetroChinaが年間約120万トンのLNGを購入する。
この一部は2018年に開始され、残りは2023年に開始される。それぞれの契約期間は2043年までとなっている。

Cheniereは稼働中(一部建設中)のSabine Pass 液化基地と建設中のCorpus Christi 液化基地を持つ。CNPCへの供給は主にCorpus Christi 液化基地から行われるが、2018年開始分はSabine Pass 液化基地の既契約分以外を出荷するものとみられる。

LNG価格は、他の契約と同様、原料天然ガスのHenry Hub priceと固定費部分から成り立つ。

既存のCheniereの販売契約では、LNGのFOB価格は以下の通りとなっている。
  
原料ガスコスト(Henry Hub 渡し市況 x 115%)+固定費(ガス化費用など)
   
15%は天然ガスのトレーダーとしてのマージンで、固定費は相手により 2.25~3.00$/MM Btuとなっている。


Cheniereは本年1月16日に、スイスのコモディティ商社
Trafigura Pte Ltd との間で年間100万トンのLNG供給契約を締結している。2019年から15年間の供給となっている。

ーーー

Cheniereは稼働中(一部建設中)のSabine Pass 液化基地と建設中のCorpus Christi 液化基地を持つ。

子会社 Sabine Pass Liquefaction, LLC は1系列 年産450万トンの液化設備 合計6基(既報の7基から変更)を計画している。

このうち、1~4系列は完成しており、第5系列は2015年6月に建設を開始した。最後の第6系列は未着工である。

この5系列の合計能力は2250万トンだが、このうち約88%の1975万トンが契約済みである。

相手先 年間
 万トン
固定費
$/MM Btu
製造系列 完成時期
BG Group(英) 350 2.25 第1系列 2016/4-5
200 3.00 第2, 3, 4 系列  
GasNatural(スペイン) 350 2.49 第2系列 2016/8
Kogas(韓国) 350 3.00 第3系列 2017/4
Gail (インド) 350 3.00 第4系列 2017/8
Total (仏) 200 3.00 第5系列 2019/8
Centrica (British Gas) 175 3.00 第5系列  
合計 1,975      

残り年間275万トンはCheniere Marketingが販売する。おそらく、このうちの一部がPetroChinaに向けられると思われる。


Corpus Christiでは、子会社のCorpus Christi Liquefaction, LLC が液化設備とLNG輸出基地を建設している。

当初は、年産450万トンの液化設備 最終5系列、合計2250万トンの計画で、まず2系列の建設を開始した。同時に第3系列分を含めた長期販売契約の交渉を行っている。

現在までに3系列計1350万トン /年のうち、計842万トンが成約している。相手は、インドネシアのPertamina (152万トン)、スペインのEndesa(225万トン)とIberdrola (76万トン)とGas Natural Fenosa (150万トン)、豪州のWoodside(85万トン)、英国のEDF(77万トン)、ポルトガルのEDP(77万トン)である

これに今回のPetroChina(120万トン)とTrafigura(100万トン)が加わる。

現在、同社では当初の計画を変更し、年産450万トンの3系列に、7系列の中規模液化設備(1系列135万トン)と1基のLNGタンクを加え、総計2300万トンにする案を進めている。

構想図


朴槿恵前大統領(収賄罪などで公判中)の親友で、大企業から資金拠出を強要したとして職権乱用罪などに問われた崔順実被告らの裁判で、ソウル中央地裁は2月13日、崔被告に懲役20年、罰金180億ウォン(約18億円)の実刑判決を言い渡した。

崔被告は既に、娘の不正入学を巡り業務妨害罪などに問われた事件の一、二審で懲役3年の実刑判決を受けている。

検察によると、崔被告は2015年から2016年にかけ、朴前大統領の要請を受け、文化・スポーツ事業振興目的で「ミル財団」と「Kスポーツ財団」を設立、大統領府の前政策調整首席秘書官の安被告と共に企業に対し多額の出資を強要し、計約774億ウォン(約77億円)を集めたとされる。

本件では、2017年12月14日、ソウル中央地裁で論告求刑公判が行われた。

検察側は崔被告に対し、職権乱用などの罪で懲役25年、罰金1185億ウォン(約123億円)、追徴金約78億ウォン(約8億円)を求刑した。

また、ロッテグループの重光昭夫(辛東彬)会長に対し、贈賄の罪で懲役4年、追徴金70億ウォンを求刑した。

崔被告と共謀したとされる大統領府の前政策調整首席秘書官、安鍾範被告には懲役6年を求刑した。

免税店事業認可に絡み、朴被告の要請で「Kスポーツ財団」に70億ウォン(約7億円)を賄賂として提供したとして贈賄罪で在宅起訴された韓国ロッテグループの重光昭夫(辛東彬)会長に対しては懲役2年6月の実刑判決を言い渡した。実刑判決で身柄を拘束されたため、グループの経営に支障が出る懸念もある。

会長はロッテグループの企業内の不正事件で懲役1年8カ月、執行猶予2年 の判決を受けており(下記)、今回の有罪で執行猶予が無効となり、懲役は合計4年2か月となる。

このほか、崔被告と共謀したとして、大統領府の前政策調整首席秘書官、安鍾範被告は、求刑通り懲役6年の判決を受けた。 

今回裁判所は、「大統領が職権を乱用、企業に出資を強要し、崔被告らが大統領と共謀した」と判断した。今後、前大統領も有罪となるのは確実だという見方が広がっている。

付記

辛東彬(重光昭夫)会長の拘束を受け、ロッテ創業者の長男の辛東主(重光宏之)氏は、ロッテHDの筆頭株主である光潤社の社長としてロッテHD代表取締役副会長を務める東彬氏の辞任と解任を訴えた。

日韓ロッテグループの代表者の地位にある者が横領・背任、贈賄などさまざまな犯罪行為で有罪判決を受け、収監されたことはロッテグループの70年の歴史上、前代未聞の出来事だとし、東彬氏の「即時辞任・解任」とコーポレート・ガバナンスの刷新・建て直しが不可欠だと強調した。

ーーー

崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長については、ソウル高裁は本年2月5日、地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。

2017年8月の一審では5つの起訴事実すべてが有罪とされたが、高裁は焦点となっていた贈賄の一部と海外への不正な送金などを無罪とした。

なお、本件については、サムスン側と検察側がいずれも上告している。

2018/2/5 サムスントップ釈放

ーーー

なお、重光昭夫(辛東彬)会長等は別途、ロッテグループの企業内の不正事件で、横領や背任などの罪に問われていたが、本年1月22日、ソウル中央地裁で下記の判決があった。

  求刑 判決
辛東彬(重光昭夫)会長 (62) 懲役10年と罰金1000億ウォン 懲役1年8カ月、執行猶予2年
辛格浩(重光武雄)創業者(95) 懲役10年、罰金3000億ウォン 懲役4年と罰金35億ウォン 収監は見送り
辛東主(重光宏之)(63) 懲役5年、罰金125億ウォン 無罪


2017/12/23 ソウル中央地裁、ロッテ創業者に実刑判決、収監は見送り



富士フイルムと武田薬品工業は2月8日、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療製品の共同事業化に向けた取り組みを開始したと発表した。

富士フイルムは、米国子会社のCellular Dynamics International, Inc.が開発を進めているiPS細胞由来の心筋細胞を用いた再生医療製品において、全世界での共同事業化に関する優先交渉権を武田薬品に付与 した。対象にするのは重症の心不全患者向けで心筋の機能を回復する製品で、2019年にも米国で治験に入る見込み。

武田薬品は、富士フイルムに対して一時金を支払い(金額は公表せず)、両社は、複数のiPS細胞由来心筋細胞の薬効・安全性評価、実用化に向けたプロセス開発などについて共同研究を実施 する。

富士フイルムが保有する世界トップのiPS細胞関連技術や写真フイルムで培った高度なエンジニアリング技術と、武田薬品が持つ京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との共同研究(T-CiRA)で培われたiPS細胞に関する専門技術や医薬品の前臨床・臨床試験に関わる豊富な経験を組み合わせ、心臓疾患患者のために、有効性・安全性に優れた画期的な再生医療製品の普及を目指 すとしている。

武田薬品は2017年に、試薬を手がける和光純薬工業を富士フイルムに売却している。両社が共同事業を始めるのは今回が初めて。

ーーー

富士フィルムは再生医療分野で買収を続けてきた。

1)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

富士フイルムは2010年8月30日、国内で細胞再生医療材料事業を展開するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)による40億円の第三者割当増資を引き受けると発表した。

増資引き受け後は、同社株式の41%を保有することとなったが、2014年に新株予約権の引き受けで持株比率は50.33%とし、連結子会社とした。

2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携

2)Cellular Dynamics

富士フイルムは2015年3月30日、株式公開買付けによりCellular Dynamics を約307 百万米ドルで買収することで同社と合意した。

山中教授と、オタマジャクシを使って最初のクローンを作りだした Sir John Bertrand Gurdon がノーベル医学生理学賞を受けたが、ウィスコンシン大学のJames Thomson 教授も山中教授と同じ2007年11月に人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表している。

Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でも2013年に成立した、プラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

2015/4/14 京都大学iPS 細胞研究所、Cellular Dynamics Internationalと提携へ

上記記事のタイトルの「提携」は山中伸弥教授の意向 で、実際にはiPS研究所と営利企業である富士フィルムとは考え方が異なる。

2017/12/6の日経記事では、山中教授は、iPS 細胞を使った再生医療の普及に向け、富士フイルムに特許料を低額にするように要請したことを明らかにした。
同社子会社(Cellular Dynamics) のもつ関連特許は再生医療に重要で、ライセンス料が高額だと低コスト化への足かせになりかねないと危惧する。


Cellular Dynamicsは2016年10月、日本でiPS細胞を安全かつ効率的に作製する技術に関する特許を取得した。通常の採血と同様に無菌状態で低侵襲的に血液細胞を採取し、その血液細胞の遺伝子を傷つけることなくエピソーマルベクターを使用して複数の遺伝子を導入しiPS細胞を安全かつ効率的に作製できるもの。


日本におけるこの細胞の作製には、本特許と京都大学iPS細胞研究所が保有する特許が必要となる。

京都大学は再生医療用で使う iPS細胞の備蓄の際に大腸菌のDNAを使っており、Cellular Dynamicsの特許に触れる恐れがある。

富士フイルムは大学や研究機関に高額の使用料を課すことは避けたい意向とされるが、京大では交渉材料として使うためにも、新たな作製技術の採用を検討している。

臨床試験支援大手のアイロムグループ子会社のIDファーマが特許を持つ作製法で、iPS細胞の作製に必要な遺伝子を導入するのに「センダイウイルス (SeV)」というウイルスの一種を使う。

CytoTune®-iPSは、いわゆる山中4遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4、cMYC)をセンダイウイルスベクターに搭載したもの。センダイウイルスの最大の特長は、レトロウイルスと異なりRNAのまま細胞質に留まり、そこで複製・転写・翻訳が行われることで、遺伝情報が細胞核内に入って宿主のDNA配列の中に組み込まれないため、染色体に傷を付けることがない。

3)和光純薬

富士フィルムは2016年12月15日、武田薬品から和光純薬工業を買収する契約を締結した。富士フィルムが2017年2月に実施するTOBに武田薬品が応募するもの。

富士は再生医療に関して、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングとCellular Dynamics の買収で、iPS細胞作製などに関する主要特許や細胞の開発・製造ノウハウ(Cellular Dynamics)を取得したが、更にフィルム事業などで開発してきた細胞培養に必要な足場材(リコンビナントペプチド)、一定条件生産技術や微小環境でのコントロール技術などを持つ。

和光純薬は細胞の培養に必要な「培地」(細胞が必要とするアミノ酸、糖、脂質、ビタミン、ミネラルに、成長因子などをバランス良く含む栄養液)を手がけており、富士フィルムに欠けていた部分がそろうこととなる。

和光純薬は2018年4月1日から「富士フィルム和光純薬」に改称する。

2016/12/22 富士フィルム、和光純薬を買収


富士フィルムは相次ぐ買収で再生医療製品の開発・生産に必要な技術を獲得したものの、医薬品は長い時間や膨大なコストが必要で開発リスクが高く、自社で医薬品を市場投入にまでこぎつけるのは難しい。

Cellular Dynamicsが日本でiPS細胞を安全かつ効率的に作製する技術に関する特許を取得した際の富士フィルムのコメントは、「この特許取得を契機にグループのシナジーを発揮させ、iPS細胞の受託生産ビジネスを拡大させていく」というものであった。

今回、富士フイルムは治験などで実績のある武田と組むことで、再生医療分野で実用化を急ぐ。

Cellular Dynamicsはほかに4つの疾患向けに再生医療製品を開発中で、分野ごとに提携相手を選ぶ。

ーーー

武田薬品は2015年12月、京大 iPS細胞研究所と の間で iPS細胞研究に関する共同研究を開始した。

がん、心不全、糖尿病、神経変性疾患、難治性筋疾患など6つの疾患領域で、iPS細胞技術をツールとして用い、創薬および難治性疾患の画期的な治療法の創出に対する新たなアプローチの開発に向け、今後10年にわたり研究を行う。

武田薬品は湘南研究所内の研究設備、および10年間で200億円の提携費用を提供する。
さらに、10年間で120億円以上に相当する研究支援(施設、設備、武田薬品の研究者など、さまざまな研究支援)を提供する。

研究人員は全体で100名程度を予定しており、武田薬品湘南研究所を拠点として、グローバルで新たに採用する人員も含み、武田薬品およびCiRAよりそれぞれ50名程度が共同研究に従事する。
また、武田薬品の化合物ライブラリーなど特別な研究資産も用いられる。

共同研究が軌道に乗った段階では、10件前後のプロジェクトが同時進行することになる。

ドイツのキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の大連立交渉が2月7日、 長時間の交渉の結果、原則合意に達した。
メルケル首相が率いるCDU・CSUが SPDに大幅に譲歩したもので、4カ月間の政治空白の解消に向けて前進した。

政権樹立に向けた最後のハードルとなる社民党の46万4千人のすべての党員
による投票は今後、郵送で3~4週間にわたって行われ、3月初めにも結果が公表される見通し。
否決されれば、連立合意は白紙となり、再選挙の可能性が高まる。

付記

ドイツ社会民主党(SPD)は3月4日、連立合意を党員投票で了承したと発表した。連立合意への賛成が66.02%、反対は33.98%だった。

ーーー

9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。大量の難民受け入れへの世論の反発があるとされ た。

第一次
2005/11
第二次
2009/10
第三次
2013/12
今回選挙
キリスト教民主同盟 (CDU) キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU)
連立 連立 連立 246 連立協議 → 連立協議
キリスト教社会同盟 (CSU)
ドイツ社会民主党(SPD) 連立 連立 153 離脱表明 →
緑の党 67 連立協議
自由民主党(FDP) 連立 議席 0 80 連立協議→離脱
ドイツのための選択肢(AID) 議席 0 92
左派党 69
無所属 2
合計 709


第一次と第三次政権で連立を組んだドイツ社会民主党(SPD)も大敗し(153議席)、連立離脱を宣言した。

このため、メルケル首相は、緑の党(67議席)、第二次政権で連立を組んだ自由民主党(FDP) (80議席)との3党連立を協議してきたが、11月19日、決裂した。

議席ゼロから92議席を獲得したドイツのための選択肢(AID)は、2013年のギリシャ経済危機を契機に反EUを掲げて結党され、ドイツのEU離脱を最大の目標として掲げている。移民問題についても強く反対しており、極右政党ともされる。

2017/11/23 ドイツ、メルケル首相の4選に暗雲

この結果、残る選択肢は、再選挙か少数与党による内閣だが、再選挙になればCDU・CSUはさらに票が減る可能性が高く、また、過半数割れ政権では安定した政治はできない。

メルケル首相は昨年末、「早く安定政権を成立させる使命を果たしたい」と述べ、SPDとの交渉の早期妥結に向けた強い意欲を示した。

2018年1月7日、 CDU・CSUとSPDの間で政権樹立の可否を探る予備交渉を始めた。

SPD執行部は政権協定交渉入りを決めたが、双方の政策に大きな差があり、1月21日の臨時党大会では賛成票が56%にとどまった。 ドイツ政治の安定のために連立すべきという賛成派と、これ以上メルケルの軍門にくだるべきではないとする反対派に、真っ二つに分かれた。

このため、SPD執行部はCDU・CSUに対し、方針の改善を要求した。

特に3項目が焦点となった。 双方の政策の違いは大きく、変な妥協は支持者を裏切ることとなるため、難航した。

CDU・CSU SPD
難民問題 「難民増」とみられる政策に反対 一部難民の家族呼び寄せを拡大
医療保険制度 抜本改革に反対 公的保険と私的保険の格差の是正
雇用政策 左は、企業競争力に影響する。
(CSUは自動車産業を抱える)
正当な理由のない有期雇用契約禁止


難民問題については、限定的に認定された難民について月1000人を限度に家族呼び寄せを認め、個別事情に配慮した追加を認めることで合意した。

しかし残り2つについては難航し、期限としていた2月4日までに決着せず、2月5日にずれ込んだ。

24時間以上続いた協議の末、2月7日にようやく合意した。

期限付きの雇用契約の上限を現在の24カ月から18カ月へ減らした。

医療保険については、官民共同の枠組みを作る委員会の設立で合意した。

難民の受け入れについて年間22万人までに抑えることや、フランスと連携してユーロ圏の改革に取り組むことなどが盛り込まれた。

連立政権の人事については、SPDは財務相のポストを確保する。財務相という重要なポストをSPDへ引き渡 すことは、メルケル首相が4期目を務めるためにCDU・CSUが大きく譲歩したことを示す。
交渉関係者によるとSPDは労働相のポストも確保する。法務相と家庭相、環境相のポストも得るとの報道もあった。

またビルト紙によるとシュルツSPD 党首は外務相となり、党首を辞任する。

いったんは下野する方針を表明しながら大連立へと方針転換したシュルツ氏への不満が党内で強まっていた。

付記  

シュルツ党首は外相として第4次メルケル政権に入閣することを断念したと発表した。昨年9月の総選挙直後に「メルケル政権には入閣しない」と断言していたシュルツ氏の変節に、党内外から非難が集中してい た。

シュルツ党首は2月13日、記者会見し、党首を即日辞任し、アンドレア・ナーレス連邦議会(下院)党会派代表に後任を託すことを発表した。 4月22日の臨時党大会に提案する。

米上院は2月8日のつなぎ予算期限までに対応ができず、政府機関は再度の閉鎖となった。

上院は直後につなぎ予算を含む法案を可決したが、下院の案とは異なるため、待機していた下院で再審議となった。

下院では反対が強く、見通しが立たなかったが、9日早朝なんとか可決した。

両院で可決した上院の法案は、連邦政府支出を約3000億ドル増やす期間2年の予算合意で、債務上限を1年間停止することと3月23日までの暫定予算が含まれている。

トランプ米大統領は直ちに法案に署名、午前0時過ぎに始まった政府機関の一部閉鎖は数時間で終了した。

署名直後の大統領のtwitter:

Just signed Bill. Our Military will now be stronger than ever before. We love and need our Military and gave them everything -- and more.
First time this has happened in a long time. Also means JOBS, JOBS, JOBS!

ーーー

米議会上下院は1月22日午後、2月8日までのつなぎ予算をそれぞれ可決した。

米の2018年度(2017/10/1~2018/9/30) 連邦予算は年度初めに決まらず、12月8日までの暫定予算でスタートした。

その後も、本予算の議論がまとまらず、期限切れ前日の12月7日、上院と下院は12月22日までのつなぎ予算を賛成多数で可決した。
更に、両院は
12月21日に2018年1月19日までのつなぎ予算を可決した

今回も与党・共和党は1月19日までに予算措置を講じるのは難しいと判断した。トランプ大統領は、メキシコ国境の壁の建設を強く求めている。他方、民主党は予算成立に協力する条件として、幼少期に親と一緒に不法入国した若者(ドリーマー)に滞在許可を与える制度を続けるよう主張している。

2018/1/20 米政府機関、閉鎖 

2018/1/23 国、政府機関閉鎖解除へ 

その後も話し合いは難航した。

トランプ大統領は1月25日、未成年時に親に連れられ不法入国する形で米国に来た「ドリーマー」180万人に10~12年かけて市民権を付与する道を開く包括的な新移民法案の内容を明らかにした。

現行の救済制度「DACA」の下で登録されたドリーマーは69万人だが、ホワイトハウスでは資格があるにもかかわらず申請していない多くの移民がいるとみている。
これを含めた180万人のドリーマーは、職業を持ち犯罪歴がなければ、10 ─ 12年で市民権を得られるという案である。

新法案には、移住希望者に抽選で永住権(グリーンカード)を付与する「移民多様化ビザ抽選プログラム」の廃止や、移民の家族の呼び寄せの厳しい制限なども含まれている。

しかしこれと引き換えにトランプ大統領は、米国に合法的に移民することを現在よりも難しくするとともに、国土安全保障省がドリーマーを含む推定約1100万人の非正規移民を取り締まる手段と費用への増強を求めている。

更に、メキシコ国境に壁を建設するための250億ドルの「信託基金」設立や、カナダ国境の警備強化への投資などを求めている。

この条件は民主党にとって受け入れられないものだが、保守派からも懸念が噴出した。
対移民強硬論者である共和党のテッド・クルーズ上院議員は、不法移民に対して市民権への道を開くことは「重大な過ち」になると主張。選挙民に対する約束を違えることになると批判した。

このままでは2月9日に再度、政府機関が閉鎖される恐れがあった。


2月8日までのつなぎ予算の期限切れを間近にしながら、本予算の目途が立たないなか、下院は2月6日、3月23日までの5回目のつなぎ予算を決議した。

  共和党 民主党 合計
賛成 228 17 245
反対 8 174 182
棄権 1 2 3
合計 237 193 430

これまでのつなぎ予算は従来の経常支出をみとめるだけであったが、今回は異なる。

全体としては従来の経常支出を認めるだけだが、国防総省の予算については、ペンタゴンの求める全額 6590億ドル(軍人への賃上げを含む)を承認した。通常予算5840億ドルに追加し、海外緊急作戦予算750億ドルも認めた。

国勢調査局(Census Bureau)の2020年の調査の継続の費用や、中小企業庁が2017年のハリケーンや山火事の被害地域に対するローンなども認めた。

問題は上院である。フィリバスターを避けるには60票が必要だが、共和党は51議席しか持たない。

また、この予算が通った場合、債務上限が問題となる。議会予算局は、債務上限問題で3月前半に資金が枯渇する可能性を示した。当初、3月後半から4月にとしていたが、税制改革での税収減で早まった。

大統領の発言が問題を複雑にした。

2月6日の議員などの会合で、「民主党が新移民法の案を支持しないなら、政府機関の閉鎖を見たいものだ( "love to see a shutdown")」と述べた。


しかし、上院の与野党指導部は2月7日、国防費などを積み増すため、2018会計年度(2017年10月~2018年9月)と2019会計年度の歳出上限の引き上げで合意した。
合わせて、債務上限の2019年3月までの停止と、3月23日を期限とするつなぎ予算法案を通すことでも合意した。

米議会は2011年に、政府債務の悪化に歯止めをかけるため、10年間の歳出上限を定める「予算管理法」を成立させた。

2011年8月2日の期限切れでの米国史上初のデフォルトを目前にし、米与野党指導者は7月31日夜、連邦政府の債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

2011/8/3 米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避 

この予算管理法では、社会保障費などを除く「裁量的経費」に上限を設けている。国防費と非国防費に分かれ、国防費が半分を占める。

国防費 非国防費 合計
2018年度 5,483億ドル 5,174億ドル 10,657億ドル
2019年度 5,613億ドル 5,313億ドル 10,927億ドル

2014年以降は特例法で上限を引き上げてきたが、2018年度については与野党対立が長引き、決まっていなかった。

これまでも、その都度法案で上限を引き上げてきたが、 今回、下記の通り上限を大幅に引き上げた。

2018年度 2019年度 累計
国防費 800億ドル 850億ドル 1650億ドル
非国防費 630億ドル 680億ドル 1310億ドル
合計 1430億ドル 1530億ドル 2960億ドル
引き上げ後 12087億ドル 12457億ドル

トランプ政権は2017年5月に提示した予算教書で、2018会計年度の国防費を540億ドル積み増す一方、非国防費を逆に540億ドル減らすとしていた。
今回合意した2018年度の国防費の引き上げ額は800億ドルとさらに大きくなり、非国防費も減額から一転して大幅増となった。

米議会が大幅な歳出増で合意したのは、2018年秋に中間選挙を控えるためで、共和党は有権者に国防費の大幅積み増しを訴え、民主党も医療用鎮痛剤「オピオイド」の中毒対策やインフラ投資を求め、与野党の妥協策で国防・非国防費の大幅積み増しにつながった。

この案が議会で成立すれば、2018年度の歳出上限は前年度比1割強も高まる。今後、大型減税で税収が年1千億ドル規模も減る見通しで、20兆ドルと過去最大に膨らんだ連邦政府債務は一段の悪化が避けられない。

同案が上下両院を通過すれば、政府機関の一部閉鎖といったリスクは当面回避できることとなる。

しかし、政府機関閉鎖を避けるため、不法移民問題を棚上げにしたことから、下院には反対意見が強い。
民主党下院トップのナンシー ペロシ院内総務は、不法移民問題を中心に、下院での演説時間としては史上最長の8時間7分の演説を行い、ドリーマーの救済策が折り込まれなければ法案に反対すると述べた。 共和党にも反対が多い。

肝心の上院でトラブルが発生した。共和党のRand Paul上院議員が大幅な予算増に反対した。

2月8日の午前中に下院で議決したつなぎ予算の議決にはいるかどうか(Cloture motion) の投票をしたが、否決された。共和党のRand Paul上院議員は反対した。(可決には60票が必要)
上院民主党首脳は下院案ではなく、与野党合意案を通す意向。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 49 6 55
反対 1 41 2 44
棄権 1 1
合計 51 47 2 100

共和党McCain上院議員は療養中で棄権

Rand Paul上院議員は、上院与野党首脳が決めた法案(歳出上限引き上げ、債務限度引き上げ、つなぎ予算)について、案の修正があるまでは投票しないと長時間反抗した。

上院に続き下院も法案を8日中に通す必要があり、深夜を過ぎると政府機関の閉鎖となるが、同議員は法案の議決に入るかどうか(Cloture motion) の投票をしないとしている。その間、投票が締め切れないため、法案の議決ができない。

2月9日午前0時35分に行政管理予算局(Office of Management and Budget)は政府機関の閉鎖を指令した。

ルール(投票時間制限)では深夜1時になれば法案の投票ができる。

直ちにCloture motionを73対26(Paul 議員の反対を含む)で可決し、法案の投票を開始した。

午前1時50分に上院は賛成71、反対28で 法案を可決し、下院に送付した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 34 36 1 71
反対 16 11 1 28
棄権 1 1
合計 51 47 2 100

下院は上院の可決を待っており、全員に深夜又は早朝の議決に備えるよう通知していた。

下院で通るかどうかは不明であった。上記の通り、民主党は移民問題の棚上げで反対しており、共和党内の財政保守派「フリーダム・コーカス(自由議連)」も反対姿勢を示していた。

しかし、公共事業などの積み増しを求めてきた民主党の一部が賛成に回る見込みで、ライアン下院議長(共和)は可決に自信をみせていた。

2月9日の午前5時半に下院で賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 167 73 240
反対 67 119 186
棄権 4 1 5
合計 238 193 431

三井物産は2月5日、豪石油ガス開発大手 AWE Limitedに対してTOBを実施すると発表した。

豪州国内の優良原油・ガス資産のポートフォリオを拡充すること、及び豪州石油・ ガス生産事業に於いて、より活動領域を広めるためオペレーター機能を獲得することを目指す。

2018年3月中~下旬にAWE株1株に付き0.95豪ドルで買い付けをする。50.1%以上の応募で成立し、全株の買い付けを目指す。買収額は最大で602.1百万豪ドル(約512億円)となる。

AWEは豪証券取引所に上場するが、TOB成立後は非公開となる。

付記

三井物産は5月2日、公開買付けが終了し、株式の96.47%を580百万豪ドル(約493億円)で買い付けたと発表した。

今後、未応募分株式の強制買取を実施し、完全子会社化及び上場廃止を行う。

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三井物産は、中国国儲能源化工集団と豪州のMineral Resources Limitedとの争いに勝ち、TOBを実施する。

AWEに対しては、2017年11月30日に中国国有の中国国儲能源化工集団(China Energy Reserve and Chemical Group=CERCG)の豪子会社が1株当たり現金0.71豪州ドルでの買収を提案、12月8日に現金0.73豪州ドルに引き上げた。

12月8日に豪州のMineral Resources Limited (MRL) が1株当たり0.80豪州ドル相当の株式交換による買収を提案、その後、現金と株式の組み合わせによる1株当たり0.83豪州ドル相当に引き上げ、AWEはこれを株主に推奨した。

2018年1月29日に三井物産が1株当たり0.95 豪州ドルでの買収を提案、AWEはMRLに対し、三井提案への対案を出すよう要請したが、期限までに回答がないため、三井物産提案を株主に推奨した。

2017/11/30 中国儲能源化工集団(China Energy Reserve and Chemical Group=CERCG)
1株当たり現金0.71豪州ドルで買収する条件付き提案
12/5 上記提案取り消し
12/8 CERCGが1株当たり現金0.73豪州ドルでのTOBを発表 総額 462百万豪州ドル
12/8 Mineral Resources Limited (MRL)
 0.80豪州ドル相当の株式交換提案
 AWEの22.325株当たりMRLの1株交付 
12/21 AWE、MRLによる改正案での買収を支持
 現金 0.415豪州ドル+MRL株式 0.0198~0.0277株
 MRL株価が15~21豪ドルの場合、0.83豪ドル相当、総額 526百万豪州ドル
2018/1/29 三井物産が0.95 豪州ドルでの買収提案
 総額 602百万豪州ドル
1/30 AWE、MRLに対し三井提案に対応した新提案を2/2までに出すよう要請
2/5 MRLが新提案を期日までに出さず。
AWEは三井提案を株主に推奨、
CERCGによるTOBを拒否

三井物産の提示額は、CERCGの買収案が昨年11月に明らかになる前のAWEの株価を74%上回る水準で、CERCGの案を30%、ミネラル・リソーシズの案を14%、それぞれ上回った。

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AWEは1997年に設立された。

同社の活動は下記の通り。

Project 立地 権益 (%) 2P Reserve 2C Contingent
BassGas Bass Basin
AWE 35.00%
Origin Energy (Operator) 42.50%
Toyota Tsusho Gas E&P Trefoil 11.25%
Prize Petroleum International 11.25%
7.0 MM BOE 30.6 MM BOE
Casino Gas Otway Basin
AWE 25%
Cooper EnergyAWE 50%
Mitsui E&P 25%
5.9 MM BOE 1.3 MM BOE
Waitsia Gas Perth Basin
AWE (Operator) 50%
Origin Energy 50%
39.0 MM BOE 43.9 MM BOE
Onshore Perth Basin
AWE

33~100%

Ande Ande
Lumut Oil
Natuna Sea,
Indonesia
AWE 50%
Santos(Operator) 50%
  33.7 MM BOE

2P Reserve (埋蔵量)はProved reserve+Probable reserve
2C Contingent (条件付き埋蔵量)は上記相当



主な製品の輸入実績は下記の通り。
樹脂については、PVCを除き、日本の存在感はない。

エチレン  関税番号 290121
...
プロピレン  関税番号 290122
...
PE (LDPE+LLDPE)   イランからの輸入が多い。(特にLDPE)

PE 輸入内訳  LDPE:関税番号 39011000、
LLDPEはこれまで関税番号39019020であったが、2017年からα-オレフィンを加え、390140 となった。
...
HDPE  関税番号 390120 イランからの輸入が多い。
...
PP 関税番号 390210
...
SM 関税番号 290250
...
PS  関税番号 39031990   変性PS(39031910)を除く
...
ABS 関税番号 390330
...
VCM  関税番号 290321
...
PVC 関税番号 390410 (ペースト塩ビを含む) 2011年以降は米国品が日本品を上回る。
...

PVCの輸出は下記の通りで、2016年と2017年は輸出が輸入を上回った。

ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカットの東部3州の知事は1月26日、2017年末に決まった税制改革が自州の住民の連邦税負担を増やすことから、法律の撤回を求め近く連邦政府を提訴すると発表した。

新税制が特定の州の住民に対する差別にあたり、憲法に違反すると主張している。


米国ではこれまで、個人(及び企業)が州や自治体に支払った州税・地方税(所得税や固定資産税など)は連邦税の計算上、SALT (state and local tax) と呼ばれる控除制度により上限なしの控除が可能であった。

今回の税制改革では、個人については、2018年から2025年に限り、控除限度が10,000ドル(夫婦が別々に申告する場合は1人5,000ドル)となった。企業の場合は従来通り。

ニューヨークやニュージャージー、カリフォルニアといった東西海岸に面し、民主党が強い地域は、州・地方税率が高いことで知られる。

州所得税の限界税率は下図の通り。
このほか、固定資産税の全米平均は1700ドル程度だが、全米で最も固定資産税が高いといわれるニューヨーク州のウェストチェスター郡だと平均1万4000ドルに上るとされる。

この結果、州・地方税率の高い地域に住む住民にとっては連邦税の支払いが増え、打撃となる。

ニューヨーク州当局者は、税制改革によりニューヨーク州の納税者負担は年間140億ドルに達する可能性があるとする。
コネチカット州知事は、納税者負担は100億ドル増えるとする。

逆に、州税・地方税の低い南部諸州は今回の改正を歓迎している。

南部への人口移動について研究しているテネシー大学のボイド企業・経済研究センターの所長は、個人や企業が南部に移る理由は温暖な気候や手頃な住宅などさまざまだが、研究では税金が重要な要因になっているとする。今回の税制変更で南部州には2つの大きな影響が及ぶと予想する。一つは南部で恒久的居住を決める高所得者が増えること、もう一つは北部から移り住む中間層労働者が増えることだ。

ーーー

今回提訴方針を発表した3州の知事は、税制改革はSALTとして知られる州税・地方税控除を大きく削減するため、違憲であるとする。

 税制改革法は、各州の権利を根本的に侵害するもので、国の基本である連邦主義の概念に矛盾する。

 州税の高い州を、不公平に、恐らく意図的に罰するものである。

 民主党の強い12州が被害を受け、他の州は利益を得るため、Equal Protection Clauseに違反する。

注)アメリカ合衆国憲法修正第14条に定めるEqual Protection Clauseは、合衆国で生まれた(または帰化した)すべての者に公民権を与えるとする条項

コネティカット州知事は「今回の税制改革は我々の州と経済、住民に対する差別だ」と連邦政府を激しく非難した。

ニューヨーク州知事は「民主党が強い地域を狙った攻撃だ」と主張した。

ニュージャージー知事は、トランプ大統領と共和党主導の議会が、2016年の大統領選でトランプが敗北した民主党が強い州を狙ったものだという証拠が裁判で明らかになるだろうと述べた。
「昨年11月に、たった一夜で500頁もの税制修正案が手書きで出された。私は知らないが、ロビーストが手書きで作成したとされている」と述べた。

影響を受ける他の州の参加を求めるとしている。

今回の税制改革が違憲かどうかは税専門家の意見が分かれており、先行きは不透明。

このため、州政府が住民の負担を軽減するため、自ら税制を見直す動きも目立つ。

カリフォルニア州では州政府に支払う所得税を撤廃し、代わりに寄付金を納める方法を検討中。寄付金は連邦税制では全額が控除対象になるため、住民は新税制でも増税にはならない。

 

トランプ政権や共和党議員の間では、州の財政緊縮で州税を引き下げることが先決だとの指摘もある。ムニューシン米財務長官は講演で「州が13~14%も課税する必要があるのか」と課税率の高い州を批判している。

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なお、州・地方税の損金算入取り止めは個人所得税の計算に限られ、法人税については従来通り、損金算入が認められる。

米国の法人実効税率の計算は、従来からカリフォルニア州のケースを採っているが、8.84%の州税は従来通り、損金算入される。

今回法人税率が21%に下がる結果、実効税率は27.98%となる。

 従来  35% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 40.75%
 改正  21% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 27.98%

厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は2018年1月17日の総会で、2018年度診療報酬改定におけるロボット支援下内視鏡手術への保険適用について議論した。

2018年度診療報酬改定に向けて各領域の学会から計15件の提案があったが、2017年10月23日の医療技術評価分科会で議論し、その後、各提案について分科会委員による評価を行った。

その結果、既に保険が適用されている前立腺がんと腎臓がんに続き、肺がんや食道がん、胃がんなど新たに12件が挙げられた。
既存技術と同等程度の有効性・安全性があるとされるものを選んだ。

既承認

腹腔鏡下 前立腺悪性腫瘍
同    腎悪性腫瘍
新規承認案
胸腔鏡下 縦隔 悪性腫瘍
同    縦隔 良性腫瘍
同    肺 悪性腫瘍(肺葉切除or 1肺葉を超えるもの)
同    食道 悪性腫瘍
同    弁 形成術
腹腔鏡下 胃 切除術
同    噴門側胃 切除術
同    胃 全摘術
同    直腸切除・切断術
同    膀胱悪性腫瘍
同    子宮悪性腫瘍 (子宮体がんに限る)
同    膣式子宮全摘術

ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)は米Intuitive Surgical 社の手術支援ロボットを使う手術。

胸腔鏡下手術、腹腔鏡下手術 をロボット支援下で行うもので、腹腔鏡下手術等では医師が直接鉗子を操作して行うが、ダヴィンチによる手術では鉗子の操作はロボットアームにより行われる。

元々は1980年代の後半に、米国陸軍と旧スタンフォード研究所において開発されたもので、戦地での負傷者の手術を、離れた場所にいる空母や米本土の病院の医師が遠隔操作ですることを狙った。

1995年、民間での応用をさらに推し進めるため、Intuitive Surgical 社が設立され、1996年には最初のロボット支援下手術用サージョンコンソールを開発した。

1999年1月に、da Vinci
Surgical Systemを上市、2000年には、一般的な腹腔鏡下手術を適応とする初のロボット支援下手術システムとして、FDAにより認可された。その後は、胸腔鏡手術、補助切開部からの心臓手術のほか、泌尿器科、婦人科、小児外科、経口アプローチによる耳鼻咽喉科の手術についてもFDAから認可を得てい る。

日本では、2009年11月に、泌尿器・一般消化器・婦人科・胸部外科でダヴィンチの薬事承認がなされ、2010年3月に販売を開始した。
2015年9月に心臓手術も承認された。

これは、大変高価な装置 (日本ではSiモデルが2億4800万円、Si-eモデルが1億7000万円)で、また、年間のメンテナンス費用もかさむ。

2012年4月に前立腺全摘除について保険収載が行われ、これのみ保険適用が可能となった。その後、2016年度から腎悪性腫瘍も 対象となった。
ダヴィンチは米国で蓄積された手術実績に基づいて日本で医療機器として承認されたが、米国では前立腺ガンの患者数が多く、実績データが豊富に集まっていた。腎悪性腫瘍については、2014年9月から日本で「先進医療B」としての治療が認められ、保険適用申請に向けた多施設共同の臨床研究を実施した。)

今回、保険適用が一挙に拡大する。

ーーー

ダヴィンチシステムは、胸腔鏡下手術、腹腔鏡下手術をロボット支援で行うもの。

システムは、サージョンコンソール、ペイシェントカート、ビジョンカートなどから構成される。
3つのアームと1つのステレオ3Dカメラを搭載し、アームのカセットを交換することで、様々な処置を行うことが出来る。

通常の腹腔鏡下手術では医師が直接鉗子を操作して行うが、ダ・ヴィンチによる手術では鉗子の操作はロボットアームにより行われる。

執刀医は数m離れた場所に置かれたサージョンコンソールに座り、術野の3D画像を見ながら、ロボットアームを遠隔操作する。

左右のコントローラを右手と左手で握り、腕や指を動かすと、患者に横付けされたペイシェントカート(手術装置)に即座にその動きが正確に伝わって、患者の腹腔/胸腔内に挿入された鉗子や内視鏡が同じ動きを する。親指と人差し指を開閉すると鉗子の先も開閉し、組織をつまんで固定したり、剥がしたりといった操作ができる。また、フットペダルで切り替えることで、3本の鉗子と1本の内視鏡の合計4本を一人の術者が自在に操り、繊細な手術が実行でき る。

患者の横には吸引作業や機器カセットを交換したりする補助作業者が立つ。

   国立がん研究センター東病院 HPから


通常の腹腔鏡下手術 では、腹にヘソを含め4つの穴をあけて、機器の出入り口であるポートを設置し、ヘソからは腹腔鏡を入れる。

手術者は腹腔鏡の画像を映すモニターをみながら、ポートからいれた機器で手術を行う。立ったままで、上向きのため、長時間の手術は疲れる。
当然、手ぶれの恐れなどもある。

ダヴィンチの場合は、手術者は、両眼視で見る3Dモニターでリアルな立体画像でとらえることができ る。

開腹手術では3Dだった視野が、内視鏡越しに見る腹腔鏡手術では2Dになってしまい、術者は脳で画像の深さを調整して手術を行わねばならなかった。

座ったままで、下向きの目線(開腹手術と同じ目線)で操作を行うために、疲労が少なく、視野も広く奥行きの把握も良好とされる。


通常の腹腔鏡下手術ではポートに入れた鉗子の先が開閉するだけで、マジックハンドのように直線的でぎこちなく、曲がらない。
ダヴィンチでは鉗子の先に関節があり、人間の手首以上に自在に曲がるので、可動域が広くなる。


先の震えが伝わらないよう手ぶれを補正する機能があり、細い血管の縫合や神経の剥離などを正確に行うことができる。

このため、人の手以上に細かく、丁寧に、確実な手術ができる。

ロボットアームで毛筆で米粒に漢字を書くような細かい作業や、 1円玉より小さな折り鶴を折ることもできるとされる。

東京医科大学病院のトレーニング(折り鶴) https://www.youtube.com/watch?v=BQ3tVUsn2gI

朴槿恵前政権で起こった国政介入事件で朴前大統領と長年の知人の崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審判決公判が2月5日開かれた。

控訴審は2017年12月27日に結審したが、検察側は懲役12年を求刑していた。

2017/12/30 サムスン副会長の控訴審、検察側12年求刑

ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。
2人の部下も執行猶予判決で釈放された。

2017年8月の一審では5つの起訴事実すべてが有罪とされたが、高裁は焦点となっていた贈賄の一部と海外への不正な送金などを無罪とした。

李被告が闘病中の父李健熙・サムスン電子会長から経営権を継承するため、朴被告に便宜供与を求めて賄賂を渡したとされたが、裁判所は大統領に依頼するようなことは無かったとしてこれを認めなかった。

サムスンが崔順実被告のドイツ法人であるCore Sportsと220億ウォン台のコンサルティング契約を結び、このうち38億ウォンを送金した件については、賄賂とは認めたが、違法な送金とは認めなかった。

これについては、最も悪いのは朴槿恵と崔順実で、韓国で最も力のある朴槿恵がサムスンに強要し、崔順実は朴槿恵との関係を利用して私腹を肥やしたとした。

下級審が、政治家と財界の典型的な癒着であるとしたのと大きく異なる。

朴槿恵被告の要請を受けて崔順実被告の娘の乗馬訓練のスポンサーになったことについては、弁護側は、李在鎔被告は部下がやったことを何も知らないとしたが、裁判所は有罪とした。


サムスンではトップ不在が長引き、大型M&Aや新事業を含む経営への影響が懸念されていたが、執行猶予判決で同被告は経営に復帰する。

付記 朝鮮日報は2月6日の社説で以下の通り述べている。

 一審では崔順実被告らに対する乗馬支援などに関して具体的な請託などなかったことは認められたが、「黙示的請託」なるものがあったとして懲役5年の実刑が宣告された。サムスングループの経営権継承という懸案をめぐり、朴前大統領と李氏が以心伝心で「心の中で請託が行われた」として実刑を宣告したのだ。裁判官が実際の証拠ではなく他人の心中を勝手に判断し「心の中の請託」があったとして有罪判決を下すなど絶対にあってはならないことだ。

 この無理な判決は今回の二審でほぼ正された。二審で裁判長は「李氏が朴前大統領に請託を行った証拠はない」と認めた。言うまでもなく実際に提出された証拠も一切なかった。サムスン物産と第一毛織の合併や、サムスン生命の金融持ち株会社への転換は李氏に経営権を継承するためだったとは言えず、朴前大統領も経営権継承について把握していたとは考えられないというのが裁判長の判断だ。また誰が見ても請託が行われたと言える状況でもなかった。「心の中の請託」などその前提自体が成立しないことを裁判長が認めたのだ。

 この事件を最初に捜査した検察は、事件の性格について当初「朴前大統領の強要によるもの」と判断したが、それを特別検事が「贈賄事件」へと勝手に変えた。朴前大統領に厳しい判決を下すため、事件の構図を思いのままに変更したのだ。


付記 サムスン側、検察側がともに判決を不服として上告した。

リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件で、公取委による立ち入り調査前に自主申告した大林組については、これまで、課徴金全額が免除され、刑事告発もされないものとされてきた。

リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社(大林組、清水建設、鹿島建設と大成建設)による談合事件家宅捜査で明らかになった。

その後、12月18日には、特捜部と公取委が独禁法違反容疑で立ち入り調査を行ったが、その前に大林組が自主申告をおこなった。

独禁法違反容疑で立ち入り調査の後で、清水建設も自主申告を行っている。

独禁法では、調査開始日前の1番目の申告事業者は課徴金が全額免除されるとともに、公取委による刑事告発が見送られる
その他については以下の通り。

課徴金 刑事告発 一般認識
開始前 第1申告者 全額免除 見送り 大林組
第2  50%減額
第3~第5 30%減額
開始後 最大 3社 &
開始前と合わせ
  最大5社
30%減額 清水建設


公取委は第2申告者以降の扱いを改正しようとしていたが、現通常国会への提出を断念した。

2018/1/26 公取委、独禁法改正案の通常国会への提出を断念


しかし、課徴金減免には次のような手続きが必要である。

(調査開始前の自主申告)

 ①まず調査開始前に、違反行為の概要を記載した「様式1号」を提出
 ②さらに公取委が通知する期限までに、指定日までに、不正行為に関与した自社や他社の役職名や時期などを明記した詳細な報告と営業日報などを添えた「様式2号」を提出

(調査開始後)
 調査開始日から20営業日を経過した日までに「様式3号」を提出し、公取委が把握していない情報を提供



今回の場合、大林組は調査開始前に1号様式を提出したが、様式2号の提出前の12月18日に独禁法違反容疑の調査が行われた。

このため、調査開始前に様式1号と様式2号を提出するという要件を満たせず、調査開始後の自主申告となる。
清水建設とともに、調査開始20営業日の前に様式3号を提出した。

談合を否定しており、自主申告を見送ったとみられる。

ーーー

様式2号は公取委の指定する日までに提出することとなっている。

今回、その日の前に調査に入った。

通常は自分が指定した様式2号提出日までに調査に入ることはあり得ない。公取委の知らない事案を自主申告しても、そのメリットが大幅に下がることとなる。

今回は、「公取委の知らない事案」ではなく、12月8日の特捜部の偽計業務妨害容疑調査の時点でおそらく公取委も関与しており、12月18日の独禁法違反容疑調査も予定されていたと思われる。

大林組の様式1号提出は、「形式上」は調査前であるが、公取委が全く知らない事案ではない。特捜部の調査の報道で公知の事実でもある。

大林組が仮に様式1号と様式2号を合わせて提出しておれば、調査前扱いになっていたかも分からない。

丸善石油化学は2月2日、取り扱う製品の一部について、試験・分析項目の一部につき、需要家との契約に則った試験・分析がなされていなかった事実が判明したと発表した。

現時点で、法令違反行為は確認されていないとしている。需要家には1月24日以降、順次、説明を開始した。

判明後直ちに是正を行い、1月30日時点で全て試験・分析を開始した。

同社では 1月10日付で社長を本部長とする対策本部を設置した。更に、同日付で外部弁護士を加えた社内調査委員会を設置し、詳細な事実確認を行うとともに、本件の過去の経緯、原因の究明などの調査を行ったうえ、再発防止策を策定する予定。

問題点は次の通り。

①実際には試験・分析していないにも関わらず成績表に記述・提出している。
②定められた試験・分析頻度を順守していない。

対象となる製品(千葉工場および四日市工場)(21品目)
・プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、分解系キシレン、改質系キシレン
・高純度ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、メチルエチルケトン
・セカンダリーブチルアルコール、ジイソブチレン、ターシャリーブチルアルコール

・スワソルブETB(エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル)
・マルカゾールFH(シクロペンタン)、酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール
・トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、マルカレッツM(M-890A)、液化炭酸ガス

付記 

宇部興産でも製品検査項目の一部を実施していなかったことが判明 (2/23発表)

問題となるのは、宇部興産の千葉石油化学工場が生産し、宇部丸善ポリエチレン(宇部興産、丸善石化の50/50JV)が販売するLDPE。

宇部丸善ポリエチレンは2004年10月に宇部興産のLDPE製造販売事業を継承し、丸善石油化学が参加したもの。生産は宇部興産が受託している。

ーーー

丸善石油化学は、2016年3月よりコスモエネルギーHDの連結子会社となっている。

コスモは丸善石油化学に対し、自らが30%、100%子会社のコスモ松山石油が10%で合計40%を出資していたが、チッソ子会社のJNCから8%分を取得した。
出資比率は48%だが、丸善石油化学の自社株が9%あるため、議決権ベースでは52.75%となった。

2016/1/8 コスモ石油、丸善石油化学を連結子会社化

SABIC、Clariantに出資

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Clariant は1月25日、SABICがClariantの株式の24.99%を取得し、最大株主になったと発表した。

物言う株主Keith MeisterのヘッジファンドCorvex Management LP と投資グループの40 North から買収した。 これまで Corvex Management LPと40 North は共同でWhite Tale Holdings を設立し、Clariantと対決してきた。

Clariantは次のように述べた。
 SABICによる同社株式の取得については事前に知らされていた。
 SABICは世界の大手化学会社の一翼で、スペシャリティ部門にも進出しており、触媒のJV Scientific Designのパートナーでもある。
 近いうちに今後のClariantの運営について話し合いたい。

SABICは2003年に吸着剤と触媒のメーカーである Süd-Chemie と組んで、Linde AG からScientific Design Company Inc.を買収し、50/50 JV とした。

その後、2011年にClariantがSüd-Chemieを買収した結果、現在 Scientific Design はSABICとClariant の50/50 JV である。

ーーー

Corvex と40 North の White Tale Holdings はこれまで、Clariant株を長期保有するとして、会社側と対決してきた。

Clariant と Huntsman は2017年5月22日、両社の取締役会が満場一致で両社の対等合併の契約を承認した。

統合会社の社名はHuntsmanClariant で、統合会社の売上高は132億ドル、 EBITDA は23億ドル、企業価値は約200億ドルとなる。

Clariantの株式がそのままHuntsmanClariant の株式となり、Huntsmanの株主はHuntsman株式1株につき1.2196株のHuntsmanClariant株を受け取る。
結果として、Clariant株主が52%、Huntsman株主が48%となる。

取締役は両社から均等に出す。

新会社のグローバル本社はスイスのPratteln に置き、運営本部はテキサス州The Woodlandsに置く。

株式はスイスとNew Yorkの両方で上場する。

2017/5/26 Huntsman と Clariantが統合 

これに対し、White Tale Holdings は反対を唱え、Clariant株の買い増しを進めた。

2017年7月10日  10%超
   9月19日  15%超
   10月27日  20%超

White Tale は持株が15%超となった時点でClariantの取締役会に公開状を送り、Huntsmanとの合併を取り消し、戦略的代替案を探ることを求めた。

合併はClariant株主に損害を与え、Clariantのいろいろな選択肢をつぶすことになるとしている。
合併を取り止めるとともに、独立投資会社を雇って、スペシャリティケミカルの専業としてやっていける代替案を探ることを求めた。

両社は2017年10月27日、合併を断念した。両社は合併が長期的に株主の利益になると信じるが、物言う投資家White Tale Holdings が反対を続け、他の株主も同調しているため、無理と判断した。

契約には、株主総会で通らなかった場合の違約金の条項はなるが、今回は総会前の両社の判断であるため、違約金の支払いはない。

その後、ClariantはWhite Tale と話し合いを続けた。

しかし、White Tale の主張は曖昧で、Clariant側の印象は、Clariantをバラバラにして、それぞれを高く売ることを狙っているように見えるとしている。

Plastics & Coating部門の売却検討の提案も出された。

2016年の業績(100万スイスフラン)

売上高 EBITDA
Care Chemicals 1,465 276
触媒 673 160
Plastics & Coating
(顔料、マスターバッチ、添加剤)
2,525 368
天然資源ビジネス
Oil & Mining、Functional Minerals
1,184 200
Corporate - -117
Total 5,847

これは実質的にClariant 解体を意味し、経営陣にとって受け入れる余地はなく、対立した。

White Taleの狙いは、Clariantの価値を高めることではなく、売り抜けて利益を得ることであり、その後も24.99%まで買い増しし、SABICに売却して利益を上げた。

Clariant 株価推移


  

富士フィルムHDは1月31日、米国Xerox Corporationとの間で以下の点で合意したと発表した。
 ①富士フィルムHDがXerox Corporatの50.1%を取得、Xeroxは社名をFuji Xeroxに変更、NYSEの上場を維持
 ②富士フィルムHDの子会社の富士ゼロックスとXerox Corporationの経営統合

富士フィルムとXeroxは56年間に亘り、富士ゼロックスを通じて多角的な相互協力を深めてきたが、富士ゼロックスが成長市場のアジアを中心にするのに対し、Xeroxが基盤とする欧米では、ペーパーレス化でコピー機の需要が減少している。

富士ゼロックスは当初は50/50であったが、2001年にXerox の経営不振で 、富士フィルム75%出資に変更した。
テリトリーは、Xeroxは
欧米中心、富士 ゼロックスは、日本、中国などアジア・太平洋となっている。

Xerox については最近、米の大手投資家の Carl Icahn が別の大株主との共同で富士ゼロックスの解消も含めた見直しを要求していることが報じられていた。合弁終了または、有利な条件での再交渉を求めている。
また、最高経営責任者の解任を含め、Xerox の抜本的な経営改善も求めている。

富士フィルムは、Xeroxの買収により、Xeroxと富士ゼロックスを一体化し、世界最大規模の売上高を誇るドキュメント企業とする。
統合効果発現により売上増及びコスト改善を通じた収益力向上を見込み、ドキュメントソリューションカンパニーとして事業成長を加速させる。

Xeroxによれば、現在のXeroxの株主は25億ドル(1株当たり $9.80)の配当と新会社Fuji Xerox の株式 49.9% を与えられる。残り50.1%は富士フィルムが保有する。
既存株主は、多額の現金と、富士ゼロックスと統合して著しく強化された新会社(Fuji Xerox)の株式を保有することとなるとしている。

  

富士フイルムHDは、富士ゼロックスにより自己株式として取得された対価を活用して、Xeroxの新株50.1%を取得する。
富士フイルムHDおよび富士ゼロックスの現金の外部流出はない。

1) 富士ゼロックスが 6,710億円を銀行借入
2) 富士ゼロックスが 6,710億円で富士フィルム保有の富士ゼロックス株を取得 (結果としてXeroxの100%子会社になる)
3) 富士フィルムは受領した6,710億円(61.8億ドル)で新Xeroxの株式 50.1%を取得 
4) 新Xerox は100%子会社となった富士ゼロックスの銀行借り入れを富士フィルムから受け取った6,710億円で返済する。

5) 新Xerox は旧Xerox 株主に、新Xerox株式の49.9%と特別配当25億ドルを支払う。

(まとめ)
富士フィルムは富士ゼロックスの75%分を6710億円と評価し、これを新Xeroxに渡すことにより、新Xeroxの50.1%を受け取る。
Xerox の既存株主は、Xeroxの株式100%の代わりに、新Xeroxの49.9%と特別配当25億ドルを受け取る。

新しいFuji Xerox は現Xerox本社(米国コネチカット州)および現富士ゼロックス本社(東京都港区)の両方を本社として活用 する。

本件は、富士フイルムHDは1月31日、ゼロックスは米国時間1月30日の各取締役会において全会一致で承認された。

付記

米ゼロックスの筆頭株主で「物言う株主」として知られる著名投資家のCarl Icahnは2月12日、同じく大株主のDarwin Deasonと共同で、富士フイルムによる買収に反対する声明を公表した。2人はゼロックスの株を合わせて15.2%保有する。

主張は次の通り。

ゼロックス単独で経営を続けても、経営者を一新し、セキュリティーやソフトウエア分野への事業シフトや販売網の再構築を実行すれば、ゼロックスの株主価値を大きく引き上げることができる。
「富士フイルムにこの会社を奪われてはならない」と他の株主に呼び掛けている。

富士フイルムがキャッシュを一切使わない買収スキームも問題視。ゼロックス株主に対して支払われる25億ドルの特別配当がゼロックスの資産から支払われる点にも難色を示している。

買収交渉でゼロックス経営陣が株主価値を十分に考慮したか疑わしく、交渉過程の詳細を公開することを求める。


新富士ゼロックスの戦略の方向性:

  • 全世界統一のマーケティング戦略に基づき、オフィス市場において、競合を凌駕する製品・サービスを提供し、各地域でのシェアアップ、グローバルアカウントの獲得をより一層加速。
  • R&D、生産、調達、物流などすべてのバリューチェーンを最適化することにより、新製品のタイムリーな市場投入とコスト競争力の向上を実現。
  • 富士フイルムHDが得意とする画像処理技術と新富士ゼロックスが持つドキュメント関連のAI技術の融合により、業界や顧客ごとに異なる業務プロセスを自動化し、生産性のさらなる向上を実現するソリューション・サービスを提供。
  • 富士フイルムHDが保有する写真、インクジェット、フォトリソグラフィ(*)、オプティカルなどの先進技術と新富士ゼロックスが持つドキュメント分野の技術の融合という競合他社にはない組み合わせにより、革新的な製品開発を実現し、市場領域を拡大。
* 写真現像技術を応用して微細なパターンを作成する技術。例えば半導体の製造工程などで用いられている。


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