富士フイルムによる買収、ゼロックス大株主が差し止め提訴 

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富士フィルムHDは1月31日、米国Xerox Corporationとの間で以下の点で合意したと発表した。

 ①富士フィルムHDがXerox Corporatの50.1%を取得、Xeroxは社名をFuji Xeroxに変更、NYSEの上場を維持
 ②富士フィルムHDの子会社の富士ゼロックスとXerox Corporationの経営統合

2018/2/1 富士フィルム、米国Xerox Corporationを買収

これに対し、後記の通り、ゼロックスの筆頭株主で「物言う株主」として知られる著名投資家のCarl Icahnは2月12日、同じく大株主のDarwin Deasonと共同で、富士フイルムによる買収に反対する声明を公表した。2人はゼロックスの株を合わせて15.2%保有する。


このDarwin Deasonが2月13日、富士フィルムによるゼロックス買収は不正だとして、差し止めを求める訴えをニューヨーク州の裁判所に起こした。

問題視しているのはゼロックスと富士フィルムが、株主にとって重要な契約の存在を17年間隠していた点である。

ゼロックスが敵対的買収で株式の30%を売却する場合、アジア太平洋の360億ドルの市場でのゼロックスの知的財産権と製造権を富士フィルムに渡すという企業買収防衛策としての重要資産の売却条項("crown jewel" lock-up right)である。

これはゼロックスの戦略の柔軟性を制限するもので、実質的に今回の富士フィルムへの売却は17年前に株主に知らされずに決められていたことになり、不正行為であり、取締役は受託者としての義務に違反しているとする。

このため、裁判所に対し、この取引を中止し、既存のJV契約を終了することを求めた。

訴状 https://ja.scribd.com/document/371438778/Deason-Lawsuit-Xerox

これに対し、ゼロックスは2月13日、「Deason 氏の主張はメリットがない。富士ゼロックスとの統合は複数ある選択肢の中から戦略的な検討を経て選んだもので、会社と株主にとって最善の道」と反論した。


付記

Carl IcahnとDarwin Deasonはゼロックスの株を合わせて15.2%保有するとしていた。
しかし、日経によると、2月13日時点で、Icahnの持ち株は9.7%から9.2%に低下、Deasonも(5.5%から)3.3%になっていることが分かった。両者合計で12.5%となる。

1月31日の富士フィルムによる買収発表を受け、株価が一時急騰したが、この時点で売りに出したとみられる。

他の株主(2017年末時点)は、Vanguard Group が9.7%、Blackrock fund adovisorsが4.3%、State Street Global Advisorが3.5%、Alliance Bernsteinが3.0%。

ーーー

2015年11月に物言う株主として知られるCarl Icahnによるゼロックス株の7%取得が明らかになった。翌月、8.13%に高めた。それ以来、Icahnは会社側に業績改善と取締役派遣を要求してきた。

ゼロックスは2016年1月29日、分社化を正式に発表した。ビジネス・プロセス・アウトソーシング事業を行う Conduent Incorporated をスピンオフ(分離・独立)するもので、分社化はCarl Icahnからのプレッシャーを受けた結果である。

IcahnはConduentの取締役会で3議席を獲得する。また、この新会社のCEOを選出するための委員会に「出席し、助言を与える」人物を選ぶ権利を得た 。

Carl Icahnは2017年12月12日、ゼロックス株主への公開状を発表した。

前日にゼロックスは株主に対し、将来がバラ色との報告を送ったが、実際は恐ろしい状態である。株価は1年で30%上がったが、これは私が主張したConduentのスピンオフの結果である。

明らかにゼロックスは新しいリーダーが必要だ。我々の努力にかかわらず保守派の取締役はぼんくらCEOを守っている。

ゼロックスに新しい価値を生み出す新しいリーダーが必要だ。

http://carlicahn.com/open-letter-to-xerox-shareholders/

Carl Icahnは2018年1月18日付で株主への新しい公開状を発表した。
前の週にWall Street Journal がゼロックスと富士フィルムが交渉している旨を伝え、またゼロックスの株主第3位の Darwin Deasonが富士フィルムに関して戦略的な代替案を検討するため、富士ゼロックスのJV契約を明らかにするようゼロックスに求めていた。

Deason氏は富士ゼロックスJVを改定又は終了すべきだと述べているが、富士ゼロックスの経理スキャンダルをみて、株主は誰もこれに反対しないだろう。
契約改定に賛成する。ずっと前にすべきものであった。

CEOを交代させなければ、我々の投資全部が無くなってしまう。

http://carlicahn.com/open-letter-to-shareholders-of-xerox/

1月22日、Carl IcahnとDarwin Deasonはゼロックスに関する共同声明を発表した。

我々はゼロックスの株を合わせて15%以上保有する。下記の点で意見が完全に一致したため、2018年の株主総会で4人の取締役を出すよう、委任状を集める。

  • 今回の富士ゼロックスの経理スキャンダルに鑑み、JVを解消するか、ゼロックスに有利なように改定すべきである。
  • ゼロックスは直ちに、戦略的代替案を探るべく、独立アドバイザーを選ぶプロセスを始めるべきである。
  • ゼロックスは直ちに、富士ゼロックスJVの契約を開示すべきである。
  • CEOのJeff Jacobson は守旧派で株主にとっての長期的価値を生み出すことができないため、直ちに辞めさせるべきである。
  • もし守旧派の取締役が、ゼロックスが沈没するのを避けるためのタフな決定をできないなら、彼らも辞めるべきである。

Too late になる前に行動すべきだ。


富士フィルムHDは1月31日、米国Xerox Corporationとの間で以下の点で合意したと発表した。

米ゼロックスの筆頭株主で「物言う株主」として知られる著名投資家のCarl Icahnは2月12日、同じく大株主のDarwin Deasonと共同で、富士フイルムによる買収に反対する株主への公開状を公表した。
2人はゼロックスの株を合わせて15.2%保有する。

先週、ゼロックスと富士フィルムが発表した計画は、古森会長が自慢するように、「富士フィルムが一銭も使わずにゼロックスの支配権を得るもの」だ。

富士フィルムは金を使わずに米国の象徴の支配権、所有権の過半数を取得し、既存のゼロックス株主は、隠蔽の文化と管理不十分により 360百万ドルの経理スキャンダルを明らかにした富士ゼロックスの25%を間接所有するのと、我々自身の資産を処分して行われる一時的な特別配当を受けるだけだ。

これが実行されると、ゼロックス株主はそうではなくなる。富士フィルムの子会社の少数株主に過ぎなくなり、我々の投資の将来の方向に関して無力となる。通常の企業価値に加えて考慮される経営支配権に対する上乗せ価値(control premium)を受ける機会が無くなる。

昨年の経理スキャンダルは、我々の資本を富士フィルムに任せるのに極端にナーバスにする。

会社側の唱えるシナジー効果で確実なのはコスト削減であるが、これは統合しなくても実現できる。百歩譲って、この計画で初めて達成できるシナジーがあるとしても、プレミアム無しで支配権をわたすことは正当化できない。

ゼロックスが今回初めて明らかにしたが、富士ゼロックスJVの契約で17年間隠していた事項がある。ゼロックス側が、買う側、売る側のいずれでも、戦略的な資本構造を変える取引をする能力が制限されている。(前記の訴訟内容を参照)

富士ゼロックスの経理スキャンダルに至った富士フィルムの失敗は、JV契約の重要な違反であり、ゼロックスは直ちに解約すべきである。そうすればアジア太平洋の市場を取り戻せる。

今の取締役会はゼロックスのシステマティックな破壊を見過ごしている。何もしなければ、この計画はゼロックスの最終的な弔鐘となる。
株主たちよ、富士フィルムに我々からこの会社を奪わすな。

まともなリーダーを連れてくれば、価値を高める大きなチャンスがある。

http://carlicahn.com/joint-statement-with-darwin-deason-regarding-xerox-2/


5月頃のゼロックスの株主総会に向けて、つばぜり合いが激しくなりそうだ。
裁判の行方も気になる。

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