米入国禁止令、控訴裁が違憲判断 「イスラム教徒差別」

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トランプ大統領が2017年9月24日に出した イスラム圏6カ国を含む8カ国からの米入国禁止令について、Richmondの第4巡回控訴裁判所は2月15日、9対4の評決で、Marylnd地裁の判断を支持、憲法のEstablishment Clause国教条項)に違反すると判断した。

合衆国憲法修正第一条(1791年成立) 政教分離原則,信教・表現の自由

合衆国議会は、国教を制定する法律もしくは自由な宗教活動を禁止する法律、または言論・出版の自由もしくは人民が平穏に集会して不満の解消を求めて政府に請願する権利を奪う法律を制定してはならない。

Prohibits Congress from making any law respecting an establishment of religion, impeding the free exercise of religion, abridging the freedom of speech, infringing on the freedom of the press, interfering with the right to peaceably assemble or prohibiting the petitioning for a governmental redress of grievances.

判決の多数意見で、大統領の声明は宗教的でないことを示しておらず、客観的に見た場合、声明は宗教的な、反イスラムの目的を示しているとした。

政権側は、この禁止令は北朝鮮とベネズエラを含んでおり、最初の2つの禁止令とは全く異なると主張したが、判決では、北朝鮮とベネズエラを加えたことが禁止令の目的を変えたという主張を呑むことは出来ないとした。大統領がイスラム信仰者の米国入国禁止という彼の希望をおおっぴらに、しばしば述べているという疑いの余地のない証拠を指摘した。

証拠は山ほどある。昨年末に大統領はイスラム系移民の恐怖を植え付ける3本の反イスラムビデオを投稿している。
担当官庁がビザ手続きを検討している最中に、何があっても最も厳しい禁止を実行すると述べている。

最高裁は憲法と移民法に照らし合わせ入国禁止令が合法かどうかを4月にヒアリングを開始し、6月末までに判断を下す見込みで、控訴裁は最終決定を最高裁の判断待ちとした。

司法省の報道官は今回の判決について「現状を変更するものではない」と指摘し「最高裁により問題が最終的に解決することを期待している」と述べた。

大統領は3度にわたり、輸入禁止令を出している。

Trump大統領は2017年1月27日、移民の入国を一時禁止する大統領令を出した。

2017/2/5 米連邦地裁、移民の入国一時禁止の大統領令の即時差し止め仮処分

大統領は2017年3月6日、中東・アフリカ7カ国の国民を一時入国禁止にした米大統領令の一部を修正した新たな大統領令に署名した。

2017/3/14 Trump大統領の新たな入国禁止命令 

トランプ大統領が出したイスラム圏諸国からの入国禁止令については、これを問題とする裁判所の判決が続出しており、休会明けの10月10日に最高裁が口頭弁論をする予定であった。

しかし、大統領は9月24日に新しい大統領令を出した。最高裁が審議を取り止めた。

これまでは、イスラム教徒の多い国々を対象にした入国制限が信教の自由などを保障した米憲法に違反しているとの主張が反対理由であったが、テロリストの入国を防ぐための「国家安全保障上の措置」とし、非イスラム国の北朝鮮とベネズエラを加えることで、この批判を避けたともみられる。

2017/9/27 米国の入国禁止措置、複雑な情勢に

入国制限の対象国は次の通り。

2017/1/27 2017/3/6 2017/9/24 理由
イスラム イラン
シリア
リビア
イエメン
ソマリア
チャド
スーダン X

公共の安全と情報交換での米国政府との協力関係

イラク X

対IS共闘、ビザ申請者の情報提供など

北朝鮮

渡航者に関し一切の情報提供がない

ベネズエラ

政府がその国民が危険人物かどうかを通知するのに非協力

合計 7か国 6か国 8か国

第9巡回控訴裁判所は2017年12月22日、大統領のイスラム6カ国をターゲットとした移民禁止令は連邦法違反であり、ホワイトハウスの憲法上の権限を超えるものであると認定した。

禁止は米国と強い結びつきのある人々に適用すべきでない。これらの国からの入国禁止はビザ発行における国による差別である。大統領には入国制限の権限はあるが、無制限ではないとした。

結論として、大統領の声明は権限を越えているとした。

但し、3人の判事は、この決定は最高裁の決定があるまではペンディングにするとした。

米最高裁は2018年1月19日、2017年9月24日に発表された新しい入国禁止令の合憲性を審理するとの決定を出した。

大統領令が違法である可能性が高いとする下級審の判断に対し、政権が上訴していることを受け、口頭弁論を開くこととした。6月末までに判断を下す見込み。

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