米ゼロックス、大株主が再び提訴 

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Xerox の大株主Darwin Deason は3月2日、Xeroxを相手取り、新たな取締役を推薦する権利を求める訴訟をニューヨーク州の裁判所 (Supreme Court of the State of New York County of New York) に起こした。



Xeroxは本年1月31日に富士フィルムによる買収を発表した。この時点で、Xeroxが敵対的買収で株式の30%を売却する場合、アジア太平洋の360億ドルの市場でのXeroxの知的財産権と製造権を富士フィルムに渡すという企業買収防衛策としての重要資産の売却条項("crown jewel" lock-up right)
の存在も初めて明らかにされた。

2018/2/1 富士フィルム、米国Xerox Corporationを買収

これ以降Darwin Deasonは、Xeroxの筆頭株主で「物言う株主」として知られる著名投資家のCarl Icahnと共同で買収反対の運動を続けている。

Darwin Deasonは2月13日、富士フィルムによるXerox買収は不正だとして、差し止めを求める訴えをニューヨーク州の裁判所に起こした。

"Crown jewel" lock-up rightは Xeroxの戦略の柔軟性を制限するもので、実質的に今回の富士フィルムへの売却は17年前に株主に知らされずに決められていたことになり、不正行為であり、取締役は受託者としての義務に違反し たとして、裁判所に対し、この取引を中止し、既存のJV契約を終了することを求めた。

2018/2/15  富士フイルムによる買収、Xerox大株主が差し止め提訴  

Darwin Deasonは2月末に、反対の手段として、今春の株主総会で全取締役の候補を推挙する権利を求めたが、会社側は候補の推挙の期限の2017年12月11日が既に過ぎているとして、これを拒否した。

今回、これを不服とし、12月11日の推挙期限を延ばすことを求め訴訟を起こした。期限は過ぎてはいるが、Xeroxの取締役会はその後に株主にとって重要な一連の決定をしたとしている。

Carl Icahn と Darwin Deasonは同日、Xerox株主に対する公開状を発表した。

今週の初めに Darwin Deasonは会社側に、株主が全取締役候補を推挙することを認めるよう求めた。特に、12月11日の締め切りの6週間以上も過ぎるまで、"Crown jewel" lock-up の存在を17年間も明らかにしなかったことを理由としている。

しかし会社側は昨日、この要求を拒否した。このためDarwin Deasonは株主が全取締役候補を推挙する権利を求めて訴訟を行った。

会社側は失敗を続けている。"Crown jewel" lock-up の存在などを開示しなかった。富士ゼロックスの経理スキャンダルに適切に対応しなかった。今回も取締役推挙の期限問題で小手先の対応をした。
推挙期限の延期という第3位の株主の明らかに正当な要求を拒否することは、会社側の責任を認めようとしないこと以外にない。

これらに対して、Xeroxの株主の直面する質問は:
富士フィルムが会社の50.1%を支配して事態がよくなるだろうか?
少数株主になった場合、事態がよくなると期待できるのか?

Xerox株主が会社の支配権を取り戻す必要性の理由は沢山あるが、主な理由は取締役会が事実を曖昧にしてきたことだ。「強い少数株主保護」などと言っているが、富士フィルムを信用できない。
何故、競争相手に支配される会社で少数株主に甘んじなければならないのか。

会社側の主張する合併のメリットの計算は間違いだ。 Barclaysの最新のレポートでも疑問視している。

希望は戦略ではない(Hope is not a strategy)。拡張を希望するだけでは駄目だ。シナジーを希望するだけでは駄目だ。富士ゼロックスの経理スキャンダルがXeroxに更なる負担をもたらさないと希望するだけでは駄目だ。富士フィルムが支配権を持った時に我々をフェアに扱うと希望するだけでは駄目だ。これまで統合でうまくやる能力を持たなかった2社が一緒になって成果を生みだすことを希望するだけでは駄目だ。

希望的観測ではなく、現実に基づいた戦略が必要である。来る数週間、これこそが我々が考える必要がある点である。

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