トランプ大統領、TPP 復帰検討を指示

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トランプ大統領は4月12日、ライトハイザー通商代表と国家経済会議のクドロー委員長に対し、TPP について「もう少し有利な協定をまとめることができるかどうか見直すように」と、アメリカに有利な条件付きで復帰を検討するよう指示した。

ウォルターズ報道官は発表文で「十分により良い取引には前向きに臨むと大統領は一貫して述べている。そのため、ライトハイザー代表とクドロー委員長により良い取引が交渉できるかどうか再検討するよう求めた」と説明した。

その後、大統領はツイッターで、「前回より十分良い内容となった場合のみTPP に参加する。米国は既にTPP 11カ国のうち6カ国とFTAを結んでおり、何年も貿易で米国に打撃を与えてきた日本ともFTAを結ぶ方向で進んでいる」と述べた。

Would only join TPP if the deal were substantially better than the deal offered to Pres. Obama.

We already have BILATERAL deals with six of the eleven nations in TPP, and are working to make a deal with the biggest of those nations, Japan, who has hit us hard on trade for years!

米国がTPP11カ国のうちFTAを結んでいるのは、カナダとメキシコ(NAFTA)、豪州、チリ、ペルー、シンガポールの6カ国。

河野外相は4月13日、「一部だけを取り出して再交渉というわけにはいかない」と述べる一方で、「本当に米国がTPPに復帰してくれるなら非常に喜ばしいことだ」と歓迎する意向も示した。

しかし、大統領の本音はTPPへの復帰ではなく、日本がどうしても避けたい日米FTAの締結である。

大統領が安倍首相との首脳会談で、まず対日貿易赤字を解消する方向での日米FTA交渉を強く求めるのではないかと思われる。

大統領は3月22日に日本に関して次のように述べた。「こんな長期間、米国をだませたとは信じられない 」と喜んでいるようだが、もうこれまでだと。

I'll talk to Prime Minister Abe of Japan and others --- great guy, friend of mine --- and there will be a little smile on their face.
And the smile is, "I can't believe we've been able to take advantage of the United States for so long" So those days are over.

安倍首相は3月9日に北朝鮮問題で大統領と電話会談をしたが、大統領はその後のtwitterで対日貿易赤字(1000億ドル)を問題視し、フェアでなく続かないと述べた。

Spoke to Prime Minister Abe of Japan, who is very enthusiastic about talks with North Korea.

Also discussing opening up Japan to much better trade with the U.S.
Currently have a massive $100 Billion Trade Deficit. Not fair or sustainable. It will all work out!

付記 

政府は日米両国の通商のあり方を議論する新たな対話の枠組みを提案する方針だと報じられた。トランプ大統領がそんな時間稼ぎの話に乗ることはあり得ない。

米財務省は4月13日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表し、対米貿易黒字が大きい日本を引き続き「監視リスト」に指定した。「日米間の巨大な貿易不均衡を懸念している」と表明している。

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TPP 参加12カ国は2016年2月4日、協定文に署名した。

日本は2017年1月20日(Trump大統領の就任日)に、閣議決定を経て、協定の国内手続の完了をニュージーランドに通報した。
ニュージーランドは2017年5月11日、手続きを完了した。(2国目)

その米国のDonald Trump 次期米大統領は2016年11月21日、ビデオメッセージを発表し、2017年1月20日の就任初日に「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から脱退する意志を表明する」と宣言した。

2016/11/23 Trump 次期米大統領、「就任初日にTPP離脱通告」を確認

Trump大統領は2017年1月23日、TPPからの離脱を宣言、米通商代表部(USTR)は1月30日、TPPからの離脱を参加各国に書簡で正式に伝達した。

  ・TPPから永久に離脱する。(再交渉の可能性も明確に否定)
  ・米国の産業を振興し、労働者を保護し、賃金を上昇させる 2国間貿易交渉を始める

これにより、参加12カ国の名目GDPの85%以上の6か国の批准による発効は不可能となった。

その後、日本が中心となり、米国を除く11カ国での交渉を行った。

米国を除く TPP 参加11カ国は2018年3月8日午後、チリのサンティアゴで新協定「TPP 11」に署名した。これを受け、各国は国内手続きに入る。

2018/3/12 TPP-11 に署名


トランプ大統領は、TPP離脱宣言で、「将来の貿易交渉はそれぞれの国と1:1(又はbilateral)のベースで行うのが政権の意図である」としているが、TPP 11の締結で米産業界からはTPP への復帰を求める声が強まっている。

大統領は2月23日、豪州の首相との共同記者会見で、「TPPは米国にとって非常に悪い取引だった」と述べ、「より良い条件が提示されれば参加する可能性はある」と述べた。

大統領の考えは、強力な圧力(韓国との改定交渉では駐韓米軍撤退も匂わせた。NAFTA改定交渉でも無理難題の提案をしている。)で米国に非常に有利なFTAを結ぶのが第一であり、TPP復帰も米国にとって有利な改定が条件である。ようやくまとまったTPPをそのような形で改定することは考え難い。

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