出光と昭和シェル、来年4月に統合

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出光興産は7月10日、創業家(持株28.48%)のうちの、長男の出光正和氏(同1.16%)と同氏が社長を務める資産管理会社の日章興産(同13.04%)との間で統合等に関する合意書を締結したと発表した。
(出光昭介氏と次男の正道氏は依然反対している模様。)

「物言う株主」として知られる村上世彰氏が、出光の株を1%弱取得し、株主として創業家を説得したとされる。

合意書の内容:

下記の条件で、昭和シェルとの経営統合について、株主総会で賛成する。

・ 取締役候補として2名を推薦
・ 出光興産の商号を維持する。
・ ブランドは継続して使用する。

大株主との上記の合意をもとに、出光興産は同日、昭和シェル石油との間で、2019年4月に株式交換を通じて経営統合する合意書を締結した。

2019年4月1日に経営統合する。

2018年10月 株式交換契約
 (出光興産の株式を昭和シェルの株主に交付し、出光興産が昭和シェルの全株式を取得、交換比率は今後詰める)
2018年12月 両社の臨時株主総会でこれを承認

2019年3月29日 昭和シェル上場廃止

統合後の取締役

昭和シェルが3名、出光興産が5名(大株主推薦の2名を含む)とする。他に社外取締役。

トレードネーム

「出光昭和シェル」とする。一定期間は両社の既存トレードネームを使用する。

説明によると、統合後の社名は登記上は「出光興産」とし、事業上の通称は「出光昭和シェル」を使うという。

なお、創業家は出光側に自社株式の取得を求めてきたため、出光は同日、1200万株、550億円を上限とする自己株式の取得を実施すると発表した。
これにより株主還元を充実させる。統合の際に昭和シェルの株主に対して交付する株式としても利用する。

付記 1200万株を買い取ると、創業家の持ち株比率は28.46%から30.28%に上昇する。(59,246,700/196,000,000)


石油元売りは2強時代を迎える。(昭和シェルは2017/12末決算、他は2018/3末決算)

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経緯は下記の通り。

出光興産は2015年7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% をShellから取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。
出光と昭和シェルはこの株式譲渡を前提に経営統合に向けた協議を進めてきたが、これを加速する。

2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意

出光興産と昭和シェルは2015年11月12日、対等の精神に基づく両社の経営統合に関する基本合意書を締結したと発表した。

2015/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結

出光興産は6月28日、定時株主総会を開催したが、出光家の代理人から、現在協議を進めている昭和シェル石油との経営統合について反対の意見表明がなされた。

2016/6/29  出光興産の創業家、昭和シェルとの合併「反対」

創業家は8月3日、昭和シェル株式を0.1%強を取得したと表明した。
出光興産の昭和シェル株式購入はこれを合わせると 1/3 を超えることとなり、TOBが必要で、出光興産が計画していたShell からの市場外での昭和シェル株式買収ができなくなる。

2016/8/5 出光創業家、合併阻止へ強攻策

公取委は、出光興産による昭和シェル石油の株式取得について、12月19日に排除措置命令を行わない旨の通知を行い、本件審査を終了した。

出光興産は公取委の承認を受け、シェルから昭和シェル株式 31.3% (株数を減らした)を158,978百万円で取得した。

2016/12/20 公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得を承認 

2016/12/20 出光興産、シェルから昭和シェル株式取得

出光興産は2017年7月3日、公募増資で1385億円を調達すると発表した。これにより出光一族の出資は現在の33.92%から26%に低下し、株主総会で合併を拒否できる3分の1を下回る。

創業家は、「創業家の保有する議決権比率の希釈化を目的とすることは明らか」とし、株式発行の差し止めの仮処分を申し立てた。しかし、東京地裁、高裁は「新株発行の主要目的が不当とは認められない」としてこれを却下した。このため、会社側は直ちに総会を開き、合併の承認を求めることができなくなった。

2017/7/3  出光興産、増資発表

出光創業家は2017年12月20日、株式買い増しを発表した。創業家、出光美術館及び出光文化福祉財団の株式保有割合は、1/3未満ではあるが、合計で28%を超えるとしている。

当初 増資後 買い増し後
日章興産  16.95% 13.04% 27,119,900 13.04%
出光昭介  1.21% 0.93% 1,928,000 0.93%
出光正和  1.51% 1.16% 2,416,000 1.16%
出光正道 1.51% 1.16% 2,416,000 1.16%
宗像合同会社 4,974,400 2.39%
共同保有届け出 21.18% 16.29% 38,854,300 18.68%
出光文化福祉財団 7.75% 5.96% 12,392,400 5.96%
出光美術館 5.00% 3.85% 8,000,000 3.85%
合計 33.92% 26.09% 59,246,700 28.48%
発行済 160,000,000 208,000,000

2017/12/21 出光創業家、株式買い増し

その後、出光と昭和シェルは合併を一時棚上げする一方、2017年5月9日に趣意書を締結したブライターエナジーアライアンスに沿って協働事業の強化・推進を続けてきた。

現在の昭和シェルの主要株主は次の通り。サウジのAramcoが統合後の新社の株主となる。

出光興産 31.25%
Aramco Overseas Company B.V. 14.96%
The Shell Petroleum Co., Ltd (売却の残り) 1.99%
The Anglo-Saxon Petroleum Co., Ltd (Shell) 1.80%

付記  2019年4月1日に両社が統合したが、Shellが残る持ち株を全て売却していたことが判明した。

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