Pfizer、トランプ大統領の批判受け、医薬品値上げを先送り

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Pfizerは7月10日、今月1日に米国で実施した医薬品の値上げを撤回し、当面は以前の値段に戻すと発表した。

値上げの撤回は、同社のCEOがトランプ大統領と直接話し合って決めた。価格据え置きはあくまで一時的な措置で、大統領が進めている薬価引き下げの取り組みを形にする「機会を与える」と説明している。

大統領は早速、呟いた。

Just talked with Pfizer CEO and@Sec Azar (Alex Azar, Secretary of Health & Human Services ) on our drug pricing blueprint.
Pfizer is rolling back price hikes, so American patients don't pay more.
We applaud Pfizer for this decision and hope other companies do the same.

Great news for the American people!

この問題は、大統領が医薬品値下げに懸命になっている時に、Pfizerほかが値上げを発表したことから発展した。

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トランプ氏は大統領就任直前の2017年1月11日、製薬会社は生死にかかわるような医薬品の価格を大幅に値上げし、「殺人」の罪を犯しているにもかかわらず、罰せられておらず、政府に多額の費用を負担させていると批判、薬価の改革を進める意向を表明した。

また海外へと拠点を移す動きが加速しているとして、製薬業界を国内に回帰させる必要があるとした。

トランプ氏は薬価をめぐり、新たな入札制度を導入し、費用を圧縮すると主張、「われわれは世界最大の医薬品の買い手であるにもかかわらず、適切な価格設定が出ていない。入札を開始し、数十億ドルを削減する」と述べた。

トランプ氏は選挙期間中、高騰する薬価の問題に言及してきた。公約では「製薬産業は民間部門だが、製薬企業は公共サービスを提供している」と指摘、メディケア(高齢者向け公的医療保険)プログラムについて、現在は法律で禁止されている政府と製薬会社との薬価交渉を可能にするとしていた。

2017年1月31日の製薬企業幹部との会談では、薬価の引き下げと米国内での製造拡大を求めると同時に、新薬承認の迅速化や規制緩和を約束した。

新薬承認の迅速化は、大統領選直前に公表した「有権者との契約」(就任後100日間で実行)にも盛り込まれていた。
「お役所的な複雑な手続きの打破」を含むFDAの改革を公約、「4000もの医薬品が承認を待っている。特に生命を救う医薬品の迅速な承認を望む」としていた。

2018年1月30日に行った一般教書演説では、薬価の高騰問題について、「政権にとって、最優先課題のひとつだ」と述べた。

医療関連としては、オバマケアの撤回、オピオイド乱用問題、薬価の高騰問題に言及した。

薬価については、「同じ薬剤に対して諸外国の人が払う額は、米国人よりもはるかに安い。非常に、非常に不公平だ」と指摘した。

その後も、医薬品価格の引き下げに度々言及した。

2018年5月11日、トランプ米大統領は処方箋薬の価格抑制に関する演説を行った。製薬会社、保険会社、薬剤給付管理会社(PBM)が処方箋薬を高価で手の届かないものにしたと非難し、競争強化と価格引き下げに向けた措置を取ると表明した。

製薬業界の「中間業者」が大きな富を得ているとして排除する方針を示したほか、医薬業界のロビー団体についても、納税者の金で富を得たと批判した。
外国政府についても、米製薬会社に不当な引き下げを強要しているとして批判した。

米保健社会福祉省は「American Patients First」と題した詳細な計画を公表。メディケア(高齢者向け公的医療保険)パートD(処方せん薬給付)管理会社の製薬会社との価格交渉能力を高めることなどが含まれる。

但し、専門家からは、レトリックにすぎないとの批判がなされた。

5月30日、大統領は突然、主要医薬品会社(複数)が2週間以内に医薬品価格を「自発的に、大幅に」引き下げると発表した。医薬会社の役員(名前を明らかにせず)がホワイトハウスを訪問し、発表すると述べた。

大統領は、末期患者が実験中の医薬品を使うのを容易にする法案にサインしながら、「我々はまた、医薬品のコストの引き下げに努力しており、国民はこの国で初めて、処方箋薬の大幅引き下げを経験することとなる」と述べた。

しかし、その後、値下げの発表はなく、大統領が予告した理由は不明のままである。

逆に、Pfizerは7月1日付で値上げを発表した。

「バイアグラ」を含む同社の代表的製品100品目を値上げした。値上げ率は大半の品目で9%強で、消費者物価指数を大きく上回る。
バイアグラは19.8%の値上がりとなった。
但し、5品目については、価格を16~44%引き下げている。

Pfizerでは、割引やリベート(割戻金)を計算に入れると値上げ幅は「1桁台前半」にとどまるとしている。

Pfizerのほか、イスラエル製薬大手 TevaやスイスのRoche なども最近値上げに踏み切っている。


トランプ米大統領は7月9日のツイッターで、「理由もなしに値上げした。自らを守ることができない貧しい人々などの弱みにつけこみ、他方で海外で安値販売している」と、Pfizer などの製薬大手を批判し、何らかの対策を講じると言明した。

Pfizer & others should be ashamed that they have raised drug prices for no reason.
They are merely taking advantage of the poor & others unable to defend themselves, while at the same time giving bargain basement prices to other countries in Europe & elsewhere.

We will respond!

これを受け、PfizerのCEOがトランプ大統領と直接話し合い、値上げ撤回を決めた。

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