JNC、新規有機EL材料を開発

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チッソ子会社 JNCは12月11日、関西学院大学の畠山琢次教授との共同研究により開発した新しい有機 EL 材料が大手ディスプレイメーカーのスマートフォンに採用されたと発表した。

共同開発した有機EL材料は、これまでに使用されてきた材料系とは全く異なる新しい構造を特徴とした青色発光材料で 、ホウ素原子を含むヘテロ環構造を主骨格とし、電圧をかけることによって発生する光の波長の幅が従来の材料に比べ狭いことを特徴としている。これにより、発光したエネルギーロスを抑えることが可能となり、低消費電力化を実現でき る。

畠山琢次教授とJNCの共同研究は 2011 年から開始した。

2016 年には世界最高レベルの発光効率と色純度を持つ有機ELディスプレイ用青色発光材料を開発した。新しいタイプの有機EL素子に適用できる材料の開発も進めている。

JNCはこの有機EL材料を水俣製造所にて製造する。

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世界最高レベルの発光効率と色純度を持つ有機ELディスプレイ用青色発光材料は、2016年2月にドイツの科学誌 Advanced Materials のオンライン速報版で公開され た。

有機ELディスプレー用の発光材料としては、蛍光材料、りん光材料、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料 の3種類が利用されているが、いずれも問題がある。

蛍光材料は発光効率が低いという問題がある。

りん光材料とTADF材料は、発光効率は高いものの、発光の色純度が低いという問題がある。色純度が低いと、ディスプレーに使用する際に、発光スペクトルから不必要な色を除去して色純度を向上させる必要があり、トータルでの効率が大きく低下する。


畠山教授は、発光分子の適切な位置にホウ素と窒素を導入し、共鳴効果を重ね合わせることで、世界最高レベルの色純度を持ちながら、発光効率が最大で100%に達するTADF材料 のDABNAの開発に成功した。

発光効率 発光の色純度
蛍光材料 低い
りん光材料 高い 低い 不要な色を除去し、色純度を向上させる必要
(トータルでの効率が低下)
熱活性化遅延蛍光(TADF)材料
新TADF材料(DABNA) 最大で100% 世界最高レベル


DABNAの特徴と TADFとの違い

DABNA

TADF材料

光(可視光)は波長によって色が異なる。通常の光源は、一定の波長の幅を持った発光スペクトルを示すが、その幅が広ければ、さまざまな色(波長)の光が混合していることになり、色純度が低くなる。
発光スペクトルの幅が狭ければ、単色光に近づき色純度が高くなる。

TADF材料の場合、フィルターにより不要な色を除去し、色純度を向上させる必要 があり、トータルでの効率が低下する。

DABNAは、ホウ素、窒素、炭素、水素というありふれた元素のみからなり、市販の原材料から短工程で合成できることから、理想的な有機ELディスプレー用の発光材料 となるとしている。

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