ウクライナ、中国対策で軍需企業を国有化 

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ウクライナ政府が中国企業によるウクライナの航空用エンジン製造大手 Motor Sich の買収を阻止するため、同社の国有化に踏み切った。

中国はウクライナの軍事技術を次々と購入してきたが、今回の決定の背景には高度な技術流出を懸念する米国の意向が働いたとみられている。

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ウクライナと中国の軍事面での関係は深い。

中国の最初の空母「遼寧」はウクライナから購入したものである。
ソ連のクズネツォフ級空母ヴァリャーグはソ連崩壊後、ロシア海軍が保有権を放棄、ウクライナで放置されていたが、中国が買い取り、改修したうえで「遼寧」と命名した。

中国は2019年末には「遼寧」からのリバースエンジニアリングで同型の初の国産空母「山東」を就航させた。

空母に搭載される艦載機についても、旧ソ連で開発が進められていたSu-33艦上戦闘機の試作機T-10Kがウクライナから中国に引き渡され、現在中国で開発が進められているJ-15艦上戦闘機のベースになった。

中国海軍がアメリカ・フランスからの技術導入で建造した052A型駆逐艦は、1番艦は米国製ガスタービンを搭載しているが、天安門事件以降に起工された2番艦はウクライナ製ガスタービンを搭載している。
近年は自国での艦艇用ガスタービンの国産化に成功した。

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Motor Sich は、ウクライナのザポリージャに本社を置く航空用エンジンや産業用ガスタービンエンジンの製造メーカーで 、ソビエト連邦時代からアントノフ An-124とアントノフ An-225に搭載されるD-18TターボファンやD-36/D-436シリーズなど様々な航空機の航空用エンジンを生産してき た。
ソビエト連邦の崩壊後もカモフとミルのMi-24やMi-28などロシア連邦のヘリコプターの80%以上にエンジンを供給していた。

2014年9月にウクライナのロシアとの取引が2014年クリミア危機の影響で制約を受けるようになった。

苦境に陥った同社に投資したのが
北京天驕航空産業投資有限公司
(Skyrizon)で、2016年には株式の56%を取得した。 最終的に他の中国企業と合わせ約75%を取得した。

しかし、中国重慶に合弁のエンジン工場を作る計画(ウクライナの「世界最大の飛行機」と呼ばれる6発エンジンの大型輸送機 AN-225 のエンジンを重慶で生産する計画)が明らかになり、技術流出を警戒するウクライナ当局が買収の経緯について捜査を始め、2018年には裁判所が中国側が取得した株式の凍結を命じ、買収計画を停止させた。

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トランプ政権は政権交代直前に対中規制を相次いで発動し、バイデン次期政権にも圧力を続けるよう迫った。

国防総省は1月14日、「共産主義中国の軍事企業(Communist Chinese military companies)」のリストにスマートフォン世界3位の小米(Xiaomi Corp)のほか、航空機メーカーの中国商用飛機(COMAC)など9社を追加した。
米国人はリストに掲載された企業の新たな株式購入が禁じられ、持ち分も売却する必要がある。

商務省はまた中国企業 北京天驕航空産業投資(Skyrizon)をMilitary End-User List に加えた。同リストに記載された企業に対しては、米国製品を輸出・再輸出・国内移送する場合はBISの許可が必要となるが、事実上「原則不許可(presumption of denial)」となり、取引が一切禁止される。

Skyrizonは以前からウクライナの航空機エンジンメーカー Motor Sich の買収に動いており、同社が重慶で中国とのJVで航空機エンジンを生産する計画について、エンジン技術が中国側に渡れば、海洋進出を強める南シナ海などでの軍事力増強につながるとして米国は繰り返し懸念を示していた。

2021/1/15 トランプ政権、政権交代直前に対中圧力を強化

日本政府もMotor Sich の買収に反対していたとされる。

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ウクライナの国家安全保障国防会議は1月28日、大統領令に基づき、中国の航空関連企業Skyrizonグループに対する制限措置を決定した。同時に、Skyrizonグループの王靖会長対しても、ウクライナにおける経済活動、ウクライナ領内の移動、株式取引などが禁止された。

2021年3月11日、ウクライナ国家安全保障国防会議は Motor Sich を「戦略的重要性」などを理由に再国有化することを決定、3月20日には同国裁判所が同社の全株式と資産を国の管理下に移すことを決定した。国有化に際し、同国は同社株式の過半数を保有する中国企業「北京天驕航空産業投資有限公司」などに補償を行う。

3月23日にゼレンスキー大統領が大統領令に署名して翌日に発効した。

中国はウクライナに反発しており、今後の両国関係に影響が及ぶ可能性もある。ウクライナにとって中国は輸出・輸入とも1位の貿易相手国である。

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