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格付け会社Standard & Poor's(S&P)は8月5日、米国債の長期格付けを最上位の「AAA」から、「AA+」に1段階引き下げた。
米国債を格下げするのは1941年の現行制度開始以来初めて。 

 S&Pは7月14日に米国債を「クレジットウオッチ」に指定し、90日以内に格下げする確率が50%以上あると公表、信頼に足る財政再建には今後10年で4兆ドル程度の財政赤字の圧縮が必要だとの考え方も示していた。

米連邦政府の債務の上限額引き上げを巡り与野党が鋭く対立し、期限当日の8月2日に、債務上限を引き上げる一方、財政赤字額を今後10年で2.4兆ドル減らすことで決着した。
S&Pはこれが、「政府の中期的な債務構造の安定に不十分と判断した」としている。

発表文(まとめ部分)
- The downgrade reflects our opinion that the fiscal consolidation plan that Congress and the Administration recently agreed to falls short of what, in our view, would be necessary to stabilize the government's medium-term debt dynamics.
 
- More broadly, the downgrade reflects our view that the effectiveness, stability, and predictability of American policymaking and political institutions have weakened at a time of ongoing fiscal and economic challenges to a degree more than we envisioned when we assigned a negative outlook to the rating on April 18, 2011.
 
- Since then, we have changed our view of the difficulties in bridging the gulf between the political parties over fiscal policy, which makes us pessimistic about the capacity of Congress and the Administration to be able to leverage their agreement this week into a broader fiscal consolidation plan that stabilizes the government's debt dynamics any time soon.

同時に、S&Pは長期的な格付け見通しを「Negative(弱含み)」に指定した。
向こう2年間に歳出削減の動きが鈍ったり、金利急上昇などで財政への圧力が高まったりした場合には、格付けを「AA」にもう1段階引き下げるとしている。

米国債を巡っては、Moody'sは8月2日、最上位の「Aaa」で維持すると発表、Fitchも「AAA」に据え置くと発表している。 

S&Pによる主要国の長期国債(外貨建て)の格付けは以下の通り。(青字はPIIGS諸国)  

AAA 

 

フランス、ドイツ、英国、カナダ、シンガポール、豪州

AA+

 

米国、ベルギー

AA 

 

スペイン(S)、カタール、クウェート  付記 10/13 スペインをAA- に引き下げ

AA-

 

日本、中国、サウジ、台湾

A+ 

 

イタリア(I)、チリ     付記 9/19 イタリアをAに引き下げ

A

 

韓国

BBB+

 

アイルランド(I)

BBB 

 

ロシア

BBB- 

 

ポリトガル(P)

CC 

 

ギリシャ(G)

S&Pは日本の国債の長期国債の格付けについて、本年1月に「AA」から上から「AA-」に下げ、見通しは4月に「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。

付記
Moodysは8月24日、
日本国債の格付けを上から3番目の「Aa2」から4番目の「Aa3」(S&Pと同じレベル)に1段階引き下げると発表した。
東日本大震災で政府支出の増加が見込まれるなか、財政赤字削減の具体策が見えないと指摘。債務返済の可能性が低下したと判断した。

米国債保有高を1兆1600億ドル(5月時点)保有する中国は今回の格下げで「国際金融市場が混乱し、中国は大きな影響を受ける」と強く非難した。

新華社は「中国は最大の債権者として、米国に構造的な債務問題への対処と中国のドル資産の安全確保を要求する当然の権利がある」と強調、「借金依存症」を改め、「巨額の軍事費と社会保障費を削減しなければ、国債のさらなる格下げを招く」と警告した。

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S&Pの格下げに先立ち、中国の格付け機関、大公国際資信評価有限公司(Dagong Global Credit Rating Co.)は8月3日、米国債の格付けをA+からAに引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。

同社は2010年7月に初めて世界50カ国の信用格付けを発表した。

中国は自国通貨建てがAA+で外貨建てはAAA。
一方、米国はAA、AAで、いずれも中国の格付けを上とした。
英国とフランスは自国通貨建て、外貨建ていずれもAA-、ドイツはいずれもAA+とした。
 
その後、2010年11月に米国をA+に引き下げた。
さらに本年7月にマイナス観察リストに入れ、債務返済能力が実質的に改善される大きな出来事がなければ、格付けを引き下げると表明していた。

大公国際資信評価は格付けの引き下げの理由として、以下の通り述べている。

米連邦議会は政府の債務上限引き上げをめぐる決議を採択したが、国の債務の増加速度が経済・財政収入の伸びを上回るという基本的状況は変わっていない。このことは米政府の債務返済能力の一層の低下に向けたターニングポイントとなった。

米政党間の争いにより、政治体制の弊害が明るみに出た。
米政府が国のソブリン債務危機を根本的に処理するのが難しく、政治・経済制度による債権者の利益保障が十分でないことを示している。

   
国の債務返済能力は改善されておらず、政府の債務負担は引き続き重くなり、米国のソブリン債務危機は深刻化すると見られる。
   
米国の財政赤字削減の速度は、新たな債務の増加速度を大きく下回っている。
   
米議会は、国の経済成長の原動力不足を根本的に解決するための建設的決議を打ち出していない。
経済成長率の低さと財政赤字、債務増加が債務返済能力に及ぼす根本的な影響を解決することができず、債務返済能力の低下が避けられないことを示している。

イラン、イラク、シリア3国の石油相は7月25日、イランのSouth Parsガス田からイラク、シリア、レバノンを経由し、地中海の海底を通って欧州まで通じるガスパイプラインの建設の覚書を締結した。

1か月内に3つのワーキンググループが技術面、資金面、法律面の検討を開始する。年内に最終契約の締結を目指す。

実際のルートは不明

2008年から検討が続けられてきたもので、総投資額は100億ドル程度と見積もられている。資金の確保後、35年が必要とみられている。

Islamic Pipelineと呼ばれる56インチのパイプラインは延長5600kmで、完成すれば日量110百万m3(年間400m3)の天然ガスを輸送できる。

イランのガス生産量は23年内に倍増し、日量250百万m3のガスの輸出が可能となる。
イラクの必要量は
10-15百万m3、シリアは15-20百万m3、レバノンは5-7百万m3とされる。

イランとイラクはこのパイプラインを通して欧州にイランのガスを送ることでの協力を決めている。

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イランはまた7月23日に、トルコに天然ガスを送る660kmのパイプラインを建設する契約を締結した。
3年以内に建設され、日量50~60百万m3のガスを輸送できる。
全体の23%はイランが建設し、残りはトルコ側(
Som Petrol)が建設する。

イランは欧州へのガス輸出のため、トルコを横断するパイプラインの使用料を支払う。

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欧州の天然ガス需要を満たすため、現在、NabuccoSouth StreamNord Stream3つのパイプラインが計画されている。

これらについての詳細は下記参照。

2010/9/22  カスピ海の天然ガス、黒海経由で輸出へ

2011/3/30  BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加

Nabuccoガスパイプラインの建設・運営会社はこのほど、着工時期を2011年末から 13年に延期し、2014年末に予定していた稼働時期も2017年に先延ばしした。「カスピ海地域と中東からの供給時期の変更」を理由に挙げた。

South Streamでは20115月中旬、投資計画決定が12年末に延期された。通過国の許可取得やルート選定で調整が遅れている。稼働時期は15年末から変更せず、Nabuccoに先行したい考え。

Nord Streamはシベリアの天然ガスであるが、他は全て、中央アジアの天然ガスを狙ったもので、量的にも全てが実現することはないとみられている。

このため、米国による制裁にもかかわらず、イランの天然ガスの重要度が増大している。

 

 

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