2024年10月アーカイブ

10月から始まる新型コロナの定期接種で使用するワクチンについて、厚生労働省の分科会は9月19日、「レプリコン」と呼ばれる新しいタイプのワクチンなど5つの製品を了承した。

「レプリコン」はウイルスへの抗体を作る作用のあるmRNAを体内で複製する新しいタイプのワクチン。このほか、これまでも使用されてきたmRNAワクチンの3製品と、組み換えタンパクワクチンも了承された。

企業名 ワクチン名 種別
ファイザー コミナティ® mRNA 使用済
モデルナ スパイクバックス®
第一三共 ダイチロナ®
武田薬品 ヌバキソビッド® 組替えタンパク
Meiji Seika ファルマ コスタイベ® mRNA(レプリコン) 新規供給

対象者は、65歳以上の高齢者と、60歳から64歳までの重症化リスクの高い人で、季節性インフルエンザと同様に原則、接種費用の一部自己負担が求められる。

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「Meiji Seika ファルマ」が供給、販売するレプリコンワクチンは、接種するとウイルスから体を守るための抗体ができる仕組みは、これまで使われてきたファイザーやモデルナのmRNAワクチンと同じだが、それに加えて、レプリコンワクチンのmRNAには、mRNA自体を複製する酵素(レプリカーゼ)を作る設計がある。この酵素が働き細胞内でmRNAが複製されるため、mRNAの接種量は従来のものと比べて6分の1から10分の1ほどとなっている。

https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/replicon-vaccine/

厚労省の専門部会は2023年11月27日、Meiji Seika ファルマの新型コロナワクチン「コスタイベ筋注用」の製造販売承認を了承した。

米国のバイオ企業 Arcturus Therapeutics が開発したレプリコンワクチンと呼ばれるタイプ(与後に体内で成分が増える自己増殖型ワクチン)で、PfizerやModerna製の既存ワクチンに比べ、少ない接種量でワクチンの効果が持続することが期待されている。

Arcturus Therapeuticsは2013年に設立された米国を拠点とする製薬企業で、後期臨床ステージの感染症用ワクチンをはじめ、肝臓や呼吸器の希少疾患に有効なmRNA医薬品の研究開発を行っている。Meiji Seikaファルマが日本での供給や販売を担う。

Meiji Seikaファルマはワクチンを医薬品の受託製造会社のアルカリス(千葉県柏市)と連携し、福島県南相馬市の工場で生産する。

Meiji Seika ファルマは2024年7月12日付けで新型コロナワクチン・コスタイベ筋注用について、国内製造所を追加する一変申請を行った。同社は2024年12月以降に国内生産品の出荷を開始する予定で、現在の海外生産品から順次、国内生産品に切り替えていく。

今回の申請は、▽アルカリス南相馬工場(福島県南相馬市)で原薬製造すること、▽Meiji Seika ファルマテック(神奈川県小田原市)で製剤製造することで、アルカリスと連携して、原薬から製剤までを国内で一貫して製造できる体制を構築している。

アルカリスは、2017 年に武田薬品の創薬プラットフォーム事業を継承し事業を開始した日本初の創薬ソリューションプロバイダーである Axcelead Drug Discovery Partnersのグループ企業アクセリードが、Arcturus Therapeutics とのJVで設立したもの。

Arcturus Therapeuticsの研究開発パイプラインの製造拠点としての責任を果たしつつ、世界中の製薬会社、創薬ベンチャー、アカデミアなど幅広い顧客に高品質のmRNA医薬品の安定供給を約束する世界初の統合型mRNA医薬品CDMOを目指している。

   2023/11/30 国産の新型コロナワクチン、接種で使用へ 

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武田薬品の組換えタンパクワクチン(ノババックス)は、ウイルス抗原(SARS-CoV-2スパイクタンパク)の遺伝子をもとに、昆虫細胞を用いて発現させた遺伝子組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質をナノ粒子化して製造されたワクチンで、免疫の活性化を促進するためにアジュバントが添加されている。

組換えタンパクワクチンは不活化ワクチンの一種であり、B型肝炎ウイルスワクチンをはじめ幅広く使用されている技術。

本剤の接種により、抗原提示細胞がSARS-CoV-2の組換えスパイク蛋白質を取り込む。リンパ組織にて抗原提示細胞がT細胞に抗原提示を行い、T細胞がB細胞を刺激することによりCOVID-19 感染症に対する抗体を産生する。Matrix-Mアジュバントは接種部位、リンパ組織での免疫細胞の働きを促進する。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/31_takeda.pdf

米食品医薬品局(FDA)は9月27日までに米製薬大手のBristol-Myers Squibbの統合失調症薬「KarXT」(キサノメリン・トロスピウム:xasomeline/trospium)を承認した。商品名は「Cobenfy」

統合失調症の治療薬としてはクロルプロマジン以来70年ぶりの新しい作用機序の薬となった。

クロルプロマジン(Chlorpromazine)は1950年にフランスの製薬会社Rhône-Poulenc、現 Sanofi Aventis)により、抗ヒスタミン薬として開発されたものの、鎮静作用が強すぎる上、抗ヒスタミン作用が少ないと当時は評価された。

1952年2月、フランスの外科医、生化学者Henri Laboritが麻酔とクロルプロマジンを併用したところ、精神症状の変化に気づき、精神科治療での有用性を示唆した。

同年3月に精神疾患患者でのクロルプロマジンの効果がみられ、その後1年の間にフランス全土で統合失調症に用いられるようになった。翌年にはヨーロッパ全土で用いられるようになった。

Bristol-Myers Squibbの新薬は1日に2回飲むカプセル型の治療薬で、価格は月1850ドル(約26万円)。販売は10月下旬までに始める。

「KarXT」は 同社が2023年に140億ドルで買収したKaruna Therapeutics の製品である。

これは従来の統合失調症薬に比べて副作用が少ないことが評価されている。

従来の統合失調症薬は眠気や手足の震え、体重増加などの副作用があり、治療を継続しない患者が多かった。これに対し、FDAによれば「KarXT」 の主な副作用は吐き気や便秘などである。

統合失調症は幻覚や妄想などさまざまな症状を引き起こす精神疾患で、WHOによれば、統合失調症の患者数は世界で2400万人いる。米国で約280万人、日本では約80万人の患者がいるとされている。

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Bristol-Myers Squibbは2023年12月22日、新種の統合失調症治療薬を開発するKaruna Therapeutics Inc.を140億ドルで買収することで合意したと発表した。

Bristolは、二大主力薬である抗凝固薬「エリキュース」とがん免疫治療薬「オプジーボ」は数年以内に特許切れとなり、売り上げの減少が予想されており、Karunaの買収を成長につなげる。

BristolのCEOは、Karunaの統合失調症の経口治療薬KarXTは双極性障害(そううつ病)I型や重度の精神疾患、アルツハイマー病に由来する興奮状態にも効果を発揮する可能性があり、売り上げは数十億ドル規模に達し得るとの見通しを示した。

KarXTは2024年9月までに統合失調症治療薬としての承認決定を控えていたため、Karuna株の前日終値に53.4%のプレミアムを乗せた1株=330ドルを支払うことで合意した。

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