2014年8月アーカイブ


東京地裁は8月28日、ホンダがブラジル子会社との取引をめぐって国から受けた課税処分の取り消しを求めた訴訟 で、国の課税は誤りと認め、約75億6700万円の法人税の課税を全額取り消した。

本件概要は以下の通り。

東京国税局は2004年6月29日、ホンダとブラジルの二輪事業の現地法人モトホンダ・ダ・アマゾニアの1997年から2002年の6年間の収益に関して、日本側の収益が低く配分されているとの判断から、税額の更正通知を 行った。

更正された所得金額は254億円で、それに対する追徴税額は、法人税、事業税、地方税を含め合計約130億円と試算される。

関連企業との取引を利用した海外への利益移転を防ぐ「移転価格税制」によるもので、国税局はブラジルの同種の企業とホンダ子会社の利益を比較し、ホンダ子会社が6年間に得た利益のうち約254億円は、親会社のホンダから部品を格安で購入したことなどで得られたと判断し、課税した。

これに対し、ホンダは、ブラジルの諸法規なども踏まえ、ホンダとモトホンダ・ダ・アマゾニアとの間の取引条件を定め、この事業から得た収益に対しては、日本及びブラジルにおいて適正な納税を行っているとし、長年の現地努力の成果に対し、「現地の利益の多くが日本に帰属する」との国税局の判断は納得できない 」とした。

ホンダは2007年に国税不服審判所に異議を申し立てたが、認められなかったため提訴した。

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ホンダは、1975年にモトホンダ・ダ・アマゾニアを ブラジルの産業振興指定地域であるアマゾナス州マナウス市に設立し、翌年より現地生産をスタートした。

ブラジルの国策に沿って、現地が主体となり約90%まで国産化を進め、品質・生産性の向上や大幅なコストダウンを実現してきた。

販売面ではブラジル独自の割賦販売システムを国内最大規模に育てあげ、強力な販売網を築いてきた。

経済環境の大きな変化を乗り越え、得た利益を現地で積極的に再投資し、この10年間で10倍以上の販売台数に急成長してきている。

2003年度には、モトホンダ・ダ・アマゾニアは約82万台を現地生産し、ブラジル国内で約73万台を販売、約9万台を北米、欧州、オセアニア、中南米諸国など計68ヵ国に輸出し た。

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裁判長は判決理由で、現地子会社のある地域がブラジル国内で税制上の優遇を受けている「マナウス ・フリーゾーン」内にあることを重視し「営業利益の 59%が税優遇によるもので、影響が大きい」と指摘した。


そのうえでブラジル国内の別の地域で税優遇を受けていない同種企業と比較 しており、「両社は類似しているといえず比較できない。両社の差を調整せずに利益を算定したのは誤り」と述べた。

マナウスはアマゾン川の河口から約1700キロメートルに位置する。

1960年代にブラジル軍事政権が高インフレと外貨準備高の不足を是正するため、輸入の制限を強化し、マナウスに工場を誘致した。

しかし、マナウス市とブラジル中央の市場とは3,000kmからの距離があり、工業製品の搬出には大きなハンディキャップとなる ため、政府はそれをカバーするため、下記の税制恩典を発令した。

(1) 輸入税の免除
認可プロジェクトの場合、製造に使われる消費財や製造設備、再輸出のために保管される製品などは、連邦税である輸入税は免除される。
プロジェクト認可を受けているマナウスの中間財メーカーから、完成品製造のために輸入部品を購入した場合も輸入税は免除となる。
ただし、フリーゾーンから製品を出荷する場合は、輸入原材料、部品等の輸入税に対して88%免除。

(2) 工業製品税の免除
認可プロジェクトの場合、フリーゾーン地域内での消費、製造のために輸入される製品、または国内で購入される製品や製造設備、再輸出のために保管される製品は連邦税である工業製品税が免除される。 

(3) 法人税の減免(最大75%、収益率と業界分類による)
   当初は
利益を計上した年度より10年間100%減免。

(4) 社会統合計画・社会保険融資負担金の減免措置
部品や生産設備の輸入時は免税(一時保留)となり、再度出荷する時点で負担することになるが、当該の輸入部品等が製造過程を経て完成品として出荷される場合には、輸入時の措置が継続され免税となる。

(州税)商品流通サービス税の減免措置
フリーゾーンにおける生産のための部品や生産設備等の輸入や州内での購入時は、州税である商品流通サービス税は課税されない。
完成品を出荷する際には、通常の税率が55〜100%減免される。

この結果、日本企業もホンダ、ヤマハ、パナソニック、ソニー、サンヨー、フジフィルム、東京海上、TDK、村田製作所等の約30社が進出している。

現行の法律では税制恩典は2023年に終了することになっているが、2013年10 月に延長が認められた。正式には憲法の修正手続きが必要だが、税制恩典は2073年まで更に50年延長されるものとみられている。 

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移転価格税制では独立企業間価格はまず、「伝統的な取引基準法」で検討され、それが適用できない場合には「その他の方法」で検討する。日本から米国子会社への取引価格の例では方法と問題点は以下の通りとなる。

① 伝統的な取引基準法

 ・独立価格比準法(CUP法)
   同種製品の独立企業間(日本→米国)の取引価格を検討
   (比較可能性の高い取引の選定が困難)

 ・再販売価格基準法(RP法)
   米国の比較可能な同業の財務データに基づいて販売会社がどの程度の売上利益率を計上しているかを検討
   (取扱製品の類似性が厳格に要求され、比較可能な同業の財務データの取得は困難) 

 ・原価基準法(CP法)
    日本の比較可能な同業の財務データに基づいて製造原価に対してどの程度利益の上乗せをしているかを検討
    (比較可能な同業の売上総利益データの取得は困難)

② その他の方法
 ・利益分割法(PS法)
    連結ベースでの営業利益がどのような割合で日本本社ならびに米国販売子会社で分けられるかを検討

 ・取引単位営業利益法(TNMM法 平成16年度税制改正により導入)
    再販売価格基準法が売上総利益を見るため製品の類似性が要求されるが、こちらは営業利益率を検討
    (類似した子会社機能で類似した業界であれば、同種製品でなくとも営業利益率はほぼ一定という経済仮説)

今回の例では、国税局は最後の取引単位営業利益法により、ブラジルの同種の企業とホンダ子会社の利益を比較したが、条件の異なる企業との比較をしたのが間違いとされた。

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国税局の移転価格税制の判断には、明らかにおかしいと思われる例があり、本ブログでも指摘している。

武田薬品

米国アボットとの50:50の合弁会社(当時)のTAPファーマシューティカル・プロダクツ(TAP)との間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられた。

武田薬品は、TAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではないとした。
本ブログも、通常は50/50JVとの取引価格は独立企業間価格とみられ、移転価格税制は適用されず、武田側の主張は当然であるとした。

最終的に全額取り消しとなった。

2013/3/27 武田薬品の移転価格税制での更生処分、全額取り消し

信越化学

信越化学は2008年2月に米国子会社シンテック社からの収益(5事業年度)に関して、東京国税局より移転価格課税に基づく更正通知書(国外移転所得金額は約233億円)を受領したと発表した。

本ブログはこう述べた。
そもそも、国税局からは「信越化学が提供した技術でシンテックは高収益を得ているのに、見合うだけの対価を受け取っていない」と指摘されたというが、シンテックの高収益が信越が提供した技術のためであるという認識に間違いがある。もしそうなら、日本の信越化学は他の塩ビメーカーよりも高収益であるはずだが、決してそうではない。

シンテックの高収益の理由は、一つは原料のVCM(塩素とエチレンから製造)をクロルアルカリとエチレンのトップメーカーのダウから供給を受けていることで、塩ビの損益が悪化したときには、損失を一部ダウが負担するという契約条項もあるといわれている。もう一つが常にフル操業をするという経営方式である。

最終的に全額取り消しとなった。

2010/6/11 信越化学の移転価格課税、119億円還付へ 


なお、
ホンダは2008年に中国の四輪事業でも総額1,400億円を超える巨額の申告漏れを指摘された。
国税局は技術移転や設備、部品の販売、日中間の利益配分など事業全面にわたり、問題を指摘した。

現在も係争中だが、これについても本ブログは問題を指摘している。

2008/5/1 ホンダの中国四輪車事業の移転価格税制問題
 

 

Turkmengasは8月26日、川崎重工業とトルコのRenaissance Heavy Industries (Ronesans Endustri Tesisleri) との間でGTLプラント建設契約に調印した。

首都Ashgabatから50km北のOwadan-Depeの建設現場での調印式にはトルコ大統領が出席した。
「この事業は最高級を使い天然ガスをガソリンに変換する世界最初のガス処理設備である」と述べた。

天然ガスを年間17億85百万m3 を処理し、オクタン価92のガソリン60万トンを生産するもので、建設費は17億ドルと見積もられる。

世界4位の埋蔵量を誇る天然ガスからの収入を最大化する戦略の一環。

17億ドルの建設資金の85%を国際協力銀行が供与し、Turkmengas が残りを負担する。

本計画は2018年4月に完成する予定。


トルクメニスタンは2009年12月の中国向けガスパイプラインの開通後、年率10%以上の経済成長を誇っている。
中国はロシアを抜いてトルクメニスタンの天然ガスの最大バイヤーとなった。

同国は現在の天然ガス依存から抜け出し、経済を多様化するため、近年多額の投資を行っている。

日本企業の参加する計画は下記の通りで、いずれも国際協力銀行が融資を行っている。

1) トルクメニスタン国営ガス会社Turkmengas はカスピ海東岸のTurkmenbashi地区のKiyanlyに、数期に分けてガス化学コンプレックスを建設する計画を立てているが、東洋エンジニアリングは2014年5月12日、韓国の現代エンジニアリング、現代建設、LG International (LGI) と共同でこのコンプレックスの第1期の建設を受注したと発表した。

2014/5/22  東洋エンジニアリング、トルクメニスタンで大型ガス化学コンプレックス受注

このプロジェクト全体の投資額は100億ドルとされるが、第1期の投資額は30億ドルで、うち、東洋エンジの受注分は800億円超。

国際協力銀行は5月29日、トルクメニスタン政府との間で、融資金額約438百万米ドル(JBIC分)を限度とするバイヤーズ・クレジット(輸出金融)の貸付契約を締結した。
ドイツ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行及び三菱東京UFJ銀行との協調融資によるもので、協調融資総額は約730百万米ドル、民間金融機関の融資部分には日本貿易保険(NEXI)による保険が付保され る。

   
2) 三菱商事は2014年8月19日、同社と三菱重工業、トルコの建設業者のGAP Insaat Yatirim ve Dis Ticaret A.S. がトルクメニスタンの国営化学公社Turkmenhimiyaより大規模なアンモニア・尿素肥料プラントを受注する事が決定したと発表した。

トルクメニスタン北西部カスピ海沿岸の都市Garabogazに、天然ガスを原材料とする同国最大の尿素肥料プラントを建設するもの。

日産2,000トンのアンモニアプラント、同3,500トンの尿素プラント 及び周辺インフラ・出荷設備で構成され、受注総額は約13億ドル、2018年の生産開始を目指す。

 
三菱商事と三菱重工は肥料プラントの設計、製作・機器調達・試運転までを担当し、トルコ有数の財閥Calik Holding A.S傘下のGAP社は詳細設計を含む建設工事を担当する。

同工場で生産する尿素はすべて輸出向けで、輸出先は主に欧州や極東地域になる 。


13億ドルの建設費の85%は
国際協力銀行、残りはトルクメニスタン政府が調達する。

   
3) 双日とカワサキプラントシステムズは2009年12月、トルクメニスタンの国営化学公社 のTurkmenhimiya から、天然ガスを原料とする肥料製造設備を約600億円で受注した。

アンモニア製造設備(日量1200トン)および尿素製造設備 (同1925トン)と、発電・水処理・窒素製造などの付帯設備で構成され、トルクメニスタン東部のMary市に建設する肥料工場に納入される。

国際協力銀行は、トルクメニスタン政府との間で、総額約450億円を限度とする貸付契約に調印した。
みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行及び三井住友銀行との協調融資。

 

 
 

 



 

 

インド競争委員会(Competition Commission of India:CCI)は8月25日、主要自動車メーカー14社に対し、車の交換・補修部品で公正な競争を妨げる違反行為があったとして、計254億ルピー(約438億円:1rupee=1.72円で換算)の課徴金を科すと公表した。

課徴金の対象となったのはインドで事業展開する乗用車メーカーのほとんどで、現地のTata Motors、Mahindra & Mahindra、Hindustan Motorsの3社、日系のMaruti Suzuki、Toyota Kirloskar、Honda Cars India、Nissan Motor Indiaの4社に、欧米の7社の合計14社。

最高額のTata Motorsは約230億円、二位のMaruti Suzukiは約80億円となっている。
CCI によると、課徴金は各社のインドでの3年間平均の年間売上高の2%相当としている。

CCI は、自動車メーカーは独占的支配力を利用し、部品を恣意的で高い価格で供給しているとし、また、補修サービス市場の保護のため、 独立系部品販売業者に純正部品を供給せず、公正な競争を歪めていることが分かったとしている。

CCI は課徴金の支払いのほか、傘下の正規販売店ではない独立系部品販売業者に車の純正部品を供給すること、それらの工場で修理された車について保証契約を順守することも命じた。

これに対し、Mahindra & Mahindraは8月26日、「適切な機関に対し、今回の命令に反対する姿勢を強調したい」との声明を出した。
各社はCCIからの正式な通知の受領から60日以内に、命令を受けるか不服申し立てをすることを求められている。

各社の課徴金の額は下記の通り。

 

課徴金

億ルピー

百万円

Tata Motors 134.646 23,159
Maruti Suzuki India 47.114 8,104
Mahindra & Mahindra  29.225 5,027
Toyota Kirloskar Motor 9.338 1,606
General Motors India 8.458 1,455
Honda Cars India 7.847 1,350
Skoda Auto India Volkswagen) 4.639 798
Ford India 3.978 684
Fiat India Automobiles 2.998 516
Mercedes-Benz India 2.308 397
BMW 2.041 351
Hindustan Motors 1.385 238
Volkswagen India 0.325 56
Nissan Motor India 0.163 28
合計 254.465 43,768

 

 



スイス製薬大手Roshe Holding AGは8月24日、米バイオ医薬品のInterMune Inc.を現金83億ドルで買収することで合意したと発表した。

両社の取締役会はすでに買収合意を推奨しており、Roche は1株74ドルでTOBを行う。

この価格は8月22日の終値の38%増であるが、実はInterMuneが身売りを含めた経営戦略上の選択肢を金融機関と協議しているとの関係筋情報が8月13日に報じられ、株価が上昇していた。報道直前の8月12日の株価に対しては 63%のプレミアムとなる。

実際に RocheがSanofi、GlaxoSmithKline、スイスの研究開発型製薬企業 Actelion などとの価格競争に勝った結果だとされている。

InterMuneは米カリフォルニア州に本社を置き、患者数の少ない希少疾患に強みを持つ。

肺の細胞壁が硬く厚くなり、呼吸困難に陥る難病の特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis)の治療薬Pirfenidone(製品名 Esbriet)を開発してきた。
2011年2月に欧州で承認を取得、2012年12月にカナダでも承認を得た。米国では現在、FDAが審査中。

Pirfenidoneは塩野義製薬が商品名ピレスパ(Pirespa)として、日本で2008年から、韓国で2012年から販売している。

塩野義製薬は2012年7月、InterMuneに対して、ロイヤリティーの支払いを求める訴訟を連邦地方裁判所に提起した。
EU においてInterMuneが申請資料の一部として塩野義の臨床データを用いて承認を取得したが、臨床試験データの交換に関する契約に基くロイヤリティーの支払いを拒絶していることから、契約の履行を求めるもの。

2013年2月に両社は下記により和解した。
1. InterMuneは、2013 年1 月から2021 年2 月までのEU におけるESBRIET®の売上高の4.25%に相当するロイヤリティーを塩野義製薬に支払う。
2. InterMuneが米国およびその他の地域(EU を除く)における新薬承認申請に、塩野義のある一定の臨床試験データを使用しない限り、当該国におけるロイヤリティーの支払いは発生しない。
3. 係属中の訴訟を速やかに取り下げる。

Rocheでは、この買収でRocheは肺疾患治療薬をグローバルに拡大・強化できるとしている。

アナリストはEsbrietは2019年までに全世界で10億ドルの売上高になると予想している。


Rocheにとっては、2009年にGenentechの未保有の44.2%を468億ドルで取得して以来、最大規模の買収となる。

Roche は2009年312日、Genentech を完全子会社とすることで友好的に合意したと発表した。
Roche
Genentech 55.8%を保有しているが、残り全株を1株当たり US$95.00、合計468億ドルで買収し、完全子会社化する。

2009/3/16 RocheGenentech を完全子会社化

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Bloombergは8月16日、関係者の話として、Rocheが中外製薬に100億ドルを追加出資して完全子会社化する方向で交渉していると報じた。

両社は2001年12月10日、アライアンスにかかわる基本契約に調印した。

・ 中外製薬と日本ロシュの合併 
・ Rocheによる中外製薬株式の50.1%取得(日本ロシュとの合併、第三者割当、TOBによる)
・ 中外製薬の日本における独占的地位とロシュ製品に対する第一選択権
・ Rocheの中外製薬製品に対する第一選択権
・ 中外製薬の診断薬事業の中核のジェン・プローブのスピンオフ(スピンオフ後、米証券取引所に上場)

その後、Rocheは出資比率を引き上げ、6月30日現在の持株率は59.89%。

これに対し、中外製薬は同日、「現在、当社内でのロシュによる完全子会社化についての検討や、ロシュと当社の間でこのような協議が行われているという事実はありません」との発表を行った。

Roche のCEOは今回、InterMune買収によって、中外製薬の完全子会社化に乗り出す可能性が低下するかどうかについては、コメントを差し控え、Rocheは引き続き事業の拡充を目的とするボルト・オン買収を進める方針と述べた。

Bolt-on は、自動車や機械などに、溶接や切断などの大幅な加工を必要とせず、ボルト留めで搭載や交換が出来ると言う意味合いから来た言葉で、買収企業の既存業務の拡充・強化を目的とした小規模なシナジー効果がある買収のこと

Rocheは欧米の大手間の再編からは距離を置きつつ、本年6月以降、数百億円規模の買収を3件決めている。

6月2日、Genia Technologiesの買収を発表
 (nanopore technologyを使ったDNA sequencing platformを開発)

7月2日、子会社のGenentechが米国のSeragon Pharmaceuticalsを買収すると発表
 (oral selective estrogen receptor degradersを開発)

8月4日、デンマークのSantaris Pharmaの買収を発表
 (Locked Nucleic Acid を開発)

Bloombergは8月25日、Rocheが中外製薬の未保有株の取得を見送ることを決めたと報じた。中外製薬の経営陣が完全子会社化に反対する姿勢を示したためという。


 



三井化学ファインは8月21日、抗生物質が効かない多剤耐性菌にも抗菌・除菌効果を発揮する高分子コロイドの販売を開始すると発表した。
世界初の抗菌・除菌メカニズムである。

今後、多剤耐性菌による感染の効果的な防止対策として、抗菌・除菌スプレーやウエットティッシュ、衛生衣服などの製品開発を需要家と共に進めるとしている。


多剤耐性菌とは細菌のうち、変異して、多くの抗菌薬(抗生剤)がきかなくなった細菌のことでMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、MDR-TB(多剤耐性結核菌)などさまざまなものが全国に広がっている。

従来の抗菌・除菌剤は、薬理作用によって細菌の組織合成を阻害したり、機能を阻害することで効果を発揮する。
しかし、細菌が抗菌成分を無効化する酵素を作り出すことなどで、耐性菌へと変化する可能性がある。

今回の高分子コロイドは、城武昇一・高知大学医学部特任教授(元横浜市立大学大学院客員教授)が、細菌の構造と増殖過程に着目し開発したもの。

外科的用瞬間縫合剤のn-Butylcyanoacrylate と重合安定剤として糖類を使って粒径数百ナノメートル程度のナノ粒子を合成し、水に安定的に分散させたもので、特異な網目構造を持ち、菌の細胞壁のペプチドグリカンと特異的に結合する。

細菌は成長しようとするが、吸着した部分の細胞壁部が成長できず、アンバランスな成長となり、細胞の内圧を保つことができず、風船が破れるように自己融解する。

  動画 https://www.youtube.com/watch?v=MdfV-Hfo2JM&feature=youtu.be


黄色ブドウ球菌や大腸菌などの細菌に加え、多剤耐性菌に対しても抗菌活性を有する。

また、これはエステラーゼ等の水解酵素によって生分解されるの、身体のなかで蓄積等の懸念はない。

エタノールや次亜塩素酸などの従来の抗菌・除菌特性を持つ低分子量化合物と異なり、高分子体であるため、揮発せずに安定的に留まり、抗菌・除菌機能が持続する。

通常の明所実験室・室温で3年間保存しても安定で、抗菌活性も保存前と変わらず、一般生活環境において実用化が可能な抗菌・除菌剤用原料として期待される。

 

城武教授はこの高分子ナノ構造体の国際特許を出願済みで、植物の病原細菌用抗菌剤としての特許も出願している。

また、同系列の作用機序を活かした抗腫瘍効果を有する高分子ナノ構造体も開発中。


 

 


東洋エンジニアリングは8月21日、マレーシア国営石油会社 Petronasが同国南部ジョホール州Pengerang で計画している石油精製・石油化学総合開発
計画 RAPID(Refinery and Petrochemical Integrated Development)のうち、中核をなすスチーム・クラッカー・コンプレックスを一括受注したと発表した。 

客先PRPC Refinery and Cracker Sdn. Bhd.(マレーシア国営 Petronasの子会社)
建設地 ジョホール州Pengerang 
対象設備 エチレン製造設備、分解ガソリン製造設備、ブタジエン抽出設備、ベンゼン抽出設備、MTBE製造設備、用役および付帯設備
 原料はナフサ 
 2012年7月にCB&I の技術が採用されている。
役務内容 EPCC(設計、機器資材の調達、工事、試運転の一括請負 )
完成時期 2019年中旬を予定
受注金額 約2,400億円

報道によると
入札では、中国のSinopecが一番札を取得し、内示を受けていたが、技術的な面での対応が不十分と判断され、Petronasが 東洋エンジニアリングを選んだという。


Petronasは8月11日、上記を含め11件の契約を行ったことを明らかにしている。
製油所関連のEPCC(設計・調達・工事・試運転)が4件、付帯関連が6件と東洋エンジの合計11件で、製油所関連の1つには、千代田化工がコンソーシアムの一員として含まれている。

製油所関連:

残油流動接触分解装置、LPG処理装置、プロピレン回収装置、caustic中和装置 consortium of
  CTCI Corp.(中鼎工程公司)
  千代田化工
  Synerlitz (Malaysia) Sdn. Bhd.
  MIE Industrial Sdn. Bhd.
原油蒸留装置、常圧残油脱硫装置、水素回収・供給装置 Sinopec Engineering (Group) Co. Ltd.
ケロシン水素化装置、ディーゼル水素化装置、ナフサ水素化装置ほか Tecnicas Reunidas SA(スペイン)
アミン回収装置、硫黄回収装置、Sour water 除去装置、液体硫黄貯蔵装置、硫黄固体化装置 Petrofac International (UAE) LLC

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Petronasは2014年4月、ジョホール州Pengerang の総合石油コンプレックス PIPC(Pengerang Integrated Petroleum Complex)に270億米ドルの最終投資決定を行ったと明らかにした。

マレーシアの新たな成長を目指した経済改革計画の一環の事業で、今後の同国でのエネルギー需要を満たすと共に、アジア化学品市場におけるペトロナスの競争力強化を目指すもの 。

6,242エーカーの敷地内に、石油精製・石油化学総合開発(RAPID) のほか、コージェネレーション設備(1300 MW)、LNG受入基地、LNG再ガス化設備、空気分離装置、 真水供給設備、原油・製品タンク、ユーティリティーなどを建設する。

総投資額270億ドルのうち、RAPIDに160億ドル、その他に110億ドルを投じる。

 



RAPIDの内容は下記の通り。

 
製油所(日量30万バーレル):ガソリン・ディーゼル(欧州排ガス規制 Euro 4、Euro 5)、LPG、ナフサ

 ナフサクラッカー(製品合計300万トン/年)

 各種誘導品

 


石油化学については、能力その他は明らかにされていないが、断片的に以下の発表が行われている。

ナフサクラッカー

過酸化水素と酸化プロピレン

EvonikとPetronasは2013年1月、過酸化水素、1-ブテン、オキソ製品のJVを設立する覚書を締結した。

報道では過酸化水素は25万トン、1-ブテン 11万トン、イソノナノール 22万トンとなっている。

酸化プロピレンはEvonikとThyssenKrupp Uhdeが開発したHPPO processを採用するとされている。


一部石油化学

2012年5月、伊藤忠商事およびタイのPTT Global ChemicalはPetronasとの間で一部石油化学事業の事業化調査に関する覚書を締結。

2012/5/21  伊藤忠、マレーシアの石油精製・石化計画(RAPID)に参加

ポリエチレン

INEOS Technologiesは2012年11月、LLDPE/HDPE(350千トン)計画に Innovene G 技術が採用されたと発表。


ポリプロピレン

Lyondellbasellは2012年12月、PP(2系列合計 600千トン)計画に Spheripol PP  技術が採用されたと発表。


合成ゴム

イタリアのEniの子会社の Versalis とPetronasは2013年11月、合成ゴム(4製品)の製造販売のJVの設立契約を締結した。
Petronasが60%、Versalisが40%を出資する。
 

キュメン、フェノール、ビスフェノールA  未定


Specialty chemical products (取り止め)

BASFとPetronasは2012年3月、specialty chemical products のJV設立の覚書を締結した。
しかし、両社は2013年1月、合意に達しなかったとして、取り止めた。


 


 

クラレは8月21日、DuPont社のビニルアセテート関連事業の買収完了について記者会見を行った。

クラレは2013年11月21日、DuPont から同社のPackaging & Industrial Polymersの一部であるビニルアセテート (Glass Laminating Solutions/Vinyls)関連事業を 543 百万ドル+在庫相当額で買収する契約に調印した。

買収対象事業は、安全ガラスの中間膜として使用されるポリビニルブチラール(PVB)シート、ビニルアセテートモノマー(VAM)、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂など で、建築分野・自動車分野等広範な産業分野において使用される製品群を有しており、当該事業の年間売上高は500 百万ドル以上となっている。

工場所在地は以下の通りで、他に、北中南米、欧州、日本、韓国、中国等に販売等の拠点があり、従業員は約600人。

 
米国: 3ヵ所(テキサス州、ノースカロライナ州、ウエストバージニア州)
 欧州: 2ヵ所(ドイツ、チェコ)
 アジア:1ヵ所(韓国)

2013/11/27      クラレ、DuPont のビニルアセテート関連事業買収 

2014年4月29日に欧州独禁当局から条件付認可を得た。

EUは建築用PVBフィルムで3社が2社(同社とEastman) に減ることを懸念した。
このため、クラレは欧州での同製品のメインの生産工場であるドイツのUentropのPVBフィルム工場を売却することで承認を得た。
追って売却する。

6月1日、買収手続きを完了した。

ーーー

クラレは世界に先駆けてビニロン繊維の原料としてPVA の工業化に成功、ビニルアセテート関連事業のパイオニアとして、PVA 樹脂、PVB 樹脂・フィルムのほか、PVA フィルム、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)樹脂(クラレ商標<エバール>)、PVA 繊維ビニロンを世界的に展開している。


ポバール樹脂はクラレが世界で初めて事業化した機能性樹脂で、世界トップシェアを誇る。

水溶性、造膜性、接着性、乳化性、耐油性、耐薬品性などの特性をもち、紙加工剤、接着剤、塩ビ重合安定剤をはじめ、自動車のフロントガラス用中間膜原料などの様々な用途で使用されている。

ポバールフィルムは、大型薄型テレビをはじめモニター、パソコン、携帯電話等のLCDの表示に欠かせない偏光フィルムのベースフィルムで、同社の製品は30年以上前からほぼ独占的にこの分野に使用されてきた。

光学用ポバールフィルムの世界シェアで約8割を占める。
日本合成化学工業が これに続き、世界市場でもこの2社でほぼ独占している。

PVB(ブチラール)樹脂はポバールを主原料とする樹脂で、安全ガラスの中間膜、燃料電池用セルなどファインセラミックス用のバインダー、塗料・インク用のバインダーなどの用途に幅広く用いられる。

PVBフィルムは、その優れた透明性、ガラスとの接着性、耐貫通性を生かし、建築用の安全合わせガラスや自動車のフロントガラスなどの中間膜に使用されている。近年は太陽電池の封止材用途へも拡大している。

EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)樹脂のエバールはプラスチックの中で最高の気体遮断性をもつ機能性樹脂で、酸素を遮断して内容物の劣化を防ぐことから、各種食品包装材に広く使用されている。またプラスチック製ガソリンタンクや、床暖房用のパイプなど食品包装以外の分野でも需要が広がっている。

1972年にクラレが世界で初めて工業化した。クラレの世界シェアは約65%。

 

クラレは酢ビ系化学製品で自社開発とM&Aを融合し、事業を拡大、世界4極展開を図っている。

同社の現状は以下の通り。(数字は能力:千トン) 
 
は今回の買収(能力不明)
  日本 アジア 欧州 北米
酢ビ(VAM) 岡山 150         Texas  
PVA(ポバール)樹脂 岡山・新潟 124

Kurare Asia
Pacific
(Singapore)

40

Kurare Europe
     (増強中)
70
(24)

Kuraray   America
  
(Texas)

(40)

Texas

 
PVAフィルム 玉島・西条
(増強中)
      MonoSol                               

MonoSol
(Indiana)

 
PVB樹脂         Kuraray Europe 39

W.Virginia

 

N. Carolina

 
PVBフィルム     (検討中)   Kuraray Europe
子会社 Trosifol
34
2.5

N. Carolina

 
チェコ  

韓国

  ドイツ(売却予定)
 〔買収承認条件〕
 
エバール 岡山 10 (検討中)   Eval Europe 24

Kuraray
 America
  
(Texas)
 

35
+12
アイオノマーシート            

N. Carolina

 


日本:

酢ビ:岡山工場で生産している。
   1983年に中条工場の天然ガス法酢ビ(86.4千トン)を休止。

PVAフィルム:

       2007年初めは西条3100万m2、玉島3000m2の合計6100万m2であったが、
   現状は 1億8000万m2となっており、2013年6月には西条増強で合計2億1200万㎡まで拡大する。
       西条工場の増強では大型液晶テレビ用偏光フィルムのための幅5000mmの広幅タイプの生産ができる。

アジア:

クラレは1996年10月、シンガポールに日本合成化学との50/50JVのPoval Asia を設立したが、2008年1月付けでクラレ 100%になった。
2008年7月にアジア・オセアニアのポバール樹脂販売会社Kuraray Specialities Asia と統合し、Kuraray Asia Pacificとした。

欧州:

  1) PVA、PVB事業

クラレは2001年にClariantのPVA、PVB事業を買収、Kuraray Specialities Europe GmbH を設立した。
工場はフランクフルトで、能力はPVA 50千トン、PVB 16千トンであった。その後増強。


2006年
9月に
Kuraray Europeが吸収合併した。

  2) PVBフィルム(Trosifol)

2004年11月にRütgers AGの子会社HT Troplast社から買収した。
工場はドイツの
トロイスドルフロシアのニジニノヴゴロド子会社 Trosifolで、能力はドイツが34千トン、ロシアが2.5千トン。 
これにより、PVA樹脂→PVB樹脂→PVBフィルムの一貫体制を完成

2012年3月、世界的なPVBフィルムの需要拡大(特に新興国を中心に伸長する自動車用途)に対応し、増強を決定(能力非公表)。2013年11月稼働 。

  3) Eval Europe

1999年にベルギーのアントワープでエバールの生産を開始した。

     4) MonoSol (ポバールフィルム)英国:下記


米国
 

当初、Eval Company of America を設立し、1986年にテキサス州パサディナでエバールを生産開始した。
その後、
Kuraray Americaに吸収合併した。

2011年1月に酢ビ・ポバール事業の拡大のため、エバール工場の近くに土地を購入。
2012年にPVA樹脂40千トンの建設決定(2014年9月完工予定)

クラレは2012年5月、米国のポバールフィルムのメーカーのMonoSol社を買収すると発表した。
MonoSolは、洗剤・農薬・染料などの個包装、人工大理石離型用など産業用ポバールフィルムではリーディングカンパニーの位置にある。
本件買収により、ク
ラレはポバールフィルムに関し、偏光フィルム向けの光学分野だけでなく、広範な産業分野においてもグローバルリーダーとなるとしている。
工場は米国と英国。

クラレは2012年6月、テキサス州ラ・ポルテ市でのポバール樹脂生産設備の新設を決定したと発表した。
  生産能力:第一期 40,000トン/年、2014年9月完工予定

 

 

 

 

  

Ineosは8月18日、英国のPEDL(Petroleum Exploration and Development Licence)の133鉱区の権益の51%を取得し、初めてシェール開発に参加すると発表した。

PEDL 133鉱区はMidland Valleyにあり、IneosのGrangemouth石油精製・石油化学コンプレックスを含む329km2をカバーする。

IneosのGrangemouth complex では米国からシェールガスエタンを輸入するためのインフラを建設中で、燃料及び原料として使用する。
同社はまず、ノルウェーのRafnes工場とGrangemouthで輸入エタンを使用する。


2012/10/2   Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入

Ineosでは、「昨年来、米国からシェールガス探査・開発の専門家を招聘している。シェールガスを燃料及び原料として使用できる数少ない企業の一つであり、これは当然の行動である」としている。

同社はPEDL 133鉱区の権益の51%をBG Groupから購入する。購入金額は明らかにしていない。
残りの49%はDart Energyが所有している。

Dart Energyでは、同鉱区には4.4兆立方フィート(tcf) のガスが埋蔵されていると推測している。

Dart Energyは英国のシェール開発企業の一つだが、2014年5月に同業のIGas Energyが買収を決めた。

ーーー

英国では、2011年5月にイングランド北部での坑井作業中に微小地震が発生したためフラッキング(水圧破砕法) が禁止されていたが、2012年12月にエネルギー・気候変動省がフラッキングによる開発を許可すると発表した。

英政府は2013年に、シェールガス開発業者に対する減税案や、開発地域の住民に対する業界主導の利益還元策も発表するなど、シェールガス開発の促進に向け次々と政策を打ち出している。

キャメロン首相は本年1月、シェールガス開発の行われる自治体に対し税制優遇を行う方針を打ち出した。
プロジェクトから徴収する統一事業税のうち、自治体の取り分を現行の50%から100%に引き上げる。

国には技術的に採掘可能なシェールガスが 26兆tcf あるとみられて いる。

しかし、フラッキング(水圧破砕法)をめぐっては環境への影響を懸念する声も根強い。

ーーー

Paris, January 13, 2014 -  Total announces that it has acquired a 40% interest in two shale gas exploration licences in the United Kingdom. The interests are in Petroleum Exploration & Development Licences 139 and 140 in the Gainsborough Trough area of the East Midlands region of the UK which cover an area of 240 km2

Commenting on the acquisition, Patrice de Viviès, Total's Senior Vice President for Northern Europe, said: "This opportunity is an important milestone for Total E&P UK and opens a new chapter for the subsidiary in a promising onshore play. The Group is already involved in shale gas projects in the US, Argentina, China, Australia and in Europe in Poland and in Denmark, and will leverage its expertise in this new venture in the UK."

On completion of the transaction, Total's partners in the project will be GP Energy Limited (a subsidiary of Dart Energy Europe) (17.5%), Egdon Resources UK Ltd (14.5%), Island Gas Ltd (IGas) (14.5%) and eCorp Oil & Gas UK Ltd (13.5%). IGas will be the operator of the initial exploration programme, with Total subsequently taking over operatorship as the project moves towards development.

- See more at: http://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-becomes-first-major-enter-shale-gas-licences-uk?xtmc=shale%20%20uk&xtnp=1&xtcr=1#sthash.ioCQzXlY.dpuf
Paris, January 13, 2014 -  Total announces that it has acquired a 40% interest in two shale gas exploration licences in the United Kingdom. The interests are in Petroleum Exploration & Development Licences 139 and 140 in the Gainsborough Trough area of the East Midlands region of the UK which cover an area of 240 km2

Commenting on the acquisition, Patrice de Viviès, Total's Senior Vice President for Northern Europe, said: "This opportunity is an important milestone for Total E&P UK and opens a new chapter for the subsidiary in a promising onshore play. The Group is already involved in shale gas projects in the US, Argentina, China, Australia and in Europe in Poland and in Denmark, and will leverage its expertise in this new venture in the UK."

On completion of the transaction, Total's partners in the project will be GP Energy Limited (a subsidiary of Dart Energy Europe) (17.5%), Egdon Resources UK Ltd (14.5%), Island Gas Ltd (IGas) (14.5%) and eCorp Oil & Gas UK Ltd (13.5%). IGas will be the operator of the initial exploration programme, with Total subsequently taking over operatorship as the project moves towards development.

- See more at: http://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-becomes-first-major-enter-shale-gas-licences-uk?xtmc=shale%20%20uk&xtnp=1&xtcr=1#sthash.ioCQzXlY.dpuf
Paris, January 13, 2014 -  Total announces that it has acquired a 40% interest in two shale gas exploration licences in the United Kingdom. The interests are in Petroleum Exploration & Development Licences 139 and 140 in the Gainsborough Trough area of the East Midlands region of the UK which cover an area of 240 km2

Commenting on the acquisition, Patrice de Viviès, Total's Senior Vice President for Northern Europe, said: "This opportunity is an important milestone for Total E&P UK and opens a new chapter for the subsidiary in a promising onshore play. The Group is already involved in shale gas projects in the US, Argentina, China, Australia and in Europe in Poland and in Denmark, and will leverage its expertise in this new venture in the UK."

On completion of the transaction, Total's partners in the project will be GP Energy Limited (a subsidiary of Dart Energy Europe) (17.5%), Egdon Resources UK Ltd (14.5%), Island Gas Ltd (IGas) (14.5%) and eCorp Oil & Gas UK Ltd (13.5%). IGas will be the operator of the initial exploration programme, with Total subsequently taking over operatorship as the project moves towards development.

- See more at: http://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-becomes-first-major-enter-shale-gas-licences-uk?xtmc=shale%20%20uk&xtnp=1&xtcr=1#sthash.ioCQzXlY.dpuf

Total は2014年1月13日、英国East Midlands地区のGainsborough TroughのPEDL 139/140 鉱区(上の地図参照)の40%の権益をIGasから取得した。IGasはこれまで54.5%の権益を有し、同鉱区のオペレータであったが、Total がオペレータを引き継ぐ。

Total は石油メジャーとして初めて英国でのシェールガス開発を行う。




中国電力は8月18日、出光興産から豪州のボガブライ(Boggabri) 石炭鉱山の権益の一部を取得し、同石炭鉱山からの石炭長期購入契約を締結したと発表した。同鉱山の資産および生産・販売の権利の10%の権益を取得する。

国内電力会社による炭鉱の権益取得は珍しく、中国電力が石炭の上流権益を取得するのは今回が初めて。

ボガブライ鉱山は、豪州ニューサウスウェールズ州に位置し、出光興産のBoggabri Coal Pty Ltd.が権益を保有し操業している。

生産開始 2006年
鉱区面積 約3,872ヘクタール
採掘方法 トラック・アンド・ショベル法による露天掘り
石炭品位 瀝青炭(燃料用一般炭および原料炭)
生産量 約540万t/年(2014年計画)
2015年以降はさらなる増産と選炭機導入による高品位化および鉄鋼用原料炭生産を予定
特徴 高発熱量・低硫黄・低灰分で、かつ原料炭特性(粘結性)を有する石炭を生産

ボガブライの石炭は発熱量が比較的高く、効率的に発電できる品質。
安く品質の低い石炭と混ぜて使うことも可能で「安い石炭をたける範囲が広がる」。

中国電力では、 「当社初」となる今回の石炭の上流権益の取得は、重要なベース電源である石炭火力発電用燃料の長期安定確保に寄与するとしている。

ーーー

中国電力は火力発電が主要電源で、発電量の5割強を石炭火力に頼る。(日本全体では30%程度)

 


なお、日本の一般炭の輸入先は下記の通りで、豪州が約7割を占める。



ソース:http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01030101/03.gif

ーーー

出光興産は、オーストラリアにEnsham(出光85%/LG 15%)、Muswellbrook(100%)、Boggabri (100%) と隣接するTarrawonga(出光 30%/Whitehaven 70%)の4つの石炭鉱山を所有しており、その権益分の生産量は年産約10百万トン。

石炭は主にアジア諸国に輸出されている。



 

   

国家発展改革委員会(NDRC)は8月20日、日本の自動車部品メーカー12社にカルテルで制裁金を課したと発表した。

「各社とも10年以上にわたって談合を繰り返していた。中国の消費者の利益を損なう悪質な違反行為だ」としている。

NDRCは制裁金のほか、各社に以下の行動をとるようを命じた。

 (1)中国の法律に従って販売政策と販売行為を見直す
 (2)全社員に独禁法関連の教育を実施する
 (3)競争を維持し、消費者の利益に貢献する行動を即座に取る

本日、ベアリング3社の制裁金を報告したが、今回の発表でジェイテクトにも制裁金が課せられたことが判明した。

各社の制裁金は以下の通り。

  制裁金  
電装部品
  日立 オートモティブシステムズ 全額免除 最初に通報し、重要証拠を提出
日本電装 1億5,056万元 2番目に通報し、重要証拠を提出、年間売上高の4%
愛三工業 2,976万元 2品目以上のカルテル、年間売上高の8%
三菱電機 4,488万元
ミツバ 4,072万元
矢崎総業 2億4,108万元 1品目(ワイヤーハーネス)のカルテル、年間売上高の6%
古河電工 3,456万元
住友電工  2億9,040万元
ベアリング
  不二越 全額免除 最初に通報し、重要証拠を提出
日本精工 1億7,492万元 2番目に通報し、重要証拠を提出、年間売上高の4%
ジェイテクト   1億0,936万元 輸出市場会議を提案、年間売上高の8%
NTN  1億1,916万元 2006年9月にアジア研究会を離脱したが、会合には参加、
年間売上高の6%
総合計 12億3,540万元  


制裁金合計は12億3,540万元で、約200億円で、
海外企業を対象にした中国の独禁法違反では過去最大の摘発となった。
最高額は住友電工の約48億円。

制裁金の根拠を見ると、一般が年間売上高の8%で、事情を勘案した割引が行われている。

 ・最初に通報し、調査に協力:免除
 ・二番目に通報し、調査に協力:4%
 ・単品のカルテル:6%
 ・カルテルから離脱(但し会合には参加):6%

ーーー

自動車用ワイヤーハーネスについては、2010年2月24日に日本、米国、欧州で同時に立入り検査等を受けた案件と同様の事案を、NDRCが調査していたもので、日米欧での処罰は下記の通り。

1)日本

公取委は2012年1月19日、トヨタ自動車等の自動車メーカーが発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の見積り合わせの参加業者らに対し、排除措置命令と課徴金納付命令を行った。

  排除
命令
課徴金額 (千円)   《 》は減免率
トヨタ
    向け
ダイハツ
     向け
ホンダ
    向け
日産
   向け
富士重工
    向け
合計
矢崎総業 5 4,979,950
《30%》
872,150
《30%》
2,763,500
《30%》
440,030
《30%》
551,500
《30%》
9,607,130
 
住友電気工業 738,610
《50%》
482,950
《50%》
880,660
《50%》
0
《100%》
2,102,220
 
フジクラ 1件 1,182,320
《30%》
 

1,182,320
 

古河電気工業 0
《100%》
0
《100%》
0
《100%》
0
《100%》
0
 
合計 12,891,670
 

古河電工は立ち入り検査前に最初に自主的に報告したため、課徴金を全額免れた。

矢崎総業の96億円は、1社に対する課徴金額として過去最高額

フジクラから課徴金納付命令に係る審判請求が行われたが、公取委は2014年6月9日、審判請求を棄却する旨の審決を行った。

2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

なお、光ファイバーケーブルと自動車用ワイヤーハーネスの2件の価格カルテルで課徴金合計88億円を支払った住友電工に対し、同社の株主が当時の経営陣に同額の損害賠償を求めた株主代表訴訟で、2014年5月7日、経営陣側計22人が同社に解決金5億2000万円を支払うことなどを条件に大阪地裁で和解が成立した。

2014/5/9 住友電工の株主代表訴訟が和解 


2)米国

自動車部品カルテルで多数の日本企業が罰金支払いで同意しているが、ワイヤーハーネス関係は以下の通り。

 

企業の罰金

従業員

禁固刑 罰金
古河電工 200 百万ドル 社員3人(1年と1日、15か月、18か月) それぞれ2万ドル
矢崎総業 470百万ドル 社員2人(各15か月)、2人(各2年)、
2人(各14ヶ月)
フジクラ 20百万ドル 2人が起訴されている。


2012/2/1   矢崎総業とデンソー、自動車用ワイヤーハーネス等のカルテル問題で米司法省と司法取引

2011/10/4 古河電工、自動車用ワイヤーハーネス・カルテル問題で米国司法省と合意 

 

3)EU

EUの欧州委員会は自動車部品カルテルの摘発を進めているが、2013年7月10日、ワイヤーハーネスのカルテルに制裁金を課した。

  制裁金(€)
矢崎総業 125,341,000
古河電気工業 4,015,000
住友電気工業 0
S-Y Systems Technologies
(矢崎総業)
11,057,000
Leoni (ドイツ) 1,378,000
合計 141,791,000



中国国家発展改革委員会(NDRC)は8月19日、日本のベアリングメーカーの不二越、日本精工、NTN の3社に対し、中国国内におけるベアリング(軸受)の取引に関して独占禁止法に違反する行為があったとする決定を伝えた。

付記 ジェイテクトにも1億0936万人民元の制裁金が課せられた。

中国では自動車及び自動車部品に対する独禁法調査が進められており、NDRC は8月6日、自動車部品とベアリングの価格カルテルに絡む日系企業12社に対する調査を完了したと発表した。

2014/8/12 中国、自動車部品メーカーの価格カルテルの取締りを強化へ


今回の決定は以下の通り。

    制裁金  
NTN   1億1,916万人民元(約19億円)  
日本精工   1億7,492万人民元 (約29億円)  
不二越   全額免除 委員会による調査への全面的な協力
ジェイテクト  1億0,936万人民元  


なお、シンガポール競争委員会は本年5月27日、違法な価格カルテルを結んでいたとして、不二越、日本精工、NTNの3社に制裁金計約930万シンガポールドル(約7億5千万円)の支払いを命じたと発表した。

カルテルには、ジェイテクトも関与していたが、カルテルの存在を認め、シンガポール当局に協力したため制裁金を免れた。

    制裁金
NTN 455,652シンガポールドル   (約37百万円)
日本精工 1,286,375シンガポールドル        (約1億円)
不二越 7,564,950シンガポールドル(約6億1千万円)
ジェイテクト

      免除


ジェイテクトは2006年1月に光洋精工と豊田工機が合併
NTNは旧東洋ベアリング

ーーー

ベアリングについては、日米欧でカルテルが摘発されている。

1)日本

公取委は2012年6月、日本精工、NTN、不二越の3社と各社の担当役員ら7人を東京地検に告発、地検は3社を起訴し、担当役員ら7人を在宅起訴した。
ジェイテクトは自主申告したため告発対象から外れた。

公取委は2013年3月29日、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。

現在の状況は以下の通り。

  排除命令

課徴金

罰金
命令
(千円)
減免 現状 判決
(千円)
現状
NTN 7,231,070   審判中   裁判中
日本精工 5,625,410 30%

審判中

 380,000  
不二越 509,390 30%    180,000  
ジェイテクト 100%    
合計   13,365,870        

不二越、日本精工の5名に懲役1年ないし1年2月(いずれも執行猶予 3年)の有罪判決。

なお、NTNの株主が2013年9月2日、鈴木泰信会長や歴代の取締役ら計23人を相手取り、「カルテルに故意に関与したり、存在を知り得たのに看過したりして放置した過失がある」などとして、課徴金約72億円を同社に賠償するよう求める株主代表訴訟を大阪地裁に起こした。

2012/4/23 東京地検、ベアリング大手4社をカルテル容疑で家宅捜索

 

2)米国

自動車部品カルテルで多数の日本企業が罰金支払いで同意しているが、ベアリング関係では2社が含まれている。

ジェイテクト 103.27百万
日本精工   68.20百万


2013/10/1 米司法省、自動車部品カルテルで更に9社、2名と司法取引 

なお、ジェイテクトは2013年7月13日、ベアリング(軸受け)製品の取引にからみ価格カルテルを行ったとして、カナダ東部ケベック州の裁判所から500万カナダドルの罰金支払いを命じられたと発表した。


3) EU

EUの欧州委員会は2014年3月19日、自動車向けのベアリングで、日本企業4社と欧州企業2社の計6社が2004年から7年以上にわたって欧州内でカルテル行為を実施したとして、うち5社に9億5300万ユーロの制裁金を科したと発表した。

ジェイテクトはカルテルの存在を通知したため、制裁金 86,037,000ユーロを免除された。

 

Leniency

示談制度割引

制裁金 (€)

ジェイテクト 100% 10% 0
日本精工 40% 10% 62,406,000
不二越  30% 10% 3,956,000

SKF (Sweden)

20%

10%

315,109,000

Schaeffler (Germany)

20%

10%

370,481,000

NTN

 

10%

201,354,000

Total

   

953,306,000


2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金

 

 

 

米パイプライン運営大手 Kinder Morganは8月10日、同社がグループの上場投資事業体のMaster Limited Partnership (MLP) の投資家から総額710億ドルで持分や株式を買い取るなどして、単一企業に統合すると発表した。

Kinder Morgan Inc. はRichard D. Kinder(現会長兼CEO)とWilliam V. Morgan(前副会長)が1997年にEnron CorporationからEnron Liquids Pipeline Companyを40百万ドルで買収したのが始まり。(現在のKinder Morgan Energy Partners, L.P.)

二人はこれをMLPのシステムを利用し、今までにないエネルギー会社に育てた。

MLP(Master Limited Partnership)はエネルギーインフラへの投資促進を目的として、1980年代に米国で誕生し、その後発展してきた共同投資事業形態の1つで、Limited Partnershipのもつ米租税法上のメリットと上場株式の流動性を併せ持つ。

MLPは経営にあたるGeneral Partner と一般投資家のLimited Partner から成る。
MLPはニューヨーク証券取引所やナスダック等で取引されている。

Limited Partnerは事業収益の一部を配当として受け取る。配当は必ずしも現金で支払われる必要はなく、内部留保とすることができる。

MLP自体には法人税がかからず、課税は個々のLimited Partnerに対して行われる。
内部留保となった配当に対しては、Limited Partnerは自分の持ち分を売却するときまで課税を先送りできる。

ただしMLPはその収益の9割以上は利息配当収入、不動産賃料、天然資源、商品によるものでなければならない。
原油や天然ガスの採掘・輸送など安定収益が見込める事業を行っている会社が多い。

エネルギー会社は石油やガス価格の変動で損益が変動するが、パイプライン会社は長期契約で設備利用料を受け取るため、安定した収益が期待できる。

ーーー

同社は1999年にNatural Gas Pipeline Company of America (NGPL)を所有するKN Energy を買収した。(現在のKinder Morgan, Inc.)

2001年に Kinder Morgan Management, LLCを設立した。

2011年10月にEl Paso Corporation を380億ドルで買収した。(現在のEl Paso Pipeline Partners, L.P.)

同社はその後 改組し、現在の形態は以下の通りとなっている。

Kinder Morgan, Inc.  両MLPのGeneral Partner、Kinder Morgan Management の株主
Kinder Morgan Management, LLC Kinder Morgan Energy PartnersのGeneral Partner
Kinder Morgan Energy Partners, L.P. MLP
46,000 milesのパイプライン(天然ガス、ガソリン、原油、CO2、その他)
180のターミナル(石油製品、化学品を貯蔵、エタノール、石炭、石油コークス、鉄鋼を取り扱い).
El Paso Pipeline Partners, L.P. MLP
13,000 miles のパイプライン
100Bcf 以上の天然ガス貯蔵能力



Cochin Reversal NGL pipeline はイリノイ州からカナダのFort Saskatchewanに light condensate を輸送。

Kinder MorganはShellとのJVを設立し、ジョージア州Savannahの近くのEl Paso Pipeline の既存のElba Island LNG Terminalに 2段階で天然ガス液化プラントを建設する。

2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設 

CO2の供給も同社の事業の一つで、子会社のKinder Morgan CO2 Company はCO2の最大の販売業者かつ輸送業者。

CO2は地下のドームから高純度で取り出され、老朽油田での原油の増進回収(enhanced oil recovery)に使用される。

 同社が権利を持つコロラド州の McElmo Dome は世界最大のCO2埋蔵量を持つ。


今回、Kinder Morgan, Inc.はKinder Morgan Management, LLCの株主と、Kinder Morgan Energy Partners, L.P.、El Paso Pipeline Partners, L.P.の両MLPの権益所有者からKinder Morgan, Inc.の株式と交換に全ての株式・権益を買い取る。MLPの場合は現金での買い取りも行う。

これにより、全ての事業が一つの経営体となる。

統合の目的は、事業の拡大である。

パイプライン会社は長期契約で設備利用料を受け取るため、安定した収益が期待でき、実際に同社は高配当であるが、税制上利点のあるMLP という仕組みがあまりに複雑であり、事業の拡大の支障となっている。

今後は一般会社として、M&Aを活用した事業拡大をめざす。

Kinder会長は投資家向け電話会見で「当社は幅広いプラットホームを持っている。石油ガス関連のミッドストリーム分野なら事実上何でもわれわれに適している」と述べた。「コア事業からそれることはない」とも述べ、トラック輸送や鉄道を買収することはないとしている。

 




   

Sinopec Engineeringは2013年6月にKazakhstan Petrochemical Industries との間で、Atyrau石化計画のうちのプロパン脱水素とPPの設計・購買・建設契約(18.5億ドル)を締結したが、このたび、この契約を解約した。
昨年来、細目について交渉を続けてきたが、合意に達しなかったとしている。

今後、他の業者が選ばれることとなる。

習近平主席が「シルクロード経済ベルト」を提唱、中央アジア諸国などとの経済協力を進める中で、既に締結した契約を解約するのは異例であり、また同社はカザフスタンで他の仕事も請け負っていることも考えると、余程の問題があったのではと思われる。

Sinopec Engineeringでは、これが既存の事業、今後の事業計画に悪影響がないことを望むとしている。

Sinopec EngineeringはKazMunaiGasのAtyrau 製油所の近代化第2フェースの芳香族工場(ベンゼン 133千トン、パラキシレン 496千トン)の建設を請け負った。

また、同社と丸紅、カザフスタンのKazStroyServiceのコンソーシアムは2011年12月に、同製油所の近代化プロジェクト第3フェーズ案件(新しい流動分解接触装置の建設と、欧州環境基準に合致させるための機器など)のプラント設計・調達・建設契約を約17億米ドルで受注した。

Kazakhstan Petrochemical Industries(KPI)はカザフスタンの法律に基づき2004年に設立された。
国営石油会社KazMunaiGasの傘下の
United Chemical Company LLPが51%、私企業の SAT & Company JSC が49%を保有する。
(LyondellBasell が一時出資を検討したが、取り止めた。)

カザフスタン政府は世界市場でのプレーヤーになることを目指し、海外大手と提携して、西カザフスタンの天然ガスを利用して大規模石油化学コンプレックスを建設することとした。

まず、アラブ首長国連邦アブダビの国際投資会社IPICが2008年にKPIの親会社の国営石油・ガス会社KazMunayGas との間で、西カザフスタンで石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結した。 この件は実現しなかった。

2008/1/21 カザフスタンの石油化学計画


現在の計画は
2期に分かれ、第1期はTenghiz ガス田のNGLからとったプロパンを脱水素し、プロピレンからPPを生産するもので、第2期はエタンからエチレン、PEを生産する。

立地はAtyrau市の北東33kmで、KazMunaiGasのAtyrau Refineryがあり、既存のインフラが使用できる。

2009年3月にKPI はTenghiz ガス田を開発するTengizechevroil との間でガスの供給契約を締結した。

Tengizchevroil の株主はChevron (50%)ExxonMobil (25%)KazMunaiGas (20%) とロシアのLukArco (5%) となっている。


各製品の能力、採用技術、建設会社は下記の通りとなっている。第1期の建設を担当するSinopec Engineeringが今回撤退を決めた。

    Technology Basic Engineering Engineering, Procurement, Construction
1st phase PDH
(プロパン脱水素) 
500,000 t/y Lummus
(CB&I )
CATOFIN® CB&I
 
Sinopec Engineering Group
 
PP   500,000 t/y Novolen®
2nd phase Ethylene 
(Ethane cracker)
840,000 t/y LyondellBasell Lupotech® T   LG Chem
 
LDPE  400,000 t/y Spherilene®
LLDPE/HDPE  400,000 t/y


韓国の李前大統領は2011年にカザフスタンを訪問し、資源・エネルギー分野の協力強化で合意したが、その際、LG化学とKazakhstan Petrochemical  (KPI) はAtyrau石油化学団地建設と関連の合弁契約に署名した。


50/50JVを設立し、カスピ海近くのTengiz油田から出るエタンガスを活用してエチレン、ポリエチレンを製造する。

LG化学が工場建設・運営・製品販売を担当する。

2011/8/29   韓国の李大統領、中央アジア3か国歴訪、ガス田開発、石化事業などで合意 

 

 



 

    

Borealisは8月7日、米国のAntero Resources との間で、スウェーデンのStenungsundのフレキシブルクラッカーの原料としてエタンを購入する10年契約を締結したと発表した。

Borealisは2014年2月に、スウェーデンのStenungsundのフレキシブルクラッカーの原料として、ノルウェーのStatoil からエタンを購入する長期契約を更新した。契約は2015年10月から7年間で、米国のシェールガス革命によるエタンの世界的な価格変動を勘案した価格となる。

今回の米国のエタンはこれを補完するもの。

Antero Resourcesは現在、Marcellus Shale で 373,000 net acres、Utica Shaleで120,000 net acresを保有しており、両シェールからのエタンをBorealisに供給する。
Sunoco Logisticsが運営するMarcus Hook terminal でエタンを引き渡す。

Borealisは米国のNavigator Holdingsとの間で輸送契約を締結した。
Navigator Holdingsはこの輸送のため、最新鋭の35,000m3のdual fuel engine(油とガス)のエタン輸送船を建造する。

Borealisはこのエタンの貯蔵のためのタンクの建造をTGE Gas Engineering GmbH に発注した。
合わせて、エタンのクラッキング量の増加に合わせ、クラッカーの改造も行う。

BorealisのStenungsund のクラッカーは欧州で最もフレキシブルなもので、エタンのほか、ナフサ、プロパン、ブタンを処理できる。
LPGの貯蔵能力は大きく、いろいろなソースからいろいろの大きさの船でLPGを受け入れることが出来る。

ーーー

欧州勢ではIneosが2012年9月に欧州のエチレン原料用にエタンを輸入するため、供給契約と輸送契約を締結したと発表した。
独立系石油・ガス業者のRange Resourcesとの間で、2015年からエタンを購入する契約を締結した。

Ineosはまた、Sunoco Logistics Partnersとの間で、エタンをペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookまで輸送するため、パイプライン輸送契約とターミナルサービス契約を締結した。

ペンシルバニア州Houstonでは、MarkWestLiberty Midstream & Resourcesが Marcellus shaleのガスの集積、処理、分離、販売等の設備を持つ。
Marcus Hookには2011年12月に停止したSunocoの製油所があり、ここでプロパン分離、貯蔵、出荷等を行う。
Marcus Hookからは船でデラウエア湾経由で欧州まで輸送する。

Ineosは先ず、ノルウェーのRafnes 工場でこのエタンを使用する。

更に、Ineosは2014年2月3日、米国のCONSOL Energyとの間でMarcellus Shaleのエタンの購入契約を締結した。
エタンはSunoco LogisticsからMariner East pipeline で運ばれ、Marcus Hookから船積みされる。

2012/10/2   Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入

 

 

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本ブログは今回で3,000回となりました。

2006年2月15日が第一回でした。
   
2006/2/15 プラスチック100周年

ご愛読を感謝します。

 

過去の記事は索引をつけています。 

データベースも暫く手をいれていませんでしたが、今後更新します。

 


    

LyondellBasell は8月7日、オマーンのOman Oil Refineries and Petroleum Industries Company (ORPIC) のLiwa Plastics project に同社のSpheripol 技術が選ばれたと発表した。
これでほとんどの技術が決定した。

ORPIC はオマーンの財務省と国営Oman Oil Companyにより2011年に設立された。

Muscat と Sohar に製油所を持つ。
Muscatで燃料を生産した残りはSoharにパイプで送られ、Sohar分と合わせ、プロピレンからPPを、ナフサからベンゼンとパラキシレンを生産している。

Oman Polypropylene LLC:PP 340千トン
Aromatics Oman LLCBenzene 198千トン、p-xylene 818千トン

(両社はOman Oil と LG International 等とのJVであったが、2010年4月にORPICが取得した。)


Liwa Plastics project はORPICがSohar近郊のAl Liwaで計画している36億ドルの石油化学計画で、2018年の完成を予定している。
原油と天然ガス輸出に頼るのではなく、下流の産業を開発し、付加価値を付けようというオマーンの国家計画の一部である。

Soharの精製能力を116千b/d から176千b/dに増強するが、それではナフサが不足するため、ナフサのほかに、エタン、NGL、LPG、コンデンセートも利用する。

このため、Liwa Plastics project の工事は3箇所にまたがる。

 ・Fahdでのガス抽出工場(
Randall のNGL extraction technology
 ・Fahd からAl Liwa までの300kmのガスパイプライン
 ・Al Liwaの石化コンプレックス


石化コンプレックスの能力と技術供与元は以下の通り。

  能力 技術
NGL抽出

18 million m3/day

CB&I (NGL-MAXSM gas processing technology)
Mixed Steam Cracker 800,000 t/y CB&I
HDPE 300,000 t/y Univation
LLDPE 500,000 t/y
PP 300,000 t/y LyondellBasell(Spheripol  technology
熱分解ガス水素化   Axens
MTBE 90,000 t/y CB&I(CDMtbe technology)
Butane-1 41,000 t/y CB&I


全体のProject Management CompanyにはインドのEngineers India Limited が選ばれた。



Mexichemは8月5日、欧州6位のPVCメーカーのVestolit GmbH を
Strategic Value Partners LLC から負債込みで219百万ユーロで買収する契約を締結したと発表した。
関係官庁の承認手続きを経て本年第4四半期に取引を完了する予定。

Vestolit GmbHはドイツのMarlに本拠を置き、PVC能力は415千トンで、窓枠用のHigh Impact Suspension PVCについては欧州で唯一のメーカーで、ペーストPVCでは欧州第二位のメーカー。

当初はHulsの事業であったが、1995年にDegussaが買収し、Vestolitとした。

Huls と Degussa は1999年に合併し、Degussa-Huls となり、2001年にSKW Trosbergと合併して Degussa となった。
E.OnがDegussaの株の64.5%を所有していたが、2003年にRAGがE.OnからDegussa株を買収、2006年に100%子会社とした。

2007年にRAG はグループを再編し、Degussa (化学子会社)、 Steag (エネルギー子会社)、RAG Immobilien (不動産子会社)を統合し、Evonik Industries とした。

Huls と Degussa が合併した1999年に、Vestolitは英国の Candover plc.と米国のD. George Harris & Associatesなどのコンソーシアムに売却された。

その後、2006年にStrategic Value Partnersが買収し、現在に至っている。

 

欧州塩ビメーカーについては、Westlake Chemical が本年6月28日に、投資会社のAdvent International からドイツを拠点とする塩ビメーカーVinnolit Holdings GmbH とその子会社を490百万ユーロで買収する契約を締結、7月31日に取引が完了している。

2014/6/3   Westlake Chemical、欧州の塩ビメーカー Vinnolit を買収 

ーーー

Mexichem 1998年にQuímica Pennwalt Polímeros de Méxicoが合併して設立された。

フランスの
Elf Atochem とメキシコのGrupo Empresarial Privado Mexicanoが共同で所有したが、後者は1999年にCamesa Groupと合併し、2003年にTotalElf Atochem)の持株を買収し、メインの株主となった。

同社はOxyChemとの50/50JVでテキサス州 Inglesideにシェールガスを利用する年産545千トンのエチレンクラッカーを建設する。

2013/11/4   OxyChem、メキシコのMexichemとのJVでエチレン生産 

同社はラテンアメリカ最大の塩ビメーカーだが、今回の買収で欧州に進出する。

 

現在のMexichem社の事業はビニルチェーンとフッ素チェーンの2つに分かれている。

1)ビニルチェーン:現在ラテンアメリカ最大の塩ビ樹脂、コンパウンド、塩ビパイプメーカー

Mexichem2004年にメキシコ最大の塩ビレジン、コンパウンドメーカーのPrimexを買収した。
2006年に米国の塩ビコンパウンドメーカーBayshore Groupを買収。
2007年にはコロンビアの塩ビメーカーPETCOを買収、また、コロンビア最大の塩ビコンパウンドメーカーGeon Polímeros Andinosの株の50%を買収した。
2012年2月、欧州の塩ビパイプメーカーWavinを531百万ユーロで買収した。

 現在の体制(子会社)は以下の通り。

子会社   工場  
Mexichem Derivados  メキシコ Coatzacoalcos 塩素 260千トン、ソーダ 286千トン、次亜塩素酸ソーダ 20千トン
  
塩素はVCM用にPemexに供給
El Salto 塩素/ソーダ 40千トン、次亜塩素酸ソーダ 70千トン、塩酸 26千トン
Mexichem Derivados Colombia コロンビア Zipaquira 苛性ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、塩化鉄(5千トン)
Quimir メキシコ   燐酸、燐酸ナトリウム、活性炭
Mexichem Resinas Vinilicas メキシコ Altamira I、II、
Tlaxcala、
La Presa
s-PVC 349千トン、e-PVC 12,500t
Mexichem Resinas Colombia コロンビア 3工場 PVC 400千トン
Mexichem America 米国   コンパウンドとリサイクルPVC
2006年にBayshore Vinyl Compounds、Bayshore Rigids、Ricicla の3社を買収
Mexichem Compuestos メキシコ Altamira PVC compounds 60千トン
Tlaxcala PVC compounds 12千トン
C.I. Mexichem Compuestos Colombia コロンビア   PVC, PE その他のコンパウンド 50千トン
AlpahGary 米国   Compounds
2010年に
Rockwood Holding から買収

2)フッ素チェーン

Mexichem2004年にQuímica Flúor を買収し、世界最大の蛍石埋蔵量を誇るCompania Minera Las Cuevasと統合してMexichem Fluorとし、フッ化水素酸の世界最大の垂直統合メーカーとなった。

 ・Mexichem Fluor - San Luis Potosí:
    世界最大の蛍石メーカー
    能力は
metallurgic gravel 350千トン、acid-grade concentrates280千トン
    北米、南米、欧州、日本に輸出

 ・Mexichem Flúor - Matamoros
    世界第二位のフッ化水素酸メーカー
    能力 
95千トン
    
98%を米国に輸出 




 

WHOは8月12日、エボラ出血熱の患者が過去最大の規模で増え続けている事態を受け、安全性などが最終的に確認されていない未承認の薬の使用を一定の条件の下で認める方針を明らかにした。

富士フィルムのファビピラビルも候補になると思われる。

付記

田村厚労相は8月15日、インフルエンザ治療薬「アビガン錠200mg」(ファビピラビル)について、「今般の緊急事態とすれば、医師の裁量というか処方によって使うのは薬事法違反とは認識していない」と述べた。

 

菅官房長官は8月25日、WHOや医療従事者の要請があれば 「アビガン」を提供する用意があると表明した。

富士フイルムによると、「アビガン」2万人分の在庫を保有する。今後も連続的に生産・供給する体制が整っている。
サルを使った有効性試験実施の準備も早急に進める。
ドイツでの動物実験では、エボラ熱に感染したマウスにアビガンを投与したところ、生存率を高める効果があった。

 

具体的には、患者に薬のリスクなどを事前に説明したうえで本人の同意を得ることや、地元政府などの理解を得ることなどが必要だとしている。
また、実際に薬を使う場合は、患者の容体の経過や薬の効果などについてのすべてのデータを収集して公表するよう求めている。

発表文 http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2014/ebola-ethical-review-summary/en/


WHOが動物実験段階の未承認薬の投与を認めるのは異例で、エボラ熱について「制御が困難な状況に陥っている」としている。

WHOの判断は、米国が西アフリカのリベリアで感染した米国人2人に未承認薬「ZMapp」を投与したのを受けたもの。

米国人の医師 Dr. Kent Brantly はエボラ出血熱の発生以降はその治療活動に専念していて感染した。
同じキリスト教団体に所属する米国人女性、Nancy Writebolさんも、リベリアでの医療活動中に感染した。

Brantly 医師は7月22日の起床時に発熱に気付き、ただちに自分で隔離室に入った。Writebolさんの症状は3日後に現れ、血液検査で2人ともエボラ出血熱へ感染していた。

カリフォルニア州San DiegoのMapp Biopharmaceutical が開発し、Kentucky BioProcessing (Reynolds American Inc の子会社)が受託生産した「ZMapp」が冷凍状態でリベリアへ運ばれ、二人に投与された。

二人は特別機で米国に送られ、米疾病管理予防センター(CDC)と提携してエモリー大学病院に設置された特別チームのもとで治療を受けている。

二人は回復に向っているが、「 二人の症状回復は同薬物の投与と直接的な関係があるかどうかをまだ断定できない」とされる。


スペイン政府は「エボラ出血熱に感染したスペイン人患者にZMappを投与する」と発表した。
スペイン保健省は声明の中で「エボラ治療薬ZMappは、カトリック神父 Miguel Pajaresが隔離治療を受けている病院にすでに送られた」と述べた。


ZMappは、豪州系のタバコ(Nicotiana benthamiana) の葉の中で作られる3種類のヒト化モノクローナル抗体を混合した抗エボラウイルス薬である。

エボラウイルスのタンパク質とくっついて新たな細胞への感染を防ぎ、血液の中にあるウイルスを破壊する3種類の抗体を組み合わせたもの。ワクチンではない。

米疾病管理予防センター(CDC)がホームページにこれについてのQ&Aを掲載している。

ーーー

カナダのTekmira Pharmaceuticals が開発する「TKM-Ebola」も候補である。

病気の原因となるたんぱく質の生産を抑制する「RNA干渉」と呼ぶ原理を応用した薬だが、体内で分解されやすく開発は難しい。

ーーー

カナダ公衆衛生庁のテイラー副公衆衛生監は8月12日、エボラ出血熱の予防に使うため、最大で千回分のワクチンをWHOに提供する考えがあると表明した。

これは上記のTekmira Pharmaceuticals が開発する「TKM-Ebola」とは別のもの。

このワクチンは商業化のため米国のBioProtection Systems(Newlink Geneticsの子会社)にライセンスされている。人間へのテストはまだ行われていない。


ーーー

これらはいずれもヒトのテストが終わっていないだけでなく、供給能力が極わめて限られている。

多くの患者のうちの誰に適用するのかが問題となる。



   

昨日の記事で自動車および自動車部品についての中国の独禁法調査について述べた。

中国商務部は「独占調査を受けた企業には国内企業もあれば外資系企業もある。反独占法の前にすべての企業は一律に平等で、『排外的状況』などというものは存在しない」とするが、外資が高いシェアを握る業種が標的になるケースが多く、外資企業には、『外資たたき』で自国企業を保護する思惑では、との警戒感も出ている。

2013年以降の調査対象は以下の通り。

独禁法違反企業に対しては、調査協力や是正の程度に応じて、罰金を軽減している。

なお、中国の独禁法執行機関は、企業結合が商務部、独占的協定(カルテル)が国家発展改革委員会(NDRC)、支配的地位の濫用行為については国家工商行政管理総局(SAIC)となっている。


1)液晶パネル価格カルテル

中国国家発展改革委員会は2013年1月4日、LG電子、サムスン電子など韓国、台湾の液晶メーカー6社がカルテルを結んで液晶パネルの販売価格を不当につり上げていたとして、総額353百万人民元(約49億円)の制裁金を科したと発表した。

制裁金353百万元のうち、144百万元が罰金となっている。不当利得208百万元のうち、172百万元は需要家に返却させ、37百万元は没収された。

各社の期間中の販売個数と制裁金は以下の通り。

      販売個数     制裁金 個数当たり
制裁金割合
LG電子 192.70 万片 118.00

百万元

     0.5
三星電子 82.65   101.00        1.0
群創光電 156.89   94.41        0.5
友達光電 54.94   21.89        0.33
中華映管 27.06   16.20        0.5
瀚宇彩晶 0.38   0.24        0.5


三星以外は協力し、制裁金が減額された。友達光電は最初に違反行為を認めたため、需要家への返却は命じられたが、罰金は免除された。

2013/1/9  中国政府、価格カルテルで外資に制裁金


2)粉ミルク価格操作

国家発展改革委員会(NDRC)は2013年8月7日、乳児向け粉ミルクの価格操作と独占禁止法違反をめぐる調査の結果、米Mead Johnson Nutritionほかの計6社に合計109百万ドルの罰金支払いを命じた。

各社は卸売業者に対する契約で最低販売価格を制限し、違反者に罰金を課したり、リベートをカットしたり、商品供給を制限するなど行ったとしている。

  罰金
(千人民元)
売上高比
(2012年)
備考
Mead Johnson Nutrition(米) 203,800  4%

積極的に協力せず。

Dumex Baby Food(仏)Danone 子会社 172,000 3% 調査に協力
Biostime International (香港)
合生元国際
162,900 6%

違反行為がひどく、是正措置を取らなかった。

Royal FrieslandCampina(蘭) 48,000 3% 調査に協力
Fonterra Co-operative Group (NZ) 4,000 3% 調査に協力
Abbott Laboratories (米) 77,000 3% 調査に協力
Wyeth Nutrition(スイス)Nestlé 子会社 免除 「独占禁止法執行機関に対して、独占に関する取り決めの関連情報を自発的に報告し、重要な証拠を提供し、かつ自発的に改善を行った。」
Zhejiang Beingmate Technology Industry and Trade
貝因美科工貿(中国)
免除
明治ホールディングス 免除
合計 667,700
(109百万ドル)
   


2013/8/9   中国で販売価格を巡る2つの独禁法違反事件


3)無線通信技術(調査中)

NDRCは2014年2月に、携帯電話向け半導体大手の米Qualcommが無線通信市場での地位を乱用し、価格の吊り上げなどに関与した疑いがあるとして調査に着手する意向を明らかにした。
中国はQualcommが収益の約半分を稼ぎ出す主要な市場。

2014年7月24日、NDRCはQualcommが市場を独占しているとの判断を示したと報じられた。

NDRCが独占的地位の乱用を認めた場合、Qualcommは10億ドル以上の制裁金を科される可能性がある。


付記

NDRCは8月22日、Qualcommが価格設定を是正する方針を示したと明らかにした。


4)無線通信技術

NDRCは2014年2月、上記のQualcommに加え、米InterDigitalについても独占禁止法に基づく調査を行っていることを明らかにした。

InterDigitalは2014年5月22日、NDRCが同社の調査を停止したと発表した。

同社は条件として、中国の携帯電話メーカーに標準規格必須特許をFRAND(Fair, Reasonable, and Non-discriminatory)条件でライセンスすること、中国の携帯電話メーカから特許等の無償ライセンスを受ける条項を入れないことなどをコミットした。


5)メガネ用レンズ、コンタクトレンズの販売価格維持

NDRCは2014年5月29日、眼鏡用レンズ及びコンタクトレンズのメーカー計5社による再販売価格維持に関する処分を公表した。罰金合計は1,957万元。

  罰金 万元 売上高比 備考
上海Essilor光学(フランス系) 879.02 2% 自主的に違法行為を改めた。
北京ニコン眼鏡 168.48 2% 調査にあまり協力しなかったが、自主的に違法行為を改めた。
カールツァイス(広州) 176.6 1% 調査に積極的に協力し、自主的に違法行為を改めた。
北京ボシュロムアイケア製品
 
369 1%
ジョンソン視力健商貿(上海) 364.37 1%
HOYA(上海)光学 免除 執行機関対し独占合意を達成した関係状況を自主的に報告し、重要な証拠を提供し、かつ積極的、自主的に違法行為を改めた。
上海衛康眼鏡(中国系) 免除


ボシュロム(Bausch+Lomb)は2013年8月に
カナダの特殊医薬品メーカーのValeant Pharmaceuticals Internationalが買収した。


6)ソフトウエアの抱き合わせ販売(調査中)

中国の国家工商行政管理総局(SAIC)は2014年7月29日、Microsoft中国法人に対し、独占禁止法j違反の疑いで抜き打ちの立ち入り検査をしたと発表した。
北京と上海、広州(広東省)、成都(四川省)の4事務所を予告なしに訪れて幹部から事情を聴き、パソコンや文書などを押収したという。

SAICは8月6日、北京と遼寧省、湖北省、福建省のMicrosoft事務所を強制捜査したことをウェブサイト上で認めた。同時にITコンサルティング企業でマイクロソフトが財務関連の業務を委託しているAccentureの複数の事務所を強制捜査した。

基本ソフトWindowsと「Microsoft Office」に関する互換性などの問題に絡み、2013年6月以降独占禁止法に違反している疑いがあるとしている。
同社の製品は互換性と文書認証に関する中国の規則に違反しているおそれがあり、事実上、中国の消費者は必要以上に多くのMicrosoft製品の使用を強いられているとする。

 

 

 


中国の 独占禁止法違反調査が完成車のほか、自動車部品分野に及んでいる。

中国国家発展改革委員会(NDRC)は昨年来、自動車メーカーが中国のディーラーに最低卸価格を決めていないかどうかを調査している。
最低価格設定は独禁法違反となる。

2013/8/19 中国当局、輸入車などの独占価格調査を開始 

NDRCの独禁法違反に関する調査は、完成車の価格のみに限られず、完成車販売後の部品供給ルートの独占、ディーラーの価格 つり上げ・地域限定の販売に向けられている。
これは水平・垂直方向の独占、市場の支配的な地位の濫用など、独占禁止法の疑いがある 行為の取り締まりを目的としている。

海外資本の企業は中国で、自動車部品販売の大半のシェアを占めている。
国産部品の売上は、2012年に全業界の20-25% のみとなり、外資の背景を持つ部品メーカーが75%以上を占めた。
これらの外資系部品サプライヤーのうち、100%出資企業が55%、 中国との合弁企業が45%を占めた。

NDRCは日米欧の高級車を中心に、完成車メーカーと部品メーカー、販売会社などが純正部品の価格を不当に高く維持する取り決めをしている疑いがあるとみて調査しているとみられる。

この問題について、商務部の報道官は8月9日、「中国においては国内資本企業であれ、外資系企業であれ、法律を犯せば制裁を受け、相応の法的責任を負うことになる」とコメントした。

独占の疑いのある行為に対し法律に基づいて調査を実施するのは、公平な競争を促進し、消費者の権利を守るための重要な取り組みだ。
独占行為の調査摘発は国際的に行われている。
中国は「反独占法」を施行してから6年になり、独占調査を受けた企業には国内企業もあれば外資系企業もある。反独占法の前に、すべての企業は一律に平等で、「排外的状況」などというものは存在しない。

中国汽車維修(自動車メンテナンス)協会は2014年4月、国内で一般的に流通している車種の「零整比」 (zero integer ratio)を発表した。

零整比は部品価格と完成車価格の比率を示す数値で、北京ベンツの「ベンツCクラス(W204)」の場合、この数値は1,273%に達する。 これは中国で同車種のすべての部品を取り替える場合、その費用が新車12台分に達することを意味する。
2位のトヨタ Yaris の場合も720%(7.2倍)となっている。

業界関係者は、「海外のデータによると、300%前後が最も一般的だ」と指摘している。

 

零整比

Mercedes-Benz C-Class 1,273.31%
トヨタ Yaris(ヴイッツ) 720.28%
BMW 3 シリーズ 320i 661.74%
トヨタ カムリ 503.80%
Mercedes-Benz S-Class 441.30%
Audi A6L C6 411.30%
BYD F3R 409.02%
トヨタ レクサス ES 350 408.87%
Volkswagen Bora 404.06%
ニッサン Tiida 375.92%
Audi A4L 351.25%
ホンダ Accord 342.66%
Citroen 308.82%
Volkswagen Passat 306.90%
Buick Excelle 283.95%
Volkswagen Lavida 272.75%


NDRCの動きを受け、各社は完成車と部品の値下げに動いている。

ここ10数日間に、ジャガーランドローバー、ベンツ、アウディ、クライスラーの4メーカーが完成車価格および部品価格を調整した。
これらメーカーの主力製品の多くは、高価格の高級車や輸入車で、どちらも国内と国外との価格差が非常に大きく、部品価格と完成車価格との差も非常に大きく、暴利との批判を受けている。
ジャガーランドローバーの場合、値下げ後も一部製品の価格は欧米市場での販売価格の3倍前後になるという。

多くのメーカーは厳罰を回避することは難しいと考え、主体的な値下げによって少しでも処分を軽くしようとしているとの分析がされている。

「反独占法」の規定によると、独占行為があった企業は最高で年間売上高の1%以上、10%以下の罰金を科される。
ベンツやアウディなどは売上高が巨額のため、罰金額も巨額になる可能性がある。

粉ミルク 液晶パネルなどの産業に対して行った独占調査では、企業が主体的に調査に協力した場合は罰金額の引き下げや免除を受けられることもあった。
 (明治ホールディングスなどは罰金を免除された。)

東風日産、広汽ホンダ、広汽トヨタは8月8日に一部部品の価格を値下げ調整することを明らかにした
3社とも具体的にどの製品を値下げするか、値下げ幅はどれくらいかを明らかにしていない。

3社はNDRCの調査や問い合わせを受けたと説明しており、補修に使う部品の価格が高すぎるとの指摘を受けたとみられる。

主な動き:

トヨタ 広汽トヨタ自動車(広州汽車集団とのJV)は8月8日、ウェブサイトで一部部品を8月18日から引き下げると発表
「レクサス」をめぐり「当局の問い合わせには前向きに対応している」と説明
ホンダ 広汽ホンダ(広州汽車集団とのJV)は9月1日から一部部品について値下げを行うと説明した。
日産自動車 東風汽車(東風汽車集団とのJV)は、改善方法を積極的に検討していると述べた。
Mercedes-Benz 8月3日、自主的に中国市場の部品価格の調整を発表
(8月4日にNDRCが上海事務所の立ち入り調査)
Audi 8月1日から値下げすると発表した。
TFSIエンジンが22%、マルチトロニック変速機が38%、車体が16%、アンチロック・ブレーキ・システムが25%など。
値下げ後に「A6L」の「零整比」は従来の411%から291%に低下する。  
BMW 中国で提供する約2000個の自動車部品の価格を8月11日から平均20%引き下げると発表した。
空調用コンプレッサーやブレーキ盤など補修用部品が対象
クライスラー クライスラー中国自動車販売有限公司が一部の製品・部品の価格を調整したことを明らかにした。
「Jeepグランドチェロキー ART8」や「チェロキー」を値下げ。
ヘッドライト、バックミラー、スターターなど145種類の部品の価格を20%値下げする。

 

自動車メーカーとは別に、中国国家発展改革委員会(NDRC)は8月6日、自動車部品とベアリングの価格カルテルに絡む日系企業12社に対する調査を完了したと発表した。
近く、
「反独占法」に基づき、12メーカーにはそれぞれ1億元(16.5億円)以下の罰金が科されることになる。

これらは
、クライスラーやアウディが行った「第三者への製品転売価格に制限を加えることに合意した縦方向の独占」とは異なり、「横方向の独占」といえるもので、たとえば入札の過程で複数の企業が密かに示し合わせて、1社が低い入札価格をうち出すと、他社がそれより高い価格をうち出すという方法で、順繰りに落札するというものだったとしている。

中国は日本製自動車部品に対する依存度が高く、2013年の日本からの自動車部品輸入額は95億8千万ドルで、自動車部品輸入全体の27%を占めた。
日本部品が各部品の輸入全体に占める割合はトランスミッションやクラッチがいずれも45%に達し、制動装置は33%に達し、日本はコア部品の輸入でドイツをはるかに上回る。

人民網は日系部品メーカーが部品価格を操作したとして、米国や欧州で摘発され、多額の罰金を課せられたことを伝えている。


ーーー

自動車部品については日米欧の独禁法当局が摘発している。

日本 2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

2012/11/24  公取委、自動車メーカー発注の自動車用部品コンペ参加業者に 排除措置命令と課徴金納付命令

ベアリングカルテルについて2013年3月29日、排除措置命令及び課徴金納付命令

米国 2013/10/1 米司法省、自動車部品カルテルで更に9社、2名と司法取引 

2014/8/11現在で、27社(ほとんどが日系)が罰金支払いで同意。
他に、36名が起訴され、うち26名が禁固刑と罰金支払いで同意、残り10名が起訴段階。

EU 2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金

ワイヤーハーネス、自動車用マットレス・シートでも。
他に、エアバッグ、安全ベルト、ハンドル、エアコン、エンジン冷却製品、照明システムなどで調査を進めている。


 



世界保健機関(WHO)は8月8日、過去最悪の感染となったエボラ出血熱が西アフリカの4カ国から拡大する恐れがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

2013年12月にギニアで始まった感染は8月現在、ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネで広がっており、患者は1,711人、うち死亡は932人となった。

発表 http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2014/ebola-20140808/en/

渡航と貿易の全面禁止を勧告するまでに至らなかったが、感染者については公式な医療救助の対象とならない限り国境を越えるべきではないと指摘、当該国は航空各社と乗員への適切なケアを確実にするよう取り組むべきだとし、感染者と接した可能性のある乗客の確認を迅速にできるようにする必要があるとの見解を示した。

「ウイルスの毒性を考えれば、国際社会で感染がさらに広がった場合の結果はとりわけ深刻だ」とし、「エボラ出血熱の世界的な感染拡大を食い止め防止するためには、国際的な協調対応が不可欠だ」と指摘した。

エボラウイルスは大きさが80 - 800nmの細長いRNAウイルスで、自然宿主の特定には至ってはいないが、コウモリが有力とされている。

感染すると、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振などから、嘔吐、下痢、腹痛などを呈し、進行すると口腔、歯肉、結膜、鼻腔、皮膚、消化管など全身に出血、吐血、下血がみられ、死亡する。

患者の血液、分泌物、排泄物や唾液などの飛沫が感染源となる。エボラウイルスの感染力は強いが基本的に空気感染をしない。

現在のところ、エボラ出血熱ウイルスに対するワクチンはなく、有効かつ直接的な治療法は確立されていない。

ーーー

政府機関はエボラ出血熱の治療に富士フィルムのインフルエンザ用治験薬ファビピラビル(favipiravir)を利用できるよう承認手続きを急いでいる。

米国防総省によれば、富士フイルムの米国での提携相手である
MediVector Inc.はファビピラビルをエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、米食品医薬品局(FDA)と協議している。承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通し。

今後、エボラ出血熱に感染したサルに同薬を投与して効果を確認する作業を進め、9月中旬には暫定的な試験結果を得られる見通しであるとされる。

ファビピラビルは既にインフルエンザ感染者の抗ウイルス剤として治験が重ねられており、エボラ出血熱の治療に適用する上で優位性がある。
現在はインフルエンザ治療薬として米国での治験の最終段階にある。

国防総省のJoint Project Manager Transformational Medical Technologies (JPM-TMT) は2012年、 「軍関係者をインフルエンザの大流行から保護するため」、ファビピラビルの開発を後押しし、1億3850万ドルをMediVectorに助成している。
Emerging Infectious Diseases-Influenza Medical Countermeasures Acquisition Program)

ーーー

ファビピラビルは富士フイルム傘下の 富山化学の古田要介氏によって1998年に発見された。

インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大する。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐもの。
これに対し、ファビピラビル(製品名アビガン)は、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)及び A(H7N9)等に対する抗ウイルス作用が期待されており、実験動物レベルでは既に効果が確認されている。

富山化学工業は2014年3月24日、日本で錠剤タイプの新しい抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の製造販売承認を取得した。


「アビガン」は、最近のインフルエンザを取り巻く現状をふまえ、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、ノイラミニダーゼ阻害剤等の他の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分である場合に備え、新しいメカニズム の「アビガン」を使用可能な状況にしておくことは意義があると判断され、世界に先駆けて国内で承認となった。

直ちに医家向けに販売するのではなく、厚生労働大臣から要請を受けて製造・供給等を行うもので、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合に、患者への投与が検討される。

 

付記 「アビガン®錠200mg」の承認には厳しい条件がついている。

動物実験で「初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」。

日本人を対象にした薬物動態試験と追加臨床試験結果を医薬品医療機器総合機構に提出し、成績が確認されるまでは「原則製造禁止」 。
 (申請に用いたのが米国の試験結果で、日本人を対象にしたものがなかった。)
 但し、パンデミック時など厚労相が「要請」した際は製造できる。

なお、追加試験で「季節性」インフルエンザに有効性が示されれば、富山化学は「季節性」の適応追加を申請することが可能になる。


米国では2007年3月より臨床試験を開始している。

2010年2月から臨床第Ⅱ相試験を開始した。A型あるいはB型のインフルエンザに感染した患者を対象に、高用量および低用量と偽薬(プラセボ)との二重盲検試験を実施し、好結果を得た。

2015年3月頃に第Ⅲ相試験の完了後に承認申請を行う予定。



      

中国の食品大手の上海鵬欣 (Shanghai Pengxin Group)は8月1日、ニュージーランドの乳牛牧場の買収を進めていることを明らかにした。

子会社
Pure 100 Farm Limited を通じ、ニュージーランド北島中部のTaupoの近くの 13,800エーカーのLochinver農場を購入することで合意した。

同国のOverseas Investment Office はこの申請を受け付けたが、国民の反発を恐れ、9月20日の選挙が終わるまで秘密にされていた。
しかし、これが保守党党首の選挙演説で暴露された。「国民は裏で何が起こっているか知るべきだ。本件は明らかに選挙の争点だ。ニュージーランドは 'For Sale' の看板を下ろすべきだ」と述べた。

これを受け、上海鵬欣は契約したことを発表、既に購入した農場とのシナジーを求めてのものと述べた。

今後、Overseas Investment Office が申請を受け付けるかどうか、注目される。

 

上海鵬欣は2012年1月にニュージーランドに本社を置くCrafar Farms から北島の16か所の乳牛農場を1.64億米ドルで買収する件で、ニュージーランド政府の承認を受けた。
中国企業による初めての土地購入となった。

Crafar Farms は同国2位の家庭酪農農場で、8000ヘクタールの土地に2万頭の乳牛を放牧している。
2009年に破産保護を申請、16ヶ所の牧場、粉ミルク工場とニュージーランド大手乳製品メーカーFonterra の株式などの同社資産の売却を検討した。
2010 年7 月に上海鵬欣は買収意向を表明した。

鵬欣集団は同牧場で生産した乳製品を、中国やほかのアジア地域に販売する。

上海鵬欣は本年3月に中国当局からニュージーランド南島で合計4000ヘクタールの13の農場を運営するSynlait Farms Ltd の買収の承認を受けた。
上海鵬欣が74%の株を持つSFL Holdingsを通して買収した。

今回の買収が認められると、北島と南島に農場を持つこととなる。

中国の経済成長に従い、高品質の農産品の需要が急拡大し、中国企業は積極的に海外の農場や牧場を買収している。

鵬欣集団は2010年にボリビアのサンタクルス市の国有農場を2,720 万ドルで買収し、大豆など農産物を栽培している。

ーーー

中国企業による土地買収については、ほかでも問題となっている。

2011年11月に、アイスランド政府は、中国の不動産企業北京中坤集団(Zhongkun Investment)による広大な土地購入計画について、法的要件を満たしていないなどとして、購入を許可しないことを決めた。

マンション建設やリゾート開発を手掛ける北京の中坤集団はアイスランド国土の0.3%に当たる約300平方キロの土地を880万ドルで購入、リゾートを建設する計画を進めていた。土地所有者は売却に同意していたが、アイスランド政府が認めるかどうか審査していた。

広大な土地をチャイナマネーに買収されることに強い反発が起こり、政府は許可しないことを決めた。
外国企業によるこれだけ広い土地の取得は前例がないと説明、「アイスランドの独立性を守るため、外国人の土地取得の権利を制限することは必要と認めた」とした。

中坤集団の会長は旧建設省など中国政府での勤務経験があるため、空母建造を進める中国が「大西洋での戦略的な足掛かりを得るのが狙い」との観測がでていた。

その後、アイスランド政府が賃貸なら認めることとし、地方政府が土地を買収し賃貸するという契約が締結間近と報じられたが、最終的にこれも認められなかった。

2013年4月に発足したアイスランド新政権は「投資法」を改正し、土地売却を認める方向で検討しているが、反対も多い。

最近の報道では、中坤集団はアイスランドを諦め、ノルウェーでの観光事業を検討しているという。



 

出光興産は8月5日、同社とカナダのAlta Gas のJVのAltaGas Idemitsu JV Limited Partnership が株式の2/3を保有するPetrogas Energy Corp.が、米国西海岸にあるワシントン州のFerndale LPG基地から日本向けにシェールガス由来を含むカナダ・米国産ブタンの輸出を開始すると発表した。

出光のグループ企業のアストモスが8月上旬にブタンを積み込み、海上輸送により、8月中旬に出光興産千葉製油所へ搬入する。
同社では石油化学原料用途とする予定。

ーーー

出光興産とAltaGasは2013年2月、カナダ産のLNGとLPGのアジア向け輸出・販売の共同事業に関する可能性を調査するため、50/50の合弁会社とパートナーシップを設立することに合意した。

  合弁会社 リミテッド
 パートナーシップ
業務 事業の意思決定 事業の遂行
社名 AltaGas Idemitsu Management AltaGas Idemitsu
Joint Venture Limited Partnership
出資
出光   50%
AltaGas   50%
   
AltaGas Idemitsu
    Management
  0.01%
出光 49.995%
AltaGas 49.995%


両社は
、天然ガスの液化設備をカナダ西海岸に建設することについてFSを実施し、2014 年完了を目指す。
合わせてLPG の輸出・販売についても、冷凍・液化設備、販路などについて共同調査を行う。

2013/2/1    出光興産とAltaGas、カナダ産LNG、LPGのアジア向け輸出共同事業でパートナーシップを締結

出光興産は2013年10月25日、AltaGas Idemitsu JV Limited Partnershipが、カナダ西部および米国を中心にNGL、LPGおよび原油のマーケティング、物流、貯蔵、トラック輸送、抗井掘削用液体の製造、販売を行っているカナダのPetroGas Energy の発行済み株式の2/3を取得する契約を締結したと発表した。
2014年3月1日に手続きを完了した。

2013/10/30 出光興産、カナダのPetroGasに資本参加 

出光興産と三菱商事は、LPGの輸入・トレーディング、国内物流、販売のすべての面を統合する ため、2006年4月1日に出光ガスアンドライフと三菱液化ガスを事業統合し、アストモスエネルギー(Astomos:明日を灯す)を設立した。(出光興産 51%、三菱商事 49%)

アストモスは世界のLPG海上貿易シェア15%を取り扱い、大型冷凍LPG輸送船21隻の船隊による海上輸送インフラを持つ。

ーーー

PetroGas Energy は2014年3月、Chevron USA Inc. からWashington州Ferndaleにある LPGの貯蔵・出荷設備を買収した。
この設備は、日量30千バレルのLPGの輸出入を行う能力を持つ。
鉄道、トラック、パイプラインでの輸送が可能で、LPGを供給する近隣の2つのリファイナリーにもつながっている。

これにより、
 AltaGasのLPG生産(分留)設備
 PetroGas のLPG物流設備
 アストモスのLPG海上輸送体制
がつながり、米国西海岸から日本・アジアへLPGを輸出する体制が整い、計画より2年前倒しでブタンの輸出が実現した。


同社では、 カナダ・米国のバッケンを始めとしたシェールガス由来を含むLPGを調達することは、供給ソースの多様化だけでなく、豊富なガス生産量に裏打ちされた供給安定性・日本までの輸送距離の近さに伴う経済性の面でも従来と比べて優位性があり、日本のエネルギーセキュリティーに貢献するものと期待して いる。

ーーー

シェール・ガスの採掘では、
いろいろのものが混じって出てくる。
これをセパレーターでシェール・ガス(メタン中心)、Natural Gas Liquid(NGL)、シェールオイル(Tight Oil)に分ける。
NGLはエタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素の総称。

NGL処理プラントでは、硫黄分や重金属が除去された後、深冷分離によりエタン、プロパン、ブタン 等に分離される。

エタ ンは専用のパイプラインで石油化学プラントに送られ、プロパンは一部はプロピレン原料となり、大部分はLPGとして使われる。
ブタンも石化原料やLPGに使われる。

 


台湾高雄市の爆発事故で、死者は30人、負傷者287人となった。
消防士2人が行方不明となっていたが、発見されず、家族の同意の下、8月5日に死亡証明書が発行された。

既報 2014/8/4  台湾高雄市の爆発事故続報


高雄市環境保護局長は8月2日に記者会見を開き、爆発事故の原因について、流出したのはプロピレンで、これは李長栄化学工業(LCY Chemical)の過失が原因だとし、同社の責任を追及する考えを表明した。

説明によると、事故の状況は以下の通り。

7月31日夜、李長栄化学は4インチ輸送管を使って、USIグループ傘下の石化製品専門の運輸業者、華運倉儲実業から大社工場(大社区)にプロピレンの供給を受ける作業を行っていた。

31日午後8時43分、輸送管の圧力が突然 1平方センチメートル当たり42キログラムから13キロに急低下する異常が起きた。

このため一度輸送を中断して、9時20分に再開。しかし輸送管の圧力指数が上昇しなかったため再び輸送を中断した。

双方は圧力テストを実施したが、李長栄化学は結果がはっきり分からない状況の下、プロピレン不足が製造工程に影響を及ぼすことを懸念して引き続き供給を行うよう華運倉儲実業に要求、華運倉儲実業は10時10分から輸送を再開した。

その後、11時35分に華運倉儲実業の現場責任者が出勤途中に二聖路と凱旋路でプロピレンの臭気に気付いて漏えいが起きたと判断、即刻華運倉儲実業に通報し、これにより供給作業は3たび中断された。李長栄化学も11時45分にバルブを閉じたものの、既に大量のプロピレンが漏れた後で11時57分に大爆発が起きた。

プロピレン漏えいの直接の原因は、最も爆発の激しかった凱旋路と二聖路の交差点付近で 4インチ輸送管を補強していたパッチング材が緩まって外れたことが原因と報じられている。

高雄地方検察署は4日夜、爆発現場の捜索を行い、地下下水溝の上部に敷設されている4インチ輸送管に28平方センチメートルの穴を発見した。検察はこの穴からプロピレンが漏れた疑いが濃厚とみている。

穴は横7センチ、縦4センチで、表面に厚さ 0.2ミリの金属片が内側から外側にめくれた形で残っており、プロピレンを輸送した際の圧力で穴が開いたと推定できるという。
4インチ輸送管はひどく腐食しており、保護剤のアスファルト塗膜がほぼ剥がれた状態だった。

検察は李長栄化学の大社工場と、華運倉儲実業を捜索し、プロピレン送付に関連したコンピューターのデータを押収した。
今後、両社の関係者から事情聴取を進める。

ーーー

高雄市環境保護局長は、合計 10トンのプロピレンが漏れたにも関わらず、李長栄化学は管理責任を果たさず、環境保護局への通報を怠り、十分な対応措置を取らなかったと強調した。

李長栄化学の董事長は、8月3日記者会見を開き、謝罪の言葉を述べた。
しかし
同社は、謝罪は爆発の被害者を気遣うものであり、自社が事故原因であることを認めるものではないと強調した。

輸送管の圧力が急下降した際、市当局に報告しなかったは、「圧力下降は必ずしも漏えいとは限らず、ポンプの問題の可能性もあり、以前にも同じような状況があったため」と弁明した。

プロピレン受領を再開した判断については、「華運倉儲実業との間で圧力テストを実施した結果、圧力低下が続かず正常であることが示されたため」としたが、双方の間でデータを交換しておらず、厳密な検証が行われていなかったことも明らかになった。

爆発が起きた輸送管は、1980年の供給開始後、維持管理の責任者が不明確であるお粗末な実態も分かった。
全く維持管理がされていなかったと思われる。

李長栄化学では、輸送管は台湾中油(CPC)に点検責任があり、李長栄化学はそのための鍵すら持っていないと述べた。

一方、台湾中油(CPC)では、李長栄化学の前身の福聚塑膠(台湾ポリプロ)が 30年前に台湾中油(CPC)に輸送管埋設を委託し、埋設後に所有権と管理権が李長栄化学に移っており李長栄化学に維持管理の責任があると反論した。両者の間にはメンテナンスに関するいかなる契約も交わされおらず、関連の費用ももらっていないとしている。

参考

福聚塑膠(台湾ポリプロ)は1974年にスタートした台湾で最初のPPメーカーで、Basellが36%、台湾のKoos Group が16%出資、残りは一般株主。
2006年7月にBasell は持株全てを李長栄化学に売却した。
その後、李長栄化学が福聚塑膠(台湾ポリプロ)を吸収した。
(Basellは2007年12月にLyondellBasell となった。)

ーーー

高雄市の対応も批判を浴びている。

8時46分には市民から凱旋三路と二聖一路の交差点で白煙が出ており、ガス漏れではないかとの通報を受けて、消防局の職員が現場に赴き放水で気体を希釈した。
しかしその後、9時46分に瑞隆路で、10時20分には崗山西街の路上から火が出たものの、市はバルブを閉鎖する判断ができず、市民を避難させるどころか通行止めの措置すら取れないまま、爆発を迎えてしまった。

重大事故へと発展する危険性を軽く見ていたと批判されている。

付記

高雄市は爆発事件を起こしたパイプラインについて知らされていなかったとしていたが、新交通システム局の調査資料から市はそれを把握していたことが判明した。

高雄市の副市長と市工務局、水利局、新交通システム局の各局長が7日に辞意を表明した。

ーーー

華運倉儲実業は事故を受けて、李長栄化学を含む石化メーカー7社へのエチレン、プロピレン、ベンゼンなどの石化原料供給を停止した。各社は減産に入った。 

付記

高雄市は8月9日、李長栄化学工業に対し、石油化学原料の輸送の安全を確保するとして操業停止を命じた。
工場の内外における石油化学原料の輸送設備と生産設備の安全性を改善する計画が提出され、それが審査をパスするまで工場の運転は再開させない。

市長は8月5日、被害の出た地域で石化製品輸送管の使用と再敷設を禁じると表明した。

実際に輸送管が使用できなくなれば、タンクローリー輸送に切り替えるとコストが上昇するため、各社は大きな打撃を受ける。
各社は中国進出を図っているが、これに拍車をかけると見られている。







自動車会社の第1四半期決算が出揃った。

国内販売の苦戦を海外の伸びで補うメーカーが目立つ。原価低減の取り組みも利益を押し上げた。

トヨタでは日本の利益が激減し、北米の利益は倍増している。日産自動車も日本の利益減を北米とアジアで補った。


 第1四半期決算(単位:億円)

  営業利益

同左
原価低減
効果

営業利益内訳 (  )は前年同期
当期 前年同期 増減 日本 北米 アジア
トヨタ 6,927 6,634 293 400 3,660 (4,561) 1,655 (827) 1,104 (1,042)
日産自動車 1,226 1,081 145 415 569 (   748) 510 (418) 102  (    71)
ホンダ 1,980 1,850 130 251  621  (   622) 675 (719) 653  (  538)
富士重 787 696 91 30            
マツダ 564 365 199 68 424 (   270)  42  ( 11)

 ? 

スズキ 509 441 68 26 338  (   308)     151 (   199)
三菱自動車 310 160 150 35 111  (   106) 8 ( -18) 113  (    69)

 


本年1月から6月までの半年間に国内の主な自動車メーカー8社が日本から海外に
輸出した車の台数は前年同時期を 5.4%下回った。

このうち、トヨタ自動車は、アメリカでの高級車の販売拡大に向けて九州で生産していた一部をアメリカとカナダの工場に移したことなどから11%減少、日産自動車も、SUVの新型車の一部の生産を去年の秋以降九州の工場からアメリカに移したことなどから5.4%減少しているほか、ホンダは、主力小型車の生産の一部をことし2月にメキシコに移したため、74.5%の大幅な減少になっている。(NHK)

これらは円安になってからの海外移管であり、ショックである。

2014/8/1   貿易赤字の裏側

円安が始まる前の2012年上期と昨年上期、本年上期の各社の輸出台数を比較した。

乗用車 (千台)

  2012/1-6 2013/1-6 2014/1-6 2012年比
トヨタ 926 874 763 -163
日産自動車 311 212 195 -116
マツダ 326 382 395 69
三菱自動車 190 156 179 -11
ダイハツ 6 4 4 -2
ホンダ 147 65 17 -131
富士重工業 190 217 259 68
スズキ 91 72 58 -32
合計 2,188 1,981 1,870 -318

 

2012年末から円安が始まったが、乗用車についてみると、2013年上期に前年と比べ 207千台減少し、本年上期は更に111千台減少した。
本年上期は円高だった2012年上期と比べ、14.5%も減少した。


乗用車、トラック、バスを含めた全輸出台数をみても同じ傾向である。


 


自動車メーカーの好決算は、日本の工場が稼いだものではなく、海外の工場で生産し、海外で販売した自動車が増加し、海外の利益が急増、円安により円換算の利益が増加したということである。

自動車メーカーの株主にとっては好ましいことだが、その見返りに、エネルギーや食料品の輸入価格が円安で急増し、生活が苦しくなっている。

6月のコアCPIは消費税アップの影響を除くと前年比1.3%アップだが、食料とエネルギーを除くコアコアCPIのアップは0.3%でしかない。
 現在の値上げは、円安でのエネルギーや輸入原料のアップをやむを得ず転嫁しているものであり、国内メーカーの付加価値は増えていない。

アベノミクスの狙いは、円安で輸出が増え、国内生産が増え、給料があがるということであった。
実際には、円安のメリットは実現せず、デメリットのみが出ている。

 

 



白元は7月31日、同社のスポンサーとしてアース製薬を選定し、同社との間で、事業譲渡契約を締結したと発表した。

白元は約255億円の負債を抱え、5月29日付で民事再生手続きの開始を申し立てた。
スポンサーを選定の上、事業譲渡を実施することを検討し、スポンサーの募集・選定のための入札手続を実施してきた。

譲り受け価額は75億円で、白元アース製薬を8月8日に設立し、ここが事業を引き継ぐ。

白元をめぐっては、アース製薬のほかに日用品大手のエステーや投資ファンドなどが最終入札に残ったとされる。
7月下旬の最終入札ではファンドが100億円以上を提示したとの情報が流れた。

最終的には、債権者への弁済原資の極大化と、事業の再生・継続の確実性、従業員の雇用維持、ブランド維持の観点等から検討した上で、アース製薬を選定した。


白元は、1923年に防虫剤メーカーとして創業した。

防虫剤や除湿剤が主力だが、靴下を好きなところで止めることができ、ズレを防ぐ「ソックタッチ」や電子レンジで温める湯たんぽ「ゆたぽん」 、保冷枕「アイスノン」、高機能マスク「快適ガードプロ」、脱臭剤「ノンスメル」などユニークな品ぞろえで知られる。

衣料用防虫剤ではエステーに次ぐ第二位。

衣料用防虫剤シェア
     主要ブランド
エステー 49%  ムシューダ
白元 27%  ミセスロイド
キンチョー  9%  タンスにゴンゴン
アース製薬  8%  ピレパラアース
 その他  3%  

アースは白元を傘下に入れることで、シェアを35%とし、エステーを追撃する。アース社長は、「防虫剤のシェアでNo.1 を目指したい」としている。

 

白元は無理な拡大路線をとり続けたことから破綻に追い込まれた。

2000年ごろから、中国で現地法人を設立したほか、明治薬品工業、大三、キング化学などを立て続けに買収し、グループの拡大を進めていったが、効果は出ず、銀行からの借金は膨らみ続けた。

創業家出身の鎌田真氏が4代目の社長に就任した2006年ごろから「売り上げ至上主義」に拍車がかかり、返品を前提に需要を上回る大量の製品を卸会社に売る「押し込み販売」をしていたとされる。

業績悪化が続き、2013年4月には衣料用防虫剤「ミセスロイド」の開発で協力する住友化学が19.5%の株式を引き受け、再建を支援した。
本年1月には看板商品の使い捨てカイロ「ホッカイロ」の事業を、医薬品会社の興和に売却した。

しかし、資金繰りは改善せず、金融機関に資金支援を申し入れたが、交渉はまとまらず、破綻した。

ーーー

アース製薬は家庭用殺虫剤では国内市場で50%を超えるシェアを有するが、日用品分野を家庭用殺虫剤に並ぶカテゴリーに育成することが必要不可欠と考えている。
白元とのシナジーを創出することで、事業価値を最大限に向上させることが可能と判断した。

アース製薬は1892年の創業で、1970年に大塚製薬グループ入りした。
ごきぶりホイホイやアースレッドなどユニークな製品を持つ。

2012年2月には、Wise Partnersの運営するファンドなどが保有する入浴剤大手のバスクリンの株を買い取り、100%子会社とした。

芳香浴剤「バスクリン」は1930年に津村順天堂(現 ツムラ)が発売した。

ツムラはその後、 医療用漢方製剤を中心とする事業へシフトしたため、2008年にWise Partners支援を受け、MBOによりツムラグループから独立、㈱バスクリンとなった。


アースとエステーは2010年に、殺虫剤業界3位だったフマキラーをめぐり「争奪戦」を繰り広げた。

2008年にアース製薬が3位のフマキラーの筆頭株主になったことが報じられた。
フマキラーの創業者一族の大下(おおしも)高明氏が8.5%を所有するが、アースは市場で買い進め、わずかだがこれを超えて筆頭株主になった。

アース製薬では、株式取得はあくまでも「純投資」が目的、としたが、非公式に経営統合を打診したことを認めた。
アース製薬はその後、「フマキラー株の取得を継続する」とした。

これに対し、フマキラーは2010年5月13日、消臭芳香剤大手のエステーとの資本業務提携を締結したと発表した。

フマキラーはエステーを引受先に12.5%相当の第三者割当増資実施、これにより、
エステーのフマキラーへの出資比率は4.76%から15.1%になり、アース製薬(10.5%に低下)を抜き筆頭株主になる。

2008/1/23  アース製薬によるフマキラー株式購入


2011年2月、アース製薬はフマキラー買収を断念、持株を全てエステーに売却した。
これにより、エステーはフマキラーの25.69%保有の筆頭株主となった。

2011/2/14 アース製薬、フマキラー株式をエステーに売却、買収を断念


 

 


電力各社の2014年第1四半期の決算が出そろった。

原発のない沖縄電力を除く大手9社で見ると、昨年の第1四半期の経常損益は、北陸電力のみがわずかな黒字で、残りは全て赤字であった。

当期は、東京電力など6社が黒字になった。(四国電力はわずかな黒字、北海道電力はわずかな赤字)
逆に、関西電力と九州電力が大きな赤字となった。

大赤字の関西電力、九州電力と、ほぼトントンの四国電力、北海道電力は、いずれも2010年度で原発依存比率が40%程度と大きい。
原発依存率の低かった電力会社は黒字化した。

関電の場合、大飯原発3、4号機が2012年7月に再稼動し、昨年第1四半期は稼動していたが、2013年9月に停止した。
このため燃料費が15%増の2902億円に膨らんだ。また夏場の需要に備え、修繕費も増えた。

北海道電力は渇水準備金を194億円取り崩し、当期損益を黒字にした。
同社は
今回、17.03% の再値上げの申請を行った。

黒字となった電力会社では、値上げの影響が大きい。

前年同期比の経常損益の値上げの影響は、北海道が108億円、東北が360億円、中部が247億円、関電が300億円、四国が110億円、九州が200億円となっている。
東電は他社に先駆け、2012年9月に値上げしたため、前年同期比の損益対比には値上げの影響は入らない。

これに加え、燃料費調整制度により、燃料費のアップ分は料金アップで回収している。(下記に詳細、問題あり)

家庭向けの値上げを国に認めてもらうために人件費などを削ったことも採算向上の理由の一つである。

東北電力は「コスト増は効率化による経費削減で吸収していく」としている。

しかし、「もう経費を削る余地は少ない」との声もある。改修工事の先送りなどはいつまでも続けられないとする。

2013年に値上げをしても大赤字の関西電力と九州電力が問題である。
関電の八木誠社長は「再値上げを具体的に検討せざるを得ない場合もある」と述べた。

 

各社決算対比

        単位:百万円

 

売上高 営業損益 経常損益 当期損益 値上げ(家庭用)ほか
北海道電力

原発依存度
(2010)   44%
本年1Q 161,432 -713 -4,256 15,020 2013/9より 7.73%値上げ
渇水準備金取崩益 19,391
前年1Q 141,956 -12,303 -15,836 -17,748  
増減 19,476 11,590 11,580 32,768 値上げ益 108億円
 
東北電力

原発依存度
        26%

本年1Q 498,649 66,288 56,834 37,713 2013/9より 8.94%値上げ
前年1Q 432,663 4,592 -5,892 4,287  
増減 65,986 61,696 62,726 33,426 値上げ益 360億円
 
東京電力

原発依存度
        28%

本年1Q 1,568,500 70,694 52,513 -173,261 2012/9より8.46%値上げ
前年1Q 1,437,757 -23,490 -29,490 437,932 原子力損害賠償支援交付金 666,255
増減 130,743 94,184 82,003 -611,193 燃料費調整益  1040億円
 
 
中部電力

原発依存度
       13%

本年1Q 723,179 24,215 15,097 11,917 2014/5より 3.77%値上げ
前年1Q 623,305 -36,938 -46,311 -29,573  
増減 99,874 61,153 61,408 41,490 値上げ益 247億円
 
北陸電力

原発依存度
       28%

本年1Q 123,839 12,799 10,444 6,986  
前年1Q 115,374 3,991 1,458 492  
増減 8,465 8,808 8,986 6,494  
 
関西電力

原発依存度
       44%

本年1Q 791,279 -39,805 -32,281 -29,041 2013/5より9.75%値上げ
前年1Q 717,543 -27,838 -42,554 -33,472  
増減 73,736 -11,967 10,273 4,431  値上げ益 300億円
 
中国電力

原発依存度
       3%

本年1Q 307,324 23,531 19,717 12,625  
前年1Q 278,992 -9,931 -13,709 -9,664  
増減 28,332 33,462 33,426 22,289  
 
四国電力

原発依存度
       43%

本年1Q 150,539 3,098 2,171 994 2013/9より 7.80%値上げ
前年1Q 130,939 -12,659 -13,831 -9,021  
増減 19,600 15,757 16,002 10,015 値上げ益 110億円
 
九州電力

原発依存度
       39%

本年1Q 444,631 -28,111 -36,510 -40,637 2013/5より 6.23%値上げ
前年1Q 388,992 -56,352 -64,633 -59,152  
増減 55,639 28,241 28,123 18,515 値上げ益 200億円

 


燃料費調整の仕組みは下記の通り。

・原油・LNG・石炭それぞれの3か月間の貿易統計価格にもとづき、毎月平均燃料価格を算定。
・算定された平均燃料価格(実績)と、基準燃料価格との比較による差分にもとづき、燃料費調整単価を算定し、2か月後の電気料金に反映。

東電の場合の詳細

東電の場合、2014年1Qでは、燃料費調整制度による前期比収入増が1040億円、それに対し、燃料代は前期比で100億円増で、差引 940億円の益となっている。

燃料費アップよりはるかに多く、燃料値上がりとして請求しているが、これは下記の点から、燃料費調整収入と燃料使用時期にずれが発生しているためと思われる。
同社は原料の評価を総平均法で行っているため、当期のコストには期首の在庫の価格が影響する。


2014年3月期と2013年3月期の通期の比較では、
2012年9月からの料金値上げによる増益が2430億円あり、
燃料費調整による収入増が2860億円で、燃料価格アップの損失増は3810億円で、差引950億円の損となっている。
長期的にみると、見合っているように見える。


しかし、実際には2014年3月期は、これに加えて、安い石炭を多く使うことによる前期比の燃料費減が2020億円もある。
燃料費調整での燃料構成は 上記の通り一定のため、これは調整計算に算入されず、需要家は実際の燃料価格アップ分以上を払わされていることとなる。


 


   

台湾高雄市の爆発事故で、死者は28人、負傷者287人となった。消防士2人が依然行方不明となっている。

付記 不明の2人は発見されず、家族の同意の下、8月5日に死亡証明書が発行された。 死者30人となった。

既報  2014/8/1  速報 台湾・高雄で大規模爆発 原因はプロピレンか?

6キロの範囲にわたって爆発が起き、道路が陥没するなど大きな被害が出ている。
雨で爆発現場に水がたまり、川のようになっている。


事故の原因については既報の通り、李長栄化学向けのプロピレンのパイプとの見方が強い。

高雄市環境局によると、ガス爆発が起こった地点には3本のパイプラインが走っている。

① 中国石油(CPC)のパイプライン
② 李長栄のパイプライン
③ 華
運倉儲(China General Terminal & Distribution Corp)から李長栄へのパイプライン

華運倉儲は台湾のポリエチレンメーカーのUSI Group(台湾聚合化学)の連結子会社で、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレンなどの石油化学原料の倉庫保管及び輸送を手掛けている。

このうち、①と②は爆発当時は使用されていない。

高雄市政府は「7月31日夜に華運倉儲が李長栄向けにプロピレンの加圧処理と輸送を行ったが、プロピレンが李長栄化学にうまくパイプライン輸送されなかった。プロピレンが漏出して爆発した恐れがあり、李長栄化学の過失ではないかという見方が強い」としている。

31日夜8時から9時の間に1時間当たり最高で4トンのガスがパイプラインを通っていたことが分かっており、毎時これだけのガスが漏出していたことになる。

爆発の3時間前にガス漏れの通報を受けていながら、速やかにガス漏れを止められなかった高雄市当局を批判する声が出ている。

 

林園区の林園 No.3, No.4と前鎮高雄 No.5フサクラッカー のエチレンやプロピレンなどは、大社区や仁武区の誘導品プラントに市街地に埋設されたパイプラインで送られている。多くの人が暮らしている地下を多数のパイプラインが走っている。(設置された時点では、住民は少なかったという。)

 

1997年にCPCの作業チームが道路工事のため一部区間のガス管を掘り出そうとした際に爆発が起き、5人が死亡、約20人が負傷した事故が起きている。

事故を受け、地下に通された工業用パイプラインの移設を求める声が住民から上がっている。

8月2日に現場を訪れた馬英九総統は原因の究明を急ぐとしたうえで、街中のパイプラインの監視を強化するとの考えを示した。「原因の救命に全力で取り組み同様の事故が起きないよう対策を進める」と述べた。

大社区や仁武区の誘導品プラント(既報に明細記載)は長期間停止せざるを得ないと思われる。

ーーー

江蘇省昆山市の金属工場で8月2日朝、大規模な爆発が発生し、71人が死亡し、186人が負傷した。
爆発の際、264人が工場内にいて、爆発現場で45人が死亡、残りは病院に運ばれた後、亡くなった。

工場は昆山市経済技術開発区にある「中栄金属製品有限公司」で、車のアルミホイールを研磨する作業場で、可燃性の粉じんに引火して「粉じん爆発」が起きた可能性が高いとみられている。
同社は1998年設立の台湾系企業で、米のGeneral Motors指定のサプライヤー。

事態を重くみた習近平指導部は陣頭指揮のため、王勇・国務委員を現地に派遣した。当局は同社の責任者2人を拘束して調査を開始した。  

 

付記

8月2日の記者会見で現地政府は、粉じんが飛散したエリアでの引火が原因との見方を示し、安全基準の違反があったと指摘した。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、現地の当局者が粉じんが爆発を引き起こすリスクを繰り返し警告していたが、同社はこの警告を無視していたという。

ーーー

可燃性の固体微粒子が空気中に浮遊し、そこに発火源が存在した場合、ある条件下で爆発燃焼する。これを粉塵爆発という。

粉塵爆発は、
1)酸素
2)爆発下限濃度以上の粉塵
3)最小着火エネルギー
の3
条件がすべて揃った瞬間に発生する。

爆発の恐れがある粉塵には、以下のものが上げられる。
 ・マグネシウム ・アルミニウム ・アルミ軽合金 ・鉄粉 ・エポキシ樹脂 ・コーンスターチ ・チタン
   ・微粉炭 その他可燃性粉塵


2007年3月20日、信越化学の直江津工場のメチルセルロース製造プラントで爆発があり、3人がやけどなどで重体、14人が重軽傷を負った。

2007/3/22 「信越化学 爆発事故  

同社では原因を粉塵爆発と推定し、粉塵爆発の対策として以下を実施した。

(1) 窒素置換
(2) 静電気除去対策
(3) 粉塵堆積の防止

ーーー

昆山経済技術開発区は1985年に設立、1992に国務院に国家クラスの開発区と認定された。

日本精工、シマノ、マキタ、豊田自動織機など、200社以上の日本企業が進出している。



 

Arkemaがアクリル酸事業を拡大している。

同社は当初、フランスのCarlingに240千トンのアクリル酸プラントを持っていた。(その後、275千トンに増強)

同社は1999年7月に日本触媒との50/50 JV(American Acryl L.P.)を設立し、テキサス州Bayportにアクリル酸 120千トンプラントを建設した。
   日本触媒は隣接地に高吸水性樹脂 60千トンプラントを建設(テネシー州から移転)
   Arkemaは同地でブチルアクリレートの原料としている。

この時点では合計能力は300千トンであった。

同社は2010年1月にDow Chemical からテキサス州 Clear Lake のアクリル酸とアクリル酸エステルを買収した。

Dowは2009年4月にRohm and Haas を統合したが、統合により精製アクリル酸のシェアは40%、ブチルは75%、エチルは90%となるため、FTCから統合の条件として、いくつかの工場を売却するよう条件が付けられた。Clear Lakeはその一つで、元はDowの工場である。

2009/1/26 FTC、Dow と Rohm and Haas の統合を条件付で承認

Arkemaは買収後、この工場を増強した。

1)アクリル酸の手直し 新公称能力 270千トン(2013年初め)
2)本年7月28日、メチルアクリレート 45千トンプラントがスタートアップしたと発表した。

これに加え、2012年初めにはテキサス州Bayport ではブチルアクリレート工場を2-Ethyl Hexyl Acrylate 工場(能力 40千トン)に変換しており、ブチルアクリレートはBayportに集中している

本年1月、Arkemaはシンガポールの昇立化工(SunVic Chemical Holdings Limited) から、江蘇省の江蘇裕廊化工 Jurong Chemical )の江蘇省泰興市のアクリル酸工場の権利を取得した。

SunVicは中国のアクリル酸、アクリル酸エステルの最大のメーカーで、江蘇省にアクリル酸525千トン、アクリル酸エステル 350千トンの能力を持つ。
アクリル酸については、鹽城市に205千トン、泰興市に2系列計 320千トンとなっており、後者では2015年第1四半期に第3系列の160千トンが稼動する。

SunVicは泰興市の2系列計 320千トンの設備をTaixing Sunke Chemical に移管し、ArkemaはSunke の株式の55%を買収し、両社のJVとする。

これにより、Arkema は先ず160千トンの引取権を取得する。
第3系列が完成し、合計能力が480千トンとなった時点で、Arkemaは全体の2/3の320千トンの引取権を持つ。
更に、Arkemaは残り1/3を取得する5年間のオプションを持つ。

オプションを行使した場合、Arkema の中国の能力は480千トンとなる。

この場合の同社の全世界の能力は以下の通りとなる。(千トン)

  2013年 2015年 option 行使
フランス Carling 275 275  
テキサス州Bayport 60 60  
テキサス州 Clear Lake 270 270  
江蘇省泰興市   320 480
合計 605 925 1,085

 

日本触媒によると、世界のアクリル酸の能力は下記の通りとなっている。

このところ、韓国勢の増強が続いている。
  
2013/12/24  LG Chem、アクリル酸とSAP増設に3億ドル投資、SK Globalもアクリル酸に進出

BASFの能力は119万トンだが、ブラジル構想もある。
  
2011/4/5 BASF、ブラジルでアクリル酸、ブチルアクリレート、高吸水性樹脂のコンプレックス構想


Arkemaの能力はBASFに次ぐ2位となる。

 



 
 

台湾南部・高雄で8月1日午前0時前、大規模な爆発があった。高雄市消防局によると少なくとも24人が死亡、271人がけがをした。
6キロの範囲にわたって爆発が起き、道路が陥没するなど大きな被害が出ている。

7月31日午後9時ごろにこの付近で「ガス漏れのような異臭がする」との通報があり、消防局などが警戒に当たっていたところだったという。

高雄市環境保護局はエチレンかプロピレンが爆発を引き起こした可能性があると見ており、関連の会社などとともに原因を調べている。

高雄市にはChinese PetroleumCPC)が ナフサクラッカーを3基(林園区の林園 No.3, No.4 前鎮高雄 No.5) 持っている。

誘導品プラントは 林園区のほか、大社区や仁武区にあり、エチレンやプロピレンは市街地に埋設されたパイプラインで送られている。

今回の爆発は、大社区の李長栄のPPプラントへのプロピレンのパイプラインで爆発事故が発生した のではないかとされている。

 

河野太郎衆院議員のブログ 「ごまめの歯ぎしり」7月30日号が、「貿易赤字の裏側」というタイトルでLNG輸入の増大について述べている。
  http://www.taro.org/2014/07/post-1505.php

財務省が7月24日に発表した2014年上半期の貿易収支は、7兆5983億円の赤字で、半期では過去最大の赤字となりました。
このままのペースでいくと、年間を通して15兆円の貿易赤字となります。

日経新聞は「燃料輸入の増加が主因」と分析しています。
産経新聞も「原発の稼働停止に伴う、火力発電用燃料の輸入額が高水準となるなど輸入が過去最大に」と解説しています。

天然ガスの輸入量が増えて貿易赤字が増えているというように聞こえます。

(中略 数量の増加よりも金額の増加がはるかに大きいことを説明)

新聞報道を見ていると、あたかも原発が停止したので天然ガスの輸入量が増えて、貿易赤字が膨らんだかのように思えます。しかし、事実は、天然ガス価格の上昇とそれに輪をかけた円安のおかげで円建てのガス価格が上昇し、貿易赤字が増えたのです。

どの新聞を読んでも天然ガスの輸入量やその価格がどう推移したのか、まったくわかりません。

政府が発表していることだけを右から左に流しているだけではマスコミの役割を果たしていると言えないのではないでしょうか。

これに対し、池田信夫ブログ(7月31日)が「LNG価格はなぜ暴騰したのかでこれに反論している。

竹中平蔵氏も産経新聞の正論で同じことを述べている。

「第2の誤りは、貿易赤字は原発停止-燃料輸入増によるとの見解だ。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏が提示する分析によると、過去3年間の貿易収支悪化の約3分の1はエネルギー価格上昇と円安が理由だ。エネルギーの輸入増ではなく、価格要因(円安と国際価格の上昇)である。」

彼らに共通の誤りは、なぜLNG価格が暴騰したのかを知らない点にある。LNGの「価格要因」は自然現象ではない。2010年まではヨーロッパとほとんど同じだった日本のLNG価格が震災後に倍増し、アメリカの4倍になった。その原因は、原発停止でスポットで買いに行ったからだ。


この論争は池田氏の勝ちである。

本ブログでは既に、この分析を行っている。
   
2014/3/9  LNG輸入金額分析--- 原発停止の影響

輸入金額の増加分を、数量増によるものと、価格増によるものに分け、価格増分は更に、円安によるものと、ドル価格アップによるものに分けた。
日本のLNG購入契約は長期契約分は原油スライドであるため、ドル価格アップ分を原油価格スライドのアップとそれ以外に区分した。

原油価格アップを上回る分は、原発停止による高値のスポット買いによるものである。

  2010 2011 2012 2013  

増加分

2010年比 2012年比
輸入金額(兆円) 3.4480 4.7730 6.0015 7.0560 3.6080 1.0545
数量(百万トン) 70.008 78.532 87.314 87.491 17.483 0.177
平均為替レート(円/ドル) 88.09 79.97 79.55 96.91 8.82 17.36
以下は上記から計算    
輸入価格(円/kg) 49.25 60.78 68.73 80.65 31.40 11.91
輸入価格(セント/kg) 55.91 76.00 86.40 83.22 27.31 -3.19
同上 原油価格スライド 55.91     68.77 12.86  
             
WTI原油価格平均($/bbl) 79.59 94.81 94.19 98.05    

この結果、年平均ベースのため大雑把だが、2010年と2013年の金額増 3兆6080億円のうち、数量増によるもの(8611億円)と原油価格アップを上回る値上がり(1兆2252億円)の合計2兆0863億円が原発停止の影響と言える。

円安の影響は2010年(平均 88.09円/ドル)比では4314億円に過ぎない。2012年(79.55円/ドル)比でも1兆3123億円である。

  2010年比 2012年比
数量差 8611億円 121億円
ドル建て価格差
(原油価格スライドの場合)
(原油価格アップを超える分)
2兆3155億円
(1兆0903億円)
1兆2252億円
-2700億円
円レート差 4314億円 1兆3123億円
合計 3兆6080億円 1兆0545億円
うち原発停止の影響 2兆0863億円  

原発停止が貿易赤字の一因であることは否定できない。

但し、円安が狙った効果が出ておらず、貿易赤字の一因であることも事実である。

輸入金額が急増したうえ、輸出が伸びていない。

化学製品などは国際競争力がないため、円安でも輸出は伸びないが、唯一国際競争力のある自動車さえ、円安によって見込まれた輸出の増加は期待どおりには進んでいない。
 

本年1月から6月までの半年間に国内の主な自動車メーカー8社が日本から海外に輸出した車の台数は前年同時期を 5.4%下回った。

このうち、トヨタ自動車は、アメリカでの高級車の販売拡大に向けて九州で生産していた一部をアメリカとカナダの工場に移したことなどから11%減少、日産自動車も、SUVの新型車の一部の生産を去年の秋以降、九州の工場からアメリカに移したことなどから5.4%減少しているほか、ホンダは、主力小型車の生産の一部をことし2月にメキシコに移したため、74.5%の大幅な減少になっている。
(NHK)

これらは円安になってからの海外移管であり、ショックである。


 「人民網日本語版」(7月31日)は、日本の輸出の成長には限りがあり、経済を引っ張る総体的な動力が足りていないことから、「安倍内閣が円安政策を放棄しない限り、貿易赤字の高止まり状況の改善は難しいだろう」としている。



参考 LNGの輸入推移

 


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